くりかせ新刊『誓いと縁』 #ふぁぼの数だけこれから出す本からお気に入りの一文を晒す ❤押してもらえたら嬉しいです! pic.twitter.com/mcv7thRguc
2019-11-30 23:43:50RTといいねありがとうございます! くりかせR18「誓いと縁」シリーズ pixiv.net/novel/series/8… 新刊表紙と挿画コラージュです☆ pic.twitter.com/VPC8ST1zfi
2019-12-01 17:48:291 何をしても美しい刀だが、わけても茶の湯にある所作は格別だった。 「どうしたんだい」 大倶利伽羅の視線に気づいたのだろう。歌仙は炭斗に火箸を置いて布団の横にやってきた。大倶利伽羅は無言で首を横にふる。見惚れただけだなどと言えやしない。
2019-12-01 20:59:552 「それでこの桜の園かい」 いささか呆れて鶴丸が一面の桜色を見渡した。 「歌仙のやつが、褒美に欲しいものは山ほどあるが審神者の薄給じゃ買えないものばかりだと言うもんだから、細川の殿様にだって出来ないことをしてやるしかないじゃないか」 この本丸の主は〈庭師〉だ。
2019-12-01 21:01:163 「主よ、掌中の珠のごとく大事にしてる初期刀をとられて複雑な気分かい?」 鶴丸がいくらかおどけて問う。 「いや、正直ほっとしている」 主はそう言って、空いた盃を鶴丸にさしだした。
2019-12-01 21:02:074 今日は歌仙が茶入の仕覆用の古裂を選んでいた。ためしに、君はどれがいいと問うと椅子から立ち上がって近くまで来た。てっきり、どうでもいいとか、俺に聞くなとか言われるものとおもっていた。 大倶利伽羅は、間道だの金蘭だの緞子だのと呟いて、茶入に見合うものをさす。
2019-12-01 21:03:295 主は庭師――と呼ばれる政府の隠密――だが、牡丹だけは本丸に植えようとしない。 この本丸に百花の王がいるからだ。 6 食事をともにすることが重なっても歌仙は大倶利伽羅の箸や茶碗を用意するこころづもりがなかった。歌仙もまた、大倶利伽羅の部屋にじぶんの装束を置いて帰る無作法は慎んだ。
2019-12-01 21:46:527 歌仙もまた、そのときと同じく大倶利伽羅の背に手をまわす。近くへ、もっとそばへ、隙間なくひとつになりたいと願って身を寄せる。足許に温い波がしのびよる。背に力が入らなくなる。 溺れてしまいそうだ。
2019-12-01 21:47:398 歌仙兼定は不羈(ふき)奔放(ほんぽう)な刀だ。ふだんはたいそう穏やかだが、主といえど自分の意見を押し通す力がある。それと同時に自分の世界に無遠慮に立ち入られるのを嫌い、初期刀らしく他者の面倒を見ることに長けていながらもその自由を何よりも大事にした。
2019-12-01 21:48:029 「たしか、〈柴舟〉というのだったか」と歌仙がつぶやいた。それが何をさすのか大倶利伽羅は知っていた。 「あんたのほうは〈初音〉だか〈白菊〉だったな」 互いの元主が伽羅の香木を分け合ったはなしだ。
2019-12-01 21:48:3710 「もう怒ってはいない。君に侮られたようで悔しかっただけだ。それに、主の護衛は確かに必要だ。僕の判断が間違っていた。あのあとお小夜に叱られて堪えたよ……」 歌仙は正直に白状した。 ↑ これねw でもこういうとこあるでしょ、歌仙さんてば
2019-12-01 21:50:3511 何故なら歌仙の面は凪いでいた。 もうすっかり覚悟を決めてしまったものの貌(かお)だ。この本丸で、初期刀の我の強さを知らぬものはいない。こうと決めたら文字通り力づくで押しとおす。不思議なことに、それを押しとおせるだけの、純然たる力を持っている。
2019-12-01 21:51:2412 「行くよ」 小夜左文字がフェンスから身を翻すと同時に太鼓鐘の青いマントもはためいた。続いて黄金のストラが闇夜に閃いて燕の尾がひらりと舞う。
2019-12-01 21:52:1713 「伽羅、走るのつれえなら担いでやるぜ」 「いいから走れ、鶴丸たちを探すぞ」 かぶりを振ってそう言った春の三番に、二番はおうよと頷いた。
2019-12-01 21:52:3214 袈裟をまとった太刀は、カソックによく似た服を着た打刀へとつぶやいた。 「そういえば『復活』というのもキリスト教の言葉でしたね」 「確かにな。この国では八月十五日は『終戦の日』とされるがカトリック信者にとっては『聖母被昇天の日』だ。
2019-12-01 21:54:07聖母マリアが死んで霊魂と魂を天上に召し上げられたことを言う」 15 「大倶利伽羅」 歌仙兼定は俯いてしまった刀の名を出来得るかぎりやさしい声で呼んだ。 「……君は不動明王の加護のある刀だったね」
2019-12-01 21:55:0016 恋や愛に溺れて死ぬのは自分たちらしくないと二振りとも理解していた。 それでもこの恋が最初で最後のもので、二世を契ると誓ったのはお互いだけだとも知っていた。 縁が、あるかどうかは考えなかった。 願うことも、しなかった。
2019-12-01 21:55:3117 蔟とは蚕が繭をつくるための小箱のあつまりだ。つまり、この建物自体が刀剣男士のプロトタイプ、いわば蛹を埋め込んだ巨大な咒の塊だと主は今さらに気がついた。だからこそ式神を搭載した昆虫ドローンの大半が喰われてしまった。
2019-12-01 22:07:0118 歌仙は声を上げたが、それ以上は続けなかった。なにしろ自分の大好きなかおが間近にあって、言葉よりも雄弁にその黄金の瞳が歌仙を求めていると教えてくれた。
2019-12-01 22:11:0419 「あれは初期刀だ。オレが選び、オレもまたあれに選ばれてここは始まった。この本丸にいる刀たちはすべて、歌仙兼定がいなければ招かれなかったものたちだ。その始まりの一振りを、この本丸の主たるオレが背負って帰るのは当然だろう」 ↑ くりかせの話しだけど主のこの台詞すごく好きなの
2019-12-01 22:13:0620 歌仙兼定は喉首に刃を付きつけるように、甘い約束をしていった。 21 内側に鞘が置かれている。夜空に粉雪の舞う鮫皮黒漆塗りの鞘は見間違いようもなく「歌仙拵え」のそれだ。しかし影蝶透かしの鍔はもちろん、そもそも刀身自体がない。また、そのちかくに刃体も落ちてはいなかった。
2019-12-01 22:18:40うちの本丸の大倶利伽羅さんは雅のワカル伊達男なのでこの手のことがちゃんとできる(でも好きなわけではない twitter.com/isozakiai/stat…
2019-12-01 21:04:45うちのくりかせの伽羅ちゃんあんまり隙がなくて書くのが大変だと思ってたけど、『弱点=歌仙兼定』だと気づいてからは合点がいって気楽になった(なお、歌仙さんの弱点は伽羅ちゃんじゃないですね、あの美貌の人外には取り立てて弱いとこ見当たらない)。
2019-12-01 21:22:42増えてた。ありがとうございます! 23 無事でないだろう事実を、こんなふうに思い知らされても大倶利伽羅は本丸に留まることしかできない。その悲嘆を先回りして慰撫し、そろそろ朝顔の剪定をしてくれなぞと書いてよこす男の繊細と剛胆が身に沁みた。
2019-12-02 20:58:2224 歌仙兼定は武名を重んじる矜持の高い刀だ。だから大倶利伽羅はなるたけこころを平らかにして返事を書いて、ジンジャーリリーの花をしのばせた。
2019-12-02 21:01:4825 覚悟を決めて、歌仙兼定の両頬をてのひらで包むように引き寄せた。 「もっと顔をよく見せてくれ」 「なんだい急に」 「あんたを永遠に覚えていられるように」 いつ何処にいても、この美しいものを思い出せるように。これと愛し合った日々が確かにあったと自分が覚えていられるように
2019-12-02 21:02:31以上、どうもありがとうございます! RT先でフォロワーさんにハピエン疑惑がもたれてて笑いました。まあ不穏ですよね、うん、否定はしないw 是非同人誌でお確かめくださいまし☆
2019-12-02 21:05:08