西條らの実験を元に
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花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

〈マスク・反マスク〉ゲームのナッシュ均衡はどこだろうか。 ( 参考 ; 西條 辰義, コロナゲーム, tkfd.or.jp/research/detai…)  各セルの数で左は自分、右が他者の利得を示す。他者がマスクをして自分がしないなら、あなたは両者がマスクをするよりもそれなりに快適だとし、その値を10とする。 pic.twitter.com/OQGNijQrNa

2023-05-30 15:39:10
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一方のマスクをしている相手は、ノーマスクのあなたがウイルスを撒き散らすのではないかと案じ、両者がマスクする時よりも悪くなるとし、その値を2とする。  両者ともにノーマスクだと感染の可能性が高くなるので利得を0とする。 【注 ; 5類移行前の考察である】

2023-05-30 15:39:11
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

両者ともにマスクする場合、感染リスクを下げることができるのでその利得を8とする。  他人がマスクをするならあなたはノーマスクを選び、他人がノーマスクならあなたはマスクをするだろう。他者も同様に違いない。  そうすると、【5類移行前なら】二人ともノーマスクを選ぶことはないものの、

2023-05-30 15:39:12
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

片方がマスクをし、片方がマスクをしないところに落ち着くに違いない(網掛け部分)。つまり、両者が同時にマスクすることはないのである。【5類移行以前の感染ゲーム】  このタカハト(鷹鳩)ゲームでは、2つのナッシュ均衡は進化的に安定的な戦略とはなり得ない。

2023-05-30 15:39:13
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コロナゲームでは全員が自粛したりマスクしたりする自然な仕組みをデザインすることは不可能であることが知られている。  公共財供給実験で知られているのが、スパイト・ディレンマである。  囚人ディレンマゲームで、被験者がなぜ支配戦略をとらないのかがトピックになり、note.com/keisemi/n/n73d…

2023-05-30 15:39:13
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西條・中村は、自分の取り分を減らしてでも相手の取り分をよけいに減らす行為を 「スパイト(いじわる)」行動と名付け、日本人被験者に顕著だとした。  他方、メステルマンたちの追実験では、カナダ人はほとんどスパイト行為をしないとされた。

2023-05-30 15:39:14
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公共財供給理論において、フリーライド(ただ乗り)問題をどう解くか。  西條らは、参加しなくても公共財からの便益を享受できると想定し、お金を出し合うゲームの前に、そのゲームに参加するかしないかという意思決定のステージを付け加えてみた。

2023-05-30 15:39:15
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表1のゲームの場合、相手が不参加ならお金を出さないと考えるなら、柏手が参加せず、あなたが参加する場合、あなたは迷わず0ドルを出すだろう。  一方、相手もあなたも参加するのなら、あなたは柏手がどちらの戦略をとるのかわからなくなる。 pic.twitter.com/40KK8FaPvW

2023-05-30 15:39:16
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このような公共財供給の参加ゲームにおいては、全員が参加する仕組みをデザインするのは不可能なのである。  相手が参加する時には不参加、不参加の時には参加がナッシュ均衡となる。相手も自分も参加するのは均衡ではない。このようなゲームはタカハトゲームとよばれる。

2023-05-30 15:39:17
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公共財の非排除性を考慮に入れるなら、ゲームの構造は囚人のディレンマ型ではなく、タカハト型になる。タカハトゲームには、混合戦略のナッシュ均衡があり、これは互いに 0.68 の確率で参加することだ。  公共財をみんなで作ろうとすると、日本人は「ただ乗り」を目指すが成功しない。 pic.twitter.com/T75ZbY6yWN

2023-05-30 15:39:18
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参加した人が、参加しなかった人の足を引っ張るから だ。これを経験してしまうと、後で参加せざるを得なくなる。日本の社会ではみんなで仲良く協力して事に当たるのではなく、📌協力しないと後が怖い、というわけだ。

2023-05-30 15:39:19
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ケイソンとの共同実験は、日本では筑波大学と都立大学、アメリカでは南カルフォルニア大学(USC)とパーデュー大学で実施された。  まず、比較のために、全員が参加せねばならない実験をデザインした。図1の左下の部分。 20人の被験者を同じ教室に集め、2人1組で10組のペアを作る。

2023-05-30 15:39:20
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ペアとなった相手が教室のどこにいるかはわからない。教室内での話し合いは不可。まったく同じ実験を15回繰り返す。回ごとに相手を変え、同じ相手とは二度と対戦しないようにし、これを全員に伝えた。全員が同じ利得表を持っていることも全員に伝えた意思決定の結果だが、

2023-05-30 15:39:20
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ペアになった相手の決定はわかるものの、それは他の被験者には知らされない。以上のデザインをトリートメントAとし、参加の意思決定のできる実験をトリートメントBとした。  被験者たちはナッシュ均衡を知らないが、(8,8)あたりに落ち着くと何となく理解している。

2023-05-30 15:39:21
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ただ、相手が8を選ぶなら、自分が8を選ばずに7を選ぶと、自分の利得は7345から7340に5単位減るものの、相手は7345から6526に減ることに気づき、そのようにする。まさにスパイト行動だ。  10組のペアで15回繰り返し、150個のデータを得た。

2023-05-30 15:39:22
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

筑波の場合、ナッシュ均衡の(8,8)は36個、(8,7)は35個、USCの場合、(8,8)は29個、(8,7)は26個。筑波の平均投資数は7.24、USCのそれは7.75で、それほどの差ではないものの、🖍️有意に筑波のそれがUSCに比して低い。

2023-05-30 15:39:23
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

参加の意思決定ができるトリートメントBの筑波とUSCの実験結果はどうか。もし進化論的に安定的な均衡の予測する0.68が正しいとするなら、両者ともに参加するのは、46%(=0.68×0.68×100)、片方のみ参加するのは44%、両者ともに参加しないのは10%となる。

2023-05-30 15:39:24
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

150個のテータのうち、例えば、(8,7)も(7,8)も同じデータとして扱う。つまり、(大きい投資数、小さい投資数)とする。150個のデータの分布を示したのが図2。 pic.twitter.com/RswwJK3OYc

2023-05-30 15:39:25
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筑波の場合、両者ともに参加した場合、一番好度の多いのは(8,8)ではなく、(8,7)。  一方、片方のみが参加した場合、一番多いのは最適反応の11ではなく、なんと7だ。両者ともに参加しなかった場合のデータ数は18だった。相手が参加しないことを知った後で、11ではなくなぜ7を選んだのか。

2023-05-30 15:39:26
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表3をみればわかるように、11を選べば、自分の利得は2658、相手の利得は8278。一方、7を選べば、自分の利得は2210となり448減少するものの、相手の利得は4018となり4260減少する。つまり、自己の利得を犠牲にしてまでも、参加をしない相手の利得が大幅に下がるような戦略を選択したのである。 pic.twitter.com/Hitm1xtzeO

2023-05-30 15:39:27
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USCの場合には、相手が参加しなかった場合の行動が筑波と異なる。その場合にでも参加をした被験者は自己の利得を最大にする11を選んでいる。もちろん、7を選んでいる被験者も若干名いる。「相手は相手、私は私」といったところだろうか。

2023-05-30 15:39:28
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トリートメントBの場合のスパイトはAの場合のスパイトとは少し異なる。Aの場合は相手がどのような行動をとるのかがわからずにスパイト行動をしているので、純粋なスパイト行動だ。一方、Bの場合は、相手が参加しないことに腹を立て、懲罰的にスパイト行動をすると考えられる。

2023-05-30 15:39:29
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

USCの参加率は最初から最後まで68%の周辺で推移したものの、筑波の場合、最初は4割だったが、最後の5回では85~95%となった。公共財をみんなで作ろうとすると、日本人は「ただ乗り」をめざすものの成功しない。参加をした人が、参加をしなかった人の足を引っ張るからだ。

2023-05-30 15:39:29
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

これを経験してしまうと、後で参加せざるを得なくなる。日本の社会ではみんなで仲良く協力して事にあたるのではなく、協力しないと後が怖いのだ。

2023-05-30 15:39:30
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

表5は実験の1回から5回における実際の平均利得を示している。筑波の場合、もともとはタカハトゲームだったのにもかかわらず、被験者のスパイト行動を通じて、両者とも参加するのが ベストというゲームに変容する。一方、USCの場合、平均利得は変化するもののタカハトゲームの構造自体は変化しない。 pic.twitter.com/XXFqxcrFGe

2023-05-30 15:39:31
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「マキャベリ的知性仮説」は、ヒトがなぜ賢くなったのかの理由を、柏手を騙し、欺き、出し抜くことで知性を進化させたと仮定する。「スパイト」行動もこの仮説につながりを持つ。

2023-05-30 15:42:17
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

“スパイト行動”はある種の同調圧力として機能し、結果として平等な負担を実現する。日本人は協調性が高いといわれるが、それはこのようなメカニズムが歴史を通じて受け継がれてきたからかもしれない。

2023-05-30 15:46:46
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

“いじわる”が全体の平等につながるという日本人の傾向は、足の引っ張り合いを生み、イノベーションの抑制や経済の停滞につながっていると指摘する声もある。 いかにバランスを取り、全員に“平等感”を与えられるのか。

2023-05-30 15:50:43
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

大阪大学の研究グループによると「新型コロナウイスルに感染するのは自業自得だ」と考える日本人の比率は11.5%と、中国の4.83%やアメリカの1%などと比べて突出して高かった。  日本人は、他人を他人と割り切れず、互いに相手の行動を邪魔している。

2023-05-30 15:50:43
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

日本では何か新しい技術やビジネスが誕生するたびに声高な批判が寄せられ、スムーズに事業を展開できないことが多い。その間に他国が一気にノウハウを蓄積し、結局は他国にお金を払ってその技術やサービスを利用する結果となる。newsweekjapan.jp/kaya/2021/05/p…

2023-05-30 15:56:52
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

成功者は基本的に妬まれるので、自身の経験を積極的には他人に語らず、成功のロールモデルも共有しにくいが、これでは消費経済が活発化するわけがない。  スパイト行動が本領を発揮するのはコロナ後になるのではないか。コロナ関連の不正は世界各国で暴かれ始め、処罰感情の増幅に繋がっている。

2023-05-30 15:56:53
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

(碓井真史さん)  とにかく平等にっていう思いや、競争心が強くなりすぎると、みんなが貧しくなる、ゲーム理論では“共貧状態”って呼ぶんですけど、こうした状況が起こってくる。news.yahoo.co.jp/articles/23b37…

2023-05-30 16:10:26
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

みんな一緒、横並びで和を尊ぶ協調性が高い、いい社会だよねっていうのは、コロナ禍のような非常事態においては、スパイト行動的な面に転じてしまう。  上述したように、公共財供給で協力せずに自分が出し抜き、フリーライダーとなってしまえば仕返しや批判を受けるリスクが高いため、

2023-05-30 16:10:27
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

その恐怖が大きくなって協力関係を結ぶというのが本当の要因だった。自分の意地悪が招く仕返しを勘ぐるあまり、期せずして皆が協力的になったわけだ。  公共財をつくる場合、日本人は相手のフリーライドを許さない傾向にある。

2023-05-30 16:10:27
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

公共財づくりに参加した人は、自分が一番得になるような努力をせずに、損をしてまで参加をしない人の足を引っ張ろうとする。出る杭は打たれる。これを経験すると、誰もが参加せざるを得なくなる。  日本の場合、仲良く協力して公共財を築くというわけではなくて、『協力しないと後が怖いからする』。

2023-05-30 16:10:28
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

みんなが「公衆衛生」という公共財のために「我慢」というコストを支払っているにもかかわらず、勝手な行動を取る「フリーライダー」を許せない。  そうしたスパイト的な考え方の典型例が“自粛警察”だった。  マスクだけでなくワクチン接種でも「スパイト」的な行動が見られた。

2023-05-30 16:10:28
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

参加しないと足をすくわれるから参加してしまう。結果的に協力状態が生まれる…。  日本人のスパイト行動が日本人の協調性の高さにつながっているわけだが、同調圧力に弱いとも言える。  損をしてでも相手を出し抜かなきゃとモヤった時には、Spite Behaviour かなと自問しよう。〈了〉🧵

2023-05-30 16:19:16