最初はただ、互いの好きな人の話をしていただけだった。少女は大好きな母親のこと、彼女は両想いで恋人同士だと"思い込んでいる"、自身が待ち続けている女性のこと。
2021-09-09 21:21:26私も好きで、彼女も好きだと言ってくれた運命の人。高校を卒業して以来会えていないけれど、いつかきっと迎えに来てくれる。きっと……。 なんて。
2021-09-09 21:22:13___そんな子供ながらの素朴な疑問が、想い人との関係を盲信する彼女が殺人に手を染める一因となった。
2021-09-09 21:23:21忘れているのかも。いいえ、忘れてなんかないわ。じゃあ待っている恋人に何故会いに来ないの? 彼女が咄嗟に思い出そうとしても、高校以降の想い人のことが何も思い浮かばなかった。家も、仕事も、今の姿さえも。本当は_______________。
2021-09-09 21:24:07少女に心配され我に返る。動揺を隠しきれないまま、気にしないでと言いながらも、心配する少女を追い出して。 …そこに『主人のカード』が渡されてくれば、取る行動は一つだった。
2021-09-09 21:25:14「……、あら、そうなの。……ふふ、そうよね。待ってるだけではいけないわ。……会って、愛を確かめないと。ふふ、」
2021-09-09 21:25:43そうして、丁度巡ってきたお茶会のチャンスを逃すこと無く。 飲み物にスズランの毒を混ぜて出した。 片付けは使用人達に任せて、後は逢いに行くだけだと笑って。
2021-09-09 21:26:34「っう゛、げほッ、げほ....、あ゛、う... ぁう、あたま、いた...いたい..!!ッあ゛、...っ」
2021-09-09 21:27:46敗北してしまった議論の末。想い人との再開が果たせないと、名残惜しそうにして。それでも、想い人に逢いに行くためにした自分の行動に後悔は無いと、落ち着いた様子で『裁判』を降りて。
2021-09-09 21:29:29ー第三幕ー ~"普通"は星の数ほど光瞬く~ pic.twitter.com/26gufEmkjV
2021-09-09 21:32:03彼女……いや、今回の事で自身を見つめ直し、あの子が吹っ切れた今なら"彼"と呼んでもいいのかもしれない。
2021-09-09 21:34:23「(このまま、誰かを 殺す位なら。……私が誰も殺さず死ぬべきなんじゃないかしら。…………死ぬのは 怖い。でも 殺すのは もっと もっと勇気がいりそう)」
2021-09-09 21:34:46『主人のカード』が渡ってきて、不安そうにしていた彼。そのまま自殺を選んでいたら、この時点で生きる意思が弱かった彼の魂が、現世に帰ることはなかったかもしれない。
2021-09-09 21:35:39それでも、運命はそうはしなかった様だった。ばったり出くわした、この幕の被害者である彼女に、自分の核心に踏み込まれてしまったから。
2021-09-09 21:35:55「隠さなくてもいいよ。 今は私たち2人しかいないし。 教えて、花恋さん…本当は男なの??」 「………………じゃあ、私が男だったら。どう思うの……?」
2021-09-09 21:36:37「…私、は…やっぱり、男なら男らしく 女なら女らしくが普通だと思うの。 あなたが男なら、その格好は正気じゃない…男らしくするべきだよ。 責めたようなキツい言い方でごめんね。 とにかく、皆を騙してるのは良くないと思う。」
2021-09-09 21:36:59それぞれの"普通"が違うだけで、どうしてこんなにもすれ違うのだろうか。彼女の言葉に酷く動揺して。 言葉という名の凶器を突きつけられた彼は、自身に使おうとしていたナイフを相手に突き刺してしまった。 言葉を吐き出して。大粒の涙を零して。
2021-09-09 21:38:05「……ずるい、ずるいよ。女の子に 生まれただけで……私だって、私だって、……何もせずとも あなたみたいになりたかっただけなのに!……まともじゃない、なんて……私だって…………!」
2021-09-09 21:38:42「えっ、…?花恋、さん…?」 刺された彼女は、理解ができた故に最後は何も理解ができずに… 大好きな人を口にして倒れた。
2021-09-09 21:39:03羨ましかった。自身がずっと焦がれている"普通の女の子"。だからこそ、それに否定されるのは嫌だった。 だから、殺してしまった。
2021-09-09 21:39:38「だから、私は もう。ここにはいられない。私は……周りは出し抜いてでも。……もう。あの時の自分には、戻りたくない…………無感情の。何も無い……男の子だった自分には。 …………、」
2021-09-09 21:40:18____そんな思いも虚しく。議論の末、犯人であることと、男であることが露呈してしまった彼は、自身の本当の部分を明かした。
2021-09-09 21:40:41「可愛くて、愛される そんな女の子になりたかった。 ずっと、こんな場で思うだなんて不謹慎だけどチャンスだと思った。 ここなら僕の事を誰も知らないから。 男の癖になんて思わないから。 誰も知らない奴らから 女の子として生きようって。」
2021-09-09 21:41:25「だから、僕に微笑まれて簡単に恋するような男は嫌だった。 だって僕はさ、その好意を微塵も理解出来ないし。 そうそう⋯⋯そこも普通じゃないせいで孤立しちゃってさ。」
2021-09-09 21:42:05「⋯⋯⋯⋯彼女を殺った後は、この先のことを考えていたね。 彼女にバレていたならもしかしたら他の人にもバレているかも その恐怖心でさ。 絶対に逃げ切って ここから出られたら また。っておもってたのに あーあ、こんなにあっさりバレちゃうなんて」
2021-09-09 21:42:46死にたくない。 表に出せずにいるそんな気持ちに押し潰されながら。都合の良かっただけの王子様もほかの皆も突き放して。これ以上自分の持論を聞いていてもつまらないでしょうと、"少女"の笑顔を向けて。
2021-09-09 21:43:21ここで少し、特別な『ご褒美』があったね。 いつもの夕食の後、主人から君達それぞれが一番好んでいるデザートを用意してくれた。
2021-09-09 21:44:45それはなんとも不思議なおまじないがかかっていた。一口食べれば、君達にとって大切で 懐かしい記憶が思い出させる様な、そんなものだった。
2021-09-09 21:45:53それ等を食べた君達は、様々な反応を見せたが。特別変化を見せてくれたのはこの2人だった。 pic.twitter.com/lrBCmugg7b
2021-09-09 21:46:56「……はじめまして。 私、名を染井夜陰と申します。 どうぞ皆さん、これからよろしくお願いします。」
2021-09-09 21:48:07紫髪の少女は、元の記憶を取り戻し改めてと自己紹介をした。見知った人への挨拶は初めてだからと、少し照れくさそうにして。
2021-09-09 21:49:27ごめんなさい、ごめんなさい。忘れてはいけなかったのに……私は、私は……『』でいなきゃだめなのに。 私には、許されるはずがないのに__
2021-09-09 21:51:37皆の反応が幾らか落ち着いて、それぞれが部屋に帰って行く中、広間に残った一人の、赤髪がよく目立つ少女は『姉』を模した様に笑って。
2021-09-09 21:52:12-第四幕- ~登場人物は作者の掌で躍り狂う~ pic.twitter.com/wwl89TxC0q
2021-09-09 21:54:41第四幕、被害者は才能に愛された 作家さんと紛い物の 探偵さん、加害者は人生に愛された 怪盗さんだった。
2021-09-09 21:56:20