入院措置に関する方針について（厚労省の事務連絡と現行法令を踏まえて）

TAKASHIMA Hidehiro @TAKASHIMA724

皆さんご存じのように、8月2日に、政府は入院治療を重症者や重症化のおそれが強い人などに限るとする新たな方針を決めたと報道されています。 →　yomiuri.co.jp/politics/20210…

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そしてこの方針を踏まえ、厚生労働省は、都道府県に対して、「現下の感染拡大を踏まえた患者療養の考え方について（要請）（※８月５日追記）」という事務連絡を発しています。 この連絡の内容については以下を参照のこと。 →　mhlw.go.jp/content/000817…

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この事務連絡では、「入院治療は、重症患者や、中等症以下の患者の中で特に重症化リスクの高い者に重点化することも可能であること。その際、宿泊・自宅療養の患者等の症状悪化に備え、空床を確保すること。」等を挙げたうえ、入院対象を絞る方針と現行法令との関係につき以下のように述べています。

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すなわち本連絡においては「入院対象の考え方については、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律施行規則（平成10年厚生省令第99号）第23条の６の解釈の範囲内のものでありますが、省令上の位置づけについては、今後検討していくこととしています。 」との法令解釈が示されています。

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しかし、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」及び同法施行規則の条文に照らせば、上記の方針は導くことができません。むしろ今回の方針は、同法の価値判断に反しており、法解釈としても同方針が同法施行規則第23条の6の解釈の範囲内とはいえません。以下でその理由を示します。

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まず、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」19条1項では、「都道府県知事は、一類感染症のまん延を防止するため必要があると認めるときは、当該感染症の患者に対し…入院し、又はその保護者に対し当該患者を入院させるべきことを勧告することができる。」とされています。

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都道府県知事は、感染症のまん延を防止する必要があると認めるときには、患者に入院を勧告できるとの条文です。

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さらに同条1項は、同法26条2項により、新型コロナウイルス感染症の患者にも準用されています。

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ただし、同法26条2項によれば、新型コロナウイルス感染症の患者に対して入院を勧告する場合の対象は、全ての患者ではなく、「当該感染症の病状又は当該感染症にかかった場合の病状の程度が重篤化するおそれを勘案して厚生労働省令で定める者」などに限られています。

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「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」の条文はこちら 　→　elaws.e-gov.go.jp/document?lawid…

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そこで次に、厚生労働省令の該当箇所を見て、実際に入院勧告の対象になる者を確認しましょう。じつはこれが、先に挙げた事務連絡の「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律施行規則第23条の６」なのです。同規則の条文はこちら 　→　elaws.e-gov.go.jp/document?lawid…

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同規則23条の6の文言は次の通りです。 （入院の措置等の対象となる新型インフルエンザ等感染症の患者） 第二十三条の六　法第二十六条第二項において読み替えて準用する第十九条第一項に規定する厚生労働省令で定める者は、新型コロナウイルス感染症の患者であって、次に掲げるものとする。（続）

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(承前） 一　六十五歳以上の者 二　呼吸器疾患を有する者 三　前号に掲げる者のほか、腎臓疾患、心臓疾患、血管疾患、糖尿病、高血圧症、肥満その他の事由により臓器等の機能が低下しているおそれがあると認められる者 （続）

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（承前） 四　臓器の移植、免疫抑制剤、抗がん剤等の使用その他の事由により免疫の機能が低下しているおそれがあると認められる者 五　妊婦 六　現に当該感染症の症状を呈する者であって、当該症状が重度又は中等度であるもの （続）

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（承前） 七　前号に掲げる者のほか、当該感染症の症状等を総合的に勘案して医師が入院させる必要があると認める者 八　前各号に掲げる者のほか、都道府県知事が当該感染症のまん延を防止するため入院させる必要があると認める者 　（条文はここまで）

TAKASHIMA Hidehiro @TAKASHIMA724

この条文をどのように読んでも、「入院治療は、重症患者や、中等症以下の患者の中で特に重症化リスクの高い者に重点化することも可能である」との解釈は不可能です（「以下」という表現なので、中等症患者も含まれることに注意して下さい）。

TAKASHIMA Hidehiro @TAKASHIMA724

むしろ、同条6号に明確に示されているように、「現に当該感染症の症状を呈する者であって、当該症状が重度又は中等度であるもの」に対しては、入院勧告の対象になるのが原則ですが、先の解釈はこれと真っ向から対立します。

TAKASHIMA Hidehiro @TAKASHIMA724

同条6号にいう「中等度」と、今回の事務連絡にいう「中等症」は違う概念だとの反論も考えられますが、そうならばどこがどう違うかを事務連絡の中で明確にすべきです。

TAKASHIMA Hidehiro @TAKASHIMA724

また、同条6号では、65歳以上の者、呼吸器疾患を有する者、臓器等の機能が低下している恐れがあると認められる者、免疫の機能が低下している恐れがあると認められる者については、病状の程度にかかわらず、原則として入院勧告の対象になります。

TAKASHIMA Hidehiro @TAKASHIMA724

これらの者についても、「重症化リスクの高い者」に含まれるとの解釈は可能ですが、もしそうであるとすれば、当然、その旨を明記すべきです。

TAKASHIMA Hidehiro @TAKASHIMA724

したがって、同条を普通に読む限り、「中等症以下の患者の中で特に重症化リスクの高い者に重点化することも可能である」という結論は導かれません。

TAKASHIMA Hidehiro @TAKASHIMA724

もちろん、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」19条1項に該当する場合の効果は、「入院を勧告できる」にとどまっていますので、入院させなかったことが直ちに違法というわけではありません。

TAKASHIMA Hidehiro @TAKASHIMA724

しかし、少なくとも今回の事務連絡が示す解釈は、明らかに同法の趣旨に反し、法理論的におかしい解釈であると評価します。