素敵イラストにSSをつけても怒られないとかパラダイスではないか!と駄文をつけまくったまとめ。
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mona @mona5770

主に恋に現を抜かすような刀はいらないといわれるのが怖くて、そんな刀とともに戦いたくないを周囲に拒まれるのが嫌で皆には内緒にしたいと告げると光忠は俺をそっと抱き寄せて。 「ふたりだけの秘密だね」そう言ってくれた。その優しさに甘えた。 周りに気づかれるんじゃないかとこれまで以上に

2019-08-28 00:10:43
mona @mona5770

話をすることも目をあわせることすらなくなり、宗三に「あの燭台切を怒らせたのですか?」と聞かれるくらいだった。 夜遅くにどちらかの部屋で過ごすわずかな時間だけ、その間だけ俺たちは仲の悪い二人から恋刀へと戻る。朝がくればまた目も合わせない時間が始まる。自分で望んだことなのに、

2019-08-28 00:10:44
mona @mona5770

近づけない俺の目の端に他の誰かと笑いあう顔が見えるたびに胸が締めつけられるように苦しくなるのを感じる。 おれの、なのに。 ぼんやりと思いにふけっていた俺はバシャバシャという足音に顔をあげた。 泥がはねるのも構わず走る光忠がいた。 長谷部くん!唇がそう動いている。ああ光忠だ。

2019-08-28 00:10:44
mona @mona5770

「よかったすれ違わなくて」 「何か買いにきたのか」 「迎えに来たんだよ」 「そうか」 平静を装うけれど嬉しさが零れそうだった。 こんな風に並んで歩くのも初めてだ。 ひとつの傘に入るのも、そして触れそうな手にどきどきするのも。 でももうこの角を曲がれば本丸だ。 戻ればまた俺たちは…

2019-08-28 00:10:44
mona @mona5770

「もう少しだけ歩かない?」 光忠の言葉にこくりと頷く。 「ここの紫陽花を見せたかったんだ」 薄紫の紫陽花に雨の粒がきらきらと降り注ぐ。 「きれいだな」 「長谷部くんの色だね」 その優しい声に、柔らかい瞳に心の中でわだかまっていた気持ちがさらさらと流れていくような気がした。

2019-08-28 00:10:44
mona @mona5770

光忠の胸にぼすんと身体を預けて腰に手をまわす。 「長谷部くん?」 驚くような声をあげる光忠の頬に手を伸ばす。 「好きだ」 蜂蜜色の瞳がゆるく弧を描く。 そして雨と傘に隠れてそっと口づけをかわした。 何度も何度も飽きずにお互いを貪る。

2019-08-28 00:10:44
mona @mona5770

いつしかどちらともなく、くすくすと笑いながら唇に頬に鼻にと口づけを落とす。そうしてまた見つめ合うと深くお互いを味わった。 雨あがったみたいだね。 傘を閉じて雨上がりの空を見上げる横顔に 「光忠」 声をかけると右手を差し出した。 「長谷部くん?」

2019-08-28 00:10:45
mona @mona5770

雲の切れ間から射す光が行き場のない手を照らす。 「一緒に帰るぞ。帰ったら主に俺たちのことを報告したい」 そういうと光忠の左手を握り足を踏み出した。 「うん。そうだね一緒に帰ろう」 ぎゅっと握りかえしてくれる手が温かい。 本丸へと歩き出す俺たちの上にいつのまにか虹がかかっていた。 終

2019-08-28 00:10:45