ギザギザ部分を切って違いを調べてみた
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末次 健司 @tugutuguk

ラン科植物「サギソウ」の名前の由来となったギザギザの花びらの意義を解明した成果をEcology誌に発表しました。サギソウのギザギザが、花粉を運んでくれる昆虫の視覚的なアピールというよりもむしろ、足を引っかける支えとして進化してきたことが示唆されました。doi.org/10.1002/ecy.37… pic.twitter.com/Vuptbu2INE

2022-06-21 17:22:54
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末次 健司 @tugutuguk

野生ランであるサギソウは、純白の花びらの形が空を舞う白鷺を思わせるため「鷺草」と呼ばれ、古くから人々に愛されてきました。しかし今日にいたるまでサギソウの花を特徴づけるギザギザの形の適応的意義は不明なままでした。 pic.twitter.com/yhk3Yw5G0R

2022-06-21 17:23:39
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末次 健司 @tugutuguk

そこでこのギザギザが繁殖成功にどのように寄与しているのかを解明すべく、切除実験を行いました。一般的に花びらは主に視覚的な目印と考えられており、特にサギソウの主要な花粉の運び手であるスズメガは主に空中でホバリングして花の蜜を吸うため、目印がギザギザの主要な機能であると予測しました。 pic.twitter.com/uxSijZqjgD

2022-06-21 17:25:59
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末次 健司 @tugutuguk

しかし予想外にも、サギソウではギザギザを除去しても、果実に成長する確率が減少しないことが分かりました。つまりサギソウのギザギザは、スズメガを花におびき寄せるのにそれほど重要な役割を果たしていなかったのです。 pic.twitter.com/d47yFcq1AE

2022-06-21 17:27:16
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末次 健司 @tugutuguk

一方で、花びらのギザギザを切除したものは、健全な胚が入った種子数が低下していました。さらにギザギザを切除しても人工授粉すれば、切除していない個体と同じく健全な種子をつけたことから、この原因が、切除のダメージではなく花粉の運び手との相互作用にあることが示唆されました。 pic.twitter.com/CIzQtVvpA8

2022-06-21 17:28:41
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末次 健司 @tugutuguk

そこで健全な種子数の減少が、花粉の運び手の行動とどのように関係しているのかという観点から、「主要な花粉の運び手であるスズメガの詳細な行動観察」を行うことにしました。

2022-06-21 17:29:24
末次 健司 @tugutuguk

その結果、スズメガがサギソウから吸蜜する際に、ホバリングしているかのように翅を羽ばたき続ける一方で、必ずギザギザ部分に中脚をかけて掴まっていることがわかりました。しかしながらギザギザを切除すると、花びらに脚をかけることができなくなるケースが多々見られました。 pic.twitter.com/7cpCUBwptk

2022-06-21 17:30:53
末次 健司 @tugutuguk

つまりギザギザを切除した花で健全な種子ができる確率が低下したのは、ギザギザが無くなると花粉を運んでくれるスズメガの訪花姿勢が不安定になり、切除していない個体と比べて受け渡される花粉の量が少なくなったことに起因すると考えられます。 pic.twitter.com/wbkwkivavg

2022-06-21 17:31:38
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末次 健司 @tugutuguk

これまで花びらの機能としては、花粉を運んでくれる昆虫を視覚的に花に呼び寄せる役割に着目が集まっており、それ以外の機能はあまり注目されてきませんでした。

2022-06-21 17:32:04
末次 健司 @tugutuguk

特に本研究は、主にはホバリングしながら蜜を吸うと考えられきたスズメガが、目立つギザギザを視覚的なガイドというよりむしろ吸蜜中に花を掴むための支えとして利用していることが分かった点で、重要な成果といえるでしょう。

2022-06-21 17:32:54
末次 健司 @tugutuguk

サギソウは古くから人々に愛されてきた植物で、死んだ白鷺の魂がサギソウに生まれ変わったという御伽噺が残されているほどです。「サギソウ」のの根源的特徴ともいえるギザギザの形状の予想外の適応的意義を明らかできたことをうれしく思います!

2022-06-21 17:33:49
末次 健司 @tugutuguk

今回も多くの共同研究者、研究協力者にお世話になりました。特に私のラボの卒業生の阿部くんが、予想通りの結果が出ないときも粘り強く観察・実験してくれました。お礼申し上げます。

2022-06-21 17:39:32
末次 健司 @tugutuguk

なお論文紹介では、論文の全内容をお伝えすることはできておりませんで、ここで紹介した以外にも今回の結論を導くために様々な検討を行っています。もしよろしければ論文そのものも読んでいただければうれしいです。 doi.org/10.1002/ecy.37…

2022-06-21 17:41:19
末次 健司 @tugutuguk

ちなみに論文自体も5ページの短い原稿にコンパクトにまとめていますが、3年間の研究成果が詰め込まれておりメソッドは丸々サプリに入っております。

2022-06-21 17:42:44
岩手大学野草の会 @iwatedai_yasso

野草ツイートの中の人の個人の感想ではありますが、非常に興味深い内容でした✨ 一般的にラン科植物は(人間から見て)華やかな花が多く、訪花昆虫をおびき寄せるものだと思っていましたが、サギソウの花の形にこんな機能があるとは思いませんでした… twitter.com/tugutuguk/stat…

2022-06-21 20:07:49
まふゆのうじ @2d0rn0t2d

ものすごく面白かった。 カワラナデシコってポリネーター誰だっけ。 ガガブタとかミツガシワも似たような感じかな。 twitter.com/tugutuguk/stat…

2022-06-21 22:00:30
間宮健太郎/土野魔魅 @mami_tuchino

常にホバリングしていると思ったスズメガが実は足を付けて休んでいたあたり、サギはそっちだったかという点が興味深い(笑) twitter.com/tugutuguk/stat…

2022-06-22 10:07:56
池辺 研(池辺 琉右衛門) @fydgJsVZZ1ZjPAn

@tugutuguk サギソウの花のギザギザに スズメガが足を掛けて互いの花同士の受粉を促進する機能があるなら 夜間にしか咲かないので 同じくスズメガなどが吸蜜する カラスウリの花のモジャモジャも 同じ機能を持つ可能性が出てきましたね。

2022-06-22 19:07:47