古代ローマの卑猥なシンボルコイン「スピントリアエ」について呟いたこと

私はケントゥリオP。現在療養中。 @centurio_P

何か卑猥な行為と数字が掘られた古代ローマのコイン「spintria：スピントリア」が売春宿の専用硬貨として使われたっていうツイートが流れてきましたけど、その説は単なる仮説であり、考古学的証拠や裏付けは何一つないものですよ。ゲームかイベント用に作られたコインではないかとされてるだけで。

私はケントゥリオP。現在療養中。 @centurio_P

昨日の卑猥な行為やシンボルが描かれた古代ローマのコイン「スピントリア」についてのこれがちょいちょい伸びてるのでちょっくら補足でもしておこうかと。 twitter.com/centurio_P/sta…

私はケントゥリオP。現在療養中。 @centurio_P

初めに「スピントリア（複数形はスピントリアエ）」が性的であり、性的なサービスに関連するという解釈を唱えたのは貨幣学：numismatics最初期の一人であるEzechiel von Spanheimであり、著書「Dissertatio de praestantia et usu numismatum antiquorum.」（何と1664年）からです。

私はケントゥリオP。現在療養中。 @centurio_P

エゼキエル・フォン・スパンヘイム卿ね。どうでもいいんですけどエゼキエル・フォン・スパンヘイム卿って教会史家フリードリッヒ・スパンヘイムと兄弟だったのね。同じ姓だとは思ってたけれど。

私はケントゥリオP。現在療養中。 @centurio_P

そして、これを発展させ具体的に売春宿の専用硬貨ではないかと仮説を唱えたのがJoseph Hilarius Eckhelであり、彼は1792~98年にかけて出版された「Doctrina numorum veterum」においてポンペイのLupanare：ルパナーレ：売春宿のフレスコ画に描かれた部屋番号とスピントリアエの番号を関連付けました。

私はケントゥリオP。現在療養中。 @centurio_P

19世紀にはこの仮説は貨幣学において支配的になり、少なくない貨幣学者やアマチュアが何かと性的サービスに関連付けましたが、元々スピントリアエは物が多数あるだけで、その用途に関する資料は存在せず、この仮説には証拠や裏付けがない、単に卑猥な行為やシンボルからの推測でしかありませんでした。

私はケントゥリオP。現在療養中。 @centurio_P

そして、後にEckhelのルパナーレの描かれたプレイ内容と部屋番号とスピントリアエのシンボルと裏の番号についても実際に検証してみると部屋の数字と裏の数字は一致せず、関連付けが難しい物でした。現在、売春宿専用貨幣という説は化石みたいなもので、あまり支持されてません。

私はケントゥリオP。現在療養中。 @centurio_P

ただ見た目のインパクトと性的な話題ということで注目を浴びやすく稀に取り上げられて騒がれますけどね。先日のように。

私はケントゥリオP。現在療養中。 @centurio_P

現在、スピントリアエには新たな仮説が複数立てられてます。コロッセウムや戦車競技等イベントの入場券または引換券説、軍団兵の記念硬貨説、荷物の預かり券説、今のトランプのようなゲーム用の貨幣etcetc。しかし、これらも結局は仮説にすぎず、これら新たな仮説を裏付ける証拠もありません。

私はケントゥリオP。現在療養中。 @centurio_P

2016年に「Stranger Games: The Life and Times of the spintriae」を発表したE・Duggan氏等はイベントまたはゲーム用トークンか預かり証辺りが現状説得力があるのではないかと述べております。

私はケントゥリオP。現在療養中。 @centurio_P

あと、卑猥な行為とシンボルの物ばかり取り上げられますが、数こそ少ないですがスピントリアエの中には卑猥じゃないものもありますよ。普通の硬貨のように女神の横顔だったり、山羊だったり、寺院が描かれた物も存在します。

私はケントゥリオP。現在療養中。 @centurio_P

第一、現代とは宗教観も価値観も違い過ぎるし、日常的に性的シンボルが溢れていた古代の世界の物で、卑猥なシンボルがある→何か売春や性的サービスに関係があるに違いないというのは聊か直結的思考であり、歴史へのアプローチにはあまりよろしくないという。

私はケントゥリオP。現在療養中。 @centurio_P

あまり時間がないのでパパっと纏めて述べましたがこのくらいで〆とさせていただきます。

私はケントゥリオP。現在療養中。 @centurio_P

古代ギリシャの接着型甲冑と同じで、単なる仮説に過ぎない話が何度も何度も繰り返し話題になったり、センセーショナルに消費されていくうちに事実とされてしまうっていうのよくあるから困る。ネットだとなおさら。