迷鳥回視 - Wild Goose Crosses over Heaven

青波零也 @aonami

過ぎ去った月日に思いを馳せる。時が過ぎた、という事実だけがあり、振り返ったところで今更何にもならない、けれど。「あなたにも、大切な思い出があるのね」その人は、嬉しそうに笑った。これは僕の記憶で、その人には何も関係がない話。だから、何故その人が笑ったのか、未だわからないままでいる。 twitter.com/aonami/status/…

アザラシ @aonami

青波零也の小説の書き出しは「過ぎ去った月日に思いを馳せる。」です。 レッツトライ！ #not恋愛な書き出しお題2 #shindanmaker shindanmaker.com/1147155

2023-02-11 07:38:29

青波零也 @aonami

「生きづらそう」というのが大多数の感想で、僕もことさら否定はしない。波風を立てず静かに生きてゆく。ただそれだけのことが僕には大層難しい。けれど、こんな僕でも誰かの助けになれる、ということ。差し伸べた手を握り返してもらえる、ということ。ささやかな掌の温もり、それは人生の灯火だった。 twitter.com/aonami/status/…

アザラシ @aonami

青波零也の小説の書き終りは「それは人生の灯火だった。」です。 レッツトライ！ #not恋愛な書き出しお題2 #shindanmaker shindanmaker.com/1147155

2023-02-12 06:06:42

青波零也 @aonami

「黄昏とは『誰そ彼』という言葉から来ている。相手の顔の識別ができず、そこにいるのは誰かと問う刻限ということだ」彼女は長い影を揺らしながら僕の前を歩く。「こうして話している私とお前も、案外お互いが誰かわかっていないのかもな？」そう、僕は彼女のことを何も知らぬまま、黄昏時の辻に立つ。 twitter.com/aonami/status/…

アザラシ @aonami

青波零也の小説の書き終りは「黄昏時の辻に立つ。」です。 レッツトライ！ #not恋愛な書き出しお題2 #shindanmaker shindanmaker.com/1147155

2023-02-13 05:39:06

青波零也 @aonami

望郷の想いを胸に押し込める。どうせ、故郷と呼べる場所に居場所などないのだ。だから、帰りたい場所があるか、という問いには「特にありません」当たり障りのない回答。「未練もないの？」「ない、と言ったら嘘になりますが」それでも、僕は。「帰る暇があるなら、その分仕事をした方が有意義なので」 twitter.com/aonami/status/…

アザラシ @aonami

青波零也の小説の書き出しは「望郷の想いを胸に押し込める。」です。 レッツトライ！ #not恋愛な書き出しお題2 #shindanmaker shindanmaker.com/1147155

2023-02-14 05:28:17

青波零也 @aonami

「馬鹿な奴らばっかりだよ」己を客観視するのは難しい。「俺が手を出すまでもなく、勝手に破滅する」世界は自分を中心に回る、誰しもがそんな錯覚をする。「いっそ恨み言が心地よいな、どうせ誰も俺を罪には問えない」だから、最後まで気づけない。「おい、何か言えよ、」これは、自分で選んだ結末だ。 twitter.com/aonami/status/…

アザラシ @aonami

青波零也の小説の書き終りは「これは、自分で選んだ結末だ。」です。 レッツトライ！ #not恋愛な書き出しお題2 #shindanmaker shindanmaker.com/1147155

2023-02-15 06:45:14

青波零也 @aonami

「ありがとう、旅の人。大変だったろう」「いえ。お役に立てて何よりです」確かに大変ではあった。どうして山奥の、しかも崖の中腹に生える花を採らないといけないのか。可憐ながらそう目立つ花でもないのだが、「この香草がないと締まらないのさ」花をひとつ、鍋に。漂う匂いにお腹がぐぅ、と鳴った。 twitter.com/aonami/status/…

アザラシ @aonami

青波零也の小説の書き終りは「漂う匂いにお腹がぐぅ、と鳴った。」です。 レッツトライ！ #not恋愛な書き出しお題2 #shindanmaker shindanmaker.com/1147155

2023-02-16 05:12:45

青波零也 @aonami

諦めと共に天を仰ぐ。「運がない。もしくは日頃の行いが悪い」「君の？」「失礼な、俺はいつもよき行いを心がけているよ」「よき行いを心がけてるやつは、仕事をサボらないもんだ」「怒ってる？」「別に」怒ったところで意味もない。うんともすんとも言わない車に寄りかかり、溜め息と一緒に煙を吐く。 twitter.com/aonami/status/…

アザラシ @aonami

青波零也の小説の書き出しは「諦めと共に天を仰ぐ。」です。 レッツトライ！ #not恋愛な書き出しお題2 #shindanmaker shindanmaker.com/1147155

2023-02-17 05:12:55

青波零也 @aonami

車体が減速をはじめ、やがて停止する。駅への到着を告げる車内放送。聞き覚えのない土地の名前に、ずいぶん遠くまで来たことを知る。窓の外はすっかり白く、輪郭も定かではない。見知らぬ冬の風景。ほとんどものの入っていないリュックを背負いホームに降りれば、ヒリヒリと冷気が粘膜に突き刺さった。 twitter.com/aonami/status/…

アザラシ @aonami

青波零也の小説の書き終りは「ヒリヒリと冷気が粘膜に突き刺さった。」です。 レッツトライ！ #not恋愛な書き出しお題2 #shindanmaker shindanmaker.com/1147155

2023-02-18 05:39:36

青波零也 @aonami

口を開いても、声は出なかった。助けを求めたところで、聞き届けてもらえるはずもない。降りかかるものを甘んじて受け入れる。その方が抵抗よりも楽だと理解しているから。心身の痛みを感じる心はすでに捨て去り、ただ、ただ、時間が過ぎるのを待つ。光の射さないこの場所は、まるで海底に居るようだ。 twitter.com/aonami/status/…

アザラシ @aonami

青波零也の小説の書き終りは「まるで海底に居るようだ。」です。 レッツトライ！ #not恋愛な書き出しお題2 #shindanmaker shindanmaker.com/1147155

2023-02-19 07:02:02

青波零也 @aonami

遠く、そっと幸運を祈るしかあるまい。僕がいたところで、できることは何もない。「浮かない顔だな」そっちこそ、酷い顔をしてるだろ。喉の奥に飲み込む言葉。「まあ、そう落ち込まないでよ。仕方なかった。お互いにさ」僕はそうは思えない。だからここを離れるよ、と、言ったらどんな顔をするだろう？ twitter.com/aonami/status/…

アザラシ @aonami

青波零也の小説の書き出しは「遠く、そっと幸運を祈るしかあるまい。」です。 レッツトライ！ #not恋愛な書き出しお題2 #shindanmaker shindanmaker.com/1147155

2023-02-20 05:25:03

青波零也 @aonami

陰鬱な空である。ここしばらくずっとそうだ、晴れた青い空を見ていない。こんな日が続けば、流石の僕でも心が重くなるものだ。「浮かない顔してる」「たまには晴れてほしいと思って」「意外。天気に左右される方だっけ？」「いや、洗濯物が溜まってる」「コインランドリー行きなよ」「面倒なんだよな」 twitter.com/aonami/status/…

アザラシ @aonami

青波零也の小説の書き出しは「陰鬱な空である。」です。 レッツトライ！ #not恋愛な書き出しお題2 #shindanmaker shindanmaker.com/1147155

2023-02-21 05:19:23

青波零也 @aonami

それは、手記だった。知らない文字だが不思議と読める、「魔王」と呼ばれた何者かの手記。書き手の高揚をこめて綴られる、殺戮と破壊の記録。しかし、それが習慣となってしまえば、高揚が続くはずもない。徐々に筆致から力が失われ、最後のページはこう締めくくられている。――私の世界は沈黙に満ちた。 twitter.com/aonami/status/…

アザラシ @aonami

青波零也の小説の書き終りは「私の世界は沈黙に満ちた。」です。 レッツトライ！ #not恋愛な書き出しお題2 #shindanmaker shindanmaker.com/1147155

2023-02-22 05:18:58

青波零也 @aonami

風に翻るそれを、美しいと思った。知らない、形容しがたい、それ。「あれは何？」「『因果』だ」ひとつひとつは頼りない縦糸で、横糸。それらを束ねて織られゆくもの。因果。目に映らぬはずのそれに、手を伸ばす。「やめておけ」彼女が笑う。「その糸こそが、お前の存在を左右するかもしれないからな」 twitter.com/aonami/status/…

アザラシ @aonami

青波零也の小説の書き出しは「風に翻るそれを、美しいと思った。」です。 レッツトライ！ #not恋愛な書き出しお題2 #shindanmaker shindanmaker.com/1147155

2023-02-23 07:24:11

青波零也 @aonami

深々と雪が降る。いつしか寒さや冷たさも忘れ、ただ機械的に足跡を刻んでゆく。その間にも雪は降り続ける。果たしてこの道なき道を、他の誰かが踏みしめただろうか。白く染まった足元からは何もわからない。やがてこの足跡もかき消され、僕の存在は誰にも証明できなくなるのだろう。白と静寂の世界だ。 twitter.com/aonami/status/…

アザラシ @aonami

青波零也の小説の書き終りは「白と静寂の世界だ。」です。 レッツトライ！ #not恋愛な書き出しお題2 #shindanmaker shindanmaker.com/1147155

2023-02-24 05:41:42

青波零也 @aonami

全てを見下ろす場所に立っている。彼女はいつだってそう。側にいても、手を繋いでも、僕が同じものを見ることは叶わない。彼女に限ることはない？　それは当然、僕は僕以外の誰にもなれない。けれど、彼女の目を覗き込むたびに、どうかその視界のひと欠片でも共有したい、と希うのをやめられないのだ。 twitter.com/aonami/status/…

アザラシ @aonami

青波零也の小説の書き出しは「全てを見下ろす場所に立っている。」です。 レッツトライ！ #not恋愛な書き出しお題 #shindanmaker shindanmaker.com/931629

2023-02-25 05:17:09

青波零也 @aonami

車窓の景色が矢のように流れていく。僕が過ごした土地を遥か後方に置き去りにして。仮に振り返ったところで、もう、すっかり見えなくなっていたに違いない。そもそも振り返る気などこれっぽっちもなかったが。あの場所も、僕自身も、すっかり空っぽであって、残したものなど何もない。そういうことだ。 twitter.com/aonami/status/…

アザラシ @aonami

青波零也の小説の書き出しは「車窓の景色が矢のように流れていく。」です。 レッツトライ！ #not恋愛な書き出しお題 #shindanmaker shindanmaker.com/931629

2023-02-26 05:20:06

青波零也 @aonami

思わず、天を仰いだ。人は何故、自然と空に視線を向けるのか。「神様は天にいて、いつも、あなたを見ていますからね」幼い頃、手を繋いだ母がそう言ったことを覚えている。そこに神様がいるのだとすれば、今の僕を見ているのか。手を差し伸べてもくれぬ神様など、ただの覗き魔と何が違うっていうんだ？ twitter.com/aonami/status/…

アザラシ @aonami

青波零也の小説の書き出しは「思わず、天を仰いだ。」です。 レッツトライ！ #not恋愛な書き出しお題 #shindanmaker shindanmaker.com/931629

2023-02-27 05:25:26

青波零也 @aonami

懐かしい光景に目を細めた。かつての学校は、あの頃と何も変わらぬ姿でそこにある。「地元、この辺だっけ」「ああ」制服姿の生徒たちがまばらに登校する、ありふれた光景。「学校、好きだった？」「どうかな。教わったことは、役に立っていると思うけど」「俺は楽しかった話とか聞きたいんだけどな？」 twitter.com/aonami/status/…

アザラシ @aonami

青波零也の小説の書き出しは「懐かしい光景に目を細めた。」です。 レッツトライ！ #not恋愛な書き出しお題 #shindanmaker shindanmaker.com/931629

2023-02-28 05:35:30

青波零也 @aonami

忘れられない光がある。徐々に色を変える空、やがて姿を現す太陽。夜は終わり、朝が来る。それは何ひとつ特別でない自然の摂理だが。「初日の出を見に行こう」そう言った、傍らの彼女は光を浴びて笑っていた。細い指を手繰る。手袋越しに感じた彼女の気配。それは忘れられない、ささやかな、光の記憶。 twitter.com/aonami/status/…

アザラシ @aonami

青波零也の小説の書き出しは「忘れられない光がある。」です。 レッツトライ！ #not恋愛な書き出しお題 #shindanmaker shindanmaker.com/931629

2023-03-01 05:14:40

青波零也 @aonami

息せききって、走る。「まっ、」おそらく「待って」とでも言いたかったのだろう絶え絶えの声は、もはや遥か後方から。だから鍛えておけと言ったのに、後悔は常に先には立たないものだ。一歩ずつ近づく背中、こちらの接近に気づきぎょっと振り向く顔。腕を伸ばし、肩を強く掴む。今度こそ逃がすものか。 twitter.com/aonami/status/…

アザラシ @aonami

青波零也の小説の書き出しは「息せききって、走る。」です。 レッツトライ！ #not恋愛な書き出しお題 #shindanmaker shindanmaker.com/931629

2023-03-02 08:27:44

青波零也 @aonami

それは、生きる灯火だった。「住まいを用意し、日々食事を差し上げ、お迎えの日とお帰りの日には盛大に祝祭を執り行います」代々それを迎えている、という女性が言う。「神様の写し身ですから。我々に恵みを与えてくださる礼として、当然のもてなしです」僕には、ただの灯火にしか見えなかったけれど。 twitter.com/aonami/status/…

アザラシ @aonami

青波零也の小説の書き出しは「それは、生きる灯火だった。」です。 レッツトライ！ #not恋愛な書き出しお題 #shindanmaker shindanmaker.com/931629

2023-03-03 05:22:28

青波零也 @aonami

闇が呼んでいる。と、笑った誰かの気持ちを理解する日は、きっと来ない。「俺は、わかんなくもないけどな」「そうか？」「魔が差す、出来心を起こす、誘惑に負ける。どこにだって、こっちを手招きする闇はあるんじゃないかな」言いたいことはわかる、が。「呼ばれて応える方が悪い」「言うと思ったよ」 twitter.com/aonami/status/…

アザラシ @aonami

青波零也の小説の書き出しは「闇が呼んでいる。」です。 レッツトライ！ #not恋愛な書き出しお題 #shindanmaker shindanmaker.com/931629

2023-03-04 07:40:21

青波零也 @aonami

両手の隙間を零れてゆくものは、僕には縁のなかったもの。「自分を誤魔化すのは悪い癖だ」彼女は僕の額をつつく。「欲求には素直になれ。零れ落ちたものを掴みたいなら掴めばいい。何もかも、一度きりの生なのだから。お前にはそれができるはずだ」彼女はいつだって正しいが、過分な評価だとは、思う。 twitter.com/aonami/status/…

アザラシ @aonami

青波零也の小説の書き出しは「両手の隙間を零れてゆくものは、」です。 レッツトライ！ #not恋愛な書き出しお題 #shindanmaker shindanmaker.com/931629

2023-03-05 07:51:34

青波零也 @aonami

待ち人が来るとは思っていない。それでも、「ここで待っているとね、望んだ人と会えるんだ」先客の言葉の通り、寂れたバスの待合所に座り続ける。夏の夜、灯りには羽虫が集っている。「おじさんは誰を待ってるの？」先客が無邪気に問うてくる。壁の、止まった時計に目をやって、「私の、大切な人です」 twitter.com/aonami/status/…

アザラシ @aonami

青波零也の小説の書き出しは「待ち人が来るとは思っていない。」です。 レッツトライ！ #not恋愛な書き出しお題 #shindanmaker shindanmaker.com/931629

2023-03-06 06:10:23

青波零也 @aonami

きりきりと弓を引き絞るように、緊張を体の隅まで行き渡らせる。脳裏に描く、張り詰めた糸、しなる弓。「強くなりたいなら、イメージを固めろ」教えてくれたのは、確か、高校の頃の顧問だったか。「想像は己を最適化する。スイッチを切り替える手続きだ」限界まで引いた矢を放つイメージで、地を蹴る。 twitter.com/aonami/status/…

アザラシ @aonami

青波零也の小説の書き出しは「きりきりと弓を引き絞るように、」です。 レッツトライ！ #not恋愛な書き出しお題 #shindanmaker shindanmaker.com/931629

2023-03-07 05:09:28

青波零也 @aonami

「外道だ…」と思わず呟いた。「言われたくないな、そっちの方がよっぽどだ」「僕は、必ず加減はしてる」「加減しないと絶対やりすぎるってことだろ」一理ある。「それに、俺らは神様じゃない」恐れをなしたのか真っ青な顔をした男に、あいつは朗らかに笑いかける。「さ、一緒に来てもらいましょうか」 twitter.com/aonami/status/…

アザラシ @aonami

青波零也の小説の書き出しは「「外道だ…」と思わず呟いた。」です。 レッツトライ！ #not恋愛な書き出しお題 #shindanmaker shindanmaker.com/931629

2023-03-08 05:25:12

青波零也 @aonami

絶対に騙されている。そう思ったのだが、黙って話を聞き続ける。「今すぐお金が必要だから振り込めっていうんだけど、私、カードも通帳もなくしてたって気づいて。警察に行かなきゃ、って話をしたら電話切れちゃった」この人には敵わないな。僕だけではない、この場の全員がそう思ったに違いなかった。 twitter.com/aonami/status/…

アザラシ @aonami

青波零也の小説の書き出しは「絶対に騙されている。そう思ったのだが、」です。 レッツトライ！ #not恋愛な書き出しお題 #shindanmaker shindanmaker.com/931629

2023-03-09 07:01:16

青波零也 @aonami

傍らの花が、ほろりと落ちた。触れてもいないのに、側に立った、ただそれだけで。「不吉です」響く声。「ひとたび蕾がほころべば、百日は咲き誇る花のはず」形もそのままに地面に転がる花は、落とされた首のよう。「あなたが」目を上げれば、嫌悪も顕わな鋭い視線。「悪しき風を運んできたのですか？」 twitter.com/aonami/status/…

アザラシ @aonami

青波零也の小説の書き出しは「傍らの花が、ほろりと落ちた。」です。 レッツトライ！ #not恋愛な書き出しお題 #shindanmaker shindanmaker.com/931629

2023-03-10 07:30:22

青波零也 @aonami

目を覆わんばかりの光景に、思わず溜め息を吐く。背を向けて立ち去るあいつの足音。人より感受性が強いあいつは「匂い」を感じる。単なる匂いだけでなく、気配や感情の色合いまで。だから、僕が感じる以上の悪臭に耐えられないのだろう、が。「僕だって嫌だよ」腐った肉の匂いは、目を逸らしても届く。 twitter.com/aonami/status/…

アザラシ @aonami

青波零也の小説の書き出しは「目を覆わんばかりの光景に、思わず溜め息を吐く。」です。 レッツトライ！ #not恋愛な書き出しお題 #shindanmaker shindanmaker.com/931629

2023-03-11 08:48:12

青波零也 @aonami

屋根のてっぺんに立って、大きく息を吸う。知らない場所の空気を肺いっぱいに満たす。見渡す限り水没した町。おそらく町で最も高い建物の一部だろうこの屋根も、かろうじて水面から顔を出すばかり。水没都市は旅の中でよく見かける。聖書にも洪水の話があるというし、案外よくある話なのかもしれない。 twitter.com/aonami/status/…

アザラシ @aonami

青波零也の小説の書き出しは「屋根のてっぺんに立って、大きく息を吸う。」です。 レッツトライ！ #not恋愛な書き出しお題 #shindanmaker shindanmaker.com/931629

2023-03-12 05:12:12

青波零也 @aonami

風に言葉がさらわれる。今の気持ちを声に出してみるけれど、如何せん耳元でうなる風には敵わない。振り向いた彼女が唇の前に人差し指を立てる。そう、きっと、言葉はいらないのだ。今ここに彼女がいて、僕はその手を掴んでいる、それだけで。視界に靡く糸を横目に、互いの指を絡めて、もっと高く跳ぶ。 twitter.com/aonami/status/…

アザラシ @aonami

青波零也の小説の書き出しは「風に言葉がさらわれる。」です。 レッツトライ！ #not恋愛な書き出しお題 #shindanmaker shindanmaker.com/931629

2023-03-13 05:43:56

青波零也 @aonami

突然空が翳った。晴れ渡っていた空がみるみるうちに黒雲に覆われ、雷鳴が轟く。鼻をくすぐる雨の気配。すぐにでも降り始めるに違いない。繋いだ手の先で、怯えた目が僕を見上げる。「雷は怖い？」返ってくるのは小さな頷き。「早く、帰らないとな」僕も、君も。迷子の少年の手を引いて、暗い道を行く。 twitter.com/aonami/status/…

アザラシ @aonami

青波零也の小説の書き出しは「突然空が翳った。」です。 レッツトライ！ #not恋愛な書き出しお題 #shindanmaker shindanmaker.com/931629

2023-03-14 05:14:32

青波零也 @aonami

逸る気持ちを抑えて、横断歩道を渡る。どうしてこんな時に限って、赤信号ばかりなのか。カッコウの声を聞きながら、次の交差点へ。「律儀ぃ」「僕らが法規を破ったら世話ないだろ」「そりゃそうだけど」信号はまた赤。「やっぱ信号無視しよ？」「そもそも君の寄り道が悪いのに、さらに違反を唆すなよ」 twitter.com/aonami/status/…

アザラシ @aonami

青波零也の小説の書き出しは「逸る気持ちを抑えて、横断歩道を渡る。」です。 レッツトライ！ #not恋愛な書き出しお題 #shindanmaker shindanmaker.com/931629

2023-03-15 05:13:16

青波零也 @aonami

思わず振り返った。「振り返るなと、言ったのに」弱々しい声。だけど、振り返らない方がおかしい。「早くしなければ、あなたも戻れなくなります」その間にも滴る血。踵を返し、その人の体に深く食い込む茨を掴む。この手に棘が刺さっても、間違った選択であろうとも、「見ないふりなんて、できません」 twitter.com/aonami/status/…

アザラシ @aonami

青波零也の小説の書き出しは「思わず振り返った。」です。 レッツトライ！ #not恋愛な書き出しお題 #shindanmaker shindanmaker.com/931629

2023-03-16 05:17:59

青波零也 @aonami

奴はぼそりと呟いた。声はほぼ聞こえなかったが、僕を睨んでいる以上、ろくな内容ではないだろう。「何？　目つきが怖いって？」奴を拘束しているあいつが通る声で言う。「いや、最初からこういう顔なのよこの人」「おい」「そんな面じゃモテないって？　俺もそう思う！」「君、わざとやってないか？」 twitter.com/aonami/status/…

アザラシ @aonami

青波零也の小説の書き出しは「奴はぼそりと呟いた。」です。 レッツトライ！ #not恋愛な書き出しお題 #shindanmaker shindanmaker.com/931629

2023-03-17 05:41:55

青波零也 @aonami

約束を、果たしに来た。「逃げなかったんですね」「約束したから。嘘は嫌いだ」僕が返せば、わずか、君の大きな黒目が揺れる。どうして君がそんな顔をするのか、わからないまま。「それに、逃げる理由もないよ。……さあ、君の話を聞かせてほしい」もはや交わることのない僕らの、最後の対話をしよう。 twitter.com/aonami/status/…

アザラシ @aonami

青波零也の小説の書き出しは「約束を、果たしに来た。」です。 レッツトライ！ #not恋愛な書き出しお題 #shindanmaker shindanmaker.com/931629

2023-03-18 06:28:33

青波零也 @aonami

ここまでか、と覚悟を決める。いや、覚悟はしていたが、ここまで来られるとは思ってもみなかったから。随分遠くまで来たものだ。物理的な距離の話ではなく、僕の心が。その事実に愉快な気持ちになる。僕をこの場に連れてきたその人に、「ありがとうございました」果たして、上手く笑えているだろうか。 twitter.com/aonami/status/…

アザラシ @aonami

青波零也の小説の書き出しは「ここまでか、と覚悟を決める。」です。 レッツトライ！ #not恋愛な書き出しお題 #shindanmaker shindanmaker.com/931629

2023-03-19 05:12:55

青波零也 @aonami

静寂が耳に刺さる。うるさいのは苦手だが、完全な無音もまた、痛みに似た感覚をもたらすのだと知る。光一つ差さない空間に視覚はまるで意味をなさず、匂いらしきものを感じることもない。手に触れるものもなければ、足が地を踏んでいるかも定かではない。こう考える僕だって、本当に存在しているのか？ twitter.com/aonami/status/…

アザラシ @aonami

青波零也の小説の書き出しは「静寂が耳に刺さる。」です。 レッツトライ！ #not恋愛な書き出しお題 #shindanmaker shindanmaker.com/931629

2023-03-20 05:16:35

青波零也 @aonami

この結末を選んだのは自分だ。「どうして、こうなっちゃったかなあ」そいつは心底呆れ果てた調子で言う。しかし、他の誰とも違って、「こうなるとは思わなかった」とは言わなかった。つまり、「でも、想定の範囲内なんだろ」僕の言葉に、そいつは弾かれたように顔を上げて。「まあな」力なく、わらう。 twitter.com/aonami/status/…

アザラシ @aonami

青波零也の小説の書き出しは「この結末を選んだのは自分だ。」です。 レッツトライ！ #not恋愛な書き出しお題 #shindanmaker shindanmaker.com/931629

2023-03-21 05:18:03

青波零也 @aonami

その光景に、目を奪われた。立ち上る炎は青白く輝き、見る間に姿を変える。四つ足の獣に、巨大な魚に、そして翼を広げた鳥に変じて飛び立つ。火の粉が降り注ぐのを腕で庇いながら、夜の闇を晴らすかのごとく舞う青い鳥を見つめる。吉兆だ、という歓声を聞きながら、僕はただ、その炎を美しいと思った。 twitter.com/aonami/status/…

アザラシ @aonami

青波零也の小説の書き出しは「その光景に、目を奪われた。」です。 レッツトライ！ #not恋愛な書き出しお題 #shindanmaker shindanmaker.com/931629

2023-03-22 05:27:04

青波零也 @aonami

あまりに怪訝な顔をされて、思わず口をつぐんだ。よくあることだ。僕が当然と思っていることも、周囲からは奇異に取られがちだ。空気が読めない、と言い換えてもよいだろうか。「変なことを、言いましたか」と恐る恐る問えば、その人は「いいえ」と微笑む。「あなたって、誰にでも優しいのね。私にも」 twitter.com/aonami/status/…

アザラシ @aonami

青波零也の小説の書き出しは「あまりに怪訝な顔をされて、思わず口をつぐんだ。」です。 レッツトライ！ #not恋愛な書き出しお題 #shindanmaker shindanmaker.com/931629

2023-03-23 05:23:38

青波零也 @aonami

水面に映る顔は、すっかり汚れていて、見られたものではなかった。凍るような冷たさの水を両手ですくい、顔を洗う。誰に見られているわけでもないが、僕の気分が悪かったから。念入りに顔を擦り、水面が落ち着くのを待って、もう一度覗き込む。どれだけ顔を洗っても、汚れが落ちても、ぱっとしない顔。 twitter.com/aonami/status/…

アザラシ @aonami

青波零也の小説の書き出しは「水面に映る顔は、」です。 レッツトライ！ #not恋愛な書き出しお題 #shindanmaker shindanmaker.com/931629

2023-03-24 05:09:25

青波零也 @aonami

光陰矢の如しとは言うけれど、カレンダーを見て驚く。「どうした？」と問う彼女に、首を横に振る。彼女にとっては、きっと、大したことではない。けれど、僕にとっては何よりも大切な日。仕事の前に、買い物に出かけよう。彼女が喜ぶかはわからないが、彼女と出会った今日を祝いたい、僕自身のために。 twitter.com/aonami/status/…

アザラシ @aonami

青波零也の小説の書き出しは「光陰矢の如しとは言うけれど、」です。 レッツトライ！ #not恋愛な書き出しお題 #shindanmaker shindanmaker.com/931629

2023-03-25 07:24:15

青波零也 @aonami

その感触を、生涯忘れることは無いだろう。……と言ったら、彼女は嫌な顔をするだろうか。それとも、いっそ「忘れろ」と言うだろうか。今更、それを確かめることもできないけれど。「彼女は確かに、ここにいました」そう言うたびに、疑惑の視線が向けられる。それでも僕は、彼女の温もりを、忘れない。 twitter.com/aonami/status/…

アザラシ @aonami

青波零也の小説の書き出しは「その感触を、生涯忘れることは無いだろう。」です。 レッツトライ！ #not恋愛な書き出しお題 #shindanmaker shindanmaker.com/931629

2023-03-26 04:41:39

青波零也 @aonami

天気予報が外れたので、もう一泊することにした。この大雨と強風では、旅を続けるのは難しい。「夜の間に過ぎるはずだったんだがな。お客さんも災難だね」「いえ。おかげでゆっくりできます」今まで、ずっと、何かに急き立てられるように旅していたから。自然が奏でる激しい音に、そっと耳を澄ませる。 twitter.com/aonami/status/…

アザラシ @aonami

青波零也の小説の書き出しは「天気予報が外れたので、」です。 レッツトライ！ #not恋愛な書き出しお題 #shindanmaker shindanmaker.com/931629

2023-03-27 05:13:52

青波零也 @aonami

最初、聞き間違いかと思った。「だから、猫耳に花輪をつけてブレイクダンスを踊る全裸の変質者が！」聞き間違いじゃなかった。「冗談は休み休み言え」「本当だって！」いや、変な嘘をつく奴ではないが、それにしても。「ほら、あれ！」指さす方を見て、「う、うわああ」百聞は一見に如かず、だけども！ twitter.com/aonami/status/…

青波零也 @aonami

青波零也の小説の書き出しは「最初、聞き間違いかと思った。」です。 レッツトライ！ #not恋愛な書き出しお題 #shindanmaker shindanmaker.com/931629

2023-03-28 05:10:20

青波零也 @aonami

焼き立てのパンの匂いが漂ってきた。懐かしい香り。「おひとついかがですか？」「いただきます」差し出されたパンを、ひとつ、食べてみる。しっとりした食感、口いっぱいに広がる自然な甘さ。美味しいものをじっくり味わう、ということをいつから忘れていただろう。噛みしめるたび、少し、胸が苦しい。 twitter.com/aonami/status/…

青波零也 @aonami

青波零也の小説の書き出しは「焼き立てのパンの匂いが漂ってきた。」です。 レッツトライ！ #not恋愛な書き出しお題 #shindanmaker shindanmaker.com/931629

2023-03-29 05:13:14

青波零也 @aonami

眠気をこらえて、体を起こす。「大丈夫？」「あと一日くらいなら、何とか」そいつは申し訳なさそうな顔をする。別に誰のせいでもない。今は仕事が忙しい、それだけの話。「誰のせいでもない、ってのは嘘だろ。誰かが悪いから、俺たちも忙しい」確かに、その通りだが。皺だらけの上着を羽織って、外へ。 twitter.com/aonami/status/…

青波零也 @aonami

青波零也の小説の書き出しは「眠気をこらえて、体を起こす。」です。 レッツトライ！ #not恋愛な書き出しお題 #shindanmaker shindanmaker.com/931629

2023-03-30 05:18:12

青波零也 @aonami

雨音が空に蓋をしている。それでも買い出しに出なければ仕事にならない。大きな傘を手に大通りを行く。行き交う人は誰もが傘をさし、車はアスファルトを覆う雨水を蹴散らして走る。全ての景色が、全ての音が雨を纏い、町ひとつが雨の中に閉じ込められているかのよう。不思議と、悪い気分ではなかった。 twitter.com/aonami/status/…

青波零也 @aonami

青波零也の小説の書き出しは「雨音が空に蓋をしている。」です。 レッツトライ！ #not恋愛な書き出しお題 #shindanmaker shindanmaker.com/931629

2023-03-31 05:30:33