僕の姿を見付けただけで、瞳を輝かせて走ってくる君が、好きだ。 「待たせてごめんね」 「大丈夫だよ」 君の頬に触れると赤いのに冷たくて、待つのが僕で良かったと思った。 ピンクのコート。揺れる君の髪に、仄かに花の香り。 どんなに寒い日も、僕の隣に咲いてくれる春の花を、守れる僕でありたい。
2020-12-05 22:07:15#深夜の真剣140字60分一本勝負 ( @140onewrite ) お題 ①骨の髄まで ②誘 ③花の香 pic.twitter.com/HchiKXqoYy
2020-12-05 22:10:06花の香を漂わせて誘う人。 母はそんな人でした。私には兄と異父弟妹が何人か、子供を産むのがステータスのような人で最後は満たされて死にました。残された私はそれなりに生きていますが。 「あの人は、母は」 「異父姉さん?」 母の遺品を整頓しながら私はいもうとに言う。 「骨の髄まで子供だった」
2020-12-05 22:12:15刑事の尾山は、自らが誘い出した振り込め詐欺グループの実行犯を同僚の警察官とともに取り押さえた。 「い、いてててっ……。何するんだ!」 「貴様か! 人の優しさを利用しては骨の髄までしゃぶって、挙句の果てには金をせびり取るとは……」 尾山の強い口調に、相手の男は肩を落とすばかりである。
2020-12-05 22:13:14遺骨として拾う文化があるように、骨というのはこの国にとっては大事な象徴なのだろう。 そんなことを思って訪れたのは、数年前、ある女児が指を落とされた事件現場跡。 微かに形を残す骨片ひとつを拾い、舐め、誰にも渡さないと自答する。 ああ、逃がさない。あなたはずっと、骨の髄まで私のモノだ。
2020-12-05 22:14:06#深夜の真剣140字60分一本勝負 (@140onewrite ) ①骨の髄まで ②誘 ③花の香 pic.twitter.com/FcAP2DKITf
2020-12-05 22:14:19誰に対しても、君が優しい人だということは、わかっていた。軽い誘いも、君にとっては、朝起きて、ご飯を食べ、仕事をし、眠る。そんな日常と変わらないということも。ふと君は、私がハンカチに付けていた花の香りを、いいなと言った。そんな些細なことに気づく君のこと、やっぱり私は好きなんだ。 pic.twitter.com/AxD6cGpSr8
2020-12-05 22:16:02「……勉強しなきゃ」スマホの電源を切る。それで私は誘惑から逃れられる。白いノートを埋める、黒鉛が削れる。たぶん私自身も。ペンだこの痕からは薔薇の香り。そういえば、軽々私を置いていったあの人の首筋からも同じ香りがした。これは嫉妬、それとも恋慕? 骨の髄まで、私には勉強しか無い。
2020-12-05 22:23:28花の香りを感じた段階で駄目なモノだとは感じていた。異様な程甘美で、判り易く人を誘う香り。もういいかなと思った。そういうモノから逃げ回って早二十余年。子供の拙い達観だと笑えばいい。お前などいらないと言われた時点で誘い込まれたと思った。ああ、化け物、だなんて。骨の髄まで染まっていた。
2020-12-05 22:29:16「あんたって商売っ気ないわよね。骨の髄まで」企画書の添削をしてもらっている。「実績がこれだけなのに、よく大風呂敷を広げたわ」耳が痛い。「でも…不思議と、面白そうではあるのよね。つい誘われてしまいそう」「ありがとう」「あんたバカ正直すぎ」「知識や経験は嘘をつかない。俺もつかない。」
2020-12-05 22:30:15#深夜の真剣140字60分一本勝負 @140onewrite お題 ①骨の髄まで ②誘 ③花の香 #木槿国の物語 pic.twitter.com/3nZta5fsxi
2020-12-05 22:36:44#深夜の真剣140字60分一本勝負 (@140onewrite ) ①骨の髄まで ②誘 ③花の香 pic.twitter.com/cc9AewodxW
2020-12-05 22:43:33①骨の髄まで ②誘 ③花の香 #深夜の真剣140字60分一本勝負 (@140onewrite) pic.twitter.com/vW89C2ryn0
2020-12-05 22:48:00わたしの日常 #深夜の真剣140字60分一本勝負 お題 : 「骨の髄まで」「誘」「花の香」 (@140onewrite) #140字小説 #SS名刺メーカー pic.twitter.com/uIdNJQDMho
2020-12-05 22:57:29