SCP「枯庭」を舞台にしたとうらぶ二次小説です 長義が怒りっぽいです、なんでも許せる方どうぞ
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🌸カトリ🌸skebはイラスト垢 @jikuxk

その演練の翌日、その本丸の審神者が殺された。 何者に殺されたかは分からない、政府は直ちに動いたらしく、公安直属の本丸であるうちにも捜査の命がくだった。 近侍の長谷部と、政府関係者である長義を連れて、その本丸へ向かう。 「演練で、おかしいと思ってたんだ」 長義がぽつりと呟いた。

2020-07-11 21:16:28
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そこは一面の花畑だった。 景観を変えていない、という話ではない。 本当に、一面の薔薇の花が咲いていたのだ。 こんな景観は、政府から与えられていない。 見渡す限りの薔薇園にくらくらしながら、花に囲まれた道を進んでいく。 ふと、風が吹いた。 薔薇はいつの間にか桔梗に変わっていた。

2020-07-11 21:20:18
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本丸が見えない。 この時点でおかしい話だ。 しかし、薔薇が桔梗に変わった瞬間、何か特異なものを感じた。 歩き進めると、演練にいた乱に出会った。 「あこないだの」 どうやら覚えてくれていたみたいだ。 「すまないのだけれど、本丸まで案内してもらえないかな」 しかし乱は笑みを称えたままだった

2020-07-11 21:23:42
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「ええと」 どうしたものかと言葉を詰まらせていると、長谷部が乱に話しかけた。 「先程、ここは薔薇園だったのだが?」 「薔薇園に行きたいの?ちょっと遠いけど案内するよ?」 風が吹く。 咲いていた桔梗が菊へと変わった。 「……今度は菊か」 これも政府から与えられた景観ではない。

2020-07-11 21:30:31
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「ここの……ええと、菊園は、その……乱が見ているの?」 尋ねると、乱はにこりと頷いた。 「主が前までは見ていたのだけど、今は僕が」 「主が亡くなったのは何故?」 長義が直球で聞いたので思わず制した。 「あなたたちみたいな人が来たからだよ」 どういう事か分からない。

2020-07-11 21:33:50
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戸惑っていると、乱はいつの間にか姿を消していた、煙に巻かれた気分だ。 「大丈夫ですか、主?」 ここは変だ、と言う長谷部に頷いて、それでも本丸をもう少し目指しても構わないかと尋ねた。 長義は言うまでもなくずんずん先へと歩いている。 「行こう長谷部」 私は長谷部を促した。

2020-07-11 21:37:21
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歩けど歩けど、花園は変わらない、本丸は見えない。 風が吹く度、花は変わっていった。 向日葵、コスモス、キョウチクトウ、チューリップ…… そうして、どれくらい歩いただろう……空を見上げると、緋色に染まっていた。

2020-07-11 21:40:22
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「引き返しましょう、主」 焦った長谷部の声と「なんだこれは」というくぐもった長義の声が同時に聞こえてくる。 それは、 形容すれば、 スプーンの様な花で、よく見ると人間の顔の様に見える。その葉は腕の様だった。 不気味なそれはこちらが歩を進める度に注視してきた。

2020-07-11 21:44:19
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「引き返しましょう」 言った長谷部に頷く 「長義、出直そう」 長義は軽い舌打ちをするとこちらに戻ってきた。 「この異常空間は一体なんなんだ」 また風が吹いた。 不気味な花とも言えない何かは一面テッポウユリに変わっていた。

2020-07-11 21:47:24
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引き返し、歩を進めていると……先程消えてしまった乱がテッポウユリに水をやっていた。 制するより早く、長義が乱に近付いた。 「おい」 「ああ、まだ帰ってなかったの?」 「これはなんだ?」 いつの間に撮ったのか、先程の不気味な花の写真を端末から見せている。 「キョウチクトウだね」

2020-07-11 21:49:58
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「これが?キョウチクトウ?……キョウチクトウはこれだろう?!」 長義は全ての花を撮っていたらしい、それを見せるや否や、乱は倒れた。 乱の人間体は眼球と耳が引きちぎられた様な状態になっており、腰に差していた刀も折れていた。 咄嗟に庇った長谷部の後ろに隠れる。

2020-07-11 21:53:06
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そうして……花は、ケイトウへと変わっていた。 風が吹いた。 瞬きをすると、乱がいた所には、薬研が立っていた。 「あぁなんだまだいたのか」 さっき会ったばかりの様に返してくる彼の周りには、一面のテッポウユリが咲いていた。 「テッポウユリだ……」

2020-07-11 21:56:14
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「あぁ、テッポウユリだ、綺麗なもんだろ」 「乱はどうなった?」 震える声で言う長義に、薬研は首を傾げる。 「乱?俺っちはずっとここにいたけど?」 「嘘をつくな、お前も何か知ってるんだろう?!」 薬研に掴みかからんばかりの長義を宥めていると、「あんたが殺した」と小さく聞こえたきがした。

2020-07-11 21:58:57
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「もういい長義、帰ろう」 「あぁ、さっさと帰ってくれ、花の手入れで忙しいんだこっちは」 「ここは一体どうなっているんだ、ここは!」 「…………さあな」 薬研は花の手入れに戻って話さなくなってしまった。 「帰ろう」 もう一度促すと、長義は渋々応じた。

2020-07-11 22:00:44
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ゲートへ続く道を進んでいると、加州と安定と和泉守兼定と堀川が立っていた。 四人の刀剣男士に会えるとは思っておらず、今までの怪奇な現象の数々に、長谷部も長義も刀に手をそえていた。 「こんにちは」 とりあえず声をかけると、

2020-07-11 22:04:31
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「こんにちは、初めまして登山者さん」と、堀川が言った。 「失せな登山者」兼定が言った。 「悪辣、膨張する登山者どもめ」加州が言った。 「天龍の橋、作家の登山者さん」安定が言った。 意味が分からず面食らっていると長義が尋ねた。

2020-07-11 22:08:17
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「この場所は一体なんだ?」 「流刑所です」と堀川が。 「てめぇの墓場だ」と兼定が。 「救済の雨へと至る道だよ」と加州が。 「奈落、金色の奈落」と安定が。 「答えになってない!何のためにこんな場所がある?!」 悲鳴にも似た声で長義が叫んだ。

2020-07-11 22:11:57
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「あなたの為です登山者さん」 「てめぇの為だ登山者」 「あんたの為だよ登山者」 「君の為だよ登山者さん」 風が吹いた。 先程までコスモスが咲いていた一面は、再びテッポウユリで覆われた。 「主、帰りましょう!」 切羽詰まった長谷部の声に頷くと、長義を引っ張るようにその場を後にした。

2020-07-11 22:15:29
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「ここはもう、本丸なんかじゃない……」 もうどうにも出来ない歯がゆさを噛み締めるように、長義が呟いた。 私たちは門をくぐり、ゲートへ向かった。 「こんな事も起こるんだね」 気の抜けた様な私の声に「早々あってたまるか」と長義がが毒づいた。

2020-07-11 22:17:56
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自身の本丸には無事に帰る事ができた。 報告書は全て長義がやってくれるそうだ、政府へあの本丸の削除を依頼するつもりらしい。 「よお主、とんちきな本丸に行ったんだってな?」 仕事の休憩中に鶴丸が陽気に尋ねてきた。 「聞く?」 「勿論」 そうして私は話し始めた。 終

2020-07-11 22:20:26
🌸カトリ🌸skebはイラスト垢 @jikuxk

SCP-622-JP「枯庭」 scp-jp.wikidot.com/scp-622-jp こちらより引用させていただきました 最後まで御付き合いいただきありがとうございました

2020-07-11 22:22:19
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まとめたひと
🌸カトリ🌸skebはイラスト垢 @jikuxk

❁︎TRPGテキセ❁00課陸❁︎禍話分母ホラー大好きっ子クラブ❁︎かなえ先生メンシゼミ生❁ニチアサオタク❁殿堂:風間俊介・横山裕/なにふぁむ🩷🩵丈みち担当/イラスト依頼→@katorixIllust