本まとめは、仲見満月(@naka3_3dsuki)が読み、個人的に呟いた次の本の感想ツイートをまとめたものです。  ●高橋ユキ『つけびの村 噂が5人を殺したのか』晶文社、2019年(https://t.co/8yDdK7909d?amp=1
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仲見満月(なかみ みづき)の日常@静養中 @naka3_3dsuki

高橋ユキ『つけびの村 噂が5人を殺したのか』晶文社、2019年。min.t用の書影。 pic.twitter.com/HXsIbZsxSW

2020-05-28 20:11:48
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本書の表紙カバー裏の説明
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”この村では
誰もが、誰かの
秘密を知っている。

2013年7月、山口県の限界集落で起こった5人の殺害、2軒の放火。消えた男の「つけび」貼り紙が騒動を加速させるなか、残されたICレコーダーには――うわさ話ばっかし、うわさ話ばっかし……ただの悪口しかない――
これは村八分の告発か?
死んだ愛犬、燃やされた草刈機。
<うわさ話>は増殖し、ついには世間を覆いつくす。でも知りたいのは<本当のこと>だ。
筆者はひとり、村を目指した。”

「事件」こと「山口連続殺人放火事件」について

リンク Wikipedia 山口連続殺人放火事件 山口連続殺人放火事件(やまぐち れんぞくさつじんほうかじけん)は、2013年(平成25年)7月21日、山口県の周南市金峰(旧鹿野町)で発生した、近隣に住む高齢者5人が殺害された連続殺人・放火事件である。 2013年7月21日午後9時ごろ、周南市金峰郷地区の住民から「近所の家が燃えている」と周南市消防本部に通報があった。約50メートル離れた農業の女性A宅と無職男性A宅の2軒が燃えており、消火活動にあたったが、2軒とも全焼した。女性宅から1人、無職男性宅から2人の遺体が見つかり、それぞれ住民の女性Aと男性A、 10 users 14

上記のWikipediaの記事で、冒頭と事件の概要をお読みの上、次の感想ツイートまとめへお進み下さい。
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感想ツイート(ここから下)

仲見満月(なかみ みづき)の日常@静養中 @naka3_3dsuki

つけびの村 高橋ユキ(著/文) - 晶文社 | 版元ドットコム hanmoto.com/bd/isbn/978479… @hanmotocomから 今、ジトッと湿っぽい物を心が求めているようになっていて、本書を読んでいる。

2020-05-25 02:55:51
仲見満月(なかみ みづき)の日常@静養中 @naka3_3dsuki

高橋ユキ『つけびの村』、続き。これね、事件のあった集落の行政的な成り立ちを調べるのに、地元の公立図書館をどう使うか、という具体的な方法が分かって、勉強になります。手法として、民俗学的なものになるのかな?と。集落を取り巻く様子に、市街地との商工業的な対比があって、イメージしやすい。

2020-05-26 22:45:00
仲見満月(なかみ みづき)の日常@静養中 @naka3_3dsuki

続きは、どっかで書くか、まとめるかは、考え中です。書かないかもしれませんが。

2020-05-27 04:38:50

(メモ帳に書き散らした感想の続き)

 本書はもともと、note.comで連載されていた複数の記事がもとになったもの。後半をパラパラ捲ると、書き下ろし部分にあるのは、著者が編集者の人に「noteの読者は皆、事件の真相解明に期待しているんだから、なんとか田村さんから『10年後に話す』と言っていたことを、説得して、聞き出してほしい」と言われてたことです。(田村さんとは、事件の起こった郷集落の「古老」というべき人物。)

 結論を先に言うと、本書では事件の真相は分かりません。捜査や裁判により、犯人とされるHに死刑の判決が既に出ています。当のHは妄想性障害が進行しており、今となっては、自分の妄想世界に生きる彼から、事件に関する様々なことを聞き出せないみたい。一方で、読み進めていくと、狭い共同体で語られていた「噂」、それに含まれる「悪口」、「いじめ」によって、事件の発生した背景の不気味さが描き出されていることが窺えます。(サブタイトルは「噂が5人を殺したのか」ですし。)

 話を本書の最初に戻しましょう。容疑者のHは、戦中に親世代からしがらみが村の人々とあったらしい。序盤に登場するKさんの兄で、39歳の時に事故で亡くなったK家の長男。この長男の生前、Kさんの家は放火されたらしく、それはHによるものではなかったと。ほか集落では盗難や放火が複数回あったが、事件以降は無くなったという。

 ほかにもB級アミューズメント的なUFOなどの建造物のある場所や、山によって日陰ばかりの凍える集落でスマホが作動停止になり、著者は不気味さを覚える。事件の背景にあったと被告人Hが語った周りからの嫌がらせや「挑発」は、法廷では彼の妄想だとされていたとか。集落で取材した著者は、事件以前にもHによるものでない放火や、盗難が起きたことを聞き、集落に不気味さを覚えつつ、「嫌がらせ」や「挑発」がHの妄想ばかりではない可能性を考えていた。

 ここまで読んだ私は、何世代にもわたる怨恨の生み出す陰湿さ、治安の不安定さに、背筋が寒くなりました。たぶん、こういう狭い地域での歪みや、家同士の関係って、恐ろしいことですが、日本の各地にあることなんじゃないかな?と。本書を読みつつ、怖い思いをして生命の危険があったかもしれないのに、著者は生きて帰って来れて、よかったと。著者が身を守る術が、これから本書に出てくるかもしれない。

 ちなみに、ここまでが本書p.41までの内容です。

 高橋ユキ『つけびの村』続き。戦中の津山事件、2004年の「加古川七人殺し」との共通点を著者が挙げている。このあたりは、「郷」の章に入っている内容です。この章の後半は、著者が兄に付いて上京した犯人Hの経歴をたどり、首都圏で左官職人をしていたHの仕上げた建物を見たり。途中、彼の通っていた焼鶏屋の女将さんに取材。職人時代のHの様子を聞いて、著者は彼の「真面目だけど、神経質なところのある職人のおっさん」というイメージを明らかにしている。どこにでもいる職人の男性だったと。それが帰郷してから、不穏な人物に変化したと。

 続きは、Hの旧名の改名前の「ワタル」がタイトルの章(2009年ごろ、改名したのは帰郷後の趣味で陶芸を始めた影響らしい)。年老いて帰郷を促した父親により、郷集落へ戻ってきてからのHの様子が書かれています。郷集落の人々との関係がうまくゆかず、精神的なストレスのせいか、周囲に掴みかかったり、自分の家の窓を開いて大音量の歌を流したり。変貌ぶりに、著者の筆が進む。このまでp.53あたり。感想としては、別の事件もですが、陰口や無視は、狭い共同体の中にいて孤立した人物を、ますます、追い詰めてしまう危険を孕ませることに、世の人は気づいたほうが賢明だということ。それは、現実の井戸端会議に限らず。

 それから、note連載で先に読んでいた私は、ある程度、本書の話の先を知っているんだけれども、陰口や噂話は、周囲の疑心暗鬼を招き、ときにそれをする自分自身をも滅ぼす危険がある。加えて、周りにいた人たちの認識する「事実」を歪め、調査や取材をする人々の目を曇らせることがある。と感じました。

 「ワタル」の章。帰郷して住むようになったHは、最初こそ集落の自治会に出ていたが、草刈りや掃除に出なくなり、年長者の多い集落で苦々しく思われていく。Uターンハイで村おこしを考えていたが、山野で取れたものを住人からもらっても、お礼を言うことはなかったとか。尊大な態度が嫌われたのか?

 『つけびの村』の「その父、友一」の章、読了。犯人Hの父の友一は、戦後すぐの頃、ほかの家と違って田畑を持たず、自身の兄たちのように販売の代行業や工事業者の仲介業など、働くことを厭う人物だったそう。H家に酒を飲みに来ていた人々に、酒代をちょろまかして飲む。衣服や野菜を盗んでた噂もあったようで。そのあたり、著者によると、友一は集落ではよく思われておらず、「泥棒」と呼ばれていたんだとか。その息子のHこと、ワタルが帰郷して、村おこしなんかしようとした訳で、住人からはよく思われていなかったようです。

 そこに、江戸期から続く萩藩が徳山藩を監視する形で飛び地を形成させる。著者は、そこらへんの複雑な郷土の歴史を絡めながら、「つけびの村」とその周辺の現在まで続く集落同士の人々関係や取り巻く空気にまで、迫っている。噂が地域の人々の間でどのような役割を実質的に果たしているのか、知るには集落内だけでなく、集落とその他の集落の人たちの関係も明らかにしないと読者には浮かび上がってこない「事実」があるかもしれない。例えば、明治に入ってから起こったことで、村の行政的な問題に端を発する集落と集落の対立とか。本書を読んでいると、地区と地区のギスギスした関係って、歴史が影を落とすと、子々孫々に「あそこの地域は○○だから、気をつけなさいね」と、家や地域内で伝えられるんです。そうした関係は、やはり、事件が起こった時、人々のする噂に強く作用するんでしょうね。そういう意味で、郷土史の資料を著者がひもといた意義は、本書で大きいと考えられます。

 そうそう、著者が指摘する村の異常さは、被害者で酒を飲むと暴力的になるSが、よく飲みに来ていたHの胸をカッとなって、刺したことに対して、気にとめない様子で軽やかに話していたこと。軽やかに語るのは、郷集落にいた何人もの人たち。ボヤが何回か出て、燃える家が存在しても、まるで大したことのないように、著者に話すので、聞き手は真顔で頷くしかできなくなる。

 のちに、事件の起こった郷集落において噂の発生源は、コープで共同購入したものを住人が受け取りに集まる「寄合」のような場所であり、井戸端会議の会場であったYさん宅だったことが判明します。Yさんは、事件後に近くの都市に住んでいた息子のいるところに転居しており、著者は取材へ赴く。Yさんは、郷集落で起こっていた盗難やぼや騒ぎ、不審な出来事には距離を取るスタンスで話をしていたようだった。
(その後、本書の執筆のため、郷集落に来た著者と再会し、Yさんは同居していた息子を病気で喪ったことを告げる。)

仲見満月(なかみ みづき)の日常@静養中 @naka3_3dsuki

『つけびの村』、夜を徹してnote掲載したいと相当部分まで、読んだ。これ、ゲームの「人狼」みたい。「人狼」をやってて、狂言者役の人が精神的な疾患の発作により、暴れながら訳が分からなくなり、それを取り押さえた村人役の人たちは、ゲーム内の役に影響されていく。そのうち人狼が誰か、噂が積もり

2020-05-27 06:40:00
仲見満月(なかみ みづき)の日常@静養中 @naka3_3dsuki

→積もっていき、集団的な心理状態の変化で、お互いが疑心暗鬼になっていき、もはや、誰が人狼役であるかは問題ではなくなってしまった、みたいな。「人狼」のゲームは、実は地方の狭い共同体(学校のクラス内など)で行われていて、その時の出来事は、後世にも語り継がれて蓄積していく、と。

2020-05-27 06:43:11
仲見満月(なかみ みづき)の日常@静養中 @naka3_3dsuki

ゲームの「人狼」が行われた共同体は、外部の人集団やコミュニティから見たら、「実は、全員が人狼なんじゃなかったのか?」と白い目で見られていた、というイメージです。比喩の話は、このくらいでストップしときます。

2020-05-27 06:45:51
仲見満月(なかみ みづき)の日常@静養中 @naka3_3dsuki

続き。実は、著者の取材相手で郷集落の住人が一人、note掲載記事を書いた後に亡くなった報を著者は受け取ったんだとか。書き下ろし部分には、その住人の死をめぐる噂の追加取材で判明したとが出てきます。ネタバレしないため、ここまで。

2020-05-27 14:08:41
仲見満月(なかみ みづき)の日常@静養中 @naka3_3dsuki

→なお、本書の主題は、事件を中心に、噂や話しぶりから感じられる郷集落の内部の不気味な雰囲気や、周辺地域の人々が感じるその郷集落への「白い目」で見るイメージを書き出し、浮かび上がらせること。事件の真相を明らかにすることではなく。それを意識せんと、読んだ人は肩透かしを食らいそう。

2020-05-27 14:13:02
仲見満月(なかみ みづき)の日常@静養中 @naka3_3dsuki

あと、郷集落の住人の言葉は、地元の方言が混じります。個人個人で方言の語彙の混じり具合は異なります。瀬戸内海地方の方言に特徴的な語尾や言葉が多少でも頭に入っていたら、住人の語る内容をニュアンス込みで理解できそうで、読者によってはゾクッと来そう。

2020-05-27 14:16:53
仲見満月(なかみ みづき)の日常@静養中 @naka3_3dsuki

高橋ユキ『つけびの村』を読む。今も電波が届かないだけでなく、気候的にインターネットのできる端末の調子が悪くなり(冬は寒すぎる)、外の情報が収集できないからか、関心が狭い共同体へ向きがちな地域があることを実感する。それは、オンラインのコミュニティでも、今はあるのかもしれない。

2020-05-27 16:27:23
仲見満月(なかみ みづき)の日常@静養中 @naka3_3dsuki

『つけびの村』。「判決」の途中。犯人Hの精神疾患が郷在住時からあった可能性が、著者の取材先の精神科医に指摘される。最高裁の裁判で判決が出ると聞き、傍聴の抽選の並び要員が欲しい時、編集者から「レンタルなんもしない人」の話が飛び出し、私は笑ってしまった。→

2020-05-28 00:27:08

著者とTwitter(主にDM)のこと

仲見満月(なかみ みづき)の日常@静養中 @naka3_3dsuki

そのほか、本書には著者がTwitter(主にDM)を通じて、ラジオの電話出演を依頼してくる人や、取材先の動物病院の院長など、様々な人たちと連絡を取る様子が出てきます。そうそう、折り返し地点にはnote記事の購入に対して、ノンフィクション作品は売れる・売れないという著者の考えが出てきました。

2020-05-28 00:31:10
仲見満月(なかみ みづき)の日常@静養中 @naka3_3dsuki

「あとがき」まで来ました。本書のキーワードのひとつは、「精神疾患と地域社会」なのかな?と感じます。いかに早い段階で、適切に精神疾患の兆候のみられる人を、専門医のところへ連れていけるか?連れて行かれた先で、本人が適切な治療を受けられるか?といったことを考えてしまう。

2020-05-28 02:21:19

読了後の振り返りツイート(ここから下)
~郷集落の歴史や地理の情報はあったほうがいい~

仲見満月(なかみ みづき)の日常@静養中 @naka3_3dsuki

読了。本書の裏主人公「うわさ」をめぐる狭い共同体について、読者がリアリティを感じられるかどうかは、個々人の生い立ちや過ごしてきた環境に左右されそう。一時期、本書の中の郷集落ほどでないにしろ、片田舎で祖父母や近所の人たちに接して育った私は、現実にある怖さを思い出しました。

2020-05-28 03:03:18
仲見満月(なかみ みづき)の日常@静養中 @naka3_3dsuki

あとは、8世紀、郷集落に住みついた修験道の修行者たちに大和国吉野から郷集落に勧請され、今の金峰神社の祭神である蔵王権現は、私が調べた印象では、かなり強力な神仏でした。なにせ、この祭神の勧請にあたり、郷から吉野へ来た人が48日間かけて舞を覚え、郷に来ていただいた経緯があるんです。

2020-05-28 03:08:49
仲見満月(なかみ みづき)の日常@静養中 @naka3_3dsuki

祭神の利益には、「降魔の霊神であり、諸災祓い、怨敵退散、所願成就、家内安全のご利益」。「うわさ」を通じて、郷の和を乱した人々に対して「降魔」=罰を与えた結果が、事件だと解釈してる郷の古老がいても不思議ではない。そんな強力な神仏。 蔵王権現 | 仏像ワールド|butuzou-world.com/dictionary/zao…

2020-05-28 03:13:20
仲見満月(なかみ みづき)の日常@静養中 @naka3_3dsuki

少なくとも、蔵王権現に対する信仰に篤い人たちがいることで、現地の人たちが集団心理的に「この事件やその後に起こった不幸な出来事は、神社の神様の罰だ」と考えても、不思議じゃない。本書を読み、私が郷の歴史をなぞる必要性を感じたのは、そういった背景があると考えました。(※私は神仏信仰者)

2020-05-28 03:19:34

(事件後、Kさんが亡くなってから著者が再取材で訪れたときの話。古老が話すところでは、噂の発生場所の「寄合」を作ったYさんについて、Yさんが息子を病気で喪ったことについても、「神が郷集落の和を乱すことに加担したことが大きいのでは?」と話し手がみている話が出て来る。)

仲見満月(なかみ みづき)の日常@静養中 @naka3_3dsuki

ここらへんは、読者が神仏を信仰するか・しないかによって、郷集落の高齢者が神を畏れる感覚は、かなり分かれるでしょうね。信仰してない人には、拍子抜けの感じが強いかな、と。信仰している人には、けっこう怖いかもしれません。著者は前者に近い感覚で、高齢者から話を聞いている様子でした。

2020-05-28 03:24:43
仲見満月(なかみ みづき)の日常@静養中 @naka3_3dsuki

地理的なことに触れると、地元の地誌や郷土史の資料によれば、陸の孤島とされていたとのこと。まあ、尾張から来た修験道者が気に入って住みついた程度の土地ですからね。(その後、尾張から人々をつ)連れてきて、郷に住まわせた話も出てくる。 大雨で数本しか集落に通ってない道が通行止めになるし。

2020-05-28 03:30:07
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まとめたひと
仲見満月(なかみ みづき)の日常@静養中 @naka3_3dsuki

文理総合系博士、成人の学術同人屋。 研究室ブログは'20.6で4周年。'18年~ #FGO 沼、最推しは医神。'20年~刀剣乱舞は次郎さん推し。n次創作RT。発言は個人のもの。フォロー、リムーブご自由に。弊アカ呟きのご利用は一言下さい。写真は「強い女メーカー」、連絡はDMへ。◆告知:@naka3_ken_info