クラブSweet girl

momo @KasuminMomo

クラブSweet girl ① ハァハァ 息急き切って急いでドアを開ける 間に合わない、遅刻だよ！ 繁華街の中心から少し外れた路地裏 その地下二階にそれはあった 地下へと降りる階段は少し細く、人がすれ違う時は緩くカーブを描く中間地点でどちらかが待つ #思いつき劇場

momo @KasuminMomo

クラブSweet girl ② そんな、ちょっと場末の場所にそれはあった 大急ぎでドアを開けると、モップに顎を乗せたままあいつが俺を睨んでた 「…今日も遅刻」 「…ゴメン」 「ゴメンで済んだら警察いらんって小学生で習わなかったか？」 #思いつき劇場

momo @KasuminMomo

クラブSweet girl ③ グチグチうるさいあいつの口にモップを突っ込んでやろうかと考えてたら、反対にモップを押し付けられた 「お前、床掃除な 誰かさんの遅刻のおかげで裏の準備進んでないから、大急ぎで準備な」 指さされた時計の針はあいつの言葉通り #思いつき劇場

momo @KasuminMomo

クラブSweet girl ④ バタバタと消えて行くあいつの背中に盛大にあっかんべーをして、大急ぎで床にモップをこすり付ける 時間がないのは確かな事で、床の掃除もしなきゃいけないが、それ以上に俺も準備をしなきゃいけない 昨夜の自分の行動を呪う俺だった #思いつき劇場

momo @KasuminMomo

クラブSweet girl ⑤ 夜 朝でも昼でもない夜 煌びやかな偽物の太陽が昇り、安っぽい星々が輝く 「さあ、今日も始めよう」 オーナーの声に店外のネオンに電流が流れ、店が寝起きの声を上げる クラブ Sweet girl 俺たちの夜が始まった #思いつき劇場

momo @KasuminMomo

クラブSweet girl ⑥ 店内に流れるのはスタンダードジャス 少しオレンジ色の照明によく映える カランと氷の音のグラスを傾けながら、ちょっとだけ少年に戻ったサラリーマンが笑う そのちょっと疲れた笑い顔は、見慣れているけれどやっぱりちょっとさみしくなる #思いつき劇場

momo @KasuminMomo

クラブSweet girl ⑦ だから、俺…もとい 私たちは、全力で遊び 彼らを元気にするんだ♪ 「あ、またこんな隅の席で飲んで あっちで一緒に騒ぎましょうよ♪」 いつも常連の商社マンに声をかけると、ニッコリ笑って皿の上のマンゴーをくれた #思いつき劇場

momo @KasuminMomo

クラブSweet girl ⑧ 「俺はこっちでいいんだよ」 そう言って上げたグラスは俺の目の前を通りすぎてカウンターに座る黒いドレスのママへと向けられた 「はぁー、タナカさんはいっつもママがお気に入りだもんね」 カウンターから少し背の高いママが笑う #思いつき劇場

momo @KasuminMomo

クラブSweet girl ⑨ いつも店は満員にもならず、かといってポツリポツリの寂しい状態でもなく、週ニ、三の常連と新規が二組くらいの状態 それが正常営業でそれが心地いい まぁ、それが店の経営にとっていかがなものかは俺は知らない #思いつき劇場

momo @KasuminMomo

クラブSweet girl 10 店の経営はママとマダムが考えると事で、1従業員の俺はこの居心地のいい空間が好きだった 店は俺とあいつとママとマダム それと新人 …新人、こいつがちょっとくせ者だ 正直、なんでマダムがこいつを連れてきたのか分からない #思いつき劇場

momo @KasuminMomo

クラブSweet girl 11 まぁ、こういう事を言うと、あいつが皮肉に片唇あげながら笑うんだろうけど …俺もマダムに拾われてきた口だから とはいえ、クラブSweet girlはこの5人で営業してる 客層は下卑た客はおらず、サラリーマンとOLかな？ #思いつき劇場

momo @KasuminMomo

クラブSweet girl 12 ちょっと外れた穴場的クラブってやつかな 「…オイ、そこでサボってないで営業しろ お前の賄い分くらいは働け お前の賄い代で店が傾きかけないんだからな」 カウンターからグラスを磨きなからあいつが目も上げずに皮肉る …殴るぞ #思いつき劇場

momo @KasuminMomo

クラブSweet girl 13 「はぁーい♪ねぇ、意地悪言いすぎて口が曲がるって知ってる？ あ、曲がりすぎて元に戻っちゃったんだ」 アイスピックが飛んでこないうちに急いで俺はカウンターから離れた 店内ではいつものOLの二人組みがマダムの周りにまとわりついている #思いつき劇場

momo @KasuminMomo

クラブSweet girl 14 「あんた達、暑苦しいからそんなに引っ付かないで」 「もう、マダムってば意地悪ばっか」 「意地悪じゃないわよ、真顔だからやめなさい♪」 「キャー、もっと言って」 暑苦しいより鬱陶しいのに近い会話 客っていうよりグルーピー #思いつき劇場

momo @KasuminMomo

クラブSweet girl 15 そんな二人にもマダムはニコニコしながら接客してる まぁ、普通に可愛い二人だから、俺だって腕組まれたらニコニコするけどさ とはいえ、今は組まれるより組みにいかなきゃいけないから、マダムのニコニコ(圧迫)にはしっかり笑顔で返す #思いつき劇場

momo @KasuminMomo

クラブSweet girl 16 「こんばんは〜♪今日はハイボールですか？」 最近店に来るようになったちょっと若いめの雑誌の編集者 前は同僚の女の人と来てたんだけど、ここニ、三回はひとりで来るようになった まだちょっと慣れない感じでハイボールを飲んでる #思いつき劇場

momo @KasuminMomo

クラブSweet girl 17 狭くはない二人がけソファーだけど、あえてくっ付いて腕を組む ニコニコ笑って乾杯すれば、相手も笑顔になる これでお仕事の第一歩達成 お酒を飲んで、ニッコリ笑って、夜は昼じゃないって事を感じて貰う 昼の憂鬱はバイバイしなきゃね #思いつき劇場

momo @KasuminMomo

クラブSweet girl 18 「はぁ〜い、また来てね〜♪」 カラカラとドアチャイムが鳴り、一番最後の客を送り出し、クラブSweet girlの『昼』が終わった 「お疲れ様、今日もよく頑張ったね ありがとう❤️」 「いや、こいつの場合はよく食ってた」 #思いつき劇場

momo @KasuminMomo

クラブSweet girl 19 「お前ね、殴るよ♪」 「殴れよ」 「じゃあ、歯食いしばって♪」 「…じゃあ、僕が代わりに…」 さっきまで黙ってた新入りが指をポキポキ鳴らした 俺たち二人は何も言わず黙って椅子に座り直した #思いつき劇場

momo @KasuminMomo

クラブSweet girl 20 「さあ、今日は何食べたい？」 さっきまでのママの声に俺は気を取り直して振り返る 「うーん、今日はスシ食べに行こうよ♪」 「分かった じゃあ、前借り用のノートに金額書いてくれ うん、5人分だから60万くらいでいいぞ #思いつき劇場

momo @KasuminMomo

クラブSweet girl 21 結局あれからマンションに帰ってヒョン特製のチゲを食べた だって仕方ないだろ？ 5人分のスシ… 考えただけで恐ろしい いつもは食べ物にあれこれ言わない偽マダムだけど、こういう時はグルメを出すんだ アワビ、ウニ、アワビ… #思いつき劇場

momo @KasuminMomo

クラブSweet girl 22 恐ろしい光景が思い出されて今でも背筋が凍るよ (あの時は不動産バブルのバカ社長の同伴だったけどね…) 「あ、ヒョン シャワー行くならちゃんと洗濯機に洗濯物入れて下さいね ヒョン、いつも洗濯物ほっとくから」 「へーい」 #思いつき劇場

momo @KasuminMomo

クラブSweet girl 23 賢いマンネの欠伸まじりの言葉に返事をして、俺はバスルームに まだ慣れない「夜」の仕事に欠伸するマンネは、さっき指をポキポキしたのと同じには見えない …家じゃこんなに素直で可愛いくせに、外に出ると無愛想になるんだ #思いつき劇場

momo @KasuminMomo

クラブSweet girl24 ある意味可愛く、ある意味困ったマンネ バスルームに入ると、シャワーの前に念入りにメークを落とす …まったくマスカラ落としながらいつも思うけど、これ、まつ毛なくならないか？ 引っ張るたびに抜けてるけど… 鏡を見ながらいつも思う #思いつき劇場

momo @KasuminMomo

クラブSweet girl 25 シャワーが終わってリビングに行くと、麗しのマダムが 床で果ててた… …まただよ この人の異常なまでの寝癖の悪さ、どうにかならないかな どこでもどんなとこでも寝るし、一度寝たら起きないんだよ… これ、ほっとくか？ #思いつき劇場

momo @KasuminMomo

クラブSweet girl 26 濡れた頭をバスタオルで拭きながら思案してると、Tシャツに着替えたママ… もといヒョンがタオルケットを持ってリビングに来た 「あ、ヒョン、また寝てるよ どうする？」 俺の問いに笑いながらヒョンがタオルケットをかけた #思いつき劇場

momo @KasuminMomo

クラブSweet girl 27 「夏だし、風邪ひかないからこれでいだろ」 …床で非常階段の標識みたいなカッコで寝ているヒョンを見下ろしながら、俺は柔らかな自分のベッドに向かうことに決めた うん、俺じゃないからね 明日身体が痛くて恨むのは、ヒョンにしてね #思いつき劇場

momo @KasuminMomo

クラブSweet girl 28 ベッドに入ってふと思い出す 去年の今頃の自分を… 路地裏 ゴミ箱 鉄の味 俺は地べたにKissしてた 何が原因かは忘れた 絡まれてる女の子二人を庇って男の手をはらったのまではちゃんと辻褄が合ってた #思いつき劇場

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クラブSweet girl 29 路地裏に走ったのも覚えてる でも、気がついたら俺は後ろから殴られてた しかも、助けた筈の女の子が笑ってた そして俺は泥を食ってたんだ… 殴られてボンヤリとする頭に聞こえたのは女の子の甲高い声 #思いつき劇場

momo @KasuminMomo

クラブSweet girl 30 そこから先は思い出すのも面倒くさい 端的に言うと俺は通りかかったドンウヒョンとジニョンヒョンに拾われて今に至る 途中、殴られた怪我が思いの外ひどくて職場をクビになり、クビのついでに仕事繋がりのダチの家を出ることなり #思いつき劇場

momo @KasuminMomo

クラブSweet girl 31 行くあても金のあてもなくなった俺を、そのままヒョン達は拾ってくれた 拾われた時の言葉、今でも覚えてる 「生きるの楽しもう♪」 なんて言ったらいいんだろう 楽しくも何もない状況で笑いかけられた言葉 否定も肯定もない 明日の言葉 #思いつき劇場

momo @KasuminMomo

クラブSweet girl 31 まぁ、そんなわけで俺はここにいる 日々、「生きるのを楽しむ」ために笑って生きる この仕事を始めて気がついた 笑うのが難しい人が世の中に溢れてるってことに 笑うのって簡単だと思ってたのに違ったんだ うん、だから俺は笑うんだ #思いつき劇場

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クラブSweet girl 33 しばらく回想シーン的に昔を思い返してたら、ガチャリとドアが開いて廊下の照明を背中に真っ黒な影が入ってきた。 何も言わずベッドに近づくと、そのままシングルの筈のベッドに潜り込んでくる。 #思いつき劇場

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クラブSweet girl 34 「あのさ、ここ、シングルなんだよ。お前、それ分かってる？」 真っ黒な影に声をかけるとそのまま頭を抱えられ、頭の天辺に言葉が届く。 「知ってる…」 「…ならさ、来んなよ」 すると言葉が返ってこない。 #思いつき劇場 #思いつき劇場

momo @KasuminMomo

クラブSweet girl 35 「ダァー！毎晩狭いベッドに入ってくるな！」 勢いをつけてベッドから立ち上がりそのまま部屋の電気をつける。 「…眩しいです、ひょん」 俺よりデッカいマンネが狭いベッドから見上げる。 …お前に見られて喜ぶ女じゃないからな！ #思いつき劇場

momo @KasuminMomo

クラブSweet girl 36 そう、この表向きシックマンネは、毎晩毎晩、俺の… いや、この家の人間のベッドを渡り歩く。 多分この家でこいつよりデッカいのはドンウひょんくらいで、俺もジニョンひょんもソヌもこいつより小さい。 なのにこいつは添い寝に来る。 #思いつき劇場

momo @KasuminMomo

クラブSweet girl 37 初めてこいつがベッドに入って来た日、俺はあらん限りの声で叫んだ。 それはそれは大きな声で 後日、マンションの管理会社から厳重注意文書なるものが送られてくるくらい、壮絶に叫んだ。 #思いつき劇場

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クラブSweet girl 38 このマンネがなぜ？どうして？人のベッドを渡り歩きながら毎晩添い寝に来るのか… 大声で叫んだ翌日に俺はジニョンひょんに泡を飛ばす勢いで問いただした。 すると、ジニョンひょんの答えはたった一言だけだった。 #思いつき劇場

momo @KasuminMomo

クラブSweet girl 39 「可愛いいんだから、いいんじゃない？」 それだけ言うと、俺のホッペをムニムニと掴んで、ひょんの愛しのベッドに消えて行った。 訳も分からず唖然としてる俺に、そばにいたドンウひょんもニコっと笑って頭をポンポンした。 #思いつき劇場

momo @KasuminMomo

クラブSweet girl 40 「仲良くしてやってよ」 それだけ言うと、ひょんの趣味である大型バイクを転がしにマンションを出て行った。 2人のひょんから理由のない理由を言われ、俺はチャンシクの添い寝に仕方ないから我慢しようと決めた。 ひょんが言うんだ… #思いつき劇場

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クラブSweet girl 41 朝が来たから朝飯を食う これは至極当然で極めて生物として正常な反応なんだけど、ここではそれがなかなかまかり通らない なぜって？ それは… 各自がワガママなんだよ‼︎ #思いつき劇場

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クラブSweet girl 42 起きる時間もバラバラなら、朝飯の好みもバラバラ 誰かは朝からシリアルだとほざき、誰かは朝から炒飯が食いたいと呟き、誰かは朝は食べないとベッドに沈没する… だったら頼むよ 朝飯の当番制なんて今すぐやめてくれよ‼︎ #思いつき劇場

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クラブSweet girl 43 しかも、家訓の如くデカデカとリビングの壁に貼ってある言葉 『朝飯は家族一緒に』 …だったら頼むよ ひょん、ベッドと一体化するのを今すぐやめてくれ！ 今朝の当番表を恨めしく見ながら、俺は冷蔵庫に向かって歩いた #思いつき劇場

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クラブSweet girl 44 冷蔵庫 そこは確か食物の保管庫 冷やされた飲み物や色鮮やかな野菜が並ぶ小さなスーパーマーケット …俺は砂漠の果てのピラミッドの扉を開けていた カピカピに乾いたチーズの破片とどす黒く変色した瓶の中身 砂漠よりひどい #思いつき劇場

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クラブSweet girl 45 「…これ、なんだ…」 朝から鬱陶しい感丸出しでソヌがテーブルの上の皿を指差す 「皿。見えないなら眼科行け」 「…皿は見えてる」 「なら聞くな」 「…いや聞くだろ…」 朝から不毛な会話が続くダイニング。 #思いつき劇場

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クラブSweet girl 46 俺とソヌが互いのテリトリーを争う犬の如く睨み合ってる横で、寝起きのマンネが無言で箸に手を伸ばす 「…いただきます」 「お、チャニ偉いぞ！いっぱい食べて大きくなれ」 「…いや、ならなくていいです」 冷静なツッコミ #思いつき劇場

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クラブSweet girl 47 空になる皿を見ながら、俺は自分の仕事に満足していた たとえそれが作った自分が見ても得体の知れない食料もどきであったとしても、俺は当番の仕事をやり遂げたんだから 後片付けはソヌが当番だった #思いつき劇場

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クラブSweet girl 48 「お前な、病院送りで今日の営業出来なかったらお前に損害賠償請求するからな」 「大丈夫、大丈夫♪人間の胃袋は簡単には根を上げない」 「お前と一緒にするな…」 「おんなじ、おんなじ♪」 鼻歌まじりにキッチンを出る俺 #思いつき劇場

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クラブSweet girl 49 「ジョンファナ」 リビングから自室に戻ろうとした俺を朝はめっきり弱いはずのジニョンひょんが呼び止めた 「珍しいね、ひょんがこんな早くに起きてるなんて」 俺の声にぐわんぐわんと頭を振りながらひょんが頭を掻く あ、まだだわ #思いつき劇場