朴@轟沈
@hzy195
いつか、思ったことがあった気がする。穏やかに目を伏せながら思った。きっと。 ――我妻善逸は、この美しい音の少女に、首を刈り落とされたかったのだ。 じいちゃんが介錯なしに死んだから自分もそうしなきゃって禰豆子ちゃんを諦めたぜんいつくんいない?
2023-01-31 17:40:12
朴@轟沈
@hzy195
ゆしろうを訪ねたのは、兄には秘密のことだったが、即座に気付かれたのだろう。さみしそうな顔をして、でもそう時を置かずに兄も同じ鬼の目をしていた。「大丈夫だよ、禰豆子」と優し気に言われて、鬼の己が涙を流せるなんて知らなかった。
2023-01-31 18:52:06
朴@轟沈
@hzy195
ゆしろうは、溜息を吐いて「よくよくお前の妹は美人と言えるな、炭治郎」と、彼らしくもなく眉を寄せて苦く笑った。彼女を失ってのち、彼が笑ったのを見たのは初めてのことだと、彼ら兄妹も知っていた。
2023-01-31 18:52:06
朴@轟沈
@hzy195
不思議と、昔のような空腹はない。胸が満たされているからかもしれない。胸郭が有り余るほどの幸福感で満たされる感覚を知っているから、腹が減る余地がないのかもしれない。 かつて互いに思い知ったように、肌も焦げない。だが確かに、己らは確かに、人ではない。
2023-01-31 18:52:06
朴@轟沈
@hzy195
伊之助は、「莫迦どもが」とだけ言って、そのまま人の時を生きた。 「アイツと一緒に生きる奴も必要だろうが」と言った山の王は、生の規律を知っていてそれでいて賢い。
2023-01-31 18:52:07
朴@轟沈
@hzy195
其れの感覚にきっと慣れてしまっただろう兄は、気づかわし気な顔で彼女を見たが、毎度何も言わずに、彼独特の触手でもって善逸の四肢を柔らかに捕らえ固定した。 ――ごめんね、禰豆子ちゃん。 ありがとね、と、その時だけに聴ける彼の紛れもない素直な本心。
2023-01-31 20:28:52
朴@轟沈
@hzy195
何一つ知らないはずの、それでも望んだままに毎度変わらぬその声色をいつまでも聴きたいがために禰豆子たちは己たちなりの生の在り方の選択をして。 ――そうして、善逸の頸をパチン、と刈るのだ。
2023-01-31 20:28:53