戦後日本の農政が、なぜ、国内農家を守らずアメリカの言いなりなのか、常に疑問でしたが、この本で疑問が解消しました。 小麦と肉を減らし、伝統的な日本食(米や魚)を増やすと食料自給率は改善すると思いました。(簡単ではありませんが・・・)
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遠田大亮 @DaisukeEnta

【海外の穀物を食べて発展した近現代の日本】 日本人は明治以降、現在に至るまで、まともに自分の国の食料で腹を満たした経験がない。日本の近現代の社会や経済は、食料の輸入を前提に発展してきたのだ。 日本のコメ問題小川真如 pic.twitter.com/sqjnRoRTMf

2023-04-05 08:24:20
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遠田大亮 @DaisukeEnta

かつて江戸時代には、不作が起こると藩ごとに食料の流出を防いだため、日本を全体でみると食料が偏在しやすく、飢饉が起きやすかった。 それが、明治時代に入ると中央集権の国家が成立し、鉄道で各地に食料を行き渡らせる仕組みができると餓死者は大きく減ることになる。 日本のコメ問題小川真如

2023-04-05 08:30:55
遠田大亮 @DaisukeEnta

さらに餓死者を減らした大きな理由として忘れてならないのは幕末から引き継がれた開国政策によるコメの緊急輸入である。 日本のコメ問題小川真如

2023-04-05 08:41:53
遠田大亮 @DaisukeEnta

明治2年の戊辰戦争や不作の影響でコメの値段が高騰すると、国は早速10万tのコメを輸入し、さらに翌年には、日本で当時作られていたコメの9%に相当する32万tを輸入した。その後は、台湾や朝鮮のコメに頼るようになり、戦後は輸入した小麦で腹を満たすことが次第に増えていった。… twitter.com/i/web/status/1…

2023-04-05 08:43:31
遠田大亮 @DaisukeEnta

また、日本でコメの自給が達成していなかった1995年ごろ、世界の農産物は不足から作りすぎに変化していた。このことは、日本にとって農産物を輸入しやすく、増えすぎに悩む国々、なかでも穀物が余って困っていた米国にとっても都合のよい状況であった。 日本のコメ問題小川真如

2023-04-05 10:06:35
遠田大亮 @DaisukeEnta

【米国の穀物事情】 第2次世界大戦中、米国は小麦作りを飛躍的に効率化して、連合国の兵糧を賄った。ところが、1953年7月に朝鮮戦争が休戦すると、豊作のタイミングとも重なり、小麦余りの問題が一気に表面化し、第2次世界大戦に使われた輸送船までもが小麦の倉庫と化した。 日本のコメ問題小川真如 pic.twitter.com/iKnYAHIhnM

2023-04-05 13:31:45
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遠田大亮 @DaisukeEnta

米国政府は倉庫代だけで毎日2億円相当を支払っていたほどである。 穀物余りに悩んだアイゼンハワー大統領は1954年1月、10億ドル相当の余った農産物を友好諸国の経済強化のために使いたいと新たな法案を提出した。そして米国の農産物を売り込むため最も有望な輸出先として日本が浮かび上がる。… twitter.com/i/web/status/1…

2023-04-05 13:44:32
遠田大亮 @DaisukeEnta

【米国の食料戦略で生まれた自衛隊と学校給食】 アイゼンハワー大統領が法案を提出して5か月後の1954年6月、日本では米国の農産物と密接な関りをもつ自衛隊法が制定された。 日本のコメ問題小川真如 pic.twitter.com/8lm2Po4UG7

2023-04-05 15:08:29
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遠田大亮 @DaisukeEnta

米国が余った穀物を無償で日本に渡し、日本はそれを売ったお金で駐在する米軍の基地や自衛隊創設などの費用に充てる。こうすることで、米国は軍事費の負担を軽減し、余った穀物も処理でき、日本は防衛力の増強を少しでも安く実現できたのである。 日本のコメ問題小川真如

2023-04-05 15:12:15
遠田大亮 @DaisukeEnta

また、米国の新しい法律は、外貨不足で輸入農産物を買うことができない国に対して、その国の通貨で販売することを認めるものだった。しかも、代金はすぐに支払う必要はなく、その国の経済開発に使ってよいという誘い水もついていた。 日本のコメ問題小川真如

2023-04-05 16:54:21
遠田大亮 @DaisukeEnta

日米間の協定や関連する法律で輸入されたものは、小麦80万t、大麦15.5万t、コメ10万t、エサ11万t、脱脂粉乳などであった。国家予算が1兆円の当時に、総額541億2千万円分の農作物が押し寄せたのだから膨大なものだ。 日本のコメ問題小川真如

2023-04-05 17:22:32
遠田大亮 @DaisukeEnta

このタイミングで生まれたのが学校給食法だ。もともと学校給食は米国の食料戦略とは無関係に法制化が目指されていたが、国庫負担で学校給食を実現したい文部省に対して大蔵省は難色を示していた。 日本のコメ問題小川真如

2023-04-05 17:33:08
遠田大亮 @DaisukeEnta

そこに登場した米国産農産物の輸入の話は渡りに船であり、文部省と大蔵省との妥協に決定的な役割を果たした。 日本のコメ問題小川真如

2023-04-05 17:40:57
遠田大亮 @DaisukeEnta

さらに、国会では学校給食法の提案理由について、文部大臣の大達茂雄が米食偏重の国民の食生活を改善するためにも幼少時代から粉食に馴れさせるのが最も肝要である旨を説明するなど、コメはパンに劣るというプロパガンダを伴いながら、パンと脱脂粉乳が並ぶ学校給食が全国各地で生まれることになる。… twitter.com/i/web/status/1…

2023-04-05 17:41:41
遠田大亮 @DaisukeEnta

そして、日米間では、学校給食で小麦を年間18万5千t、4年間に渡って使う約束が結ばれた。 さらに、一般家庭にも小麦を使ってもらおうと、米国の政府や業界団体による指示・指導の下、栄養指導者が日本全国を走りまわって小麦や大豆を使う料理の講習が行われた。 日本のコメ問題小川真如

2023-04-05 17:55:51
遠田大亮 @DaisukeEnta

農林相は当初こそ小麦の輸入や小麦食の普及に難色を示したが、結局、輸入を受け入れ、さらに製パン業の育成などを支援した。 日本のコメ問題小川真如

2023-04-05 18:00:27
遠田大亮 @DaisukeEnta

理由は、当時の農林水産事務次官、東畑四郎が回顧しているように、食糧不足の現状のほか、外貨を使わず農産物を輸入し、着工予定の愛知用水や八郎潟干拓などの資金源とする狙いがあったからだ。 日本のコメ問題小川真如

2023-04-05 18:00:47
遠田大亮 @DaisukeEnta

【エサの輸入を前提に発展した日本畜産】 1960年1月、豚35頭を積んだ米軍機が日本に舞い降りた。前年の伊勢湾台風による壊滅的な被害を受けた山梨県の畜産業に対する米国からの復興支援である。 日本のコメ問題小川真如 pic.twitter.com/CofgFOBrV3

2023-04-06 10:10:15
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遠田大亮 @DaisukeEnta

”豚空輸作戦”とも呼ばれたこの慈善活動は、米国の農務省、空軍、全米トウモロコシ生産者組合などの連携で実現した一大プロジェクトだった。豚とともに贈られたのがエサ用トウモロコシ1500tであり、米国産トウモロコシの新たな販路を開拓しようという狙いが込められていた。 日本のコメ問題小川真如

2023-04-06 10:11:43
遠田大亮 @DaisukeEnta

贈られた豚は、それまで日本で主に育てられていた中型の品種とは違い、大型で生産性が高い品種であった。そして、これを機に生産性の高い豚を育てる機運が国内で急速に高まることになる。贈られた豚の最後の1頭が死んだ時点で、その子孫は50万頭ほどにもなった。 日本のコメ問題小川真如

2023-04-06 10:18:15
遠田大亮 @DaisukeEnta

生産性が高い豚を育てるにはトウモロコシが使いやすいため、残飯などの余りものが一般的であった豚のエサは、米国産トウモロコシを主としたエサへと切り替わっていった。 日本のコメ問題小川真如

2023-04-06 10:44:47
遠田大亮 @DaisukeEnta

もともと日本人にって家畜は耕作や運搬のための動物だった。肉を全く食べなかったわけではないが、仏教の影響や天武天皇の「肉食禁止の詔」(675年)にもあり、明治天皇が肉食の禁を解いた1872年までは、今でいう畜産業は発展しておらず、同時にエサ作りも発展していなかった。 日本のコメ問題小川真如

2023-04-06 11:08:52
遠田大亮 @DaisukeEnta

エサ作りを含めて国内で自立した畜産業が発展しなかった日本では、エサを大量に輸入できる状況を前提に、輸入穀物で家畜を育てる畜産業が各地で浸透、発展することになる。そして、日本は米国にとって世界最大の穀物の売り先になったのである。 日本のコメ問題小川真如

2023-04-06 11:23:24
遠田大亮 @DaisukeEnta

【米国の意向を反映した”農業界の憲法”】 米国の食料戦略の方針は、1953年のFAO(国連食糧農業機構)総会で米穀代表が演説した「選択的効率拡大」がベースである。 日本のコメ問題小川真如 pic.twitter.com/XQL8A8Ss26

2023-04-06 12:43:52
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遠田大亮 @DaisukeEnta

米国が作りすぎて悩んでいる農産物以外を、各国は選んで作るべきだという主張であり、これは冷戦時代における米国の世界戦略の1つだった。 日本のコメ問題小川真如

2023-04-06 12:51:14
遠田大亮 @DaisukeEnta

「選択的効率的拡大」に呼応したのが、”農業界の憲法”と呼ばれた農業基本法による選択的拡大という日本の方針である。 日本のコメ問題小川真如

2023-04-06 12:52:09
遠田大亮 @DaisukeEnta

このため、選択的拡大では、米国と競合する穀物は増やすべき農作物に掲げられず、小麦は安楽死の時代を向かえりことになったほか、畜産の振興が掲げられつつも、米国と競合するエサ用の穀物の推進は明記されなかった。 日本のコメ問題小川真如

2023-04-06 12:52:27
遠田大亮 @DaisukeEnta

コメはというと、米国のコメ作りは250万tほどだったが、当時の品種の違いから日本のコメと競合しなかった。こんため、日本にとってコメは、小麦やエサなどと違い、米国の目を気にせず安心して、補助金を出せる農作物だった。 日本のコメ問題小川真如

2023-04-06 12:56:02
遠田大亮 @DaisukeEnta

食生活が変化しつつあった当時の日本で、国産の小麦が増えたり、コメへの補助金が減ったりしてもおかしくない。また、畜産が発展するにつれてエサ用の穀物作りが盛んになっても不思議ではない。しかし、歴史がそうならなかったのは、こうした冷戦時代の日米関係が背景にあった。… twitter.com/i/web/status/1…

2023-04-06 12:59:56
遠田大亮 @DaisukeEnta

【食料自給率は急低下】 米国では作りすぎた小麦と軍事を抱き合わせた方策を実行したり、畜産業の推進と抱き合わせにしてエサ用のトウモロコシをPRしたりして、穀物を余るほど作って大量に輸出する方法を20世紀に確立した。 日本のコメ問題小川真如 pic.twitter.com/lUfpH9HBKz

2023-04-07 12:57:00
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遠田大亮 @DaisukeEnta

一方、日本では、穀物の自給率が1960年から1980年までの20年間で49ポイント(82%→33%)も急激に下がることになった。 ニュースでよく取り上げられる「食料自給率」は、専門的にはカロリーベースの総合食料自給率と言う。 日本のコメ問題小川真如

2023-04-07 13:00:38
遠田大亮 @DaisukeEnta

輸入のエサを使った畜産物の分は国産ではない、という考え方で計算するため、エサを輸入に大きく依存している日本畜産の場合、国産の肉や卵、牛乳を食べれば食べるほど食料自給率が下がるという特徴をもつ。 日本のコメ問題小川真如

2023-04-07 13:03:03
遠田大亮 @DaisukeEnta

カロリーベースの総合食料自給率は、ここ15年年間(2005年から2020年)では2ポイントしか下がっていない(40%→38%)。これに対して、1965年から1980年の15年間には20ポイントも下がったのである。 日本のコメ問題小川真如

2023-04-07 13:09:55
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まとめたひと
遠田大亮 @DaisukeEnta

農業、農政、農協等“農”に関してのツィートが多いです。 (個人的には)GHQの占領政策や押し付けられた憲法を金科玉条としたままでは、日本農業はもっと衰退すると考えています。 山形県農協中央会勤務。農協監査士。明治大学法学部卒。山形県酒田市出身。 過去のツィートは、以下↓のまとめサイト(min.t)からどうぞ。