2020年11月に開催された #novelber のついのべ連載です。 #私と悪霊の日々(Day1~10) #由美さん(Day11~20) #怠惰な女(Day21~30)
0

私と悪霊の日々

いぐあな・創作アカ @sou_igu

門を潜ったときから何かいるのは感じた #novelber 「ただいま~」靴を脱ぐとメイク落としが空を滑ってくる。顔を洗えばちゃぶ台にほかほかの夕食。食べている間にスーツと鞄が手入れされ、お風呂にお湯が。曰く付きの家だと聞いてはいたが住んで半年、すっかり怠惰な女に成り下がった「おのれ…悪霊」

2020-11-01 14:30:19
いぐあな・創作アカ @sou_igu

「彼女は甘い吐息を…」今夜もラブロマンスのページを繰る手が止まらない #novelber ギシッ!当然の金縛り。目の前を漂うのは0時を過ぎた時計。明日の日付に早出と書かれたスケジュール帳も飛んでくる。ギシ…「解った!寝ます!」宙に浮かぶ歯ブラシを受け取る「良いところだったのに…おのれ…悪霊」

2020-11-02 11:23:23
いぐあな・創作アカ @sou_igu

古い家で庭が広く、この季節は掃除が大変だ。二人(?)で掃いた落葉の山に「落葉焚きしょうか」 #novelber パチパチと燃える落葉に空を滑ってアルミホイルに包まれたさつまいもが飛び込む。更にお盆にサイコロに切ったバターとクリームチーズが。これ絶対太るけど絶対美味しいやつ!「おのれ…悪霊」

2020-11-03 12:09:46
いぐあな・創作アカ @sou_igu

家には曰く付きの物もある。棚のオモチャの木琴。ペタペタと貼られているのはお札…ではなくシール。それも母世代の魔女っ子だ「もしかして悪霊っておば…」 #novelber コツン!空に浮かぶおたま。いつにない怒りの気配。ひゅん!しゃもじも飛んでくる。コンペチコンペチ「お…おの…ごめんなさい!」

2020-11-04 11:59:19
いぐあな・創作アカ @sou_igu

秋の長夜は、ちょっと気取ってチェスの対戦サイト「う~ん…難しい…」勝ちが全く見えない盤にふわりとマウスが動く #novelber カチカチ…カチカチ…。画面の盤が次々と攻略されていく。完全に『見てるだけ』になった私。空を飛んできたココアを立て膝に乗せて啜りながら「…おの…おのれ…悪霊…」

2020-11-05 12:31:17
いぐあな・創作アカ @sou_igu

休日の午後の部屋に服が散らばっている。浮かんできた服を着ると気配が添ってスマホでパシャリ #novelber 「最近おしゃれになったね」そうコーディネートは抜群なのだ。しかし、スマホのアルバムの中は…双子コーデらしいけど私の隣には黒い女性っぽい影「消すと夜中に泣かれるし…おのれ…悪霊…」

2020-11-06 12:05:31
いぐあな・創作アカ @sou_igu

秋は夕暮れが早い。帰り支度をするロッカー室の窓はもう真っ暗だ。ぶるぶる。スマホが鳴る。着信のバイブに耳に当てると #novelber 「…お…お…お…」地を這うような呻き声。悲鳴を上げて放り投げる「…おじょうゆ…がえりに…がっでぎで…」「…だから買い物メモに書き忘れるなと…おのれ、悪霊!」

2020-11-07 12:21:19
いぐあな・創作アカ @sou_igu

「貴方」『幸運のネックレス』怪しいアクセサリーを並べた辻占い師に呼び止められる「貴方、死相が出てるわ」 #novelber 家に帰るといつもの化粧落しが飛んでこない。気配の無い台所にはラップを掛けられた晩御飯「悪霊?」ふと占い師の言葉が甦る「その家を出なさい、でないと貴方は近いうちに…」

2020-11-08 12:47:16
いぐあな・創作アカ @sou_igu

今日も悪霊はいない。縁側で夜空を見上げる。自分では悪霊、悪霊言ってたのに占い師に言われたらムカついたのを思い出す #novelber ポツンと秋の一つ星「いきなり一人は寂しいよ」ふわり、毛布が飛んでくる。ホットミルクのカップも。心配げな気配に小さく笑う「…でも悪霊、気配小さくなってない?」

2020-11-09 12:13:19
いぐあな・創作アカ @sou_igu

例の曰く付きの品々から、花柄のカバーの日記をそっと持ち出す。占い師のことは信じてないけど悪霊はどうして霊になったのだろう?「貴女は何処の誰かさん?」 #novelber うろついていた霊が夕刻の鐘と共に去る。張り巡らされた霊気を揺るがさないようそれはそっと滲み出た。きしり…床が微かに鳴った

2020-11-10 12:03:47

由美さん

いぐあな・創作アカ @sou_igu

昼休みの席で日記の栞のページを開く。悪霊は『由美さん』という名前だったらしい。この家で一人暮しを始めた半年後、彼女は天井がきしむ音で目が覚めた「え…死んでいる」茶の間に置いた鉢で祭りですくった金魚が白い腹をみせて浮いていた #novelber きしきしとそれは這う。下に降りる階段へと向かう

2020-11-11 12:10:08
いぐあな・創作アカ @sou_igu

今朝はかたんと階段を降りるような音で目が覚めた。出勤途中、何故か重い頭に自販機でコーヒーを買う「迷い猫?」電柱に手書きのポスター。近所の人懐こいふわふわの白い猫が迷子らしい「見つかりますように」由美は缶を手に祈った #novelber ずるり、床から滑り落ちる。かたん、一段目の板が鳴った。

2020-11-12 12:19:14
いぐあな・創作アカ @sou_igu

あの音がするようになってから、家の中に居ると陰鬱として頭痛がしてくる。庭で大きく深呼吸した由美はふと楓の木を見た。赤く染まった落葉が重なる根元、白い尻尾が樹洞から出てる「大変!」ぐったりとした迷い猫を抱えて由美は動物病院に走った #novelber 段を滑り降りる。かたん、二段目が鳴った

2020-11-13 12:23:04
いぐあな・創作アカ @sou_igu

迷い猫はかなり衰弱してたが無事だった。しかし…どうやら自分があの猫を虐待したことになっているらしく近所の目が冷たい。カサリ、猫がいた楓から枯葉が落ちる。季節のうつろいにしては早すぎる茶色の葉。あの音がするようになってからおかしなことばかり起こる #novelber かたん、三段目が鳴った

2020-11-14 12:27:59
いぐあな・創作アカ @sou_igu

休日の昼下がり、どこからか切れ切れに音楽が聞こえる「…上?」この家の二階は物置になっている。北の廊下の突き当たりから右手の板戸を開け、八段、段を上がると引っ越しのダンボールの中、オルゴールが曲を奏でていた「なんだ。出すの忘れてた」 #novelber 行く先の扉が開いた。四段目の段が鳴る

2020-11-15 12:29:32
いぐあな・創作アカ @sou_igu

「由美さん…大丈夫?」ここ数日の由美の運のなさ、トラブルは厳しいお局様でも心配の声を掛けるほどだった。残業で疲れた顔を上げ無月の空を見上げる「そこの貴女」街灯下『火星産ネックレス』を売っている怪しい占い師が声を掛ける「今すぐ、その家から出なさい」 #novelber かたん、五段目が鳴った

2020-11-16 12:16:04
いぐあな・創作アカ @sou_igu

家に帰り、灯りを着ける。以前より暗く、隅に闇が滞っている気がする。これは錯覚では無かったのか?『その家には悪霊が憑いている。それが貴女を目指して降りてきている』占い師の言葉にすぐに引っ越しは無理だが、とにかく週末、実家に帰ろうと由美は決心した #novelber かたん、六段目が鳴った

2020-11-17 12:13:05
いぐあな・創作アカ @sou_igu

由美が迷い猫の近所トラブルで引っ越ししたいというと不動産屋は次の物件を探してくれると請け負ってくれた。金曜日の夜の夜行バスのチケットも買ったし、土日以降の有給も取れた。微睡みの中、ゆっくりと階段を降りる黒い影が見える。細く開いた扉がその前に… #novelber かたん、七段目が鳴った

2020-11-18 12:12:20
いぐあな・創作アカ @sou_igu

明日は会社から帰ったら、すぐ出掛けられるようにと荷物を玄関に置く。この家での最後の夜。酔ってぐっすり寝てしまおうとカクテル缶を開け、洗面台に向かう。歯ブラシを持ったとき、かたん…きい…奥で音がした。鏡の向こう自分の後ろに黒い影『…捕まえた…』黒い腕が由美の首を… #novelber

2020-11-19 12:20:50
いぐあな・創作アカ @sou_igu

今の女はズボラらしい。閉め忘れた扉が見える。また女が喰える。歓喜に震え向かうとバタン!扉が閉じた。扉越しに二十年前とり殺した女の霊の気配 #novelber 由美さんはあの後…重い気持ちで家に帰る「あら、貴女」今日は『地球産ネックレス』を売っている占い師に呼び止められる「死相が消えてるわ」

2020-11-20 12:26:55

怠惰な女

いぐあな・創作アカ @sou_igu

帰り道、どうしてもと頼まれ、あの家を借りた不動産屋に寄る。げっそりした社長の話では夢で女の幽霊が私を引っ越しさせろと責め立てるという「この連休に是非、引っ越しを…」 #novelber 家に帰ると玄関が閉じている。庭の物置小屋には荷造りの終えた荷物が「由美さん!」私は開かないドアを叩いた

2020-11-21 12:31:32
いぐあな・創作アカ @sou_igu

「ただいま~」ドアを閉め灯りをつける。新しい部屋は若い単身者用ワンルームマンションだった。職場にも近く家賃のわりに良い部屋だ #novelber 由美さんの温かいご飯の毎日が遥かな日々に思える。霊だけど彼女は私の気の合う同居人だったんだ「…おのれ、悪霊…絶対由美さんを取り返してやる…!」

2020-11-22 12:21:38
いぐあな・創作アカ @sou_igu

「無茶言うわね…」私の死相を見抜いた占い師に由美さんを助ける方法を占って貰う「相手は人をとり殺したこともある悪霊。生半可な正義感や同情心では指のささくれほどのダメージも受けないわ」なら、と助ける理由を話す #novelber 「…面白いわね。そうよ、生きている人間の欲望が一番強いのよ」

2020-11-23 12:30:30
いぐあな・創作アカ @sou_igu

『その意気込みだけでは、ちょっと苦しいかも…』占い師に言われて私は「スゴーイ、本当に幸運が訪れたわぁ」額縁の絵やミュージシャンがいる街角で彼女のサクラをやらされていた。こちらを見る人に「試しに触ってみて下さい」彼女が『金星産ネックレス』を差し出す #novelber 「鰯の頭も信心からよ」

2020-11-24 12:21:55
0
まとめたひと
いぐあな・創作アカ @sou_igu

創作専用のつぶやきです。主に一次で活動中。漫画の感想や本の感想、サイトの作品やイベントの宣伝について等、呟いてます。 メッセージはこちら→ https://t.co/qC11vhLtEh

コメント