令和3年第7回草津町議会定例会について

【あらすじ】事件の経緯をざっくりと説明します。

※この記事を読まれる方は事件を知っている人だと思うので、もっと詳しい内容が知りたいと感じたかたは、ネットで他の詳細な記事をあたってみてください。

• 2019年5月：町長が時間湯の危険性を指摘
• 2019年8月：議会が時間湯制度の廃止を決定
• 同月：電子書籍第1巻が出版
• 2019年11月：告発文の載った電子書籍第5巻出版
• 2019年12月：新井氏が議会を除名処分
• 2020年2月：除名処分が群馬県によって取り消される
• 2020年4月：時間湯制度が廃止
• 2020年11月：署名活動によりリコール投票が決定
• 2020年12月：リコール投票で新井氏が議員を解職
• 2021年6月：リコール取り消し請求が棄却される

【注意】不快になる呟きもまとめています

• 草津町議会も、町長も、新井氏も、支援する会も、等しく批判しています。
• セカンドレイプにあたる発言もまとめています。

◆12月6日　草津町議会が百条委員会設置を決定

• 2021年12月6日から、草津町では草津町議会の12月定例会が行われていました。

• その議会中に『百条委員会』を設置することを決定した、というニュースが流れてきたのです。

• 一見すると町議会内で『性暴力被害告発事件』についての調査するための委員会なのかと思われました。

• しかし内容をよく読むと実は違っていて、『町役場内で文書改ざんが行われている疑惑がある！それは大変な事なので調査しよう！』という話のようでした。

■12月7日付、読売新聞の記事

• ニュース記事引用その①：
  『群馬県草津町の元町議・新井祥子氏（５２）が電子書籍で「町長と町長室で性交渉した」と告白した問題で、当時、黒岩信忠町長（７４）の面会記録に改ざんがあったとの指摘があり、町議会は６日、地方自治法に基づく調査特別委員会（百条委員会）を設置した。議員６人で構成し、黒岩町長ら関係者から聞き取りを行い、議会最終日の１０日に調査結果を報告する予定。』

■つまりどういうこと？

• ニュース記事引用その②：
  『改ざんを指摘したのは、電子書籍著者の男性。黒岩町長から新井氏とともに慰謝料４４００万円の支払いなどを求められている民事訴訟の被告で、準備書面の中で、町役場で文書改ざんが日常的に行われているとしている。』

• 2021年12月当時、黒岩町長は、自筆の電子書籍の中で女性議員の性暴力被害の告発証言を発表した、ライターの飯塚玲児氏に対して2019年12月に名誉棄損の民事訴訟を起こしており、その係争中でした。

• その裁判のために飯塚氏側が提出した準備書面の中に、『町役場で文書改ざんが行われている』という指摘があったということのようです。

• そのため、議会で実態を調査する必要があると判断した…とのことでした。

■純粋にすごい

• 個人的には町長か議長じゃないとできないような議会の私物化に見えていたんですが、アンチ?すぎて視野狭窄になってるかもしれないです。

• つまり、個人的な裁判の中で指摘された穴を埋めるために、百条委員会（議会）を利用して穴が無いという証明をしたいという事なのかなーという印象を覚えたのでした。

【そもそも】百条委員会ってなに？

百条委員会の解説（goo辞書より）

• 引用：
  『《地方自治法第100条に基づくところからの通称》地方議会が必要に応じて設置する特別委員会。自治体の事務について調査する。関係者の出頭と証言、記録の提出を請求できる。正当な理由なく関係者が出頭、証言、記録の提出を拒否したときは禁錮または罰金に処することができる。』

要約すると、

• 地方議会が設置する特別委員会。
• 地方自治体の行政について調査を行う。
• 関係者に出頭を命じて証言をさせる権限を持つ。
• 証言者が嘘の証言をした時には偽証罪に問われる。

…という、かなり強い権限を持つ特別調査チームの事です。

※ かつてのワイドショーで話題になったぐらい有名な事例ですと、2013年に当時の猪瀬直樹都知事が徳洲会グループより5000万円を受け取った件について、同年に東京都議会が百条委員会の設置を決定しています。設置決定の翌日に猪瀬都知事は辞任を表明しました。（証言の際に嘘がつけないからと見られています）

※最近の事例ですと、2021年7月に起きた熱海土石流について、不法に投棄された大量の盛り土が土石流の被害拡大の原因となった可能性があるということで、2022年11月に熱海市議会では原因究明のための百条委員会を設置していました。（2023年3月に報告書がまとまり、争いの舞台は司法へと移ることとなりました。）

■ただし設置には疑問も

• 議会の中での事情（会派や政治的理由）によっては、そもそも百条委員会の設置が行われなかったり、たとえ設置されても、疑惑が解明されないままに終わってしまったりということもあるようです。

• あとは、『百条委員会を設置し報告書をまとめた』という形骸化が懸念されるているということでした。

• つまり、政治的な事情によっては、疑惑をしっかり解明しないままに『百条委員会を設置して調査しました！』というお墨付きを行政側に与えてしまうのではないか、という事にもなりますね。

■その点、草津町議会ではどうかなー。

◆12月10日　百条委員会の報告が議会にて了承される

■12月11日付、読売新聞の記事

◆12月13日　新井氏が町長を刑事告訴

■新井氏記者会見動画

≪出演者≫
新井祥子氏
支援する会・会長　中澤康治議員
支援する会・副会長　増田都子氏

• Youtube動画概要引用：
  『草津町の新井祥子元町議は、黒岩信忠町長から性被害を受けたと公表したが町長はそれを虚偽と主張した。新井議員は名誉棄損で刑事告訴され、損害賠償の民事訴訟を起こされたうえ、解職請求（リコール）の住民投票で失職する。2021年12月13日、彼女は、町長を強制わいせつ容疑で前橋地検に告訴し、記者会見を開いた。』

■12月13日付　FEM-NEWSの記事

※FEM-NEWSは編集責任者が三井マリ子氏の世界のフェミニズム関連ニュースを紹介するためのエキサイトブログサイトです。
※三井マリ子氏はフェミ議連の関係者です。

• 記事引用：
  『12月13日（月）、群馬県草津町議会の新井祥子前議員は、黒岩信忠町長を強制わいせつ罪で告訴した。1月7日時効を迎えるが、「このままではあまりに悔しい」と刑事告訴にいたった。』

■強制わいせつの時効は？

• この刑事告訴の記事でポイントになるのが、公訴時効だと思います。

• 事件が起きたとされるのは2015年1月8日です。

• 強制わいせつの時効は、犯罪行為が終わった時点から数えて7年です。

≪参照≫
静岡県警｜性犯罪捜査Q＆A

• 記事引用：
  『犯罪行為が終わった時点から数えて、強制性交等は10年、強制わいせつは7年、これらにより被害者が怪我をした場合は強制性交等・強制わいせつ共に15年、被害者が亡くなった場合は強制性交等・強制わいせつ共に30年で時効になります。』

• 2021年12月13日に告訴した時点で時効の26日前です。ギリギリですね。

■もしかして。

• 被害の程度、例えば不同意のまま身体に接触があったが性交を伴わない場合などは暴行罪、傷害罪、迷惑行為防止条例違反といった罪に該当すると思いますが、そちらの公訴時効は3年です。

• つまり、2020年11月当時の新井祥子氏が、2015年1月8日の録音データをもとに町長の名誉を棄損し、なんらかの刑事罰を与えようとした場合、強制わいせつ罪よりも時効に猶予がある罪状でしか告訴できなかったのではないかという推察もできるかと思われます。

■12月11日付、読売新聞の記事（再）

■12月15日付　AERA dot.の記事

※北原みのり氏の記事です。
※北原みのり氏は、2020年11月のリコール運動からこの件に関わっているようです。リコール運動当時の議会を傍聴した時の様子を記事にしたことで、この事件がネット上に拡散されたと、アンチフェミから批判を受けています。

• 他のニュース記事だと、『性暴力被害を訴えました』で終わってしまっていて、ものすごく物足りないので、北原氏の記事が一番分かりやすいです。

• 記事引用①：
  『そこには親しげな会話が残されていた。会話からは、2人が前日に消防団の出初め式に参加していたことがわかり、そこで日にちが特定され、さらに午前10時を知らせるチャイムが鳴ったことから時間も特定された。』

• 記事引用②：
  『音声は性被害を証明するものではなく、事件があったと新井さんが主張する日時に町長と一緒にいたというだけの事実である。とはいえ、これは大きい。というのも、町長はこれまで「その日に2人では会っていない」「町長室のドアは開けっ放しにしていた」「新井議員を“祥子ちゃん”と呼んだことはない」などと議会で断言し、新井さんを虚言癖があると攻撃してきたからだ。ところが音声データには、ドアをノックし開閉する音、「祥子ちゃん」と呼びかける声も残っていた。少なくとも、町長にはこれまでの説明との矛盾を語る責任があるだろう。』

• この記事は、文書改ざんに関する百条委員会を暗に批判しているように感じました。

• 何故かというと、北原氏の記事の通り、今回公表された音声データの内容は、今まで町長が議会で答弁していた内容を否定するものでもあったからです。

• この音声データによって、百条委員会を開いて調査・証明した内容が、否定されているのではないか？と、町長や議会へ疑問を投げかけていると思いました。

◆12月20日　黒岩町長が新井氏を刑事告訴

■黒岩町長の記者会見動画

■12月20日付　FNNプライムオンライン

※FNNはリンク切れのため、別のニュース紹介サイトのリンクを貼ります。

• ニュース記事引用：
  『町長の黒岩信忠氏が、20日午後2時に会見を開き、「強制わいせつ行為を、告訴人(黒岩氏)が被告訴人(新井祥子氏)に対して行った事実は、不存在である。明らかに虚偽告訴罪だ」と訴えた。』

• この弁護士さんと思しき方が1年後ぐらいに行われた記者会見の動画で出演されてるんですが、なかなかやり手のかたなんだろうなという印象でした。

• 町長は、2019年11月当初から『あなたが告訴したら私が虚偽告訴で訴え返すのでぜひやってください』という主張でした。

• そのため雛形の準備などもできていたでしょうし、証拠の資料も揃える時間も、訴訟に臨む心構えも十二分に出来ていたのだろうと思います。

◆12月24日　町長が不起訴処分

■12月25日付　デイリー新潮の記事

• このデイリー新潮の記事はかなり細かく書かれており、大変読みごたえがある内容でした。

• 今回の刑事告訴×２の経緯に加えて、電子書籍出版からの除名処分と処分取り消しを経由して署名運動からのリコール投票の投票数と失職処分不服申し立ての棄却まで、時系列を分かりやすく紹介しています。

• 加えて、この刑事告訴の後に行われる町長選挙や補選にも言及していて、謎の関係者のコメントも臨場感があってとても良いです。

• 更に言うならば、この告発の原因とも囁かれている時間湯制度の事にも触れているので、この記者完全に『わかってる』。

• ライターさんは恐らく2019年の告発当初から追ってる人なんだと思いますが、こんなに良記事を書いてくださってありがとうございます。（次回もよろしくお願いします）