第205回深夜の真剣140字60分一本勝負

太陽や月など @as1mind1soul

真昼のオフィス街を冷たいビル風の勢いを借りる土砂降りが襲いかかる。５分前の澄んだ青空は今、漆黒の絵の具で厚塗りした雨雲が支配する。瞬く間にびしょ濡れだ。着電を受ける余裕は無く、一目散に建物に逃げ込んだ。留守電にはボスの出動命令。ゲンジョウへ急ごう。停電のエレベーター達が私を待つ。

てい @orztee

君が使わなかった絵の具で、何を描けるだろう。あの日ビル風が君を連れ去ってしまったから、ぼくはもう君の声を、スマホの留守電でしか聴くことができない。雨が降りそうよ、傘を忘れて行ったでしょう。届けになんて来なくてよかったのに。未完の絵の中に、もう二度とできない笑顔を湛えたぼくがいる。 pic.twitter.com/Auc0wha29u

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癒月連理 @kizamukotonoha

ビル風に乗って空を駆ける。そうして特殊な絵の具を使い、空間に絵を描くのが俺の仕事。これが好評でありがたいことに仕事がひっきりなしにやってくる。俺でも都会で成功できるんだ、時間が空いたら実家に帰って母さんにプレゼントでもあげよう。留守電が入っていた、兄からだ。「母さんが亡くなった」

Kiyu Hoshizora @hoshizora_kiyu

電車からプラットフォームへ降りると、強く射し込む光に顔を上げた。水色にオレンジの絵の具を溶かす夕空が、ビル風と共に広がる。仕事の反省と疲労した脳は、美しい天の絵画で人の心を取り戻した。着音したスマホを見ると、留守電代わりのバナーが入っている。『お疲れさま。今日は外食しませんか？』

らん @amagi_ran

台風の夜。強く強く風が吹く。時折マンションから耳をつんざく笛の音が上がる。ビル風が発する風切り声に私の心が叫ぶ。真面目な優等生？型に嵌めないで！何もかも壊れればいい！私はベッドの中で耳を塞ぐ。#twnovel　そして私は風がおさまれば素知らぬ顔をして学校へ行く。この名を知らぬ獣と共に。

三上クコ @mikami_kuko

絵が好きで、画家になることが夢で、才能がなくて。泣きながら全部捨てて会社員になった。何年経っても泣き声が頭から離れないから、強い意志を持って画材を買い直した。無理だとでも言うように強風が画材を奪おうとする。奪われてたまるか。夢が叶わなくたって構わない。もう泣き声は聞きたくないの。 pic.twitter.com/LQEEmHoTep

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松田優(すぐる) @suguru_matsuda

先輩は必ず昼休みを屋上で過ごす。 高所恐怖症の私からすれば狂気の沙汰だ。 「それはちょっともったいないね」 強引なところがある先輩は、いいというのに私の手を引き屋上へ。その手には無骨な傘1本。 「ビル風に乗るのって最高なんだよ」 私たち以外にも、色とりどりの傘がビルの間を漂っていた。

春野ゆき @710_ambassador

今宵もご開催ありがとうございます！ #深夜の真剣140字60分一本勝負 ( @140onewrite ) お題:絵の具、留守電、ビル風 概要:以前書いた140字小説のほんのり続き。単発で成立します。 題名「泣き虫ガール」 pic.twitter.com/HYxwFsEICL

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花滝ちかる @chikaru_toka

綺麗な世界に君が居るのではなく、君が居るからこの世界は鮮やかなんだ。 僕は、絵筆を執って真っ白な紙に絵の具を載せた。 眩しいほど明るくて、透き通るように儚くて、守ってあげたいあたたかな世界を、君に見せたかったのに。 でも何かが足りない。君が、そっと描き足した。 君の隣に、笑顔の僕を。

ケンタシノリ＠童話＆小説書き屋さん @kentasinori

その廃ビルは、隠れた心霊スポットとして知られている。懐中電灯を持って足を入れると、廃ビルの階段をゆっくりと上った。 ガラスが割られた窓からは、不気味なビル風が入ってきた。そして、廊下には絵の具とは思えない赤い血の跡が……。 これを見た途端、まるで金縛りのように足が動かなくなった。

ゆきやまイマ＠鶏林書笈 @keirin_syokyu

#深夜の真剣140字60分一本勝負 @140onewrite お題： ①ビル風 ②絵の具 ③留守電 #木槿国の物語 電信がこの時代にあったのかは問わないで(^◇^;) pic.twitter.com/2cgAoW0jkf

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Z.P.M @ArcOkimuy

「留守番電話にお繋ぎします」どうしよう、今ビル風に煽られてひっくり返って絵の具がバラバラに散らかってさ、あれ？　チューブからはみ出したのかな、ベトベトだよ。とにかくすぐには行けないけど。（キキキー、ガシャ！）もしもし！　絵の具踏まないでね？　人類の未来がかかってるの！

Pingu　novel @ckpingu_nvl

「ビル風って何色？」「やっぱりグレーかな？」「バブル崩壊の頃のJPOPみたい。」「じゃあ今はテレワークのせいで風通しが良くて、透明なんじゃない。」「透明⁈そんなのどうやって作るの？」絵の具を乱暴に混ぜる音の後、プツリと通話が切れた。かけ直しても留守電になる。ポケベルでも鳴らすべきか。

夜梨｜夜崎梨人 @yorunashi

姉から留守電が入っていた。『青い絵の具切らしちゃったから買ってきて』どこのメーカーで、色の番号は何番か、と続く。もう少し早くという気持ちもあるが仕方がない。来た道を少し引き返して画材屋でお使いをすまる。「姉さん、買ってきたよ」墓石が喋るはずもないか。死んだ姉から毎年留守電が届く。 pic.twitter.com/kPtTw2uaia

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秋月蓮華 @akirenge

「これからとってもやりたかったことをするの」 留守電に入っていた君の電話。何をするのだとなる。 言われた場所へと行けばビル風が吹いていた。 指定された時間になる。 「うわ」 驚いてしまう。周囲にあるビルが絵の具で落書きされていく。絵描きである君がやりたかったこと。 派手だ、と笑う。

らん @amagi_ran

風を削って絵の具にしたら、進むあなたへ応援幕（エール）を描きます。星空を削って絵の具にしたら、迷うあなたへ道しるべを描きます。海を削って絵の具にしたら、深くあなたの心へ届く人魚姫を描きます。#twnovel　私の想いを絵の具にしたら、あなたへ何が描けるでしょうか？

れんが @xLEZ7vRmyC82HvW

留守電を再生する。 彼にビルの屋上へ呼び出された。 留守電を再生する。 時間に遅れてしまい急いで彼を探していた。 留守電を再生する。 ビル風に乗せて彼の声が聞こえると同時に何かが降ってきた。 留守電を再生する。 赤い絵の具のようなもので視界が染められた。 留守電があの日の記憶を再生する。

梁田　悠 @yanada_yu

「自己満足だけど」 #140字小説 pic.twitter.com/P26PzRxO6n

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RAY/※※※ @growler_ray

「留守番電話に接続しました。通知音の後に、メッセージをお伝えください」 聞こえてる？……まだ怒ってるの？ごめんって、何も言わずに飛び出したことはもうこの上ないほど謝ったじゃん。 そろそろ帰れそうだからさ、そしたら仲直りしてよ、ね？ 「このメッセージは、一年前、の、本日に録音……」

あきのりんご@多忙 @akinoritan

何度電話しても留守電になる。「きゃっ」突然のビル風に驚き、階段を踏み外した。ひねった足首は痛いけど、急いで帰らないと。海のある方角を見ると、黒や灰色の絵の具をぶちまけたような暗い空。息子が乗った船は無事だろうか。なんでこんな日に漁に出るんだ、莫迦。帰ったらお説教だ、帰ってきたら。