#薄明文庫 で投稿した創作文章まとめ。
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ユーガタ@腰痛※リンクに詳細記載してます @i_who

【宣言】明日から毎日、必ず140字以上(1ツイート)の文章を書く試みをしてみようと思います。 出来なかったら……戦慄迷宮に単騎突撃します。とりあえず一か月!! 三日坊主がどこまで続くか見物だなぁ!!!!

2023-04-30 23:07:12
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「お前さぁ……」 「な、何? え?」 ―ため息を吐かれてしまった。 『何か困ったことがあったらいつでも言って』って言ってたから相談したんだけどな……や、やっぱりそれは建前で……僕が額面通り受け取る駄目人間だから……うう……最悪だ……どうしようどうしよう……。 #薄明文庫

2023-05-01 19:04:16
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「……困ってるから手伝って欲しい、つったよな?」 「うん……」 「それがコレ?」 浴槽に頭を突っ込んで『死んでいる』女性を指差し、隣人は言う。 「う、うん。ダメ?」 「いや、ダメだろ。殺してんじゃん」 呆れ顔だ。 そうだよね、やっぱり急に言ったら困るよね……。 「ごめんなさい……」

2023-05-01 19:10:03
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「いや、うーん……多分ズレてる気がするな……オレに謝ってるけど、『殺したこと』に謝ってる訳じゃないよな?」 「え」 何か悪いことをしただろうか……仕事なんだけど……あ。 「し、仕事!」 「あ?」 「仕事なの、これ」 「……」

2023-05-01 19:16:57
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そう言えば『仕事』だって言ってなかった! そうだ、そうだよね。仕事だもん。仕事なら分かってくれるよね! なぁんだ、良かった!! 僕はホッとして笑顔になった。 すると、何故だか隣人の頬がうっすら赤くなった。 「アレ? 顔、赤いけど……風邪?」 「ああ、いや? なるほどねぇ……」

2023-05-01 20:59:00
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隣人はぱっと顔を背けて、浴槽に近付く。 そして、ゴム手袋を嵌めた手で女性の黒髪を掴んだ。 女性の顎先や髪先から垂れたお湯が、ぽたぽたと波紋を広げていく。 ……ゴム手袋? 「死んでるな……」 「う、うん。ここで殺すつもり、なかったんだけど……あの、ゴム手袋……あっ」

2023-05-01 21:00:19
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しげしげと眺めていた隣人は、ぱっと手を離した。 ばしゃん、と浴槽に頭が沈む。 思ったよりも大きな音にビックリして、肩が跳ねる。 「あ? 何か言った?」 「う、ううん……何、でもない……」 「それで?」 「え?」 「だから、何を手伝えばいいんだよ?」

2023-05-01 21:00:29
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「あっあっ、えっとね! あの、運ぶの、手伝って欲しくて!!」 「どこに運ぶつもり?」 「あの、えっと……コ、ココ!!」 慌ててスマホを取り出して、地図を見せる。 「このね、廃墟にねっ」 「分かった」 「て、手伝ってくれるの?」 隣人はフン、と鼻を鳴らして小さく笑った。

2023-05-01 21:00:38
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「そんな血塗れのナタ持ってるヤツに、逆らう勇気とかねーよ。一般人だし、オレ」 「う……」 「ホラ、さっさと片付けるぞ」 「う、うん!!」 良かった! 良い人だ!! ニコニコする僕を尻目に、隣人は取り出したビニールテープで女性をコンパクトに縛り上げている。 「……あれ?」 「どうした?」

2023-05-01 21:42:28
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「えっと、それ、あの……ビニールテープは……?」 「ああ、適当に持って来た」 そっか。凄いなぁ、要領が良いんだ……。 僕とは違う……うう……。 「夜明けまでには何とかしてぇな」 「え、あ、うんっ!」

2023-05-01 21:43:15
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―その後、本当に夜明けまでに何とかした僕と隣人は、帰りにラーメンを食べた。 ラーメンはすごくおいしかった!

2023-05-01 21:43:55
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「もう無理……あまりに辛い……私が悪い……締め切り前なのに寝ました……私はクズです……」 机を涙で濡らしていると、コトリと音がした。 「お疲れ様」 「え?」 その声に顔を上げると、温かな湯気を上げるマグカップが一つ、置かれていた。 「……私、一人暮らし……だよね?」 #薄明文庫

2023-05-02 23:46:44
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一人暮らしの筈だ。だってそう契約したのは他でもない私なんだから。 混乱しながらマグカップを覗き込むと、ココアが入っていた。 恐る恐る一口飲む。 「……おいし」 ちょっと熱いけど、飲めなくはない温度だ。 私は泣きながらココアを飲み、気合を入れ直した。 「よし」 まだ書ける。まだ、走れる。

2023-05-02 23:47:16
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先ほどのココアに背中を押されるように、私はペンを走らせた。 書いて、書いて、書いて……何とかデータを仕上げて、メールで送付して、そのまま机に突っ伏した。 次に目を覚ますと、ベッドの中に居た。 「……不思議なこともあるもんだね」 そんな私の独り言に、返事をする者は居なかった。

2023-05-02 23:50:19
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仕事で遅くなってしまった。 「あー……疲れた……」 吐き出したため息は白く、肺の中も冷たい。夜ご飯も食べてないから、当たり前だ。 とにかく本当にクタクタで、一分一秒でも早く帰りたい。横になって寝たい。 「でもなぁ」 自宅から駅に一番近くて、通勤などでも使う道がある。 #薄明文庫

2023-05-03 20:38:51
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昼間は問題ないのだが、夜になると……。 「出るんだよなぁ……」 その道に、『出る』らしい。 物件を紹介してくれた不動産屋から聞いた。 まだ実際にお目にかかったことはないけど、出来るなら会いたくない。ホラーは苦手だ。 「どうすっかなぁ……」 困った。かなり遠回りの道か、近道か。

2023-05-03 20:41:52
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疲弊していて、頭も回らなくなってきている。自覚はあった。 「うーん……」 足は自然と近道の方に向いている。何ならもう歩いている。 ーそもそも、いつもの道の『どこ』に出るか、分かってないのだ。 「……走れば何とか」 なるだろうか。この、長時間煮込まれた野菜みたいな体で。分からない。

2023-05-03 20:44:41
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でも疲れた。それに勝る物は無い。 ポツポツと街頭の灯る道を歩く。夜も遅いし、当然一人だ。 民家の明かりも消えている。 と。 「……ん?」 少し遠く、公園の入り口が騒がしい。 ぼんやり、赤いランプ?見える。 嫌だな、不良の集会か何かだろうか。いや、それにしては何だか……。

2023-05-03 20:48:14
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「おでん屋……?」 近付けば分かった。おでんの屋台が停まっている。 この令和に感動するくらい、ボロボロでテンプレートな屋台だ。 おいしそうなおでんの匂いに、思わず腹が鳴る。 「……一見さんお断りとか、無いよな」 そっと屋台に近づいた。 緊張しながら、のれんをめくると、 「あ」 「……え」

2023-05-03 20:51:17
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物件を紹介してくれて、この道に『出る』と教えてくれた不動産屋が居た。 不動産屋はバンダナを巻いて、前掛けを付けて、おたまをおでんの入った鍋に突っ込んだまま、驚いたように固まっている。 「……副業ってOKなんですか?」 思わずそう、聞いてしまった。 「いや!? あっ!!」

2023-05-03 22:54:41
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どうにもうっかり口を滑らせてしまったみたいで、不動産屋は口元を押さえた。 「……」 「あー……ええと。厚揚げサービスするから、内緒にしてくれません?」 「……卵も付けてくれます?」 「付けるつける。いやー、話の分かる人で良かった!」 不動産屋はぎこちなく苦笑する。

2023-05-03 22:56:24
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「『出る』は方便ですか?」 「うん。バレたら嫌だな~って。ごめんね?」 「まあ、良いですけど」 不動産屋は卵と厚揚げの入ったどんぶりを掲げ、 「他は?」 と尋ねる。 「えー……と。どうしよう」 そもそも、屋台のおでんなんて食べたことが無い。 オススメとかあるのだろうか。

2023-05-03 22:58:27
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「そこの巾着も旨いぞ。そうだよな、ミクラ」 不動産屋の衝撃で、周りに気を配っていなかったが、他にも二人の人が居た。 えびす顔のおじさんと、何か……バブリーなお姉さんだ。 「あ、すみません。騒がしくしちゃって」 「良い良い。気にしなさんな。ワシもサラスバも、雑談してただけだから」

2023-05-03 23:03:15
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にこにこしているおじさんと、行儀よくこんにゃくを咀嚼しているお姉さんに会釈して、不動産屋……ミクラさんに巾着とこんにゃくを追加してもらう。 「はい、どーぞ。熱いから気を付けてね」 「ありがとうございます」 「遅くまで大変だねぇ。毎日?」 「いや、今日だけですよ。多分」

2023-05-03 23:05:43
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そうだと良いな、いやそうであってくれと思いながら、巾着にかぶりつく。 「うっ……ま!?」 めちゃくちゃおいしい。 食べた瞬間に旨みで顎が落ちるかと思った。 「今まで食べたことが無いくらい、本当に美味いです……うま過ぎる……」 「そう~? ありがとう」

2023-05-03 23:11:20
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ミクラさんはへへへ、と照れたように頭を掻いている。 「あんまり感想、言って貰えないからさ。嬉しいな」 「何を言う。毎回言うとるじゃないか」 おじさんが抗議すると、ミクラさんは呆れ顔で柱に肘をついた。 「『旨い』しか言わないでしょ、えべっさんは」 「求め過ぎは良くないぞ」

2023-05-03 23:12:29
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「はいはい。参考にしますよ」 そんな二人のやり取りを尻目に、バブリー姉さんが立ち上がる。 「ミクラ、ご馳走様。また来るわね」 「うん。待ってるよ~」 バブリー姉さんは諭吉さんを一枚を出して、 「お釣りは要らないわ」 と肩で風を切りながら去って行った。 「カッコ良……」

2023-05-03 23:15:24
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「あ、ひょっとしてサラスバに惚れた? 止めといた方が良いよ。嫉妬深いから」 「いやそういうのじゃないです。あの、おかわり下さい。次は大根とはんぺんと、牛すじと……」 「良く食べるねぇ。夜ご飯、食べそびれた?」 「そうなんです。今日、ずっと働きづめで……あ、ありがとうございます」

2023-05-03 23:18:08
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ミクラさんからどんぶりを受け取り、おでんを食べる。 今は色気より食い気だ。 腹が減っては何とやらとも言うし。 「……さて、ワシもそろそろ帰るかの。ミクラ、つけといてくれぇい」 「またぁ?」 「今度日本酒、持って来てやるから」 「そう言って自分も飲むでしょ!! もう……じゃあまたね」

2023-05-03 23:20:01
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「ほっほ! それじゃあ……」 不意に、自分の名前が呼ばれた。 「え? あ、はい」 「仕事とは言え、あまり無茶せんようにな」 えべっさん?はポンポンと肩を叩き、去って行った。 何だか変な人だったなぁ……いや、そうじゃなくて。 「名前……ミクラさん、あの人に名前って教えました?」

2023-05-03 23:23:09
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「あー……いや、教えてないよ」 「……ストーカー?」 「それは絶対無いから安心して。まあ次があれば教えてくれる……かも」 「えぇ……まあ、いっか。いただきます」 「あ、良いんだ……」 ―この時の自分は『神様のおでん屋』とはつゆ知らず、とにかく空腹を満たすのに必死だった、と回想する。

2023-05-03 23:27:15
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「……カメラ?」 「そう。ヴィンテージ? アンティーク? とにかく、そんな感じの」 お盆が終わって、友人が戻ってきた。 田舎は暇だったよ〜なんて話をしながら、映画を観つつダラダラと過ごしている最中、思い出したように『蔵で見つけたカメラが変だ』と溢した。 #薄明文庫

2023-05-04 22:13:12
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「何が、どう変なの?」 「鳥っぽい影が写る。必ず」 「ぽいとは」 「うーんとねぇ……あ、見せた方が早いから持って来る」 友人はそう言って、自分のバッグを漁り出した。 「あったあった。コレ」 取り出したのは、確かに古びたカメラだった。 相当に古い物のようで所々、錆や傷が入っている。

2023-05-04 22:34:40
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「……」 「カメラ自体は普通の古いカメラっぽいよね?」 「うん」 「ここ、覗いてみて」 言われるままファインダーを覗くと、ガラス部分には『鳥のような影』が写り込んでいた。 「ね! 居るでしょ?」 「まあ……曇りじゃないの?」 「違う。良く見て」 じっと見つめ続けていると、その影が動いた。

2023-05-04 22:41:22
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「うわ」 「ね!? 変じゃない?」 「……」 「でも、何だか……素敵じゃない? まだ撮ってないから分からないけど、写真にも写るのかな~」 「いやー、これさぁ……」 「ん?」 上機嫌な友人の横で、私は気付いてしまった。 「これ、鳥じゃないよ……」 「ええ? じゃあ何?」

2023-05-04 22:44:38
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「手」 「て?」 「うん。人間の手。ほら、良く見て」 友人にカメラを渡せば、訝し気な表情でファインダーを覗く。 ―確かに、パッと見は鳥に見えるかもしれない。 影の形も若干ボヤけているから、良く見ないと気付かないだろう。 これは、人間の手が影絵のように鳥を形作っているだけだ。

2023-05-04 22:47:39
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「……うわ。マジじゃん。え~……」 「まあ、然るべき所に持って行った方が良いんじゃないの?」 「そうする……」 友人はしょんぼりしながら、カメラを仕舞った。 その後日、そのカメラが古道具屋に並んでいたので、頭を抱えてしまった。 違う、そうじゃない。

2023-05-04 22:49:12
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私は今、宇宙の果てにいる。 何故か。 ちょっと気分転換に、少し離れた自動販売機まで行こうと思い立ったのだ。 その理由は単純明快。 失恋したからだ。 「はぁ〜……」 そしてこれは地球を離れて243回目のため息。 「う〜……フラれた方が良かった……ことも無い、ことも無い……」 #薄明文庫

2023-05-06 21:59:29
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まぜっ返す内に、何が何やら言葉の本質が分からなくなる。 「クソが……クソだマジで……」 もちろん、あの子じゃない。私の精神がクソ。クソ以下。使える分、肥溜めにも劣る。ゴミだ。 「うあー……世界一、いや宇宙で一番トボトボが似合う女だ……」 呻きながらヨロヨロと、惑星間を歩いていく。

2023-05-06 22:03:08
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そうこうしている内に、赤と白の特徴的なロゴが入った、真っ赤な自販機が見えて来る。 自販機は宇宙の暗がりをぼんやり照らして、静かに佇んでいた。 私は並んだ飲料たちに指を滑らせながら、 「ど・れ・に・し・よ・う・か・な〜」 と嘯いた。 「……ま。ホントは決まってるんだけど」 ーガコン!

2023-05-06 22:07:48
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落ちてきたコーラを取り出して、ヤケクソに開ける。 コーラ。あの子が好きなのみもの。 ー私の隣でコーラを飲んでいたあの子の横顔を、興味なさそうに盗み見るのが好きだった。スマホを弄る爪先が、光っているのが好きだった。雨が滑り落ちていく髪の先も、困ったような眉の笑顔も。 全部、本当に。

2023-05-06 22:13:35
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「……っく、うっく、っひ……」 炭酸に咽せながら一口ひとくち、飲み干していく内に、ボロボロと涙が溢れて来た。 手の甲で拭いながら、流星を眺める。 「……炭酸なんて、好きじゃないな……」 宇宙の果ての自販機前で一人。 私はポツリと呟いた。

2023-05-06 22:15:52
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「怪談話が聞きたい」 「なに急に」 「怖い話! 何か無い!?」 「……あ」 「何! あった!?」 「アンタさ、お菓子の缶みたいの、買ったでしょ。ヴィンテージの」 「え? うん。鍵掛かってるけど……」 「捨てた方が良い。缶の蓋、内側から指がこじ開けそうになってたから」 「え」 #薄明文庫

2023-05-07 22:48:15
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「ねぇねぇ。何か面白い怪談話、知らない?」 「面白い怪談って何……」 「とにかく! こわぁい話!! あるでしょ?」 「……あるけど」 「何々!?」 「怒らないでよ?」 「怒らないけど」 「……あなたの右肩。白い手が置かれてる。ずっと」 「え」 「それから、」 「まだあるの!?」 #薄明文庫

2023-05-08 22:48:53
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「怖い話しろー!」 「うるさ……」 「お母さんが姉ちゃんはたくさん知ってるって言ってたぞ〜!」 「ぐえ」 「怖い話〜!」 「し、たら……静かにする?」 「するっ」 「あの押入れ、見える?」 「うん!」 「あの隙間から、お前のこと、見てるヤツがいる」 「……お゛があ゛ざーん゛!」 #薄明文庫

2023-05-09 23:43:29
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「おはよーございますお嬢~。今日の朝メシ……ってアレ?」 両手がトレーで塞がっている状態で、足を使って器用に扉を開けたのは私の使用人だ。 筋肉達磨。 傷だらけの顔。 クラシカルなメイド服(制服だから仕方ないけど) そして勤務中も煙草を咥えていると言う、ふざけた成人男性だ。 #薄明文庫

2023-05-10 22:13:31
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そして『お嬢』の私はと言うと、頑張って・必死に窓枠に掴まっていた。何故か。 今日は友人と遊びに行く約束をしているからだ。 この男、厄介なことに私の身の回りの世話の全てを担当している。勿論、護衛も。 だからこのメイドがついて来るのは非常に困る。なのでひとまず隠れている……と言う訳だ。

2023-05-10 22:16:59
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しかし、私の腕力も限界になっていた。落ちる。もう落ちる間違いなく。自分でやったけど後悔先に立たずという言葉が頭の中で死ぬほど煽って来る。クソが黙ってろ。 ……お嬢様にあるまじき言葉遣いだとは思うが、つい先日お嬢様になったばかりなのだ。大目に見て欲しい。 「お、落ちっ!! 落ちる!」

2023-05-10 22:22:55
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「お嬢~。何してんの?」 「あ゛!?」 何とか上を見上げれば、件のメイドが窓枠に肘をついてこちらを見下ろしていた。 「楽しそーだね! オレもやっていい?」 「馬鹿か!! 並ぼうとすっ!?」 怒鳴った拍子に力が抜けて、窓枠から手が離れる。終わった。そう思った瞬間、メイドに掴まれた。

2023-05-10 22:25:42
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「慣れないことするから~。ダメだよ、こんなことしちゃ」 「うっさい」 「さ、朝メシにしましょー。座って座って」 「いらないってば。おい!」 治安の悪いメイドは私の主張も余所に、ご機嫌にテーブルへと案内する。 無駄に豪華なテーブルクロスと花瓶の置かれた机だ。 「ちょっと! おい!!」

2023-05-10 22:29:41
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まとめたひと
ユーガタ@留守 @i_who

シナリオお化けの冥探偵。 TRPGシナリオや文字を書く黄昏の手紙頭。 ATLUS狂信者でヒカセンで、卓外妄想で遊び薔薇を胸に抱くポガティブな本の虫もどき。 ▼FAは #ガタ絵 ▼i:のばらちゃん(@oh_no_bara) h:残響室(@_45978)様 ▼嗜好/近況/ご連絡/その他→リンク参照