さんごが語るエオルゼアにあったかもしれないお話。
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さんご🐟さん @_sango_sun

「昔ね、ヤンサであったおはなしだよ。 昔は今ほど、生活ができなくてね。うん、そう、属州のときよりも。もっとこの地が荒れ果ててたころだから。 作物もろくに実らなくてね。子供も泣く泣く山に置いて行ったり。家族全員、食べていけるような、そんな生活は夢のまた夢だったんだよ。

2019-09-11 20:27:56
さんご🐟さん @_sango_sun

あるとき、そんな荒れ果てた村に、一人の旅人がやってきたの。大きな荷物に、からから車を引いて。商人だったみたいで、大きな街に立ち寄る途中だったみたい。 でも、その村に差し掛かったところで、激しい嵐に足止めを食らっちゃってね。村人に、『一晩泊めていただけませんか』って聞いてね。

2019-09-11 20:27:58
さんご🐟さん @_sango_sun

村人は『雨を遮る屋根しかありませんが』って言って、家にあげたんだ。 商人は心から感謝して、お礼にと商品にするはずだった食料や肥料、種を村の人に少し分けてあげたんだ。 村の人からしたらびっくりだよね。突然空から金が降ってきた、それくらい喜んだよ。

2019-09-11 20:27:58
さんご🐟さん @_sango_sun

そして村はもらった肥料で土地を豊かにし、種で食物を育て、みんながおいしいものを食べれるようになったのでした。 めでたしめでたし。 …バレた?バレちゃうよね。

2019-09-11 20:27:58
さんご🐟さん @_sango_sun

そうだね、少ない肥料で、耕しても全く作物が実らなかった土地を豊かにすることなんてできないよね。 え?なんで村の土地は豊かになったかって? 実はね。その後の話があるんだ。商人は、村人の喜ぶ姿を見た後、旅の疲れからかすっかり寝ちゃってね。 それを見た村人の一人が、ぽつりと言ったんだ。

2019-09-11 20:27:59
さんご🐟さん @_sango_sun

『こいつの持ってるもの全てあればこの村は』 もらったのは少しばかしの食料と、肥料と種。少しの間は凌げるけれど、また苦しむ喘ぐ事には変わりない。 けれど、この商人から買うにはお金もない。 君ならどうする? 困って困って、でもどうしてもほしい。そういうときは。

2019-09-11 20:27:59
さんご🐟さん @_sango_sun

次の日。雨はすっかり上がったけれど、商人の姿はどこにもなかった。 村人たちは何もなかったかのように、けれどどこからか手に入れた肥料を手に、野畑を耕したよ。 そうして、村は食うに困らないほどに、子供が元気に村を駆け回るくらいには栄えることができたのでした。

2019-09-11 20:27:59
さんご🐟さん @_sango_sun

最後にちょっとだけ。 結局この村は、全員がお互いを殺すという怖い結末を迎えてるんだ。 なんでだろうね? なんでだと思う? ところで、君は、もし生まれた子供に突然こう言われたらどうする? 『ああ、私が殺された夜も、こんな夜だったな』」

2019-09-11 20:27:59

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