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②「買えるところもないし、私の傘に入れ」 そう言って女物にしては大きめの傘を掲げたが、さて困った。なにぶん審神者と大包平とでは身長差が大きい。 「うぅむ…」 審神者が高めに傘を掲げても、大包平はかなり屈まなければ入れないし、体を折ったことで結局傘からはみ出してしまう。腕も疲れる。

2017-10-13 19:32:51
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③「…俺が持とう」 今度は大包平が持って、なるべく低めに差してみるが… 「…すまない。私には傘の恩恵が感じられなくなった」 傘から遠く離れた位置にある審神者の体は、どんなに身を寄せ合っていても、吹き込む雨に頭から晒される。袖口で水滴を軽く拭ってやりながら、大包平は考える。

2017-10-13 19:33:36
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④彼女のことだ。「もういい」と言ったところで諦めないだろう。今だって腕を組んでなにやら知恵を絞っている。当分雨は止みそうにないし、雨宿りしてやり過ごすことも難しそうだ。 「…仕方あるまい」 「うん?」と不思議そうに見上げてきた審神者を、有無を言わさず抱き上げた。

2017-10-13 19:34:16
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⑤「お、おい!」 「傘はお前が持て」 慌てる審神者に傘を押し付ける。こうして片腕に座らせるように抱きかかえれば、並んで歩くよりもずっと身長差は小さくなる。悪戯心も含めて、すこし高い位置にある彼女の顔を得意げに見上げれば、への字口の彼女からは、やれやれとため息が返ってきた。

2017-10-13 19:34:53
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⑥「途中で重さに音を上げても聞かないよ」 「お前ごとき重いうちに入らん」 審神者は大包平の首に回した手に傘を持った。なるほど、これなら二人とも濡れずにいけそうだ。 彼女は平然とした風を装っているが、頬がすこし紅い。大包平は、満足そうに笑った。【終】

2017-10-13 19:35:49
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【大さにSS①】「ふあぁ」 欠伸をしながら、審神者は厨へ向かった。 今夜はまだ仕事が残っている。コーヒーでも飲んで目を覚まそう。この本丸に来てからめっきり緑茶派になっていたので、久しぶりだ。 厨に香ばしい香りが漂いはじめた頃。 「なんだ、この香りは」 大包平が、顔を覗かせた。

2017-10-25 02:21:37
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②「まだ起きていたのかい」 「喉が渇いて目が覚めた。それは飲み物か?」 「うん。でも寝るのなら飲まない方が良いよ。目が覚めてしまうから」 「いや、俺にもくれ」 興味深そうに、訝しそうに、審神者の手の中の黒い液体を眺めている。そういえば、今まで大包平にコーヒーを飲ませたことがない。

2017-10-25 02:23:04
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③仕方ないねと、審神者は2つコーヒーを入れた。大包平はゆらゆらとカップを揺らして、くんくんと嗅いで、慎重に口をつけた。 「…おい、ほんとうにこれは、口にして良いものなのか」 文字通りの、苦い顔をした。 「ふふ、慣れていないと無理かもな。どれ、飲みやすくしてやるよ」

2017-10-25 02:23:46
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④審神者は彼の手からカップを取ると、牛乳と砂糖を加えた。かき混ぜた匙をぺろりと舐めて、ふむと呟く。 「すこし甘めになったけれど、この方が良いだろう。飲んでごらん」 凶悪な黒色から随分とやわらかい色になったそれを、大包平はぐいと一息に煽った。多分、審神者に笑われたのが癪なのだ。

2017-10-25 02:24:24
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⑤「…美味い」 空になったカップを見ながら、不思議そうに呟いた。 「子供舌だねえ」 素直な反応が面白くて、つい、審神者はまた笑ってしまった。大包平が、じろりと睨んでくる。 「そっちの黒い方を寄越せ」 審神者の手のカップを奪い取る。砂糖もなにも入っていない、濃いめのものを。

2017-10-25 02:26:18
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⑥ぐいと飲んで、盛大に嫌そうな顔をする。無理に飲まなければ良いのに。 「慣れだよ、慣れ」 への字に固く結ばれてしまった唇に、角砂糖を押し込んでやった。審神者はもう一杯入れると、それを手に立ち上がる。 「寝る前には、歯を磨くんだよ」 去り際に紅い頭を撫でたら、うるさそうに払われた

2017-10-25 02:27:26
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⑦でかい図体して可愛いもんじゃないか。 審神者はくすくすと笑いながら部屋に戻った。 それから。 夜にコーヒーを入れると、大包平がやってくる。審神者と同じものを飲もうと。 少しずつ慣れたけれど、結局甘ったるいのが一番好きなようだ。 審神者が、一番最初に入れてくれたものが。【終】

2017-10-25 02:29:32
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【大さにSS】①「まったく、あの馬鹿…」 審神者は額に手を当て天を仰いだ。道場では刀剣男士たちが鍛錬に励んでいる。 「くそ、もう一番だ!」 「やれやれ、俺はもう疲れたぞ」 「三日月。俺が代わる」 「どちらでもいい。来い、天下五剣!」 大包平が、天下五剣に延々勝負を挑んでいる。

2017-10-27 01:03:01
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②三日月宗近と交替した大典太光世に、これまたいいようにあしらわれている。先ほど、三日月にも同じように遊ばれていたのに。学習していない。 大包平の技量が劣るわけではない。相手を意識しすぎて、冷静さを欠いているのだ。 「これはまた、荒れるなぁ」 審神者はげんなりと呟いた。

2017-10-27 01:03:35
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③結局、大包平は天下五剣から一本も取れなかった。疲労で足下も覚束なくなっても挑み続けるので、審神者が強制的に止めさせた。 肩を落とした大包平が道場からふらりと姿を消して後、少し時間を空けて、審神者は彼を探しに行った。苛立ちをぶつけている姿は、きっと見られたくないだろうから。

2017-10-27 01:04:09
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④本丸の敷地の外れ、あまり使っていない倉庫の裏に彼は居た。地面の土が抉れていたり、やっぱり暴れた跡がある。今は、倉庫の壁にもたれるように座り込んでいる。ちょうど良い頃合いだったな。 「大包平」 声をかけたが、返事がない。よくよく見れば、身体が不規則にこくりこくりと傾いでいる。

2017-10-27 01:04:50
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⑤「寝ているのか」 珍しい。審神者の前でも、滅多に本気で寝ている姿は見せないのに。近付いて覗き込んでも、目覚める気配がない。よっぽど疲れたのか。馬鹿だな。 大きな身体を、ぐらりぐらりと傾がせている。辛そうだ。かと言って、審神者の力では横になれる所まで運んではやれないし。

2017-10-27 01:05:23
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⑥「仕方ないね」 審神者はすぐ隣に座ると、紅い頭をちいさな肩に乗せてやった。少々心許ない支えだが、無いよりはましだろう。大包平もそこを定位置と定めたのか、ずしりと体重をかけてきた。 「け、結構重いな」 だが今更引くわけにもゆかぬ。審神者にも、意地がある。休め休め、存分に。

2017-10-27 01:05:57
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⑦「私はね、ほんとはおまえは勝てると思っているのだよ」 審神者は、肩の上で静かな寝息を立てる頭に、そっと自分の頭を寄せた。逆立った髪は一見硬そうだが、触れてみればふわふわと柔らかい。 「硬くなりすぎなんだ、おまえは」 彼を解してやれる言葉は、目覚めるまでに見つかるだろうか。【終】

2017-10-27 01:06:22
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【大さにSS①】「長雨続きで嫌になるね。洗濯もできやしない。おまえたち、着るのもは足りているかい?」 外は激しい雨で、手持ち無沙汰にしている刀剣男士たちの元に、審神者が憂鬱そうに現れた。 「ボクたちは大丈夫だけど、あるじさんのほうがまずくない?」 「ご明察だな、乱。その通りだ」

2017-10-29 19:16:21
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②審神者は昨日と同じ格好だ。日頃衣服に興味が無く、手持ちが少ないのが仇となった。雨でも構わず外に出て仕事や鍛錬に励んでいたら、瞬く間に着るものが尽きた。 「よそ行きの着物があるだろう。それを着たらどうだ」 三日月宗近が言ってきた。確かにある。殆ど袖を通したこともないものが。だが。

2017-10-29 19:17:32
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③「あれは自分で着れないからな…それに勿体ないよ」 審神者は日常的に袴姿だが、それは適当に帯で括って袴を履いているだけ。きちんとした着付けはできない。 「俺が着せてやろう。こんな日こそ着飾るといい。気が晴れる」 それに答えるより早く、「主。すこしいいか」と、大包平がやってきた。

2017-10-29 19:19:30
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④用事があるという大包平に連れられて審神者の部屋に戻ると、突然衣装箪笥を漁られた。箪笥を覗かれること以上に、中身がなさ過ぎる恥ずかしさに、審神者は慌てた。 「こら、やめろ」 「――これか。よし、腕を上げろ!」 ぴしゃりと言われて反射的に真上に上げたら、噴き出すように笑われた。

2017-10-29 19:20:37
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⑤「そこまで上げなくていい」 くつくつと笑いながら、審神者の着ているものを解き始める。「何を」と抗議したものの、抱えられたり、後ろを向け、今度はこちらをなどと、きびきびと命じられるままについ従ってしまったら、あっという間に着せ替えられた。殆ど着たことのない、よそ行きの着物に。

2017-10-29 19:21:14
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⑥よそ行きといえど、この年頃の女が着るにしては地味な色柄のものだ。大包平はふむと一声呟くと、真っ赤な紅葉の葉を、ピンで審神者の髪に留めた。 「なんだこれは」 「先ほど、庭に出たら落ちてきた」 「ふうん。それで、おまえの用事とは?」 「もう済んだ」 満足そうに笑っている。

2017-10-29 19:21:53
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⑦「しかし動きにくいね。それにすぐ汚しそうだ」 「汚さないよう大人しくしていろ」 やれやれと、審神者は肩を竦めた。 「美しい変化、だね」と、紅葉を見て乱が言った。花言葉か。何気なく調べてみた。 調和、遠慮、約束…大切な思い出。 その葉は、しばらく思い出に取っておいた。【終】

2017-10-29 19:22:47
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【大さにSS】①冬になると、空気が澄んで星がよく見える。審神者は縁側に腰掛けて、夜空を眺めていた。 「冷えるぞ」 かじかんだ指先にほうっと息を吐き掛けていたら、現われたのは大包平。隣に腰掛け審神者の手を取り、大きな手のひらに包み込む。 「冷たい」 「指先ばかりはどうにもね」

2017-11-10 01:27:51
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②たっぷり厚着をして、懐炉も仕込んでいるのだけれど。その甲斐あって身体は寒くはないが、その体温も末端までには届かない。手先足先は妙に冷える。爪先ももぞもぞと摺り合わせていたら、それも目敏く見つけられた。 「こっちに来い」 開いた脚の間に、引っ張り込まれた。

2017-11-10 01:28:26
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③膝を抱えて座らせた審神者を、後ろからすっぽりと包み込む。手には手を、足には足を重ねてくる。人ではないのに、彼の身体は温かい。じわりと伝わる熱が、冷えた身体を解してゆく。 「星など見て、どうした」 「べつに、綺麗だなと思って。あと、おまえたちのことを考えていた」 「俺たちの?」

2017-11-10 01:29:18
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④「遠いところにある星の光は届く迄に時間がかかるから、今見えている光は何十年何百年も前のものだったりするというからね。なんだかすごく不思議だ」 「それが何故俺たちと?」 「おまえたちも、何百年も前に生まれたものじゃないか」 重ねられていた大包平の手を、審神者が握る。

2017-11-10 01:29:57
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⑤「そんな遠いものと同じところにいるというのは、不思議な気分だ。私の人生は長くても百年しかないのに、その時間を優に飛び越えるものと、相見えるというのは」 存在を確かめるように、大包平の手をむにむにと弄る。 「逆ではなくてよかったな」 笑いながら、大包平が審神者の手を包み返してきた。

2017-11-10 01:30:45
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⑥…そうか。大包平が生まれた頃に生まれていたら、私は「今」に辿り着けなかった。大包平が私の歳に生まれていたら、彼はまだ心も持たず、今の姿にはなれなかったかもしれない。 「俺が生まれた頃の光も、この中には在るのか」 「多分ね。不思議だねえ」 審神者は微笑み、ふたり夜空を見上げた【終】

2017-11-10 01:33:51
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【出会ったばかりの頃の大さにSS】① 「食後には歯を磨け」と、審神者は皆に命じていた。 「俺たち虫歯とかならない気がするんだけどな~」 「でも、お菓子も食べてるから、わからないです」 後藤藤四郎と五虎退が器用に歯を磨きながら言った。 「むぅ……」 大包平は、歯ブラシを手に顰めっ面。

2017-11-16 22:53:44
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②人の身体というのは複雑なもので、まだ刀剣男士となって日の浅い大包平には、上手く使いこなせない面がある。このちいさい道具を複雑に扱う歯磨きという作業は、特に苦手だ。くまなく磨いたつもりでも、後で舌で歯をなぞってみると、どこかしらざらりとする。これは、汚れが残っている証だそうな。

2017-11-16 22:54:14
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③粟田口の連中はもう慣れたもので、器用に磨き終えると洗面所を去って行った。大包平は、鏡と睨み合いながら磨いてみる。この鏡というのがまた厄介だ。左右がおかしくなって、わけがわからなくなる。 「上手く磨けないのかい?」 悪戦苦闘していると、鏡の中に審神者がひょいと現われた。

2017-11-16 22:54:47
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④作業に集中するあまり、気配に気が付かなかった。不覚。大包平は、ますます苦い顔になった。彼はこの女が苦手だ。ちいさくて細っこいくせに剣の腕は立つし、話し方は偉そうだし、いつも見下されているような気がする。 「教えてあげるよ」 大包平の気も知らず、審神者はにこにこと笑っている。

2017-11-16 22:55:23
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⑤「いらん。鶯丸に聞く」 「馬鹿にされるんじゃないのかい?」 言葉に詰まった。たしかに、鶯丸にはそういうところがある。人のことを、面白がって見ているような。 「主に無理矢理世話されたとでもした方が、言い訳も立つだろう」 そう言うと審神者は椅子を持ってきて、座れ座れと座面を叩く。

2017-11-16 22:56:11
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⑥仕方なしに言うことを聞く。 「毛が寝ると汚れを掻き出せないからね。強く当てすぎてはいけないんだ。軽く握って、押し当てるのはこのくらいの力でいいんだよ」 大包平の口の中を覗き込んで、丁寧に磨きながら審神者が説明をする。人に大口を開けて見せているなど、みっともなくて腹立たしいが。

2017-11-16 22:56:45
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⑦「綺麗な歯だねえ。かたちも大きさも並び方も色も、とても綺麗だよ。大事にしないとね」 審神者は夢中で覗き込みながら、うっとりしたような声で誉めてくる。こういうところも、大包平は苦手だ。偉そうなくせに、偉そうじゃない。 「自分でやってごらん。ほら、こう持って」

2017-11-16 22:57:45
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⑧言われたとおりやってみせると、「上手いじゃないか」と笑っている。うがいをするのまで見守っている。子供扱いされているようで癪だ。 …と、いうのに。 「うん、綺麗だ」 磨き上がった歯を見て言う言葉にも目にも敬意のようなものがこもっていて、文句も言えない。 どうにもこの女は、苦手だ【終】

2017-11-16 23:00:23
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【大さにSS】①「こほ…っ」 乾いた風に漏れ出た咳に、審神者ははっと口元を抑え、辺りを見回した。今、庭にいるのは審神者一人。他の誰の姿も無い。審神者はほっと安堵して、落ち葉を掃き集める作業に戻った。戻ろうとした。 「――また風邪か?」 響いた声に、審神者は憂鬱な気持ちで項垂れた。

2017-11-23 22:54:46
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②「大包平」 このでかい図体で一体どこに隠れていたのか。大包平がのそりと現われた。 「違うよ。風に噎せただけだ」 そう言ったのに、上着を脱ぐと審神者の肩にかけてきた。 「寒くないって。それより半袖姿で目の前にいられる方が寒い」 審神者はていと投げるように、上着を長身の彼の肩に返す。

2017-11-23 22:55:20
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③先日、審神者が風邪で寝込んでからというもの、こいつはずっとこの調子だ。心配されているのか、それともまた風邪を引くことを期待されているのか、よくわからない。 上着を返したら、今度はちょろちょろと審神者の風上に立つ。寒風から守ってるつもりなのかもしれないが、正直邪魔だ。

2017-11-23 22:55:57
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④「何なんだ、もう。この間から!」 問いかけても、むすりと明後日の方を見るばかり。まったくわけがわからない。まあ、他人の心というのはそういうものだから、仕方ないけれど。わけがわからないし、思い通りにはならないものだ。 「…次に風邪を引いたらおまえに言うから。放っておいてくれ」

2017-11-23 22:56:29
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⑤適当に発した言葉なのに、大包平はぱっと喜色を浮かべた。 「そうか。そうしろ。ふん、それがいい」 満足そうに審神者の頭を撫でた。子供扱いされているようで、嫌なのだけれど。 大包平が鬱陶しいと鶯丸に相談したら、「努力しているつもりなのではないか?」と、言われた。

2017-11-23 22:57:01
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⑥「他のものより主に頼られたくてやっているのだろう」 「はあ。そういうのは、剣のように打ち込むほどに練度が上がるというものでもないと思うけれどね」 むしろすこし好感度が下がっているぞ、大包平。 「まあ、他の手段がわからないのだろう」 あれは不器用な奴だからと、鶯丸は笑っていた。

2017-11-23 22:57:56
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⑦「嫉妬させないように、構ってやるといい」 「構ったら構ったで、調子に乗るよ」 鶯丸が入れてくれた熱い茶に口をつけたら、聞き慣れた足音が響いてきた。 「何故そんなものを飲んでいる。冷えたか?」 審神者ははぁとため息をついて、覗き込んできた紅い頭に、面倒そうに目を向けた。【終】

2017-11-23 22:59:54
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【大さにSS】①「庭に柿の実が成っているのを見つけた」と、審神者が言った。大包平は審神者に付き合って、その木を見上げた。 「甘柿だろうか渋柿だろうか、どう思う?」 「そうだな…」 審神者に問われて、大包平はぐっと目を凝らした。人ではない彼の目は、人では見えないものも見える。

2017-11-29 19:50:11
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②「甘柿だな」答えてやると、審神者が目を輝かせた。 「では、高枝切り鋏を取ってこよう。果実が掴める奴を買ったんだ。先に取るなよ。私が取るのだからな」 「抱えてやれば届くのではないか?」 大包平が抱え上げると、審神者の手は果実に届いた。もぎ取ったそれを、大包平の服にこすりつける。

2017-11-29 19:50:41
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③「…何故俺の服で拭く」 「おまえの方が綺麗かと思って」 確かに、人ではない大包平は垢じみた感じになることもなく、いつでもつるりと綺麗なままだけれど。だからといって、どうなんだ。 何ひとつ気にも留めず、当然のように言い放った審神者は、「いただきます」とうきうきと柿に囓りついた。

2017-11-29 19:51:16
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