#朝の連続ツイート小説 #ともだちの魔法使い【2021年7月3日】 「ともだちが帰ってきたの。」 美羽はそういって、子猫のような笑みをこぼした。 「あらそう。だれが?」 菜月がそうたずねると、かえってきたのは、死者の名だった。 * 美羽は、今年中学に入ったばかり。ぱっちりした目、小顔。
2021-07-03 08:00:06きれいな肌をした女の子。 いつも短髪、私服は春先から秋口まで半袖半ズボン。少年のような格好がよく似合う。今日も、まだ5月だというのに、トリハダがたちそうな薄着で。 菜月は、体の線のでない長丈のワンピースに、薄手のカーディガン。かすかにそばかすの残る、地味な目鼻立ち。中学時代から
2021-07-03 08:00:08#朝の連続ツイート小説 #ともだちの魔法使い【2021年7月4日】 変わらない、アンダーリムの黒ぶち眼鏡をかけて、学習机の左脇に。 ふたりは、6つ年の離れた従姉妹。母方の。 「……それ、どういう意味?」 菜月がききかえすと、美羽は、がたがたと貧乏ゆすりを続けながら、 「だから、帰ってきた
2021-07-04 08:00:12の。」 といった。 「だって……、」 美羽が口にした名は、莉子。羽島莉子。 たしか2年前、嵐の日に亡くなった、美羽の同級生だ。当時、新聞にも載った。地元では大きな騒ぎになったので、菜月もよく覚えている。 「帰ってきたって、どういうこと?」 「生きてたの。このあいだ、学校の裏山で
2021-07-04 08:00:13#朝の連続ツイート小説 #ともだちの魔法使い【2021年7月5日】 。」 「へえ……、」 菜月はこめかみをとんとんと叩いて、眉をしかめた。 どう受け取ったものか。たぶん、裏山というのは、中学校の敷地内にある、観察学習用の池となにかの石碑がある、小さな丘のことだろう。 「……どうして、あん
2021-07-05 08:00:35た裏山にいたの?」 「えー、いいじゃんそれは。」 わざとらしく目をそらして、唇をせわしなく動かして。 「ま、いいけど。」 美羽がたびたび授業を抜け出して外に出てしまうということは、菜月も聞いている。 「それじゃ、次、いこうか。」 「休憩! 休憩きゅうけいきゅうーけい」 美羽はがた
2021-07-05 12:14:36#朝の連続ツイート小説 #ともだちの魔法使い【2021年7月5日】 がたと椅子をゆらして、抵抗した。さっきからしきりに足を揺すっているところを見るに、もう限界らしい。 「しゃあないな、じゃ──」 5分だけ、と言おうとした瞬間、 大きな音をたてて、美羽が、椅子ごと床にひっくりかえった。
2021-07-06 08:00:10* 最近はあまり会っていなかったが、数年前までは、美羽とはよく遊んでいた。菜月の妹や、今はもう東京にいってしまった年の近い叔母などと一緒に。バスで1時間も揺られて街へいったり、菜月の家の前にある川ではしゃいだり。 美羽は最年少で、そのころはまだ小学生だった。菜月たちにちょこま
2021-07-06 08:00:13#朝の連続ツイート小説 #ともだちの魔法使い【2021年7月7日】 かとついて歩く、かわいい妹分といったところだ。 家庭教師をたのまれたのは、ちょうど一週間まえ。大学にはいって最初のゴールデンウィーク、アルバイトもしていない娘がよほど暇そうに見えたのか、親どうしで勝手に話をまとめてきた。
2021-07-07 08:00:10知らぬ仲でもなし、小遣い稼ぎにちょうどいい。そう思って引き受けたのだが、なかなか難儀だ。 ただでさえ、苦労が多いというのに。 「──だってさァ、」 菜月が語りかける相手は、ぬいぐるみの、ダース。かわいい、あらいぐま。 昔からのともだち。 「やんなっちゃうなァ。あたしだって頑張っ
2021-07-07 08:00:12#朝の連続ツイート小説 #ともだちの魔法使い【2021年7月8日】 てんのに。そりゃ、社会学の教科書は買い忘れたし、ドイツ語と間違えて概論の課題やってったりしたけどさぁ」 中一のときからずうっと使っているベッドの上で、ダースを膝にのせて。まわりには、ぬいぐるみがいくつも並んでいる。その中
2021-07-08 08:00:09でも、ダースは特別。 「ゆうてもまだ一年じゃん? 仕方ないと思わない? 色々さァ」 こうして愚痴をこぼすのは、毎晩の儀式のようなもの。 もちろん、返事はない。 「クラスの奴らはさ、なんつーかキラキラしてんだけど。てか、なんでみんな、ああな訳? 勉強漬けだったんじゃないの? 一年く
2021-07-08 08:00:11#朝の連続ツイート小説 #ともだちの魔法使い【2021年7月9日】 らいは、さ。キラキラしてる暇あったのかって」 一度、話しはじめると止まらない。いつもこうして、一時間ばかり。 くるんと、丸い目をした人形に。 * 念のため、羽島莉子のことを家族にきいてみたが、2年前の事故以降のことは
2021-07-09 08:00:13誰も知らなかった。 * 「……ねー、センセ」 2週目。課題をはじめて10秒もたたないうちに、美羽はシャープペンシルをぐるぐると回して、口を開いた。 「あの、アレがねえ」 「んー?」 菜月はのんびりした声でこたえた。いまさら、急かしたところで仕方ない。先週にくらべれば、いちおう椅子
2021-07-09 08:00:15#朝の連続ツイート小説 #ともだちの魔法使い【2021年7月10日】 に座っているだけでも偉いものだ。 「あれ、あのね、莉子がねえ」 「ああ、……」 菜月は眉をしかめて、こめかみを叩いた。 「莉子にねえ、ナツちゃんの話もしてサ。ねえナツちゃん、莉子に会ったことあったっけ? ないよね。あのね、
2021-07-10 08:00:22莉子はね、すっごい歌がうまくてさあ。たぶんピアノとかできると思うんだよね。聞いたことないけど。だからさ、……」 立て板に水。こうなると、とまらない。仮にも先生あつかいされていたものが、ナツちゃん、に戻っている。 きれいな目を、まん丸にして。 「……それで、」 菜月は、こみかみを
2021-07-10 08:00:24#朝の連続ツイート小説 #ともだちの魔法使い【2021年7月11日】 叩いて、 「莉子ちゃんは、どうして戻ってきたの?」 「しいらない。」 どうでもよさそうに足をばたつかせて、首をふる。 「ふうん……」 菜月はしばらく思案して、それから、 「……ねえ、お願いがあるんだけど。」 「なあに?」
2021-07-11 08:00:19ぱちぱちぱちぱち、と気ぜわしくまぶたを動かして、美羽はこちらを見上げてくる。短髪のよくにあう、少年のような顔で。 「わたしも、莉子ちゃんに会ってみたいな。だめ?」 「えーっ」 とつぜんの大声に、見透かされたかと菜月はふるえたが、次の瞬間には、 「ほんとう? やったぁ!」 高い声を
2021-07-11 08:00:21#朝の連続ツイート小説 #ともだちの魔法使い【2021年7月12日】 あげて、手をたたく。 「いいの?」 「いいよ! 今度きいてみるね!」 取越苦労ならば、よいのだが。 菜月は、にっこりと笑ってみせながら、口のなかでそっとため息をついた。 * 「やっぱり、二人だと寂しくって。ねえ?」 上
2021-07-12 08:00:47機嫌にご飯をよそいながら、よりこさんはいった。 よりこさんは、菜月の母方の叔母にあたる。すらりと、細い手足をかくすように、白いマキシスカートと紺の長袖に身をつつんで。背はみあげるほど高く、ちいさなイヤリングが耳元に。 二重まぶたの、ちょっと年より老けてみえる美人。 今日は、美
2021-07-12 08:00:48#朝の連続ツイート小説 #ともだちの魔法使い【2021年7月13日】 羽の父親が残業だとかで、なかば強引に夕食に誘われてしまった。美羽の兄も、塾で遅くなるらしい。まだ高校一年生だというのに。 高橋の本家。ひろい屋敷に、いま、住んでいるのは彼らだけ。ほんの10年前は、年寄りがもう3人いて、
2021-07-13 08:00:12にぎやかだったのだが。 「菜月ちゃんは、偉いよねえ。」 ひじきの煮物に、肉じゃがに、焼いたほっけ。それから、お味噌汁。 大きなダイニングの、きれいな、白いテーブルクロスのうえに、ずらりと。 「──大に、一発で受かるなんて。姉さんも鼻が高いでしょう。」 「そう、……でしょうか。」
2021-07-13 08:00:14#朝の連続ツイート小説 #ともだちの魔法使い【2021年7月14日】 母が、菜月の受験についてどうこう言うのを聞いたことがない。合格発表の日に、少し夕食が豪華になったくらいか。 「ウチは、お兄ちゃんも普通だし。……ねえ。」 美羽は食卓についているのに、さっきから一言も喋らない。食も進んで
2021-07-14 08:00:10いないようだ。 かたかたかた、と椅子がゆれる音がする。 「美羽、……足。」 ぴしりと、やわらかい紐で叩くような声で、よりこさん。 部屋のなかが、じんわりと冷えた。 * 「……でさあ。」 昼下がり。 菜月の家から、町境をふたつ越えた街、さほど広くもない市に3軒ある、チェーンの
2021-07-14 08:00:11#朝の連続ツイート小説 #ともだちの魔法使い【2021年7月15日】 喫茶店。 入り口からちょっと離れた禁煙席、菜月と、同年輩のふたりの女が、テーブルをかこんでいる。 高校時代の、同級生たちである。 「その授業がさぁ、すーげえつまんないの! ずっと教科書読み上げてるだけでさあ。あ、その教
2021-07-15 08:00:10科書っていうのがさ、せんせいが書いた本なんだけど。でもでも、これまたすっごく退屈で。」 かん高い声── それだけ喋ってから、菜月は、すこしだけ顔を赤くして、ミルクをたっぷり入れたアイスコーヒーのコップを、ぐいとかたむけた。 つめたい氷が、唇を冷やす。それからまた、喋りだす。 「
2021-07-15 08:00:11#朝の連続ツイート小説 #ともだちの魔法使い【2021年7月16日】 でもさ、そのせんせいの声がまた、──」 「……いいねぇ、菜月」 むかいがわに座る、長髪を後ろでまとめた、二重まぶたの女が、目を細める。 彼女の前にあるのは、熱いブラックコーヒー。きれいに爪をきりそろえた、長い指で、くる
2021-07-16 08:00:20んとカップの持ち手をくるむ。 「楽しいんでしょ。大学」 「……あー、まあね」 菜月は、一瞬だけ、気まずそうに目をそらす。が、すぐ、 「でもでも、大学遠いからさあ、朝なんか、電車で寝ちゃってさ、この前なんか隣のオジサンにさ、寄りかかっちゃって。おまけに乗り過ごして、気まずいったらない
2021-07-16 08:00:22#朝の連続ツイート小説 #ともだちの魔法使い【2021年7月17日】 の! りっこもさァ、電車でしょ? 地下鉄だからすぐかもしれないけど、やっぱり寝ないようにさァ、──」 「ねー、このあとさ!」 もうひとりの、茶髪を2つ分けにした、そばかす顔に丸眼鏡の女が、ちょっと大きな声をあげる。 「カ
2021-07-17 08:00:14ラオケ行こうよ! ボイスアンドジョイ! いいでしょ」 「賛成」 指の長い女が、しずかにブラックコーヒーを口から離してうなずく。 「……えー、」 菜月は不満げに眉を寄せたが、ふたりの目線をうけて、ちょっと天を仰いで頷いた。 「じゃ、決まりね。それじゃ、このあとで。」 「うん、決まり。
2021-07-17 08:00:15#朝の連続ツイート小説 #ともだちの魔法使い【2021年7月18日】 」 そのとき、 「……おまたせいたしました。──」 かたんと、ウェイトレスが盆からケーキの皿をおいた。花びらの形をあしらった、季節限定の丸いレアチーズケーキ。桜色の。 「わぁい」 丸眼鏡の女が、スマートフォンをとりだし
2021-07-18 08:00:09て、ぱしゃりと音をたてる。 「アキ、それまだやってんの?」 菜月が、きょとんと丸眼鏡の女──アキの手元に目をむけて、つぶやく。 「みんなやってるよ。菜月くらいでしょ、やらないの。」 「そおなの?」 二重まぶたの女──りっこの目をみて、ぱちぱち、と意外そうにまばたき。 「ふーん……」
2021-07-18 08:00:10#朝の連続ツイート小説 #ともだちの魔法使い【2021年7月19日】 「アプリ入れなよ、登録しとくからさ」 「あとで。気が向いたらね!」 うるさいとばかりに首を振って、また口を開く。 「あのね、さっきのウェイトレスさん見た? あのさ肩のとこにさ、ちょっと糸くずみたいなのが付いてたのね。それ
2021-07-19 08:00:25見て思い出したんだけど、先週くらいにさ、うちの妹のお腹にさ、あ、先週っていえば──」 * さて── 裏山、といっても、たいして高くもない、ただの丘である。 校舎の裏から、遊歩道のようなみちが続いていて、しばらく歩くと、なにやら漢字ばかりが掘られた石碑のある頂上へつく。 ゆっ
2021-07-19 08:00:26#朝の連続ツイート小説 #ともだちの魔法使い【2021年7月20日】 たりめのジーンズにロゴ入りのシャツ、長袖のカーディガンを羽織った菜月が、そこに立っていた。 来るのは、4年ぶりか。裏門から、こっそり。監視カメラでもあったら、今頃見咎められているかもしれない。こんな田舎の古い校舎に、ない
2021-07-20 08:00:14とは思うが。 石碑に背を向けると、ふたつ並んだ校舎が一望できる。そのむこうにはグラウンドがあるはずだ。右と左に目を向けると、それぞれ、川に沿って這うような古い住宅街。山あいの、古いまちだ。 「莉子ーっ!」 となりに立っていた美羽が、ぱたぱたと走って木のあいだに入っていく。 ふ
2021-07-20 08:00:15#朝の連続ツイート小説 #ともだちの魔法使い【2021年7月21日】 と、物音が聞こえなくなる。 菜月はぞっと背筋に虫が這うような感覚をおぼえて、ふりむいた。風が消えていた。ざわめいていた木の葉は空中でとまり、砂埃も微動だにしていない。 ぱちぱちと瞬きをしてみる。何も変わらない。いや、
2021-07-21 08:00:08少し、暗くなったような気がする。 空を見上げるが、雲は出ていない。だというのに、太陽はうす暗く影がさして、地面はまるで黒く墨を塗ったよう。 (日蝕……!?) とっさにそんな言葉が浮かぶ。まさか。 かすかに、頭痛。 「なつきさん、ですか」 若い女の声。いつのまにかうつむいていた
2021-07-21 08:00:09#朝の連続ツイート小説 #ともだちの魔法使い【2021年7月22日】 顔をあげると、少女。 顔のない。 菜月は、膝が落ちそうになるのをこらえた。かろうじて。 「美羽の、いとこのお姉さん、ですよね?」 色のない声。 ぼんやりと、黒いもやに包まれたような──、いや、黒、というのも違う。と
2021-07-22 08:00:04にかく、見えないのだ。顔が。 「あなたは……、」 しぼりだす。 脂汗にまみれた声を。 「羽島莉子です。はじめまして。ところで──、」 耳をふさごうと思う。手が動かない。 「もう、ききましたか。わたしが──、」 魔女になった、ということは。 * 気がつくと、菜月は斜面の下に、あ
2021-07-22 08:00:05#朝の連続ツイート小説 #ともだちの魔法使い【2021年7月23日】 おむけに倒れていた。心配げな美羽の顔が、すぐ目の前に。全身が草まみれで、痛い。頭がずきずきと痛む。 半身をおこして、体の感覚をたしかめる。けがはなさそうだ。ずれてしまった眼鏡を外して、かけなおす。フレームが歪んでいなけ
2021-07-23 08:00:05ればいいが。 いや、それよりも。 「……美羽、あなた、」 夢であってくれ。 何度も、口のなかでそうつぶやきながら、菜月は尋ねた。 「知ってる? 魔女がどうとか……、」 美羽は、ぱちぱちと目をしばたかせてから、こともなげに頷いた。 「ああ、」 あっけらかんとして、にこっと笑いさえ
2021-07-23 08:00:07#朝の連続ツイート小説 #ともだちの魔法使い【2021年7月24日】 しながら。 「莉子、魔女になったみたい。ナツちゃんも聞いたの?」 * 帰宅すると、なぜか、ダースが庭に落ちていた。 2階にある菜月の部屋、その窓のちょうど真下あたり。そばにある軽自動車のボンネットから転げ落ちたような姿
2021-07-24 08:00:04勢で、門のきわに転がって。 土まみれ。 落ちていたところは、セメント敷きの駐車スペースだ。落下しただけで、そんなに土が付くはずがない。 見上げる。窓が少し開いている。もちろん、開けた覚えはない。それに、窓の逆側の壁ぎわに、ベッドはあったはず。風が吹こうが地震があろうが、あそこ
2021-07-24 08:00:05#朝の連続ツイート小説 #ともだちの魔法使い【2021年7月25日】 から庭に落ちることはない。 誰かが、落としたのだ。 吹き上げるような怒りが、脳天をつきぬけていった。 ダースを抱き上げて、足音も高らかに玄関へと駆けてゆく。 結局、犯人はわからなかった。 ダースは、次の日に母親が
2021-07-25 08:00:05洗濯してくれた。 * 一限目の終わり── 「……え、」 すっと、その男が差し出してきたチラシを見て、菜月は小さく瞬きをした。 男の名前は覚えていない。必修の授業に、いつもいるような気もする。何回か、教科書を忘れて見せてもらったこともある。 チラシには、『みちあるき同好会』と
2021-07-25 08:00:06#朝の連続ツイート小説 #ともだちの魔法使い【2021年7月26日】 表題がふってあった。その下に、『街のいろんな「変なもの」を、一緒に探してみませんか?』と。 ここらあたりの地図と、数枚の写真が掲載されている。どうやら、サークルの勧誘らしい。 「……正式なサークルではないんだけど。毎週、
2021-07-26 08:00:36学生会館の談話室で例会だから、よかったら、一度、見に来て。」 少し、緊張したような早口で。 「……ありがとう。」 菜月はそれだけ言って、チラシを受け取った。 心臓が、やけに速く鳴っていた。 * そして、ふたたび、夜── 「……ねえ、ダース」 ぼんやりと焦点のあわない目で、ぬい
2021-07-26 08:00:37#朝の連続ツイート小説 #ともだちの魔法使い【2021年7月27日】 ぐるみを軽く持ち上げて、菜月はぶつぶつと呟いた。 「あれさあ、ちょっとおもしろいと思わない? あのさあ、あの、みちあるき同好会? だっけ。なんかそういうの。でもさあ、行ってみて合わなかったらちょっとヤダっていうか、男の子
2021-07-27 08:00:13ばっかりだったりしたらさ、困るよね。活動は面白くてもさ、そういうのってちょっと困るっていうか──」 そこまで一息に喋って、ふっと黙りこむ。 ころんと、力が抜けたようにベッドに横になって、ダースを抱きしめたまま、 「……ねえ。魔女って、なんだか知ってる?」 むろん、答えはない。
2021-07-27 08:00:14