これは壱ノ笠という街で「かどわかしの商売人」と呼ばれる者達のお話である。 (※連載当時のまま掲載しているので、誤字脱字があります) (※現在も執筆中なので、一通り書き上げたらまとめて収録します)
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伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

――いいのかな、僕、こんな風にしてて…。でも、あの時居た所よりも、なんだか、安心するな……。

2023-02-20 21:47:23
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

風呂に上がった少年は、籠に入っていたバスタオルで頭や身体を拭いた後、既に用意されていた衣服に着替え、風呂場を出ると、扉の横に立っていたブラウニーが「湯加減、如何でしたか?」と聞いてくる。 「とても、良かったです…」 #かどわかしの商売人

2023-02-21 20:53:59
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

その様子に驚きつつも返答した少年を見つつ、ブラウニーは安堵したような表情を浮かべる。 「ありがとうございます、神田様はリビングで休んでいて下さいね」 「うん、ありがとう…」 短い会話を交えつつ、二人はリビングに向かって行った。

2023-02-21 20:56:00
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

リビングのソファに座って数十分、少年が言葉を発する事もなく、台所でブラウニーが何かを作っているのを見ている時だった。 玄関から扉が開く音が聞こえるや、ブラウニーは調理の手をいったん止め、玄関に向かって行く。 #かどわかしの商売人

2023-02-22 19:34:36
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

一分としないでブラウニー戻ってくると、再び、台所へ戻って行く。 その一方で、外から帰って来たニイナは、緊張したような面持ちの少年を見ながらに言う。 「そんなに緊張しなくてもいいんだぞ、神田」 頭を縦に頷かせると、ニイナは続けて話を続ける。

2023-02-22 19:34:37
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

「ブラウニーが夕食を用意してくれるそうだ、神田も食べるだろう?」 「…いいの?」 「あぁ、寧ろ、この時間にお前のような者を外にほっぽり出すなんて【カゲ】に餌をやるようなもんだからな」 「かげ?…えさ?」

2023-02-22 19:34:37
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

この時【カゲ】という存在を知らなかった俺は、ニーナさんが何を言っているのか解らなくて、思わず頭を傾げてしまったが、ニーナさんは笑いながらにこういった。 「ようするに、夜に子供を外に出させてたまるかってことだな」

2023-02-22 19:34:38
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

「ようするに、夜に子供を外に出させてたまるかってことだな」 その顔を見た時、少しだけ、俺の表情がほころんだが「ニイナお嬢様、口が悪いですよ」と、出来立ての夕食を並べながらブラウニーさんが注意していたのを覚えている。

2023-02-22 19:34:38
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

夕食後、話の流れでニイナの家に泊まることにはなった少年だが、何時までも長居してはならないと、心の中で思っていた。 ブラウニーに泊まる部屋を案内され、ベットの上に座り、天井を見ながらに考える。 #かどわかしの商売人

2023-02-23 19:29:30
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

――朝になる前に、出よう。 そう決意した少年は、ベットで横にならず、辺りを見渡し、近くにあったテーブルの上に置かれていたペンと紙を見つけ、二人に対するお礼を書いた後、二つ折りにして上着のポケットに入れ、窓から見える景色を眺め、朝が来るのを待った。

2023-02-23 19:31:07
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

日が昇る少し前、少年はリビングのテーブルに礼状を置き、ニイナの家を出た。 自ら選んだ事なのに、なぜだろう、少年は不思議と涙が出そうになってしまう。 #かどわかしの商売人

2023-02-24 21:14:37
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

例え『あの二人が自分を迎え入れてくれる心があったとしても』あれ以上『二人に迷惑をかけてはいけない』と思ってしまう。 思わず、振り返りそうになったが、少年は、朝陽が昇る方へ走って行った。

2023-02-24 21:14:37
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

少年はやがて空腹となり、道端にへたり込んでしまう。 ――食べるもの、どうしようかな…。 そう思ったが最後、少年の視界はぼやけ、意識さえも朦朧となってゆく。 #かどわかしの商売人

2023-02-25 20:25:49
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

瞼を閉じて数分後、少年は何も言わないまま立ち上がり、辺りを見渡した。 ――何もない、か。 少年とは別の意識が目を覚ますと、そのまま、その場を去ってゆく。

2023-02-25 20:25:50
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

――空腹では、この体も持たぬことは確かだが……、流石にあの場所に戻るつもりはないが…さて、どうしたものか。 人の気配を感じ取るや、素早く物影に隠れた少年は、箕を潜め、その者達の会話を聞く。 「それにしても、あの少年は一体何処に行ったんだ?」 #かどわかしの商売人

2023-02-26 19:19:08
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

「目撃情報では、この近くで見かけたということだが…、いくら自力で逃げ出したとはいえ、行ける距離なんて、たかが知れてるものさ」 「お前、妙に軽いな」 「だってよ、俺達が追ってるのは一人の子供だぜ?それも、上司様が施し損ねたヤツなんだからよ」

2023-02-26 19:19:09
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

「その子供を見つけきれんから、俺達の仕事よりも先に見つけて来いって頼まれたんだろうが」 「ハッハー、そうだった、そうだったー」 「ったぁく、ノリが軽すぎるんだってのよぉ」

2023-02-26 19:19:09
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

少年を探す大人たちの気配が消えたのを確認した少年は、物陰から顔を出し改めて考え立つ。 ――どちらにせよ、この空腹を満たさねばならんが…、同時に、この意識は一時的に消えるようなもの……さて、如何したことか。 #かどわかしの商売人

2023-02-27 20:54:27
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

すると、何処からか良い匂いが漂い出し、その方へ向かって行くと、公園で一人、炊き出しをする女性が居た。 周りには、様々な者が作りたてのスープをカップに入れ、事前に作っていたおにぎりを手渡している。

2023-02-27 20:54:28
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

目の前に居た人から礼を言われて頭を下げた後、少年の姿を目にするや、言葉なく手招きをした。

2023-02-27 20:54:28
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

磁石のように女性の手招きによって引き寄せられ、テーブルの上に置いてあったおにぎりとスープを入れているカップを手にしながらに言う。 「よかったら、食べる?」 こくりと頭を頷かせた少年は、おにぎりとスープを受け取るや、ゆっくりと食べ始める。 #かどわかしの商売人

2023-02-28 19:33:52
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

「どう、かしら?」 ごくりと飲み込んだ後「うん、美味しい」と返す。 「そう、良かった」 その返答を聞いた女性は安堵しつつも、次に来た人に先程と同様におにぎりとスープを手渡した。

2023-02-28 19:33:53
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

やがて、配るべき食料も全て終えると、女性は道具を片づけ始める。 その姿を見た少年はすかさず「手伝うよ」と言い、近くにあった道具を片づけ始める。 「ありがとう」 #かどわかしの商売人

2023-03-01 21:16:50
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

数分後、二人で片付けたお陰で、何時もより早く事が済み、女性は少年に向かって改めてお礼の言葉を申した。

2023-03-01 21:16:50
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

「おにぎりとスープ、美味しかった…です」 そう言って、少年はその場を去ろうとしたが、女性は「待って」と言い、少年の方へ向かう。 「よかったら、私の所に来ない?」 「でも……」 #かどわかしの商売人

2023-03-02 19:51:43
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

すると、女性は目を細めながら「いいのよ、遠慮しなくても」と言う一方で、少年は意識が朦朧とし、女性に寄りかかるように前へ倒れてしまう。 「だって、私の作った食事を食べた時点で、既に罠にかかったも同然ですもの」

2023-03-02 19:51:44
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

鈍い感覚が身に残る中、少年は目を覚まし、身体を起こす。 ――何処だろう、ここ…。 電球が一つだけぶら下がる薄暗く、人の視線を感じる部屋に居た。 「お前も、アイツのワナにハマったんだな」 #かどわかしの商売人

2023-03-03 20:42:04
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

目の前に居た少女に声をかけられると、少年は「ワナ?」と掠れた声で反応する。 「アイツは食べる物で私やアンタみたいなのを誘って、こんな場所に閉じ込めるんだよ」

2023-03-03 20:42:04
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

「いつからいるの?」 「アンタが来る前からだな、私が来る前にも他のヤツが居たけど、何故か私だけが呼ばれちゃあいない。無論、アンタも込だけどな」 「そう、なんだ…」 辺りを見渡すが、窓も全くない部屋に閉じ込められている以外、何も解らない。 #かどわかしの商売人

2023-03-04 21:12:14
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

少女はその様子を見ながらに、頭を掻きながら少年の顔を見て話を続ける。 「っていうか、ココじゃあ私らが何時から居るのか解らんから、どれくらいの時間が経ったのかもわかりゃあしないぜ」

2023-03-04 21:12:15
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

溜息をつきつつも、少女は少年に向かって問う。 「アンタ、そういえば名前は?」 「僕は、神田平藏です…」 「私は芳井エリ、よろしくな」 「うん、よろしく」 お互いの名前が分かった所で、扉の下から二人分の食事が乗ったトレイが差し出される。 #かどわかしの商売人

2023-03-05 20:25:04
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

エリは警戒しながらも、皿に乗っているコッペパンを手に取り、匂いを嗅ぐ。 「コレは大丈夫だ、神田、食べるか?」 ウンと返答した後、エリは手を付けていない方の皿を神田少年に渡しながらに呟いた。 「にしても、私らを攫ったヤツは一体、何を考えているのか、さっぱり解らんな」

2023-03-05 20:25:04
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

コッペパンを食べていたエリと神田少年だったが、次第にエリの方に変化が起こり、フラフラと足元がよろき出し、その場にへたれこんでしまう。 神田少年はその場に駆け寄り「大丈夫?」と声をかける。 「…なんか、ヘンな感じになってる……」 「ヘン…?」 #かどわかしの商売人

2023-03-06 19:33:06
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

エリがその場にうずくまっていると、神田少年に食事を手渡した女性が部屋の中に入ってくる。 「ワナにかかったのは、この子か…」 「お前……、コレに、なにを入れやがったんだ……」

2023-03-06 19:33:07
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

「そのコッペパン味は、どうだった?」 「なんだと…?」 「どうだったのかと、聞いているのよ」 「んなぁこと、答える意味がわからないな…」 「どちらにせよ、アナタの口が答えなくとも、身体が答えを導いてくれるわよ」 #かどわかしの商売人

2023-03-07 21:04:28
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

女性はその場から立ち上がり、部屋を出ようとしたが、神田少年の方を見て言った。 「アナタも、その内にするから、大人しく待ってなさいね」

2023-03-07 21:04:29
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

この部屋に閉じ込められて、どれくらい経ったのだろうかは解らない。 ただ、解る事と言えば、三食かならず食事が出る事と、その度に例の女性が部屋に入り、芳井エリの様子を見る。 #かどわかしの商売人

2023-03-08 20:33:00
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

当のエリは、神田少年の事を気にしつつも、自身の身体の変化に抗い続けている様子を間近で見ている神田少年は、心配する言葉をかける。 「大丈夫、問題ないよ」

2023-03-08 20:33:01
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

エリと神田少年の様子を見に来た女性は、エリの様子を見るや外に居る人を呼び、別の場所に運ばせるよう、指示を出す。 「どこへ、連れて行くの」 「私の研究室よ、彼女は、いままでの子とは異なる反応が現れているからね」 #かどわかしの商売人

2023-03-09 20:05:40
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

「待っ、てよ…!」 少年はその場に立ち上がり、エリを自身の側に引き寄せようとするが、大人と子供では力の差は直ぐに現れてしまい、その場にはたかれてしまった。 「このガキィ!」 更に加害しようとしたが、女性はその手を抑え「やめなさい、この子は逃げた所の実験体の一人なのよ」と言った。

2023-03-09 20:05:40
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

「でもよォ…」 「もっと、丁重になさい」 睨みを利かせた表情を見るや、致し方なく大人しくなり、さっさと部屋を出た。 「調べはついているのよ、神田平藏くん。アナタは、例の研究所から逃げた子供だってね」

2023-03-09 20:05:41
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

神田少年は黙り、返答に迷っていた。 確かに『あの場所から逃げた』が、自らの意思ではなく気が付いたら『あの場所から離れていた』のだ。 それを伝えても、目の前に居る大人が納得できるだろうか。 所詮は、子供の言い分だと見てしまうだろうか。 #かどわかしの商売人

2023-03-10 20:00:09
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

女性は少年の顔を見つつも、部屋を出る直前に言った。 「どちらにせよ、アナタも近いうちに私の研究対象として迎え入れてあげるから、もう少し待ってなさいね」

2023-03-10 20:00:09
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

エリが部屋から連れ出された日を境に、毎日の食事における品数が変わり始めていた。 ある時は多かったかと思えば、別の時になると少なかったりと言う具合に。 #かどわかしの商売人

2023-03-11 21:02:11
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

育ち盛りでもある神田少年にとって、少ない時ほどお腹は直ぐに空くものだから、余程のことが無い限り、動かない方が良いという事に気が付き、食事や用を足す以外はなるべく一定の場所に動かずにいようと、考えるのであった。

2023-03-11 21:02:12
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

更に数日たった時の事、食事を終え、配膳されたトレイを所定の場所に置き、壁の隅に行こうと思った時だった。 扉の向こう側から、聞き覚えのある声が耳に入った神田少年は、扉に耳を当てる。 「―――!」 「――?」 「――――!!」 「―」 #かどわかしの商売人

2023-03-12 20:54:33
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

一人は大声を出しており、もう一人はそこまでの声量はなかった。 その声を聞いた神田少年は(今、ここで声を出したら、その人に助けてもらえるんじゃないか?)と思ったが、それは同時に、例の女性にも気づかれてしまうという事になる。

2023-03-12 20:54:34
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

いずれにせよ、今がその時ではない、と思った少年は黙ったまま、扉からそっと離れた。

2023-03-12 20:54:34
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

極端に食事の量がすくなかった時が続いた時だった、空腹で、神田少年の視界はぼやけ、意識が朦朧とし、その場で項垂れるが、数分とせず、頭を上げ、辺りを見渡して考える。 #かどわかしの商売人

2023-03-13 20:19:20
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

――まさかだとは思うが…、あの女、この器の中に俺が居る事に気が付いているというのか? 神田少年とは、別の意識が目を覚ました時だった、部屋の扉は勢いよく開かれると、そこに居たのは例の女性だった。

2023-03-13 20:19:21
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まとめたひと
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

基本は自分が考えた創作ッ子達の事を呟いたり、絵を上げたり、お話も書いたりします。偶に違う話等もしておりますが……ようは気まぐれだが基本は創作用アカウントです。(※食べても美味しくない鶏野郎で無言フォローをしたり、時として話すとアツくもなりますがそれでもよろしければです)御用の方はDMまで。