ハレムとアロマザリングという多くの霊長類に共通する婚姻・育児体制から、狩猟採集社会の平等主義的圧力を通じて一夫一妻と夫の育児参加という体制へと移行してきたのがサピエンスの(他霊長類に比した)特質性だったのだが、自由資本主義の進行に伴って、この風潮の反転が生じ始めているのは面白い。
2019-12-31 06:39:36豊富な育児支援(シングルマザー支援など)の下で、繰り返し結婚して多くの子孫を残すオスと、一度も結婚できず子孫を残さないオスの二極化が生じているというのが北欧諸国の現況であるが、これはハレムの変種であり、保育施設が育児の主役となっていくなら、これはアロマザリングに他ならないのでは。
2019-12-31 06:45:30RT>ヒトも長らくアロマザリングを続けていたというか、例えば昭和前期(「おしん」の時代)までは上の子が下の子の面倒を見る、おばあちゃんが面倒を見る、近所の人に預けるのはごく普通のことだったんだけど、核家族化の進展でそれが止まり、しかし負荷が大きいので代替が求められてる状況かと
2019-12-31 06:47:29日本語の「ムラ」という語は「群れ」と同根語なのだけど、ムラ社会はアロマザリングの単位となるなどまさに生態学的に類人猿一般の群れと相同の機能を果たしていたものが、ムラを破壊してしまったので、ムラにとってかわった近代政府にその機能の代替が求められている、という話かなと。
2019-12-31 06:51:47@kyslog KYさんも重々ご承知の上とは思いますが、一夫一妻が確立された上でアロマザリング的構造を利用するのと、ハレム&アロマザリングという婚姻・育児形態は、かなり毛色が違うものになります。 核が根本的に異なるので。
2019-12-31 06:53:16@kyslog 余談ではありますが、アロマザリングの部分利用が継続されてきたのは、サピエンスが通常の単婚種とは異なること、一夫一妻確立の”後”に夫の育児投資が求められるようになったこと、を暗に示唆する興味深い性質と考えています。
2019-12-31 06:53:19ただ、(狩猟採集社会的な)平等主義圧力、それによる一夫一妻制への移行が、本来散逸しがちなオス達の社会的協力を引き出すある種のバーター取引となってきたというのが進化史的な実情だと思うので、婚姻・育児体制の原始回帰と近代国家体制の間にあるジレンマがどこを落とし所にするかは悩ましい。
2019-12-31 06:55:58@motidukinoyoru 日本の古代の風習を見てると、夜這いが一般的でだれが本当の父親か分からないなんて状況はザラにあったので、チンパンジー以来の伝統である雑婚がそのまま続いていたと解釈してもいいような気がしますね。ヒトを含め類人猿ででハレムや一夫一婦が遺伝的に定着した例はないと思います。
2019-12-31 06:57:29@kyslog 鳥類なんかが典型的ですが、一夫一妻だからといって、いわゆる不倫が生じないかというと、全くそうではなくて、むしろ一夫一妻制の中での女性のありがちな性戦略は、「平凡なオスから育児リソースを確保し、魅力的なオスの子を産み育てる」というところに落ち着くのが常道です。
2019-12-31 07:00:49@kyslog 一応付け加えておくと、いわゆる不倫が横行する中で、それでは何故”平凡なオス”が妻帯を持つかというと、一般に不倫を”される”側のオスは、相対的に性的魅力が低い場合が多いので、複数人の子供の内の何人かが”托卵”であっても、妻帯を持って何人か産んでもらう方が遺伝子存続に有利になるからです。
2019-12-31 07:03:36@motidukinoyoru 一夫一妻&アロマザリングとハレム&アロマザリングは違うという主張は、婚姻の特殊化を過度に高く見積もりすぎだと思いますよ。サルの中でもマカクはα雄が存在するようにハレムの性質をもった雑婚ですし、鳥の例は一夫一婦の中に隠れハレム・隠れ雑婚があるという状態ですよね。
2019-12-31 07:11:13@kyslog サピエンスの一夫一妻は、例えばテナガザルのような単婚種とは異なり、おっしゃる通り隠れハレムのような構造を持った、非単婚型の一夫一妻です。 このあたりの事実認識については、表現が異なるだけで、KYさんとはあまり食い違いはないと考えています。
2019-12-31 07:13:49@motidukinoyoru いわゆる進化心理学の方面で、特に生態学的なフィールド研究をしてない方は、一夫一婦/一夫多妻/乱婚のモデル上の挙動の違いを強調しようとするあまり、多くの生物はそこまで婚姻形態が特殊化していないというのを軽視しているのではないか――というのが私の思っているところですね。
2019-12-31 07:18:11@kyslog 差異を強調しようとしすぎて、一致点や混在を留保しきれていない、という意味なら、おっしゃることは分かります。 ただ、「一致点や混在部分もあるので差異は軽視していい」かというと、それは全く違う次元の話だとも思います。
2019-12-31 07:20:51finalvent.cocolog-nifty.com/fareastblog/20… とかを参考にしているのですが、江戸時代以前の中世では未婚率が高かったのに対し、江戸時代頃から村落での皆婚システムが確立され始め、明治時代にはそれが”国家化”されていったという順序となっている。
2019-12-31 07:23:59こうした婚姻システムの変化と、国家の”近代化”の並行は、偶然ではなく、必然的なものではないだろうか。 近代国家の特徴は、国民統合を通じて、国家レベルの協力体制を構築するところにあった。
2019-12-31 07:24:10この意味で、社会的な皆婚圧力の強化を通じて、各人から引き出せる社会的協力の水準を引き上げていくのは、理に適うというか、むしろ必然的並行であったのではないだろうか。
2019-12-31 07:24:18そして、ある種の自由主義思想の徹底の必然として、そうした皆婚圧力、そしてそれ以前の「一匹のオスには一匹のメスまで」という平等主義的一夫一妻圧力を除去しようとする働きが強まるのであれば、近代から反転して中世(あるいは中世以前)への回帰に向かうのではないかと考える。
2019-12-31 07:25:19@motidukinoyoru とはいえ、高々100年前までお妾さんで一夫多妻、農村部の乱婚的状況、都市部中産階級の一夫一妻などが混在していたわけで、一夫一妻が《確立》したかというとそこまで確かではないだろうと思います。法律で強制されたから核家族が広まっただけで、結局核家族に無理が来てる状況では?という意見ですね
2019-12-31 07:27:34@kyslog サピエンスな単純な単婚種ではなく、KYさんも論じていた通り、潜在的ハレム/雑婚(そしてアロマザリング)を含んだ一夫一妻制を運用していて、だからこそ核家族化(真性の単婚化)には無理がある、というのは強く同意するところです。 サピエンス的な一夫一妻と、核家族は、厳密に区別すべきです。
2019-12-31 07:31:30@motidukinoyoru 婚姻形態は子育ての負荷に影響を受けていて(あるいは交絡して進化して)、例えば鳥に一夫一妻が多いのは子育ての負荷的にそれが適しているからだと思いますが、サル目の子育て負荷もアロマザリングが大前提となっている、ということは言えるかなとは思っています。
2019-12-31 07:36:28@kyslog ただ、霊長類の中でも、テナガザルのように、カップル以外を排除する真性の単婚種は居ます。 これはロビン・ダンバーの指摘だと思いますが、真性の単婚種は、上述の排除性向から社会を形成できず、必然的に単婚種であり続けるという、進化上のある種の”落とし穴”に入っていきます。
2019-12-31 07:41:53@kyslog サピエンスが、テナガザル的な意味での真性の単婚種でないことは(KYさんに言うのも釈迦に説法で恐縮ですが)極めて明らかなことです。 サピエンスが一夫一妻の運用の中でアロマザリング的構造を保持できるのは、背景に隠れハレム/雑婚を維持していることと表裏一体です。 twitter.com/motidukinoyoru…
2019-12-31 07:43:33@motidukinoyoru なので私は現代人の多人数保育が「一夫一妻が確立された上での部分的アロマザリング」ではなく、乱婚的本性による《真の》アロマザリングという意見でした。 尤も、核家族が人為的とはいえ制度として確立したのは確かなので、その状況のモデルを論じることはできると思います。
2019-12-31 07:51:54@kyslog ”隠れ乱婚”と”真性の乱婚”は区別していかないと、なぜサピエンスが社会的に一夫一妻という体をとる(実際にはアルファオスが多くの子を産ませるとしても)のか、というところが理解不能になるのではないですか? 一致点や混在点を強調するあまり、差異を軽視するというのはそれでそれで誤謬かと。
2019-12-31 08:00:29@motidukinoyoru これは進化論に対する態度の違いだと思いますが、私としては遺伝的形質の変化を伴うような、種分化や霊長類という分類学的スパンでの理解と、ジーンよりは文化的ミームによって説明されうる狩猟文化だの資本主義だのを混在させて喋ることに違和感があるんですね……
2019-12-31 08:14:50@kyslog 生態は(特にサピエンスの生態は)、遺伝子と文化の相互作用の中で形成されていき、そのルールの中で”自然”選択的に(適者生存的に)形質が定まっていくという見方なので、遺伝子を軽視する見方も、文化を軽視する見方も、同意しかねるという次第です。
2019-12-31 08:18:26@motidukinoyoru 文化的ミームであれば世代を経ずとも変わる可能性があるわけで、その違いは大きいかと。 基本的性質を考えるうえでのトイ・モデル上の挙動を留保なく現実世界に当てはめようとするのに突っかかるというのは、私としては経済学者に対して突っかかってたのと同じセンスでやっています。
2019-12-31 08:18:52@motidukinoyoru だとすると、「自由資本主義の進行」という高々3世代程度で数千万の集団で遺伝的シフトがあるとはまず考えられず、そもそも狩猟文化の時代でも種分化はしていないので、婚姻形態の変化を遺伝で語るのは困難ですし、文化的ミームなら生存中に変えられるので遺伝モデルの流用は相当な留保が要ります。
2019-12-31 08:22:18@kyslog KYさんの「遺伝的シフト」、「遺伝モデル」というのが何を指しているのかがよく分かりません。 既に議論されたように、サピエンスは真性の単婚種とは異なり、潜在的にハレム/乱婚要素を含んだ一夫一妻ですから、ハレム/乱婚側に軸が振れることは(それこそ遺伝的に)十分ありえる範囲です。
2019-12-31 08:38:28@kyslog これはダンバーの指摘ですが、真性の単婚種はハレム/雑婚へ回帰できない進化上の落とし穴に嵌まります。 一方、サピエンスの一夫一妻は真性の単婚種とは異なり(KYさんの表現を借りると)隠れハレム/乱婚を含んだ複合的な一夫一妻なので、真性の単婚種とは異なり、婚姻文化の変化(回帰)が生じ得る。
2019-12-31 08:41:28@motidukinoyoru 用語の使い方が不正確でした。「遺伝子シフト」は下記論文のような「Allele frequency shift」に相当する意味で使っています。 ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12487357 「遺伝モデル」というのは、進化シミュレーションで基本的に前提とされる「世代交代時のみ行動(形質)が変化する」という要素です。
2019-12-31 08:50:42@motidukinoyoru 生態学を扱うものでも、r-K戦略のように、遺伝的説明を必要とせず、単に所与の条件で最適な戦略を計算するというジャンルもあるわけですが、婚姻戦略説はそういった遺伝子的説明を必要としない所与条件上の最適戦略をかたるものなのか?遺伝的説明を要するものなのか?というのが疑問だったわけですね
2019-12-31 08:54:29@motidukinoyoru 私としては、ヒトの子育てコスト(育ち方、成熟にかかる年数)は遺伝的に決まっていて集団的育児を前提として進化してきたものであり、いま語られている婚姻戦略は文化などを含めた所与の条件から最適戦略を計算するものであって、遺伝的な説明を要しないと解しています。
2019-12-31 08:59:29@kyslog 「遺伝的な説明を要しない」というよりかは、「遺伝的変化について論じてはいない」という感じですね。 私は「サピエンスにおいては、隠れハレム/雑婚を含んだ複合的な一夫一妻に適応的な遺伝子が自然選択されている」という遺伝子的条件を所与として、あくまで社会的な変遷を論じているつもりです。
2019-12-31 09:10:33@kyslog ただ、社会的(文化的)状況の変化によって、”自然”選択される遺伝子も相互作用的に変化していくだろうとも思いますが。 チンパンジーの巨大な睾丸ほどの鮮明な形質変化は確かに短期間では起きづらいと思うのですが、気性や性格の分布の変化くらいは割合短期間に起きそうではないかと思っています。
2019-12-31 09:14:58@motidukinoyoru なるほど。当初の私の疑問の投げかけをより明確にできます。 望月さんは社会的な変遷の中でアロマザリングを取り扱おうとしていたのに対し、私は「ヒトのアロマザリングは遺伝子的に規定される成長速度・養育コストという所与の条件で必須と決まっていると思う」という疑問を呈した、という形です。
2019-12-31 09:17:56@motidukinoyoru 小集団だと簡単に起きそうですね。実際ある種の病気に対する耐性で、小集団内における対立遺伝子の頻度シフトは起きていたかと思います。鎌状遺伝子ほど広がるには時間がかかると思いますが。
2019-12-31 09:20:06@kyslog この点については、確かに私も留保不足でした。 あえてこういう強引な言い方をしますが、多くの霊長類がハレム&”真性”アロマザリングというシステムを運用している一方、サピエンスは複合的一夫一妻&”仮性”アロマザリングを運用しているというところが、サピエンスの特徴なのだという理解です。
2019-12-31 09:24:24@kyslog この複合的一夫一妻&”仮性”アロマザリングは、真性の単婚とはもちろん決定的に異なりますし、また一夫一妻が隠れハレム/乱婚であること(複合型であること)と、アロマザリングが”仮性”という形でキープされることは表裏一体である、と考えています。
2019-12-31 09:24:30@kyslog また、複合的一夫一妻(隠れハレム/乱婚を暗に含む一夫一妻)であることは、サピエンスの婚姻形態が、ハレム/乱婚側にある程度振れる展開も十分にあり得ること(実際、狩猟社会から農耕社会になり、統治階級が強化されるにあたって、一夫多妻の部分的採用があった)を同時に意味しています。
2019-12-31 09:27:17@kyslog 私のこの一連のツイートスレッド twitter.com/motidukinoyoru… は、(複合的)一夫一妻、および皆婚という文化が、近代化と国民国家形成の基礎になったのではないかという理解から、自由資本主義の進行に伴う当該文化の瓦解が、必然的に近代的国民国家の解体を要求するのではないか?と考察したものでした。
2019-12-31 09:30:14@motidukinoyoru 私としては、アイデアとして(研究計画として)受け入れられるけど学説(論文)としては受け入れられない、という感想です。 学説として受け入れるには、モデル立てて、シミュレーションして、実際とのフィットを量的に確かめてからですね。科研費で言うと基盤Cか萌芽なら通るという印象でした。
2019-12-31 09:33:16@kyslog 当然?アイデアレベルのものなので(私自身、基本的にアイデアレベルのことしかあまり喋らないタチ)、「アイデアとしては面白い」という評価なら、私的には満点を頂いたに等しいと思っています。 実証はどこかで誰かが頑張ってくれるはず。
2019-12-31 09:35:38@motidukinoyoru 「法的・慣習的なメイティングルール下における最適交配戦略の導出とその実証」というタイトルならそれっぽいですし、もしかしたら探せばあるかもしれないけど、パッシブには聞いたことがない、という感じですね。いつか誰かがやってくれそうだけどポリコレ的に怒られが発生しそうなのがw
2019-12-31 09:43:32@kyslog 裏のメッセージとしては、(複合的)一夫一妻+皆婚圧力という構造が近代的国民国家のメインエンジンだとすると、「政治的な育児補助をベースとし、皆婚を伴わない少子化対策」というのが必然的に成立不能となるのではないか? という疑義があるわけです。
2019-12-31 09:52:01@kyslog (複合的)一夫一妻+皆婚圧力が減退する社会では、孤立していくオスからの社会的協力の獲得は加速度的に困難になっていって、必然的に社会的協力の規模、ひいては社会規模そのものが縮小していかざるを得ないのではないか? という霊感です。 少なくとも、大きな政府からは確実に遠のくのでは。
2019-12-31 09:54:16@motidukinoyoru そのレベルだと実証抜きにモデルだけ示して「モデルが成り立つとすると危機的だ」ということで実証を促す、みたいな流れもできるかもしれませんね。私も興味はありますが、残念ながら誰かの実証待ちです。
2019-12-31 10:07:14