花を中心にしたツイノベまとめ
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みお @miobott

#twnovel 西の果てにある風車が回れば風が生まれる。やがてそれは秋の風となり季節は秋になるという。秋の風が吹けば秋桜の蕾が開いて空気を紅く染め、色のない秋に彩りを添えた。冬が来る前に落とされる、ささやかな色彩だった。 pic.twitter.com/23HolgSxBe

2017-11-05 22:58:14
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#twnove 「また来年」と、男は泣いて彼女が纏う赤の衣に口付ける。「次に会う私は私ではないでしょうけれど」女は呟きはらはら嘆く。男も「来年会う私もきっと今と同じ私では無いだろう」と、泣く。秋風が吹けば、そこに揺れていたのは秋桜の赤と季節終わりの蝶の羽根。儚い一夜の恋だった。 pic.twitter.com/H7uadx4Pqc

2017-11-05 23:02:05
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#twnovel 秋ともなれば紅葉は照れて赤となる。すすき野原は冷たい風に晒され白に染まって、涼やかな音を出す。彼らはその音を聞き、温度を硬い皮膚に感じるのだ。誰よりも先に季節を知るのは、石像となった彼らである。静かに瞳を閉じた彼らの口元には、鮮やかな季節を迎え古拙の笑みが浮かぶ。 pic.twitter.com/0dRFScmm61

2017-11-19 20:58:17
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#twnovel 何と美しい赤だろう! 彼女はそうっと溜息を漏らす。毎年この季節にしか出会えないその人は見事な赤の着物を纏う。しかし彼女は知らないのだ。彼女が憂えば憂うほどに彼女の体は紅色に染まっていく。その美しい色は椿の朱。彼女が焦がれるのは紅葉の赤。二人が赤く染まれば季節は秋となる。 pic.twitter.com/J2iQEVH8WL

2017-11-19 21:10:50
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#twnovel 秋になると光の色が赤となり黄色となり、また朱となり黄金となる。色を滲ませた筆を握り締め「白の季節となる前の、最後の彩りを」と、神は笑った。 pic.twitter.com/JFp4X6FlMz

2017-11-19 21:51:02
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#twnovel 彼女との恋を忘れたことなど一度もないが、ついつい足が遠のき女と離れて10数年。久方ぶりに通りがかったその屋敷は紅葉に埋もれ、赤い炎が揺らめくようだ。恐る恐る中を覗けば「貴方を待ち続けこんなに涙が溜まりました」と、鉢に浮かんだ紅葉の成れ果てが私を責める。彼女は秋の女である。 pic.twitter.com/FnnalEelPA

2017-11-25 22:11:38
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twnovel 風の色が変わった。空気の色が変わった。落ちる葉の音が変わった。落ちる水の音が変わった。 そろそろ季節は冬に変わるのだと、石仏は知っていた。 pic.twitter.com/lMCtFT2eew

2017-11-25 22:16:19
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#twnovel 名も無き仏を守る鐘には、観音菩薩の絵が写し取られている。鐘の音は彼女の声のように細く切なく泣いた。その音に感化されたように、鐘の背後の紅葉は毎年恐ろしいほど赤に咲く。 pic.twitter.com/Y2FnHObj1h

2017-11-25 22:22:12
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#twnovel 「中秋の名月の筈なのに、月が欠けて見えるのはどういうことだね」「心配せずとも、まもなく諦めて綺麗に全部みせてくれますよ」「諦めるとは不可解なこと」「秋の夜が」目前で悠然と座る女が、艶然の笑みを浮かべる。「月を恋しく想い、彼女の裾野を掴んで離さないのです」 pic.twitter.com/3zkwYfrgeW

2017-10-04 23:07:23
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#twnovel 真っ白なドレスに銀の靴。歩く影まで美しい女が居た。いつも舞踏会ではダンスを一曲、踊り終わるや否や消えて行く。ある日悪戯に彼女のあとを追いかければ、螺旋階段の上で不意に姿を消した。慌てて振り仰げば、そこには白い照明が一つ。それが生み出す影は、舞踏会の夢絵である。 pic.twitter.com/Xh7jcMkIbM

2017-10-29 22:55:08
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#twnovel まるで光と音の競演だった。パイプオルガンが唸りステンドグラスが光り輝く。賛美歌と共に光が溢れる。礼拝の人々が去ったあと、硝子達は我が侭をいうようにカタカタと音をたてる。それを聞いた牧師は足を止め、再びオルガンに向かった。ここから先は硝子達に捧げる賛美歌である。 pic.twitter.com/dgxE0myxMC

2017-10-29 23:40:49
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#twnovel 驚くほどに濃い青空が広がる瞬間がある。それは夏の終わり、秋の始まり。見上げると、底の見えない水面のような青空が広がっている。かかる雲は龍神の鱗の如く。「台風をお迎えする道を作るため、この季節の空はこんなにも蒼いのです」と、青に染まらぬ白鳥が嗤って去って行った。 pic.twitter.com/XYVn0yRArm

2017-09-16 19:35:23
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#twnovel 数千年の時を経た塔が蒼い空に向かって立つ。吸い込まれるような空の色。塔はいつか、龍となり昇天する夢を見る。 pic.twitter.com/Tk713Qz5rg

2017-09-16 20:00:25
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#twnovel 彼岸花が赤いのは、逝った人を想うがためである。夏の名残を残したこの時期に地上に咲く美しの赤。嘆き哀しみ天より見つめる故人の瞳に、それはまるで大輪の花火のように映るのである。 pic.twitter.com/0x9dim9DrE

2017-09-24 20:10:28
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#twnovel 青空の下、今年も大輪の花が咲く。掌に似た黄色の花が私を手招く。「見事ですね」私と同じ方向へ向かう男が花を見て微笑む。「ええ」私は照れて笑った。「あの世からの帰省は道に迷い易いので目印に咲かせてくれるのです」側では一年振りに見る娘が花に似た愛らしい手を振っている。 pic.twitter.com/kIcRXfUtpJ

2017-08-12 22:23:59
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#twnovel この季節になると私は黄色い花の夢を見る。最初は一輪、翌年は二輪、花は毎年確実に増えて行く。黄金の光に囲まれ覗かれ息もできない私は、ある年ようやく思い出した。「ああ、お前は私がいつか殺して埋めた女の代弁者」今では一面の花畑。みっしり詰まった花が私を見下げて嗤う。 pic.twitter.com/0tSoD6XOMd

2017-08-12 22:32:22
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#twnovel グラスに沈むのは、闇を含んだ琥珀色。白い筋を描くミルクの軌跡に、沈んだ甘いシロップも色を滲ませた。そっとかき混ぜ口に含むと喉の奥に儚く消える。 それは、夏の終わる味である。 pic.twitter.com/DGVNzRMBBm

2017-08-27 16:20:16
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#twnovel お前達は夏の落とし仔。可哀想に。と、あの人は嘆きます。なぜ嘆くのでしょう悲しむのでしょう。私達はその手で慈しまれるだけで幸せなのです。「悲しいのはお前達が絵だからだ。夏が終われば見向きもされない」あの人は涙の代わりに水色の絵の具を私達の上にそっと流し込みました。 pic.twitter.com/5nhcKXfAie

2017-08-27 20:13:50
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#twnovel 百鬼夜行の展示会へ足を運んだのは夏の終わり、夕刻の頃。遊びのつもりで足を踏み入れたその門の下。夏の終わりの蝉に混じってさざめき嗤う声がする。「さて本当に遊びで済むか、懐かしや京都一条、百鬼夜行の晴れ舞台」 pic.twitter.com/puydssqkl5

2017-08-27 20:16:21
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#twnovel 憂鬱な梅雨の朝、彼女は白く輝く。なぜこれほど美しいのか、それは罪故であると彼女は囁く。彼女を奪い合い男が殺し合った、国が滅んだ。その罪で彼女は一輪の蓮の花に生まれ変わった。朝にしか咲かないその花を巡ってまた争いが起きる。「因果です」彼女は甘い吐息を小雨に漏らす。 pic.twitter.com/Y5eakU1fOv

2017-07-02 23:30:19
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#twnovel ある日、彼女を守るように一匹の蜻蛉が飛来する。彼は割れた羽根を必死に耐えて彼女をじっと守るのである。「生前、彼女を守り切れなかった私は」蜻蛉は声を振るわせた。「蜻蛉となりました。そしてただ朝一瞬だけの逢瀬を許されたのです」その声は、朝の勤行の音に紛れて消えた。 pic.twitter.com/tO6rJg04EQ

2017-07-02 23:51:33
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#twnovel 夏祭りの提灯に灯が入る。空は茜の色だ。「やあ」と男が言った。「あら」と女が囁いた。女は照れて笑って手を差し出す。男は迷わずその手を取って照れた。「まるで若者だ、恥ずかしいな」どこかで踊りの三味線がなる。「お盆ですから久々に生前を思い出してデートなど」女は笑った。 pic.twitter.com/4M2l8peTe9

2017-07-29 23:22:29
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#twnovel その道の向こうから海の鳴き声が聞こえる。会いに来て下さいましと、女の声で海は泣く。青闇の空、鳥の泣き声、海の音。さて、闇の向こうに待つ灯りは果たして海の女か否か。試される私の前に、誘うように光が灯る。南国の海は時に男を騙して喰らうと、そんな噂を私は思い出した。 pic.twitter.com/a4EtvHBwi3

2017-05-26 23:37:24
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#twnovel 南に向かうほど、緑の色は鮮やかに花の色は蠱惑的となっていく。空気の中に甘く爛れた香りがまじった。「彼女だ」かつて愛した南国の女の膚より香った、甘く蕩ける香りを思いだし、私は目を細める。あの女もすでにこの世にはあるまい。長い蛇の体を引きずり、私は己の巣で涙を零す。 pic.twitter.com/yQ9DU6GDh8

2017-05-26 23:48:11
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#twnovel 透き通る青の水、青の空、白の砂、やがて打ち付ける雨風の音、雲を運ぶ風の音、水を汚す砂の色。かすかな予感をこめて、水面がかすかに、絹のような音を立てた pic.twitter.com/77YQ7Fxn2G

2017-05-27 23:21:37
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#twnovel 猫はいう。東方より迫ってくる来る雲はおそらく雨雲だよ。と。彼女の言に従い木陰に身を寄せた途端、南国に似合う豪雨が大地をえぐる。雨雫の向こう、年経た顔をして、かの子猫が妖しく笑った。 pic.twitter.com/C4sL5vVBeW

2017-05-27 23:29:06
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#twnovel 繰り返し見る夢がある。それは美しい白い道の夢。長い道は青い空に吸い込まれて消える。左右には濃い緑だ、噎せ返る青の香りだ。空気は湿り気を帯びて重い。その風景たちが、さあ道を駆けろと急かすのだ。気がつけば夢の中の私は走り出す。地面に映るのは決まって少年の影である。 pic.twitter.com/1VTxyp9Eky

2017-05-28 21:29:48
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#twnovel 駆けた道の先に海が見えた。それは息を飲むほどに美しい青の海だ。私は…少年だった私はその青く透き通る色を知っている。遙か遠い日、私は海で美しい女を見た。彼女は冷たい手をしていた。彼女は巻貝に何かを囁いて私に手渡し、そして消えた。あの貝を、私はどこへやったのだろう。 pic.twitter.com/nfX2fm01Tj

2017-05-28 21:34:15
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#twnovel 小さな薄桃色の巻貝であったように思う。美しい女は悲しい目をして、貝の中に祈るように言葉を注ぐ。まるで貝の中に彼女の言葉が閉じ込められたようだった。あのときの彼女の唇の動きを、情けないかな私は思い出せない。あの優しい目をした女の声は永遠と貝の中に閉じ込められた。 pic.twitter.com/PBw9QH07gB

2017-05-28 21:48:34
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#twnovel 夢の中の私は巻貝を見つけ出す。貝は女の帽子の隣、耳に寄り添うように置かれていた。私は震える手で貝を耳に押し当てる。貝からは海の音、そして… 「母さん」 私の名を呼ぶ懐かしい声を聞き、私は漸く彼女の正体を知る。叫んで飛び起きた私の手は、すでに年老いていた。 pic.twitter.com/O5YAv11kYF

2017-05-28 22:22:46
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#twnovel 子を思う母の気持ちに、人も獣も変わりはないでしょう。と、彼女は穏やかに鳴いて微笑む。薄く開いた目は、ぞっとするほどに蠱惑的なグリーンの輝き。その色は、やがて初夏の日差しに蕩けた。 pic.twitter.com/hqSBXyKCC9

2017-05-28 22:29:03
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#twnovel 腹のくちた子猫から順に、眠って遊ぶ。この長い雨が終わって夏が来れば彼ら彼女らは母から離れ、兄弟から離れ、どこかで一人で生きることになる。なればこそ。と、母猫は瞳を細めて子等の姿を見つめている。 pic.twitter.com/TxoNHQ3z04

2017-05-28 22:42:22
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#twnovel 今年の春は寒すぎて、月がどうにも目覚めない。月の番をする男はそう困ったように笑う。「だから僕は考えた。ちょっとズルかもしれないがね」彼が勢いよく開けたカーテンの向こう側、黄金色に輝く春の蝶が群れを成して闇夜の宙に円を描く。春の月とはこうして生まれるものらしい。

2017-04-01 22:37:32
みお @miobott

#twnovel 脛に何かが優しく這った気がして、男はふと目を開ける。すると目前に広がるのは、赤だ。赤だ。むせ返るような赤だ。赤い春の風だ。男は気がつけば一羽の鳥となり春風に羽根を揺らす。しかし再度目を覚ませば男はやはり人である。足下を見れば脛に触れたのは一枚の桜の花であった。 pic.twitter.com/dc1eOeyZal

2017-04-01 22:28:00
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#twnovel 春を先駆けて咲くその花は光の名を与えられた。彼女を追いかけるように咲く白の桜は、見事なまでに赤を抱いて赤を散らす彼女のことを本物の太陽だとそう勘違いした。そして毎年春になるたび嘆くのだ。「私の世界の太陽は毎年死んでしまう」そして毎年、花を泣かせる春の雨が降る。 pic.twitter.com/lmPsyBEYU8

2017-04-01 22:18:25
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#twnovel 「今年も遠くから会いに来てくれたのですね」と彼女が言う。「貴女が呼ぶものですから」と、彼は笑う。「あら! 無意識に呼んでしまったのかしら」と、彼女は照れて顔を伏せる。「あなたの香りが私を呼んだのです」ヒヨドリはそう囁いて、紅色に染まる春の花にそっと口付けた。 pic.twitter.com/ZW7IxLnDBR

2017-04-01 22:07:32
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#twnovel かつて私は初桜のごとき娘を愛し、やがて歳経たその娘を手酷く棄てた。非情にもその記憶をすっかり忘れた頃、ふと立ち寄った茶屋で季節の桜餅を口にする。やあ旨そうだ。と、呟く私に「姥桜のなれの果てでも、そう仰って?」とかつてのあの女の声が桜餅からかすかに聞こえた。 pic.twitter.com/XuK3Ugjh0l

2017-04-09 21:21:56
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#twnovel 丁度桜がそうっと花弁を開くころ、毎年毎年はかったように雨が降る。その雨は冷たく激しく無情で、儚い花を揺らし散らしていくのだ。それは春の神が、愛し子ともいうべき桜の花を人の目に触れさせたくないがための妬心であるという。 pic.twitter.com/8OL1VzU2RO

2017-04-09 21:24:54
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#twnovel 「まあ。あの人はその様なことを仰っていましたか。まさか、まさか。この雨は、春の神と離れがたく思う私の涙を哀れと思ったあの人が、人目から隠すために降らすのです」…と、吉野の君は白い膚に一筋の涙を零す。やがて、それを覆うよう柔らかな春の雨が降りはじめる。 pic.twitter.com/L8vALuZ3NT

2017-04-09 21:28:03
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#twnovel 「桜の花は綺麗だけれど狂い咲くと恐ろしい」そう言って震える彼女が愛らしく、私は思わずその小さな掌を握ってやった。すると桜が妖しく笑う。「かつて同じ事をいって盗賊を籠絡し、鬼となった女がおりました」背ごしに見えた女の影には鬼の角。「嗚呼、恐ろしや桜の森の満開の下」 pic.twitter.com/WPsMKt0npf

2017-04-09 21:33:07
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#twnovel その場所に咲く桜の花は、他よりも朱の色が濃いと言われている。ぼうっと赤く染まるその花は、娘のごとき顔色である。「だって目覚めるたびにあの人の姿を見てしまうものだから」彼女が見つめる先に朱塗りの社殿。歳を経たその建物を、彼女は思慕の色で見つめる。 pic.twitter.com/bR8aB4eyJL

2017-04-09 21:48:30
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#twnovel 音に呼ばれて顔をあげると、そこには一面の桜桜桜だ。皆同じ顔をして私を見つめる。「私たちは姉妹であり母子であり同一であり師であり弟子であり花であり種である」淡く光る数千の瞳が一斉に私をみる。「あなたも私達の仲間でしょう」気がつけば私の手も足も淡い色に染まっていた。 pic.twitter.com/JGhtOcurbZ

2017-04-10 23:32:32
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みお @miobott

#twnovel 春の始めに散る椿は、艶やかな肢体をそのまま残して落ちる。春に祝福されて目覚める桜を見つめるように、彼女は目を見開いたまま果てるのだ。 「さようなら」 と、彼女は春風に囁いた。 春の神に恋をしながら、けして共には歩めない初春の椿は、その形と色で春を彩るのだ。 pic.twitter.com/tzon8J2cec

2017-04-10 23:34:07
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#twnovel 染井吉野の白は、曇りの空に溶け込み消える。せめて赤の色であれば曇りの空にも良く映えただろうに。と文句を言えば、白い彼女は優しく微笑み「この色は、貴方という古刹を彩るにふさわしい色です」と私を見つめた。千年、共に過ごした彼女は年々美しくなっていく。 pic.twitter.com/gvv5otox5V

2017-04-12 23:36:53
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みお @miobott

#twnovel 毎年春に私は目覚め、そしてわずかな時間を過ごしたのちに再び1年の眠りにつく。毎年不安にかられて目覚める私が心安らいでいられるのは、目覚めてすぐ遠景に彼の姿を認めるからだ。巨大で優しく、空に馴染む立ち姿。千年変わらぬその姿に、私は毎年恋をする。 pic.twitter.com/tzLvrQE0H0

2017-04-12 23:39:50
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みお @miobott

#twnovel 美しく咲く桜に気を取られ、カメラを覗き込む私の前に白い影が横切った。ふとレンズを見ればそこには花弁が一枚。「散る桜はお嫌い?」と、去るばかりの彼女は切なそうにそう笑う。 pic.twitter.com/ikj3N3O6DK

2017-04-12 23:44:34
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#twnovel 「今年はあまりに寒かったので会いに来るのが遅れてしまった」そう言って彼が現れたのは翌朝のこと。「今年も綺麗ですね」そう微笑むのは雪解け水。桜の娘はひどく照れてびわ湖の疎水も赤に染まった。ただ、彼女が遙か山上に残してきた淡い想いのみくじだけが嬉しそうに笑う。 pic.twitter.com/8LMSkfk0OB

2017-04-13 20:08:22
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みお @miobott

#twnovel 「待ち人はまもなく現れる」優しい嘘が描かれたみくじを、娘は桜の枝にそっと結び付ける。それは満開、桜の園。「まもなくとは、いつでしょう」娘はほろりと涙を零す。それはやがて桜の花弁となった。「もう散ってしまうというのに」去る娘の背に舞う桜は春の終わりの音がする。 pic.twitter.com/cuO5ZN8OlV

2017-04-13 20:06:00
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みお @miobott

#twnovel 「桜は空の色を吸い込むものだから、荒天が続くと冷たい色に染まるのです」久々に晴れた空の下、彼女は美しい淡紅に染まる。「今年の私は冷たい女だと、そう思ってらしたでしょう? 私もこんな純な色になれるのです」何十年も共にある桜の娘の戯れ言に、地蔵は思わず苦笑を漏らす。 pic.twitter.com/hhsCU7muIQ

2017-04-13 20:17:04
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みお @miobott

#twnovel 「背骨までガリガリの婆の死体を見つけてきたぞ。おっと婆さんの鞄は俺のだぜ」薄汚れた男が手を伸ばすが年嵩の男は中を見るなり焼却炉に投げ捨てた。「…ゴミだよ、トム」男が見たのは鞄底に隠された少年の写真。愛おしがるよう引掻き傷が残るその写真には、トム。と書かれている。

2017-04-22 23:08:03
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みお @miobott

食べたり飲んだり書いたり。 書籍化📖 「上島さんの思い出晩ごはん」「極彩色の食卓シリーズ」「深川花街たつみ屋のお料理番」「彼女は食べて除霊する」 ヘッダーは@moshio_tsumuriさんthx お仕事依頼等は m.miobott@gmail.comまでお気軽に。 BOOTHで同人誌通販もしてます。