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第6章、代表制度の改革 おわりに
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花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

抜粋⑤ 『代表性民主主義はなぜ失敗したのか』藤井達夫著、集英社新書、2021.11.22. 第6章、代表制度の改革 おわりに pic.twitter.com/4I9rWcFtOd

2022-02-07 17:03:35
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参加型予算は、集団としての市民と市政府との協働の取り組みである。  最後に、「エンパワーメント」の効果に関して。 ポルト・アレグレ市の参加型予算におけるエンパワー効果の特徴は、それが社会運動と密接に結びついた取り組みである点から引き出すことができる。

2022-02-07 17:03:36
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参加型予算への参加を通して、コミュニティのリーダーが発掘されたり、育成されたりした。これについては、特に、市全体のCOPへ派遣される評議員の選出の過程が重要になってくる。この評議員は、自分の暮らすコミュニティや所属する集団の代表でありながらも、COPでは、市全体の立場に立って予算案の

2022-02-07 17:07:44
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

決定を行うことが求められる。この過程は、全市民の代表としての公共心を培う機会となると推測できる。さらに、参加型予算への関与をとおして社会運動の新たな活動家がリクルートされたり、地域を超えて活動家同士が顔を合わせることで、情報を共有し、学習を行い、動員の調整を行ったりすることが

2022-02-07 17:12:27
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

可能となった。ここからも、参加型予算は、社会運動およびその活動家をエンパワーする機会であるとも考えられる。  多くの民主主義国では代表制度の行き詰まりから、その大掛かりな改革がすでに始まっており、さらにその改革は市民の参加と熟議を強化する方向で進められている。

2022-02-07 17:16:51
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

日本において代表制度を改革していく上で有効なのは、熟議世論調査なのか、市民集会なのか、参加型予算なのか、あるいはそれ以外の取り組みなのか。  第一のポイントとして、代表制度を改革するための参画と熟議の取り組みには長所もあるが、それゆえの短所もあることを押さえておく必要がある。

2022-02-07 17:57:39
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

熟議世論調査に関していえば、少人数の市民による熟慮された声がどこまで他の市民に対して説得力や正統性を持つかは定かではない。また、代表制度の改革という点からすれば、既存の代表制度に組み込まれていないのは、大きな欠点ともいえる。

2022-02-07 18:28:09
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ブリティッシュコロンビア州の市民集会では、代表制度に公式な形で組み込まれることで強制力のある決定を行うことができた。ただ、こうした事例でも、集会に参加した少人数の市民の決定の正統性に疑念の声が上がることは十分予測できる。また、このタイプの市民集会にはアジェンダすなわち、争点や

2022-02-07 18:33:22
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議題を自分たちで設定する権限がない。これを理由に、民主的なコントロールの不十分さを指摘する声もある。アイルランド憲法会議では、市民と政治家が一緒に熟議を行うため、熟議の質に対して常に疑念が伴う。すなわち、市民の判断は政治家によって歪められてしまうのではないか、という疑念だ。

2022-02-07 18:37:40
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参加型予算の事例でも、特に市政府当局と市民の代表とが協議を行うCOPの段階で、アイルランドの市民集会と同じ懸念が出てくるはずだ。また、市民の参加をより重視する設計のため、参加型予算では積極的に参加する市民の利害関心や意見が参加に消極的な市民よりも決定に反映されやすくなり、

2022-02-07 18:42:15
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

いわゆる「参加の歪み」を生じさせる可能性も十分ある。  第二のポイントとして、改革が適用される国や自治体の政治制度や政治文化を十分に吟味する必要がある。例えば、アイルランド憲法会議をそのまま日本に適用することは難しい。制度上、法律上の壁が存在するからだ。

2022-02-07 18:48:05
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

ポルト・アレグレ市の参加型予算を日本の自治体にそのまま適用するなら、「参加の歪み」の問題が顕著な形で現れることが予測できる。  第三のポイントとして、こうした改革と社会運動を連動させる必要がある。社会運動は、共有の政治的ないし社会的目標を達成するために結集した活動的な市民や団体が

2022-02-07 18:51:26
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

他の市民たちの関心を喚起し支持を取りつけるべく行う、集合的で持続的な活動だ。そこには、座り込みやデモに始まり、請願活動やパンフの配布、会合や学習会、さらには相互扶助的活動などさまざまなレパートリーがある。  こうした社会運動は代表制度の改革に必要不可欠だ。理由は二つある。

2022-02-07 18:56:04
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

第一の理由は、代表制度を改革しようとする動きのほとんどは、代表者たちの腐敗を告発し、民主主義を深化させることを求める社会運動から生まれているからだ。既存の議会や政党、政府を構成する政治エリートが自発的に自分たちの身を切るような改革を行うことは考えにくい。

2022-02-07 19:04:32
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

社会の側からの突き上げがあって初めて、代表者たちは重い腰を上げる。このことは、アイルランド憲法会議にも当てはまる。  第二の理由は、代表制度の改革の試みが、社会運動、特にコミュニティに根差した社会運動に支えられた時に、成功する可能性が高くなるからだ。こうした改革には、代表者の側に

2022-02-07 21:02:23
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

対しては異議申し立てを行い、監視を怠らずプレッシャーをかけ続け、市民の側に対してはマスメディアやSNSを利用しつつ、関心を換気させ情報を提供し、エンパワーする持続的な努力が不可決であることは言うまでもない。こうした努力の担い手の中心に社会運動が存在する。

2022-02-07 21:06:19
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

ポルト・アレグレ市の参加型予算は、社会運動との連携がうまくいったからこそ成功した事例の代表だといえる。  共有のものの下で自由を守ろうとする欲求、そのために権力の私物化を禁じ専制に対抗しようとする実践は、権力の座にあるエリートからではなくコミュニティに根を下ろして生きる人々から、

2022-02-07 21:10:27
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

すなわち上からではなく、下から生じるからだ。 (p.232) 中国モデルには決定的な欠点がある。私達が暮らす民主主義国で保障された政治参加の自由が制限されているために、政治エリートによる権力の私物化とその帰結としての専制政治に対する究極の歯止めがないという欠点だ。

2022-02-07 21:13:56
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

(p.233) おわりに  どうやら新型コロナウイルスのパンデミックは、現在の惨禍が過ぎ去った後の民主主義諸国において、民主主義の退潮をさらに推し進めそうだ。  長期にわたる感染症対策の中で、自由が大幅に制約された例外状態が常態化することになった。

2022-02-07 21:21:06
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

例外状態の常態化は、21世紀の世界において「テロとの戦争」をとおして試みられてきた。ジョルジョ・アガンベンが指摘したように、「テロとの戦争」が枯渇した現在、例外状態の常態化のために新たに発明されたのが「ウイルスとの戦争」というわけだ。

2022-02-07 21:24:35
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

この闘いにおいて統治する側では、人々の行動を監視し管理するテクニックやテクノロジーを活用していった。そして、それらは今後も、決して手放されることなく、さまざまな場面でことあるごとに、再び利用されるだろう。

2022-02-07 21:26:56
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

この例外状態に慣れてしまった人々が、安全と引き換えに、自由を手放すことを厭わなくなることは十分考えられる。そのような人々は自由を可能にしてきた共有のものの私物化に対してこれまで以上に無頓着になり、ひいては、権力の私物化に対抗する必要性をそれほど感じなくなっても不思議ではない。

2022-02-07 21:30:35
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

ポストコロナの世界に生きる人たちが民主主義にこだわらなくなる可能性は大いにありうる。 (p.235) そろそろ私たちは、「その後」について真剣に考える時期に来ているのではないか。そして、「その後」の最大の懸念こそ、民主主義諸国に暮らす人々が自由の制約された生活に慣れることで、

2022-02-07 21:34:09
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

民主主義への支持や関心をこれまで以上に喪失してしまうということなのだ。  新型コロナウイルスとの闘いという例外状態の中で、自由や民主主義的価値がどの程度毀損されたのか、それらを守るための手続きや制度がどう歪められたのか、真剣な反省が急務となるはずだ。

2022-02-07 21:37:19

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