とある本丸が壊滅して遠征に出ていた大倶利伽羅と桑名江だけ残でしまった本丸の話を妄想している。他妄想もチラホラ
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霜月旬 @Jyunka

どうもこないだから脳内の桑名と大倶利伽羅を喋らせるのが楽しくて、これはないだろうなと確信が持ててしまうようなニッチな妄想を延々している

2021-02-12 01:43:47
霜月旬 @Jyunka

今はねえ、遡行軍襲撃で全滅した本丸でたまたま遠征行かされてて生き残った桑名江と大倶利伽羅が、人手不足すぎてそのまま焼けた本丸の片付けを命じられて、瓦礫の下から折れた仲間を集めて畑を共同墓地がわりに穴を掘ったり焼けた本丸を修繕しながら二振りがする会話を三日くらいかけて考えています。

2021-02-12 19:16:24
霜月旬 @Jyunka

なんでそこ? 知らない……ただわたしにはとてもかわいいから……

2021-02-12 19:18:34
霜月旬 @Jyunka

「遠征任務中に本丸の異常を感じた大倶利伽羅は急ぎ帰還を試みたが、既に審神者の霊力は遡行経路を維持できるほど残っておらず、彼らは遠征先に足止めされた。管狐の伝令で災禍を知るも政府仮預かりの身となって待機、変わり果てた本丸にようやく帰還を許されたのは襲撃事件より5日後のことであった」

2021-02-12 19:35:13
霜月旬 @Jyunka

「あっちの方を見てくるよ」 座り込んで動かない大倶利伽羅の背に、桑名江は控えめに声をかけた。返事はないが構わずに煤だらけの廊下へ出る。 所々炭化した柱の奥にはまだ火の気が残っており、あちこちに煙が細くたなびいている。灰だらけの畳、折れた障子や襖を踏み越えて瓦礫をひっくり返していく。

2021-02-12 19:48:40
霜月旬 @Jyunka

ほとんどの部屋で折れた刀が見つかった。焼け焦げている物も多かった。ほんの数日前には一緒に戦い飯を食い並んで寝て暮らしていた刀剣男士の仲間たちである。 「……」 桑名江はこの本丸に顕現してまだ日が浅く、同じ郷義弘作刀の刀剣男士は松井江一振りしか居なかった。その痕跡を探している。

2021-02-12 19:51:43
霜月旬 @Jyunka

大倶利伽羅がとある瓦礫の前で膝をつき、腿の上にきつく拳を握りしめて俯いたのを見ていた。チラリと見えた破片は伊達の刀のように思えたがあえて目を逸らした。不用意に見てはいけないような気がしたし、掠れた声で呼ぶ名を聞いてもいけないと思った。どうしてかは考えない。桑名江は勘を信じている。

2021-02-12 19:58:59
霜月旬 @Jyunka

「……居た」 松井の折れた本体は燃え落ちた書庫の前で見つかった。あらゆる箇所に激しく争った痕が残る中、この辺りはさほど荒れていない。 顕現したてで桑名江より更に練度が低かった松井は、本を読むことに夢中だった。借りた書に目を落としていて異変に気付く前に背後から斬られたのかもしれない。

2021-02-12 20:33:14
霜月旬 @Jyunka

拵えは煤け、紋もほとんど見えはしない。青かったはずの鎖飾りの石はつまみ上げた途端に砕けて砂のように散った。短く燃え残った刃をまとめて手拭いに包み胸に抱いた。 「ごめんね」 何に?と彼は答えるだろう。桑名江にもよくはわからない。あれほど拘った血はたくさん流れたろうか。

2021-02-12 20:51:46
霜月旬 @Jyunka

「土を耕すくらいなら、……土に還りたい」 内番で畑に出されると、日差しに整った眉を顰めながら口癖のように松井江はそう言っていた。桑名江はいつも笑って流していたけれど、あれは本気だったのかもしれない。 桑名は布包みを大事に抱えて立ち上がった。

2021-02-12 22:56:04
霜月旬 @Jyunka

森羅万象は廻り、万物は土に還る。他の仲間たちもそうしてやろう。畑がいい。 そうして、それから。 桑名江は本丸中に散らばり埋もれた折れた刀をできる限り丁寧に拾い集めた。時間だけはあったから、何日かけてでも全振り分見つけるつもりだった。

2021-02-12 23:15:42
霜月旬 @Jyunka

しかし、やがて桑名は気がついた。どう探しても刀の本数が足りない。完全に燃え尽き灰になってしまった仲間はどうしようもないということだ。膨大な瓦礫と灰を全て畑に埋めることはできない。途方に暮れていると、いつの間にか側にいた大倶利伽羅が黙って足元の瓦礫から木片を拾い上げた。

2021-02-12 23:15:43
霜月旬 @Jyunka

ほとんど黒く焦げてはいたがかろうじて男士の名前が読み取れる。それは内番表に差し込む名札であった。 木札を受け取った桑名江は大倶利伽羅の顔を見た。目の下に濃く隈をきざみ憔悴して見えたが、彼は静かに「探すぞ」と告げた。

2021-02-12 23:15:43
霜月旬 @Jyunka

それから、二振りで本丸跡を隅々まで掘り返した。 衣服や私物の一部でも、それすら無ければその男士の暮らしていた痕跡を探した。 本丸の至るところにそれは残されている。

2021-02-12 23:26:32
霜月旬 @Jyunka

道場の柱に残る手合わせの刀傷を、厨で手にしていた包丁を、気に入りだった盃を、追いかけていた鞠や独楽を、実を取ろうと手を伸ばした柿の枝を。 まだ人の身を得て日の浅い桑名江には知り得ない仲間達の日々の全てを、大倶利伽羅が覚えていた。 彼は、この本丸で初期刀の次に顕現した刀であった。

2021-02-12 23:29:07
霜月旬 @Jyunka

選び拾った縁の品は井戸で清め、寝具を裂いた白布に包み、縁側に並べた。本来口数の少ない刀であるのに、大倶利伽羅は品と男士の由来を桑名江に伝えるのまでを己が義務と決めたようだった。 短くぶっきらぼうに、けれどやさしく数多の時間が語られた。何故だか、桑名江はそれを聞くのが少し辛かった。

2021-02-13 00:30:10
霜月旬 @Jyunka

最後の1振りまでが集まると、本丸の畑に穴を掘った。 畑も敵味方に踏み荒らされてはいたが、幸い農耕器具は無事であったので、この作業は桑名江が望み主となって行った。畑の土は柔らかく掘りやすい。長い時間を過ごし手をかけてきた成果である。休みも忘れて夢中で掘り進み、穴は順調に深くなった。

2021-02-13 00:30:10
霜月旬 @Jyunka

(畑はいいね。そしてやっぱり作業はいい、こうしていれば──忘れられる) 顎を伝う汗を拭う為に手を止めて、ふと桑名江は思考をあらためた。忘れられるとは、何をだろうか。 首を捻り、胸を押さえてみる。確かに感じる違和感。頭、腹、背中。じわりと痛む、もしくは締め付けられる。知らぬ感触だ。

2021-02-13 00:30:11
霜月旬 @Jyunka

主人に桑名と間違えられたのかなあ。 (松井、) 桑名江よ。今日も精が出るな。 (蜻蛉切さま、) 君は畑が好きなんだねえ。 (……うん、主人、) ぎゅうと心臓が掴まれたようになって息が詰まる。眩暈がする。 桑名は困惑した。こんな感触は覚えがない。 「……、……?」 「おい……桑名江?」

2021-02-13 00:30:11
霜月旬 @Jyunka

「……、あ、……?」 離れたところから呼ばれた声に振り返り、相手が息を呑むのを感じた。 何故だかゆっくり視界が暗くなった。世界が揺らぎ、続いて土の匂いがした。酷く切羽詰まった大倶利伽羅に名を呼ばれたのだけはわかったが、答えようと口を動かしたところで桑名江は意識を失った。

2021-02-13 00:34:43
霜月旬 @Jyunka

笑っている。 松井が、蜻蛉切さまが、一緒に畑を耕していた仲間が、主人が。 雨が降って土が匂う。 人の身に顕現して何より畑を弄るのが好きだった。馬糞を運び、草をむしる。芽が伸び、花が咲き、実がなる。本丸の仲間に収穫物を食べてもらうことが楽しかった。 いつも誰かの声がして気配があった。

2021-02-13 02:04:35
霜月旬 @Jyunka

「……、……、」 目を開けてしばらく、桑名江は自分の状態が分からなかった。視界を薄白い紗が覆っている。生きてはいるのか。身じろぎするとガンと頭が痛んだ。思わず呻くとすぐに側に足音が近づいてきた。 「起きたか」 「……? おおくり、から?」 痺れたように舌足らずでたどたどしく呼ぶ。

2021-02-13 02:04:35
霜月旬 @Jyunka

目の前がふっと明るくなった。 「……」 真上から浅黒い顔に覗き込まれている。深い色の金の瞳が瞬いて、少し顔が引いた。続いて額が手のひらに覆われ、続いてひんやりと冷たいものが触れた。 「まだ熱いな」 「え?」 繰り返し瞬いて、ふと自分の前髪がすっかり上げられていることに気が付く。

2021-02-13 02:04:36
霜月旬 @Jyunka

「っ、あ、」 何か慌てて髪をおろそうとして、その手を掴まれてやんわり止められた。 「嫌なのかもしれないが、今しばらくは我慢しろ。しばらく冷やさねばまた熱が上がる」 「……」 そうしてようやく、桑名は己が状況を認識した。

2021-02-13 02:04:36
霜月旬 @Jyunka

桑名江は畑で倒れたのだという。比較的無事だった一室に寝かされて、濡れ手拭いで頭を冷やされている。頭痛も吐き気もあるが命に別状はなさそうだ。 「どうして……」 「俺も悪かった」 大倶利伽羅がため息まじりに言ったので桑名は瞬いた。 「お前、ここに来てから何も飲み食いしなかっただろう」

2021-02-13 02:04:37
霜月旬 @Jyunka

「え……?」 「単純なことだ。飲まず食わず動いて倒れたんだ、お前は」 桑名江は目を瞬かせた。 人の身に慣れていない刀剣男士には珍しくないバグのようなものだとと大倶利伽羅は説明した。食うのも出すのも眠るのも、初めのうちは習慣付かないが、本丸に居れば同じ時間に呼ばれて誰かと飯を食う。

2021-02-13 02:04:37
霜月旬 @Jyunka

そのうちに空腹や疲労を自覚できるようになる。 桑名江はそこそこ慣れていたはずが異常事態で習慣ごと吹っ飛んだということらしい。 「君は」 どうなのかと問えば、気まずそうに顎を掻いている。 「……俺もまあ、忘れていたな。厨の野菜が腐った匂いでえづいて、それで胃が空なのに気付いた」

2021-02-13 02:04:37
霜月旬 @Jyunka

その場で水を飲み、干されていた柿を食った。それから慌てて桑名を探したが後の祭りで、飲まず食わずが日差しの強い中半日張り切って穴掘りなどしていたものだからひとたまりもなかった、ということらしい。桑名江は唖然とした。 「……僕、阿呆やん」 「お前のせいじゃない、俺が……すまなかった」

2021-02-13 02:04:38
霜月旬 @Jyunka

す、と枕元に押し出されたのは欠け椀に入った粥のようだった。 「飯をふやかして梅干しを入れただけだが、少しでも胃に入れておけ」 香りを嗅いだ途端にまた眩暈がし、腹がぐうっと盛大に鳴った。 結局大倶利伽羅からひと匙ずつ口に押し込まれ、鳥の雛の給餌のようにして桑名は食事を摂ったのだった。

2021-02-13 02:04:39
霜月旬 @Jyunka

拾った捨て犬と捨て猫が意外と仲良しだけどこれどうしようみたいな気持ち

2021-02-13 02:35:32
霜月旬 @Jyunka

閑話休題。 これは在りし日の内番で畑にいる大倶利伽羅と桑名江。からちゃんはこの後桑名によくうがいをさせた。 pic.twitter.com/38kM94IaND

2021-02-13 09:43:34
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霜月旬 @Jyunka

大倶利伽羅の表情見るたびに笑う

2021-02-13 09:49:27
霜月旬 @Jyunka

そう言えば前にも書いてたよく畑でエンカウントしていた2人。 ※ただしこちらはみほとせ時空ミュ本丸産の大倶利伽羅と桑名江なので本丸壊滅とかはまだしていません(大事) twitter.com/jyunka/status/…

2021-02-13 21:33:15
霜月旬 @Jyunka

みほとせ以来ひとりで畑を頑張るミュ倶利伽羅、今後は確実に桑名江と毎日エンカウントするわけじゃん? 「おはよう!精が出るね」 「馴れ合うつも……いや誰だ」 「こんな時間から畑を見てる男士がいるなんていい所だなあ」 「(本当に誰だ)」 「! 土が!いい!」 「?!(こいつ今土食っ……)」

2021-01-15 22:31:14
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まとめたひと
霜月旬 @Jyunka

HNじゅんか。年季の入った腐オタ。日常と雑多ジャンル二次妄想、刀ステ、繭期、特撮、FGO。同人と過去絵と小説は支部とピクブラ。特撮2.5腐向隔離垢@Jyunkahl