#twnovel 悲しい思い出が滲んだ土地には、不思議と蓮の花が咲く。救いを求める衆生の腕は仏を前に色づき、化して、そして花と成った。そして華奢な茎は蜘蛛の糸のごとく、大地に向かってするりと伸びるのだ。 pic.twitter.com/UALOpforDF
2019-07-06 20:03:15#twnovel この季節の蓮は恥ずかしがり屋なもので、目覚めた彼女は母たる葉の影に隠れてそっと世間を覗き見る。 pic.twitter.com/XuWcRp9InU
2019-07-06 20:06:25#twnovel 愛らしく膨らみ、美しく咲き、艶やかに揺れた蓮の最期は、母たる葉の腕に抱かれ命を尽くす。 pic.twitter.com/PQMOIkmYez
2019-07-06 20:09:33#twnovel 菩薩の白蓮と呼ばれた彼女は、不動明王の石像に恋をする。鋭い視線に焦がれた蓮は、彼の玉眼に射抜かれ身を朱く朱く染め、そして住職を不思議がらせるのである。 pic.twitter.com/ul164uURTE
2019-07-06 21:24:20#twnovel 解かれた赤い衣の裳裾から見えたのは、驚くほどに白い膚だった。「私の姿を見たからには一蓮托生でございます」蓮っ葉な娘と呼ばれた彼女は、耳の先を朱く染めて私の帯をそっと引いた。 pic.twitter.com/Ho8SsTpKdk
2019-07-06 21:27:50#twnovel 「来世は必ず一緒になりましょう」手を取りあい死んだ我らは、白蘭の花と蜂と化す。しかし前世の罪か咎か、彼女は仏に恋をして私の声など到底届かぬ。私は一人、届かぬ声を飲み込んで、彼女の蜜を吸い嘆くのである。 pic.twitter.com/hWqqVj6Jqr
2019-07-06 21:48:31#twnovel 見上げれば揺れる赤、光を吸い込む白蓮の白。私は唖然と花の香に包まれた。手には優しく溶けた蜘蛛の糸が絡みつく。私の隣で喜びの声をあげるのは、昔救った一匹の蜘蛛……なるほどここは浄土であった。 pic.twitter.com/bAS6hpBSxH
2019-07-06 21:51:23