みお
@miobott
#twnovel 早咲きの桜は花弁だけでなく軸まで春色に染まっている。理由をご存じ？ と、春をひさぐ女が笑う。どうしてだろうな。と、私は煙管の煙を吐き出して問う。「愛しい人への恋心が散ってなお色を付けるのです」見れば女の足先に見える裾色は艶やかな赤。恋しい人。と女が妖艶に嗤う。 pic.twitter.com/jQYkNFFZz8
2017-03-26 17:32:38
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#twnovel 春に先駆け咲く花は残冬の風に吹かれ、薄い花弁を地面に散らす。散った花で大地は薄桃色に染まる。色と音に惹かれて虫が目を覚まし、虫の鼓動に大地が温もりやがて春が訪れる。 「貴女が起こしてくれたのですか」 春の女神は散った花に息を吹き、せめて春の風に乗せて見送った。 pic.twitter.com/70F5CMRGth
2017-03-26 17:29:15
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#twnovel 視線を感じて顔を上げればそこに彼女がいた。他の娘は眠る中、彼女だけはしっかと顔を上げて私を見る。「春ですよ」朱色に染まったその指先で私を撫でる「どうぞお休みください」。私はその声に安堵して北風を吹く息を止める。私は冬、彼女は春。一瞬だけ触れ合える逢瀬である。 pic.twitter.com/PpKj7sNaJb
2017-03-25 23:24:43
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#twnovel 「あなたの色に憧れて」。と、小さく開いた花はいう。「あなたの色になりたくて」と、その小さな花は精一杯の赤の色に染まる。それでも風に揺れる彼女の色は、彼の持つ朱色にはほど遠い。短い命のその花の哀れな恋心に、毎年鳥居は切なくなってしまうのだ。 pic.twitter.com/k1YdENmNNW
2017-03-25 23:01:40
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#twnovel 春を先駆けて咲く花は、皆、鮮やかな色を持っている。それは枯れた世界に色を滲ませるためである。春が来る前の少しの間に、空の色は花の色を吸い出してひどく明るい物となる。その健気さを見守るのは、古刹の建物ただひとつである。 pic.twitter.com/Medw9YTp1w
2017-03-25 22:53:41
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#twnovel 夢の話である。 私は春の寺にいた。庭先より方丈を覗き込めば部屋の向こうに立つ影がある。隙間より彼を見つめる私に気がついたのか、その影は私を優しく手招いた。思わず近づけば影は消え、次は私の体が影となっている。振り返れば覗き込む男がある。私は手招く。 夢の話である。 pic.twitter.com/NOoWOmep7I
2017-03-25 22:41:58
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#twnovel 春を願う女の顔というものは、皆、どこか似かよるものらしい。柔らかく膨らみかかった花の蕾に気付いた女は、薄く目を開ける。無常を説くはずのその口に、彼女達は得も言われぬ笑みを浮かべるのだ。その吐息がまた春の風となる。なるほど春とはこのように訪れるものらしい。 pic.twitter.com/pfIGqmcGuZ
2017-03-25 22:35:44
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#twnovel 温い風に起こされて瞳を開ければ目の前はただ、ただ、薄紅一色。目の前に迫り来るその色は、少女の声をあげて楽しげに笑う。 「春に酔いそうだ」 笑いながら私は、重い羽根をゆっくりと羽ばたかす。春に呼ばれた私は哀れな虫で、今年も春の間の短い命を彼女たちに捧げるのである。 pic.twitter.com/Huagz9z2YC
2017-03-25 22:27:53
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#twnovel 春には雨がよく降るものだから、あなたが濡れてしまわないよう私が傘となるのです。 そう微笑んで女が薄紅色の傘を差し出す。傘に触れて鳴る薄い雨音は、私を軽く眠らせたようだ。春の浅い眠りより目を覚ませば、顔面には早咲きの桜花弁が揺れている。 pic.twitter.com/zQ76Ebb5rw
2017-03-12 23:46:42
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#twnovel 暖かな風が吹く、紺の空を割って赤みが差す、白の空気が払われ一面は薄紅の色に染まる。 「おはよう」 目覚めた少女の足下に広がる薄紅のスカート。春風が、目覚めたばかりの彼女を優しく支えた。 pic.twitter.com/b6UaJmHD69
2017-03-12 22:55:20
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