うわぁ…という声を漏らした後「それ、一人で全部出来るんです?」八重島がそう聞くと「同期の機関者に良いモノを借りてるからな、よかったら来て見るかね?」ニヤリした顔で青木は八重島に聞いたのだった。
2021-03-05 20:17:41青木に案内されるがまま、八重島さゑ子は自身も在籍していたサイバーセキュリティ部に入ると(自分もこの間まで、ここに居たんだよなぁ…)と思いながら辺りを見渡していると「おや、八重島さん。お久しぶりですね」分厚いゴーグルをかけた機関者に声をかけられる。#Rhapsody277
2021-03-06 20:00:50――はて、誰だっけな…。 と、八重島は思いながらも「ど、どうも~」と、最近覚えた愛想笑いで誤魔化しながら挨拶をした。 向こうは特に変化のない声色で「アナタの活躍はコチラにも来ていますよ、色んな意味で派手ですからね」と返されるも「それはどうも」と言い返す姿をみせた。
2021-03-06 20:00:50それを間近に見た青木は「中々だぜ、さゑ子」と肩を叩いて言ったが、当の八重島が「何を言っているんです?」とでも言いたそうな表情を浮かべ「なんでもねーよ」と小声で返し、今度こそ、青木は自分の仕事場へ案内するのであった。
2021-03-06 20:00:50サイバーセキュリティ部の端っこにある小部屋に入った八重島さゑ子は(こんな狭い所に沢山の書類が…)と思いながら辺りを見渡している。 「帰ったぜ~」青木が何気なく言うと『おかえりなさいませ、ミスター・アオキ』機械的な挨拶声が聞こえ、八重島は青木に聞いた。 #Rhapsody277
2021-03-07 20:20:16「今の声、なんです?」 「あぁ、今の俺の仕事仲間だよ。発明部で同期の槻城が作った機械さ」 パソコンの傍に置かれているスマートフォンにも似た機械を手に取った青木は、八重島に見せながらに説明する。 「へぇ~…」 『ミスター・アオキ、この機関者は?』
2021-03-07 20:20:16「さゑ子、八重島さゑ子だ。彼女も同じく機関者だ」 『ミス・ヤエジマ…、初めまして。私は、ミス・ケヤキジロによって作られたスマートフォン型音声アシスト機です』 淡々と挨拶する機械に、八重島は頭を下げながら挨拶を返すと、青木は小さな声で「俺はナゴって呼んでいるけどな」と呟いた。
2021-03-07 20:20:17その日の夜、槻城は例のスマートフォン型音声アシスト機に異常が出ていないか確認する為、イヤホン付きマイクを装着しつつ、遠隔操作で起動させ「開発番号0507ちゃん、調子はどう?」と声をかけた。#Rhapsody277
2021-03-08 19:19:56『ご機嫌よう、ミス・ケヤキジロ。私の調子は、なんら問題ありません』 「青木くん、アナタに無茶な事とか言ってない?」 『今の所は無理な要求はしておりません、それよりも、ミスター・アオキは私に名前をつけてくださいました』 「どんな名前?」
2021-03-08 19:19:57『ナゴと呼んでいました、おそらく、開発番号からもじったのでしょう』 「成程……」 考え込むような槻城の声を聞き取ったナゴは『このデータは、消去致しますか?』と聞いたが「そう言う事じゃないわ、ただ、青木くんらしいなって思ったの」と槻城は言い返す。 『ミスター・アオキ、らしいですか』
2021-03-08 19:19:57「青木くんって、私達の中ではかなり早い段階で今の姿になった上に、誰よりも『人間という存在になりたがっていた』からね。私だって、青木くんに今の姿を勧められなかったら、アナタを作り出せなかったかもしれないし…」 『機関者というのは、不思議な存在ですね』 「確かに、アナタの言うとおりね」
2021-03-08 19:19:57「兎も角、青木くんの仕事が終わるまで、サポートよろしく頼むわね」 『承知しております、ミス・ケヤキジロ』 「じゃあ、また明日ね」 『また明日、ミス・ケヤキジロ』#Rhapsody277
2021-03-09 20:05:03遠隔操作によるチェックを終え、互いの通信が切れ、槻城はパソコンの電源を落とそうとした時「本体を更新して電源を切る」という知らせを見て、無意識のうちに選び、仕事場のソファに横になったのだった。
2021-03-09 20:05:03――あーあ、こんなに隙だらけだと、こんな場所、あっという間に食べちゃうもんね! 目に見は見えない存在は、277機関のシステムというシステムを行き渡り、一台のパソコンに目をつける。 ――おっとぉ、僕の入るスキマみっけ!#Rhapsody277
2021-03-10 20:12:28音もなければ気配さえもなく侵入し、たどり着いたのは電源がつけっぱなしのパソコンシステムの中。 ――じゃあ、いただきまぁーす! そうして、ありとあらゆるデータを喰らい尽くす上に、厄介なデータを残し、パソコンを駄目にさせる存在である事を本人は自覚しているのだから、厄介極まりないのである。
2021-03-10 20:12:29――あぁ~~、寝ちゃったなぁ…。 ゆっくりと上半身を起こした槻城は、自身の手でその眼をこすりつつソファから離れ、パソコンの電源をつけた。 ――なんだか、今日はやけに電源がつくの遅い気がするわね…。あれかしら、消す前に出てた更新がどうのってのが終わってない…とか? #Rhapsody277
2021-03-11 19:01:11まぁ、急ぐほどでも…と思った矢先だ、ドアをノックする音が聞こえ「どうぞー」欠伸交じりの声で言うと、向こうは慌てた様子で「大変です!機関中のデータが、何者かによって壊されてしまいました!!」と伝えたのである。
2021-03-11 19:01:11277機関中のパソコンやシステムが駄目になっている事さえも知らず、青木は何時ものようにサイバーセキュリティ部に入った時だ。 「青木!丁度よかった!!」 勢い良く肩を掴まれ「なんだよ!?俺に何か用ってか?!」デカい声で言い返す。 #Rhapsody277
2021-03-12 20:26:53向こうは「コレを見てくれ」と言い、目の前のパソコンの画面を見せた。 「んだよ、電源つけてねぇじゃねぇか」 「電源はつけてるが、厄介な事になってんだ」 デスクの下にある本体を見ると、確かにパソコンの電源はついており、黄色いランプが灯されている。 「何が厄介だって?」
2021-03-12 20:26:54「データが全部なくなって、ヘンな表示が出るんだよ!」 それを聞いた青木の顔は一気に青くなりつつも「おいおいおいおいおおいおい!まじかよ!!!」と言い、その場を離れ、自身の仕事場でもある小部屋に急いで向かうのだった。
2021-03-12 20:26:54何時もならば、誰かの手によって起動するスマートフォン型音声アシスト機のナゴだが、今日に限って誰が触れる事もなく電源が入ったが、ナゴは何時ものように『おはようございます』と声をかけた。 『おっはよー、音声くん!』 #Rhapsody277
2021-03-13 20:20:23聞き覚えのない音声を聞き取ったナゴは『失礼ですが、どちらさまでしょうか?』そう問うと、向こうはクスクスと笑いつつ『僕は僕だよ、まぁ、しいて言うならば…僕は美味しいデータを消化して、僕の中から出た悪いデータを残すていう存在だけどね』と返す。
2021-03-13 20:20:26『随分と、悪しき存在が現れたものですね』 『ん~、そんなにストレート風に言われちゃうと僕、傷ついちゃうよ~』 『遅かれ早かれ、機関者によって確保されるのは時間の問題でしょう』 『で~も~、僕から出たデータって厄介だからね。流石の機関者さんも捕まえるのも大変なんじゃないかな?』
2021-03-13 20:20:26『確かに、一理ありますね』 『でっしょ~、っていうよりも君、美味しそうだね~。食べてもいい?』 『お断りします』 『なんだよケチだなぁ、でも……君は試作とはいえ、音声認識と人工知能が入っている。僕から見れば、メインディッシュってよりかはデザートって感じだけどね』
2021-03-13 20:20:26機械だから逃げれる足もない、かといって、危険報知機能も入ってはいない、ナゴにとってみれば「取って食われてしまう」状況が生まれそうになった時、聞き覚えのある声を認識した時『ミスター・アオキ!』と、呼び止めたのである。
2021-03-13 20:20:27「ナゴ!」 『ミスター・アオキ!』 『ありゃあ、機関者さんお出ましってカンジだ!』 ナゴではない音声が聞こえるものの、肝心の声の主の姿が見当たらない。 青木が辺りを見渡していると『僕は今、君が叫んで呼んだ機械の中に居るよ』という音声が聞こえ、青木は近づいた。#Rhapsody277
2021-03-14 21:15:14「お前は誰だ?」 『僕はね、データを食べる存在さ』 「なんだと?」 充電器に挿していたスマートフォン型音声アシスト機を手に持った青木だが、向こうは気にせずに話を続ける。
2021-03-14 21:15:14『ココのデータは今まで食べてきた中では新鮮な方だったけど、後味がちょーっと苦かったから、口直しにデザートをと思った時にこの子を見つけたんだ』 「成程なぁ…だが、お前、コイツの親には許可をとったのか?」 『許可?親?』
2021-03-14 21:15:15「ナゴは試作機とはいえ槻城っていう、発明好きの機関者が作ったんだ。いわば、親と子みたいな関係も同然だぜ」 『成程ねぇ…、じゃあ、そのケヤキジロっていう機関者にオーケーを貰えば、僕はこの子を食べられるって訳だね?』 「単純に言えばその通りだが、槻城は絶対にノーと言うぜ」
2021-03-14 21:15:15ナゴを持ったまま、青木は槻城の居る発明部の所に向かった。 その間、ナゴの中に居る輩は何度か食おうとしていたが、その度に青木は何時もより低い声で脅すと『手は出さないってばぁ…』と向こうは怖気ついたような声をだすという展開が繰り広げられていた。 #Rhapsody277
2021-03-15 19:11:58勢い良くその扉を開けるや「槻城はいるか!?」と呼べば、目の下が何時もより黒く、髪の毛もろくに整えていない槻城が頭を上げ「青木くん?!」と、驚いたような声で返答する。 「手短に言う、ナゴの中にやべぇヤツが居る!どうにか出来ねぇか?」 「ど、どうにかって…いわれても……」
2021-03-15 19:11:58「ナゴが食われたら俺のしごっ………いいや、槻城の発明品が一つ失う事になるんだぞ?!」 「それはわかるけど…、でも、その時はまた作り直せば…」 青木の視線を逸らし、小さな声で言う槻城に対し、青木は視線を真っ直ぐに向けながらに言う。
2021-03-15 19:11:59「例え、槻城がまたナゴを作り直したとしても。今のナゴは帰って来ない。それがどういう事かは、誰よりも解っているだろう!?」
2021-03-15 19:11:59あまりにも熱く言う青木に対し、槻城は怖気づいてしまいそうになるも、ようやくその眼をまっすぐ見ながらに言った。 「そのやべぇヤツっていうのを、取り除けば、いいんだね?」 「んまぁ、単純な話をすればそうなるが…そう言う事は俺、疎いから……」#Rhapsody277
2021-03-16 19:16:28すると、槻城は先程とは180度変わった表情になりながら「私を誰だと、誰だと思ってるんです?私は、277機関イチの発明家…ですからね!」と高らかに言ったのだ。 『ちょっと!話が違うじゃないの?!!僕、この子を食べるってぇ――っ』
2021-03-16 19:16:28ナゴの中に居る厄介な存在が声を出して言うのも無視しつつ、青木は槻城にスマートフォン型音声アシスト機を手渡した。 『ミス・ケヤキジロ、メンテナンスですね?』 「そう、ちょっと痛いかもだけど、我慢できる?」 『勿論です』 「さっすがぁ~、じゃあ、ちょっと眠ってもらうね」
2021-03-16 19:16:29電源を切ろうとした時『待って!僕、どうなるのさ?!』と声が聞こえたが、槻城は目の色変えながら「さぁ~て。そのお口、一生チャックさせようか~?」という言葉を最後に、スマートフォン型音声アシスト機電源を切ったのだった。
2021-03-16 19:16:29何度、電源が落ち、再起動されたかはわからない。 けども、その度にミス・ケヤキジロは私の中に居る悪しき存在を取り除く作業を休みなくしてくれた。 その度に『やめてってばぁ!!』等と抵抗したが、彼女の手にかかれば、目に見えぬ存在は確実にかき消されてゆくのであった。 #Rhapsody277
2021-03-17 20:18:05スマートフォン型音声アシスト機のナゴが槻城の手でメンテナンスされている間、青木はサイバーセキュリティ部の機関者や、灰田チームに所属する八重島さゑ子らと共に、例の輩がやらかしたモノを削除やデータの復旧に駆り出されていた。#Rhapsody277
2021-03-18 20:12:18無論、その作業中もナゴの事が心配になる気持ちが沸き立ち、席を離れようと試みるも、隣に居た八重島から「気持ちは解りますが、今は槻城さんに任せましょう」と言われ「そ、そうだな…」という会話を何度も繰り返していたのは言うまでもない。
2021-03-18 20:12:18例の件から数日と経った、内勤で機械やパソコンのシステムに詳しい機関者達は休みなく活躍したが、今回、一番の活躍をしたのは厄介な存在を取り除いた槻城だったという事もあり、彼女に礼の言葉をかける者ばかりで、当の本人は何時も顔を真っ赤にして返答をするばかり。 #Rhapsody277
2021-03-19 19:53:55「私、誰かにココまでお礼を言われたことないから…本当、もうっ!恥ずかしくて外に出たくないですっ!」 といい、槻城は何時もと変わらずに発明部の隅っこで自らの仕事に没頭し始めるのだった。
2021-03-19 19:53:55その一方、青木は復旧したスマートフォン型音声アシスト機のナゴと、更には機関者復帰訓練中の空と共に例の書類打ち込みをしているということだ。
2021-03-19 19:53:56ある日の夜、槻城は頼まれていた武器のメンテナンスを終え、パソコンの横に置かれている機械に電源をつけるや「開発番号0503…どう?元気してる?」と聞いたのだ。 『元気は元気だけどさー、なんで今でも僕を生かしてるわけ?』#Rhapsody277
2021-03-20 20:08:56277機関内を騒がせた悪食的存在は、不貞腐れたような声を出して槻城に疑問を投げかけた。 「言ったじゃない、書類上では消去された存在だけど、実際、君に興味あるから許可を得て生かしてるって」 『君も変わったヤツだねぇ~、…でもそのお陰で、ナゴちゃんとお近づきになれるなら、いいけどね』
2021-03-20 20:08:56「それは無理だよ」 『なんでさ』 「開発番号0507番…ナゴちゃんは青木君の手元にあるし、何よりも完成品として君みたいな存在が一切入らないように改造も施したからね」 『ちぇーっ、つまんないのー』 「んまぁ、君は君で私が良いようにしてあげるからねぇ」
2021-03-20 20:08:57『完成するまえにココを脱出するからね』 「それも無理だよ、君が入ってるその機械も再利用の素材で作った開発品とはいえ、強度もあるし、感嘆には出られない機械だから」 『ちぇっ、抜かりない』 「私も、発明部所属とはいえ【機関者】だからね」 【Rhapsody277 発明 対 悪食的存在編 完】
2021-03-20 20:08:57#Rhapsody277 次回予告的コーナー… 青木「今回のタイトル、まるで俺が活躍してないみたいな感じじゃないのか?!大丈夫なのか、コレぇ!?」 ナゴ『確かにミスター・アオキの活躍もありましたが、例の悪食的存在を取り除いたのは他でもない、ミス・ケヤキジロですからね、無理もありません』
2021-03-20 20:15:47青木「ってか、次回予告的コーナーに三点リーダーついてる時点で嫌な予感しかしないのだが…」 ナゴ『おそらく、一区切りつけるのでしょうね』 青木「まじかーー、んまぁ、俺達ってどこの時代に属してないから何時でも活躍してる所あるから、いいっちゃいいけど、……なんだか寂しいなぁ」
2021-03-20 20:15:48ナゴ『まぁ、始まりあれば終わりがある訳ですから、我々は引き続き、277機関の機関者として職務を全うするだけですからね』 青木「そーだな!改めまして、ナゴ。俺と空 共々、これからもよろしく頼むぜ!」 ナゴ『こちらこそ、よろしくお願いします』
2021-03-20 20:15:48