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銅大 @bakagane

関口高史さん『戦争という選択』の第3章までを読んでおります。満州事変からのズルズルと戦線が拡大していく流れを読んでいるとWW1直前、もしドイツ皇帝が「バカ、やめろ。本当に戦争になっちゃうだろ」で戦争に向けて動き出した参謀本部を止めようとしたら、こうなったんじゃないか感があります。

2021-10-19 23:19:46
銅大 @bakagane

国際環境、勝者側にいる国にとっては現状維持こそが最善で、力による変更はこれを拒否するのが基本姿勢です。逆に現状では敗者側にいる国にとっては、現状維持は衰亡への道に見えます。20世紀初頭の日独も、21世紀初頭の中国も、国際環境の変更が国としての大前提で、結果として軋轢を生みます。

2021-10-19 23:26:21
銅大 @bakagane

WW1後の英米視点では、日本もドイツも、「身の丈をなー。わきまえてくれればなー。おこぼれくらいはなー」という感覚でしたでしょうし、わきまえない日独に、不快感を抱いて警戒したのも、まあ、勝者の側の立場からすればわからんでもないのですよ。でも、これが通るかというと、無理でしょう。

2021-10-19 23:30:05
銅大 @bakagane

なぜなら、近代国家において弱者・敗者の国がわきまえるためには、国内から、わきまえることへの支持がなくてはなりません。そんなん、選挙やったら負けるし、国王など上が押し付けたら革命騒ぎです。個人としてはともかく、国として弱者の立場をわきまえさせるのは、無理です。

2021-10-19 23:37:29
銅大 @bakagane

現状打破が必要な時に、うまくいきそうか否かは別として、各部署が個別に分担して実行していったらどうなるか。満蒙なんとかしないとなー、で、爆殺したり事件を起こしたりしますし、ベトコンなんとかせんとなー、で枯葉剤をまくのです。現状打破が最優先なら、国は関係なしにそうなるのです。

2021-10-19 23:47:08
銅大 @bakagane

関口高史さん『戦争という選択』第4章を読みつつ。現状打破国家は、現状でなんとか回ってる部分を破壊して進む必要があります。日本ですと、米英の金や物資、特に石油を買って国をまかなう部分を打破しちゃうわけです。で、そういう現状打破するとダメになる部分は、誰も本気で手をつけたがらない。

2021-10-20 20:46:02
銅大 @bakagane

もちろん、準備はします。石井正紀さん『石油技術者たちの太平洋戦争』を読んでも、計画はたててる。もちろん、実際にやってみたら、うまくいかない危険は大きい。でも、そのリスクの多くは「なってみるまでわからない」のです。日清日露でなんとかなったじゃないかと言われると、止めにくい。

2021-10-20 20:50:53
銅大 @bakagane

『戦争という選択』p142、防共協定直後の独ソ不可侵条約締結で、イタリアの外相がドイツの外相を口汚く罵っていると読み、現状打破国家って、どこも、皆がバラバラに自分の思う最善へ突進しちゃうのかしらと。時間というリソース配分がギリギリなので、一手でも省こうとする。

2021-10-21 01:38:08
銅大 @bakagane

本来なら、組織の中では調整役が一番権威を持つ必要があります。全体をみて決断する。ですが、現状打破が優先となると、そもそも権威なにするものぞ、となりやすい。現状打破で生じる未来のリスクを諄々と説いても、そこはもう、皆、わかってやってるので。ダメなところは未来の頑張りに任すのです。

2021-10-21 01:44:17
銅大 @bakagane

現在進行系の話題でいえば、社会の脱炭素化でしょうか。脱炭素という現状打破のためには、リスクを負う覚悟がいる。現状打破が弱者をより圧迫し、社会の分断をさらに推し進めることになりゃせんかという危惧があっても、待ったなしとなれば「未来の頑張りに任せましょう」となる。

2021-10-21 01:47:53
銅大 @bakagane

なお、ここでの「未来の頑張りに任せましょう」とは、週末の午後に「この資料、月曜日の会議で使うのでよろしく。月曜の朝に届けてくれればいいから」とゆーやつです。自分はやらない。

2021-10-21 01:50:24
銅大 @bakagane

「ここまでやったのだから、今になって後にはひけない」でズルズルと深みに入るの、たぶん、国家民族関係なく、分業で複雑化することで発展し、専門外には口出ししにくい人間社会の基本のバグではないか感があります。上にたてば視野は広げられても、下の実務がわからず、指示もぼんやりになる。

2021-10-21 12:37:55
銅大 @bakagane

アメリカとの戦争が近づくにつれ、トップ側の人が口にする言葉が、どんどんぼんやりしてくるのですよ。現場に近い側の人間は「えー、つまり、注意しながら進め、でいいのかな?」と考え、黄色信号だと「ヤバい。赤になる。指示された通り、アクセルを踏もう!」で加速していく。進むことが前提なので。

2021-10-21 12:45:16
銅大 @bakagane

大政翼賛会(1941年)で「実践」が強調され、時代の空気として、誰もができることをコツコツやるのがエラい、みたいな感覚があるの、同じ現状打破国家であるドイツがコツコツやってオーストリア喰ってチェコ喰ってポーランド喰ってフランス喰ったという実例を見てれば、たしかにそうなりそう。

2021-10-21 22:22:40
銅大 @bakagane

逆に、米英をはじめとする連合国側の視点では、この時代の日本は、信用がおけない、ならず者国家です。仏印進駐にしても、仏印当局者は交渉相手の役人・軍人を信用できない。目の前の人がいくら立派で真摯でも、決定内容を持ち帰って身内を説得できるかというと、できそうにない。

2021-10-21 22:27:55
銅大 @bakagane

このへんになってくると、調整役たる日本政府はもう、まったくの無力です。現場の追認しかできない。現場はそれぞれが自分にできることを勝手にやっていきます。そして、重慶政府や英米との和平交渉のような、「できない」ことへの扱いがどんどん雑になり、後回しにされる。

2021-10-21 22:34:05
銅大 @bakagane

同じことは、陸海軍の協力にも言えます。同意できることはよいが、同意できないことに時間をかけるより「こっちはこっちで勝手に進めましょう」になっちゃう。現場優先。調整軽視。資源に乏しい日本においては、調整に時間をかけましたがダメでした、は通用しない。ガキの遊びでやってんじゃねえんだ。

2021-10-21 22:44:59
銅大 @bakagane

現場優先、調整軽視は、日本だけの宿痾ではありません。それは現状を打破しようとすると、必然として起きることです。打破される側は時間稼ぎに走りますし、時間稼ぎに付き合えるなら、それはもう現状打破ではなく現状維持です。 SFで例えるならハリ・セルダンの心理歴史学的な必然といえましょう。

2021-10-21 23:22:30
銅大 @bakagane

関口高史さん『戦争という選択』開戦直前の外交ともなると、グダグダの限りで、交渉相手も「ここで何か決めたとして、お前ら、持ち帰って実行できんの?」と腹の中で思ってるの間違いなし。もちろん現場優先、調整軽視の現状打破国家にそんなことができるはずもなし。納得しない現場がいつか暴発する。

2021-10-22 16:48:11
銅大 @bakagane

思うに、冷戦後世界で、本来なら現状打破を目指すはずの国が権威主義・軍部独裁の方向性を維持しているのは、現場の暴走を止める最後の手段なのでは感が。現状に満足できない現場を無理にでも抑えつけるには、権威か武力か、その両方が必要になります。

2021-10-22 17:06:39
銅大 @bakagane

WW2前に日本やドイツがやったような、「クェートとったところで、アメリカは怒るだけで攻めてきたりしません」で現場組のヤンチャを追認した現状打破国家のイラクがどないなったかですよ。現場の暴走、ダメ。絶対。

2021-10-22 17:15:53
銅大 @bakagane

日米開戦、天皇が直前まで、外交が主・戦争準備を従について念押しを繰り返したことに、陸海軍どちらも「そういう建前で、うまいことやれ、ですね!」くらいにしか思ってなさそうなの、なんというか、実に現状打破国家らしい現場優先思想。

2021-10-22 22:28:38
銅大 @bakagane

同時に、現場優先思想は開戦の決定のような、大所高所の決断は自分たちの担当ではない、という意識でもあります。特に陸軍は「アメリカとの戦争は海軍の担当で、やるかどうか決めるのも海軍」という、そこだけ現場優先思想を貫かれても、という。なので、ぼんやりとしたまま、開戦に向けて進む。

2021-10-22 22:31:31
銅大 @bakagane

東條が、首相になったとたん、非戦を視野に入れるのは陸軍大臣と首相では、『現場の総意』の意味が違うからでしょう。アメリカと戦争になっても、終わらせどころがない。だから、戦争になるのだとしても、外交が失敗し、万策尽きた形でのみ、無念ながら戦争に持ち込む、という形を取りたかった。

2021-10-22 22:46:21
銅大 @bakagane

関口高史さん『戦争という選択』を一読して思うのは、視点の低い現場優先・視点の高い調整軽視こそが、戦争への道筋であったのかしらと。東條が極東裁判で最後に陳述したように、上から下まで全員が『手続きに従い、事を処理していった』結果として、戦争以外の選択肢が消えてしまったのだと。

2021-10-22 23:21:21
銅大 @bakagane

英米相手の『戦争という選択』を選んだというより、それまでの決断や失敗で『非戦という選択』が消えていき、道が狭くなり、とうとう、何度、選択肢を選び直しても開戦以外を選ぶことができなくなってしまった。それまでの選択の積み重ねこそが、破滅的な戦争を呼び寄せてしまった。

2021-10-22 23:28:46
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まとめたひと
銅大 @bakagane

のんびりこんびり、三割なほら吹きおじさんです。