適用状況が決まっていそうな言葉でも、その適用対象とならない人がその言葉からの帰結を引き受けるためにあえてそれを名乗ることはできる。だとすれば、適用状況がそもそも決まっていない言葉でも、その言葉からの帰結を引き受けるために名乗ることはできるのではないだろうか?
2022-10-24 18:29:06アンブレラタームとしての「トランスジェンダー」は、そういう言葉なのではないかと私は思う。その適用対象など決まってはいない。けれど、それを名乗ることで引き受ける帰結は存在する。こうした言葉の存在は、推論主義という立場を利用したならうまく理解できるように思える。
2022-10-24 18:31:59(p.102) Perry, John の本質的指標詞の議論が正しければ、私が「私」という言葉に代えて、「三木那由多」だとか言ったなら、同じ人物を名指すことはできても、その人物を話し手自身と結びつける機能は失われる。 twitter.com/walhallahlaw/s…
2022-10-25 08:49:05(p.95) 私が知りたいのはたぶん、「社会の規範と自らのアイデンティティとの折り合いをつけようとしながら自らの一人称代名詞を選ぶ」話ではなく、一人称代名詞を選ぶことのできなかった者の、自らについて明示的に語ることをやめた者のありかただった。twitter.com/LIU_Yen_Fu/sta…
2022-10-25 08:49:06この質問への答えは結構難しいのです。ナショナルアイデンティティを問われているなら台湾人、エスニックアイデンティティなら客家人となります。中国人とは全く思わないが台僑または華僑(私はこの両者を対立関係と考えていない)としてのアイデンティティもあります。なお日本人意識はありません。 t.co/gORHzhZDy6
2022-10-24 20:27:27(p.125) この原稿を、私は2021年11月20日に書いている。11月20日はトランスジェンダーへのヘイトクライムによって殺害されたリタ・ヘスターを追悼する日である。そして2021年のこの日、東京で日本初のトランスマーチがおこなわれた。
2022-10-25 08:58:31(p.131) Bach, Kent & Harnish, Robert M. (1979) の『言語コミュニケーションと言語行為』では、謝罪をするというのは、①過去に聞き手におこなった何かへの後悔を表明し、しかも②話し手がそのことを後悔していると聞き手に信じさせようという意図か、そうした後悔を表明しているという社会的期待に
2022-10-25 09:12:22沿った発話をしていると聞き手に思わせようという意図のいずれかを表明することだ。 問題なのは、どうしたらその表明が本心からのものになっていると伝えられるのか、あるいは他人からなされたそうした表明をどうしたら本心からのものだと思えるのか、なのだ。
2022-10-25 09:12:23謝罪をすることによって、私とあなたのあいだで共同的コミットメントにしよう、つまりは一種の約束事とし、今後は互いにこの約束事に従って振る舞うようにしようと私は持ち掛けている、そのことが重要なのではないだろうか。
2022-10-25 09:32:59謝罪がそうした一種の約束事であるならば、誠実な謝罪とはきちんとその約束を守ると信じるに足る謝罪であるということになるだろう。 昨今の「ご不快構文』なる謝罪は、なぜ不誠実に思えるのだろうか?twitter.com/Narodovlastiye…
2022-10-25 09:32:59山際大臣の辞任について岸田首相は「任命責任を感じている」などと口にしたが、山際氏と「統一協会」の関係を「知っていた」にも拘わらず、大臣として続投させた張本人でありながら、罷免もせず他人事を決め込んだ人間が一体どの口で言うのか。そもそも責任は「感じる」のではなく「取る」ものだ。
2022-10-25 09:03:57それはおそらく、具体的にどういった約束事をする謝罪なのかがそもそもはっきりしないためではないか。「ご不快な思いを・・・」という謝罪によって、話し手は相手とのあいだで〈自分は相手を不快にさせたことを後悔している〉ということを共同的コミットメントにし、今後はこのコミットメントに従って
2022-10-25 09:39:34振る舞おうと提案していると見なすことができる。しかし相手が不快になるかどうかは基本的に行為する側の意志でどうこうできるものではないこともあり、結局このコミットメントに従うと今後どういう振る舞いをすることになるのかは、いまいち見えてこない。
2022-10-25 09:39:34Grice, Paul が提唱した会話的推意によれば、もしもっと具体的なことを伝えられるならひとは曖昧な物言いをしないはずで、逆に言うと曖昧な物言いをしているならば、「これより具体的なことはわかりません」と暗に伝えることになる。〈はっきりそう言っているわけではないが話し手が合理的に判断して
2022-10-25 09:48:25会話をしているとすればそのように間接的に伝えていることになる〉という現象が、会話的推意だ。 「ご不快な思いを・・・」と述べた時点で、「具体的にどういった行為を避けたらいいのかははっきりしませんが」という会話的推意が生じてしまうことになりそうだ。
2022-10-25 09:48:25これではもう約束事をしながら「どうしたらこの約束が守れるのかはわかりません」と伝えているようなもので、これが不誠実だという印象の源なのではないだろうか。 はっきりと謝罪をし、それによってそれを聞いた人々と約束事を作ったならば、他の人々に非難の権利を与えたことになる。
2022-10-25 09:54:06それは、自分自身の行動を他の人々によって評価されることを受け入れるということだ。後悔に基づく行動指針がどのようなものとなるべきかを、自分ではなく他人が決めることを受け入れる、ということだ。
2022-10-25 09:56:28謝罪は決して何かの終わりや決着ではない。謝って解決するのではない。むしろ、謝罪は新しい始まりなのだ。自分が後悔しているということをはっきりと相手とのあいだの約束事とし、その約束事に身を委ねて生きることを、謝罪は告げている。
2022-10-25 09:58:43(p.147) Sperber, Dan & Wilson, Deirdre らが述べる「コード・モデル」も「推論モデル」も、言葉は話し手から聞き手へと続く通路を開くようなものと想定されている。 言葉を発することによって、話し手は自分の考えを聞き手へと送り届けることができる、というのが共通の前提であるように思える。
2022-10-31 03:21:09言葉は、相手の領域へと通じる扉のようなものとしてイメージされている。 言葉をブラックホールとして経験している者にとっては、ときにはあえて聞き手に容易には理解できない言葉づかいにこだわることさえ必要となる。
2022-10-31 03:24:49「心の性別と体の性別」のような言葉は、わかりやすい反面、誤解や偏見をもたらす可能性が高い表現として、今では避けるトランスジェンダー当事者も多い。「伝わる」言葉を使ってそれと引き換えにその引力に引き込まれ、誤解を甘受するか、それともたとえ理解しにくくなったとしても
2022-10-31 03:34:24こちらの引力の圏内にある言葉を使うか、いつだってそのあいだでのバランス取りが要求される。 この感覚を、コミュニケーションの理論的なモデルに反映させるにはどうしたらいいのだろう? 「コミュニケーションの道具」という言語観には、この経験の居場所はなさそうだ。🧵
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