イチョウが黄葉する頃、私は片田舎でも手軽にお菓子の買える駄菓子屋に通い始める。子どもたちにお菓子を配りながら感じるのは、一抹の空虚さだ。多分それは自己満足だから。テレビの中の、仮装をして歩く幸せなふりのうまい人たちに、私の幸せはここにあると抵抗しているだけだとわかっているからだ。
2022-10-29 22:00:34#深夜の真剣140字60分一本勝負 @140onewrite 第220回お題「幸せなふり」 #140字小説 #140SS #140字SS #一次創作 #夢小説 #ネームレス夢小説 SS名刺メーカー/文庫・新書ページメーカー @140sscard ましかくSSメーカー(背景つき) sscard.monokakitools.net/instabg.html pic.twitter.com/owUOwpayra
2022-10-29 22:00:55幸せなふりをするのにぴったりな色の中にいる。8センチのヒールに背伸びを強いられたまま落ち葉を踏みしめている。いつかテレビで見たイチョウ並木を君と歩いている。子供の頃見たドラマみたいに?大人になれない私は訝しむ。幸せの実感はきっとあの頃通った駄菓子屋さんに置き忘れてしまっている。
2022-10-29 22:01:35◆今日は早く帰るね。どうしたのなんて問う声には笑みを返す。わたしはなんの意味も込めてはいないけど、ひとは意味深にとってくれる。放っておいてもらうの。今日はね、あなたとの記念日だから。なんて、言えない。足早に帰ったってあなたはもういないのに。いっそ、たべてしまえばよかったな。/創作
2022-10-29 22:04:11#深夜の真剣140字60分一本勝負 @140onewrite お題: ①イチョウ ②幸せなふり ③駄菓子屋 #木槿国の物語 なんか前にも似たような話を書いた覚えが‥💦 pic.twitter.com/WfMK4SRK85
2022-10-29 22:04:51ふりを見抜くのが下手だ。特に、幸せなふりをふりだと気づいたためしがない。作り笑顔には見えない、美しい歯並びのどこに偽りが隠されていたのか。記憶の箱を逆さにし、埃をはたいてみても、見えなかった。紅葉の中に1枚、銀杏の葉が紛れ込むような蠱惑的な影を、私のダスターはまだ拭えずにいる。 pic.twitter.com/oWFfW3BL1v
2022-10-29 22:06:44「これちょうだい!」と無邪気に駄菓子屋ではしゃいだ日々が、今は懐かしい。みんなのたまり場だったけど、よぼよぼで明日も知らないような老婆が営む店なんて、いつ消えてもおかしくなかったから。 「これちょうだい!」 …だから、私が継いだ。はしゃぐ子供にかつての自分を重ねるのは、悪くない。
2022-10-29 22:12:20#深夜の真剣140字60分一本勝負 (@140onewrite ) お題:幸せなふり、駄菓子屋 タイトル「私の好きな、ソーダ飴」 pic.twitter.com/IkwxLvC5AX
2022-10-29 22:12:26泣きついてきたら叱りつけてやろうと待ち構えていたのに幸せなふりをやめない娘に苛立っていた。伝統的な和菓子店から小さな駄菓子屋に商売替えして忙しい日々を送るわが子。もはやイチョウのシンボルマークとも無縁となり「胃腸に気をつけて」と気遣ってくれる。だが視野に私の姿は映っていなかった。
2022-10-29 22:15:48ひらりと舞う金色の蝶。それを振り仰ぎながら君を想う。あの時、君はなんと言いたかったのだろう?何か言いたげに、僕を見つめここで待っているように言い小一時間。……置き去り?#twnovel 『お待たせ~。焼き芋の材料買って来た~』彼女が笑顔で走り寄る。あ、そゆこと?芸術の秋より、食欲の秋か。
2022-10-29 22:16:33植木屋の甚吉は、イチョウの木のそばで佐江がくるのを待っているところである。まだ独り身の甚吉であるが、他の女に気持ちがいって幸せなふりをするということを考えたことはない。 「佐江なら、おいらの気持ちを分かってくれるはずだ」 甚吉は、片思いの佐江への恋文を着物から出して目を通している。
2022-10-29 22:16:33#深夜の真剣140字60分一本勝負 (@140onewrite ) イチョウ 幸せなふり 駄菓子屋 苦戦しました……😌 pic.twitter.com/wAz30vRJSA
2022-10-29 22:17:21公園横の駄菓子屋は、今日も子供達で賑わう。ツインテールのあの子が覗いていて、色鮮やかな金平糖に目を輝かせていた。「欲しいのかい?」店番のおばあちゃんが優しく言うと頷いて十円玉を出す。「いいから一つあげるよ」黄色を掴んで駆けて行った。「幸せなふりね」十円玉はイチョウになっていた。
2022-10-29 22:32:57手を繋ぎ指を絡めて見つめ合う、パパとママは私の理想。 そう思っていたけれど。 見つめていたのはそれぞれ別のパートナー。 だから私は聞いてみたの。 いつまで幸せなふりをしているのって。 ふたりは何も言わなかったけれど、その沈黙は雄弁な言葉。 だから私は子供らしく 分からないふりをした。
2022-10-29 22:34:19成績が学年一の秀才である彼女と学年底辺のあたしが何で駄菓子屋で一緒に買い物をしたかと言えば彼女が行きたそうだったからだ。 「買い物、楽しかった?」 聞かなくても分かるけど聞いた。 イチョウの葉を彼女は手に持つ。 「楽しかったわ。一人で買い物ができて、――ずっと幸せなふりをしていたから」
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