でもみなさんは、同じ経験をしたばかりの先輩として、来年の新入生たちの助けになることができます。どうですか?できると思いますか?」それが介入実験のあらましです。1年生たちはアンケート調査の先輩たちのコメントを読み、自分でもエッセイを書いて、来年の新入生たちへメッセージを送りました。
2016-03-23 19:47:01この介入を最初に行った時、ウォルトンはアフリカ系アメリカ人の学生たちのその後のようすに注目しました。というのも、アイビーリーグの名門大学で、「自分だけが浮いている」と感じていちばん悩んでいるのは、アフリカ系アメリカ人の学生たちだったからです。
2016-03-23 19:50:33結果は驚くべきものでした。無作為に選ばれて、たった一度の介入実験に参加したアフリカ系アメリカ人の学生たちは、たまたま介入実験に参加しなかった学生たちにくらべて、その後の3年間の成績も、健康状態もよく、幸福感も大きかったのです。
2016-03-23 19:53:27卒業時には、実験に参加したアフリカ系アメリカ人の学生たちの成績平均点(GPA)スコアは、実験に参加しなかったアフリカ系アメリカ人の学生たちのスコアにくらべて、はるかに高くなっていました。
2016-03-23 19:56:05あとは、追跡調査で参加者たちの経過を観察し、新しい考え方が定着したかどうかを調べるのです。 ウォルトンは大学1年生を対象に行った介入で次のようなシンプルなメッセージを伝えました。
2016-03-23 19:03:44ウォルトンはこのような結果につながった要因を考え、介入実験がもたらした2つの変化に気づきました。ひとつは、学生たちが学業上の問題や社交の問題に向き合う態度が変わったことです。学生たちは、そのような問題は短期的なもので、誰もが大学生活で経験することだと考えられるようになりました。
2016-03-23 20:03:28もうひとつは、介入によって学生たちの人付き合いに変化が起きたことでした。マインドセット介入に参加した学生たちの多くは、メンターを見つけたり、親しい友だちを作ったりしました。 【心理学的に始まったプロセスが、だんだん社会学的なものになっていく】のです。
2016-03-23 20:07:15このようなマインドセット介入でもっとも注目すべきことは、人々が介入実験に参加したことを忘れてしまうことでしょう。卒業時に最後の追跡調査が行われました。1年生の時に介入実験に参加したことを覚えているかどうか、ウォルトンは学生たちにたずねました。
2016-03-23 20:10:57すると、79%の学生たちは何らかの実験に参加した覚えがあると答えましたが、どんな実験だったか覚えていた学生は、たったの8%でした。しかし学生たちはいつのまにか、介入実験で出会った新しいマインドセットを、自分自身や大学生活についての考え方の中に取り入れ、身につけていました。
2016-03-23 20:16:26介入のことは忘れてしまっても、そこから学んだメッセージはちゃんと定着していたのです。それこそが、マインドセットの科学の素晴らしいところだと思います。考え方が定着してしまえば、あとはがんばらなくてもいいのです。
2016-03-23 20:18:38意識的になにかを実行したり、毎日心の中で、ああでもないこうでもない、と悩んだりする必要もありません。新しいマインドセットに出会うと、それが自然と定着して、自分のものになっていくのです。
2016-03-23 20:21:03マインドセット介入は、奇跡や魔法などではありません。「触媒」のようなものだと思えばよいでしょう。マインドセットが変わると、ポジティブな変化が起こり始め、それがずっと続くのです。
2016-03-23 20:23:17たった一度の短期間の介入で、しかもひとつの新しい「考え方」を紹介するだけの実験で、人生が変わるなどと言われても、多くの人はバカバカしいと思ってしまいます。 ディヴィット・イェーガーは、ハイスクールの9年生たちに「成長思考」を教えようと考えました。
2016-03-23 20:28:15﹅将来のあなたは、いまのあなたと同じようになるとはかぎらない。 ﹅あなたがいま、人からどんなふうに扱われていようと、どんな人間だと思われていようと、あなたが実際にそのとおりの人間であるとは限らないし、将来そうなると決まっているわけでもない。
2016-03-23 20:34:32﹅人間の性格は、だんだんよいほうに変わることができる。 次に生徒たちは、上級生たちが「人間は変われるんだ」と実感した経験を一人称でつづった文章を読みました。最後に生徒たちは、「人間は変われるんだ」と思った出来事について、書いてみるように言われました。
2016-03-23 20:38:17イェーガーがこの30分間の介入を行ったのは学年の始まりの時期で、学年が終わるころには、介入実験に参加した生徒たちは、生活のさまざまな問題に対して以前よりも楽観的になり、絶望しないようになりました。
2016-03-23 20:41:52無作為の振り分けによって介入実験に参加しなかった生徒たちに比べて、健康問題も少なく、うつ状態になる割合も低かったのです。介入実験に参加した生徒の81%が9年生の幾何の単位を取得できたのに対し、対照群では58%の生徒しか取得できませんでした。
2016-03-23 20:45:40介入の効果によって成績がもっとも向上したのは、介入によってマインドセットが最も大きく変化した生徒たちでした。これらの生徒たちの場合、学年のはじめのGPAスコア平均値は1.6(Cマイナス)でしたが、学年末には2.6(Bマイナス)まで上がっていたのです。
2016-03-23 20:49:21ところがイェーガーによると、このような成果を学校に見せても状況は変わらないことが多いというのです。たった30分の介入で人生が変わるなんて、多くの人にとっては信じがたいのです。
2016-03-23 20:51:31マインドセット介入の問題はそこです。話がうますぎて信じがたいと思ってしまう人が多いのです。介入は、私たちの中に深く根差している「変化のプロセス」についての信念と矛盾します。私たちは「重要な問題はいずれも根深く、なかなか変えることができない」と思い込んでいます。
2016-03-23 20:54:27マインドセットの小さな転換は次々に変化を引き起こし、やがては大きな変化となって、「まさか」と思うようなことまで可能にしてしまうということです。
2016-03-23 20:56:09私たちは人生をすっかり変えなければ、幸せになれない、健康になれない、あれもこれもできない、と決めつけてしまいがちです。 しかし、マインドセットの科学が示しているのは、逆の方法です。 まず自分の考え方を変えれば、望んでいるような変化が次々に起こり始めるのです。
2016-03-23 20:59:15