お題「木枯らし」「揺蕩う長髪」「遺伝子」
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Keiko Nagamori @ki_engi

振り向く彼女の揺蕩う長髪が僕の頬をかすめた。髪の香りにあの日の光景が蘇り、木枯らしが吹いているというのに僕の全身は一瞬で火照った。 「遺伝子って怖いね。」 顔を上げずそう呟く彼女の口元を見ていた。代わりで構わないと言ったら君は離れていくだろうか。 彼女は亡くなった父の愛人でした。

2020-11-14 21:28:47
花滝ちかる @chikaru_toka

「お前、真っ赤じゃん」 貴方が笑うから、心臓が跳ねた。 「寒ーんだろ?」 差し出されたマフラーに、私の頬は一層火照った。…そうよ。木枯らしが冷たいから。それだけ。 でも、マフラーに残る温もりが、切なくて。 「おい…好きな女に泣かれっと、凹むんだけど?」 火照る頬。寒いからじゃないのよ。

2020-11-14 22:01:50
秋月蓮華 @akirenge

揺蕩う長髪が木枯らしに揺られてワカメみたいだと想った。 「どうしたの?」 「……綺麗だなって」 ワカメについて私は伏せる。 先輩の女性はとても凄まじく素敵で綺麗な人ではあるが 黒の長髪がワカメに見えた。 「遺伝子調整で生まれたから」 「え?」 「冗談よ」 ――そう聞こえなかったよ。先輩。

2020-11-14 22:04:52
夢夜 @ruya_reve

#深夜の真剣140字60分一本勝負(@140onewrite ) #140字小説 以前書いた『同じ遺伝子を持った仲』という作品を140字小説にリライトしてみました。 pic.twitter.com/P1nb0Wf9GA

2020-11-14 22:07:05
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RAY/※※※ @growler_ray

子供の頃、でっかいタコかイカが人を海の底に引きずり込む何かを見て、海が行けないほどトラウマになった。 プールでもそれはそんなに変わらない。ゆらゆらと揺れる髪が、どことなくそれを想起させるから。 今もほら、彼女の揺蕩う長髪が、軟体生物のように私に絡みつく、捕まえる、しずむ、しずむ……

2020-11-14 22:08:11
Kiyu Hoshizora @hoshizora_kiyu

地面に舞う木葉の螺旋に木枯らしを見た。白衣のポケットに手を入れた彼女は冬の海を見ている。弧を描いて揺蕩う長髪に、規則的な遺伝子を読む。だが波の飛沫を見据える彼女の強い眼差しと、彼女を構成する遺伝子とは、なかなかイコールにならない。彼女はふと僕を見て「寒いね。帰ろうか」と微笑む。

2020-11-14 22:14:27
ケンタシノリ@童話&小説書き屋さん @kentasinori

木枯らしが吹きすさぶ中、与兵衛は股旅姿で山中の街道を歩いている。そんな彼の目に入ったのは、揺蕩う長髪の女に刀を持って襲いかかる荒くれ男である。 「その女を放せ!」 「ちっ! 邪魔者か」 荒くれ男は与兵衛に言いがかりをつけようとしたが、与兵衛は自ら抜いたその刀で相手の男を斬り倒した。

2020-11-14 22:26:28
津森七@文学フリマ京都い-36 @tumori_nana

深夜のプールに揺蕩う長髪を見つめた夏が過ぎた。木枯らし舞う樹の根元に華奢な体を埋めた秋も過ぎた。貴方の最後に見る景色になれれば苦しみは消えると思った。あれから早幾年。ああ、ああ、消えるべきは私だったのだ。貴方と同じ顔であの子が笑う。綿々と続く遺伝子の系譜。私はきっと、また。

2020-11-14 22:44:20