
この世界の片隅に、前半のすずの家事描写は「唐突に遠い場所まで嫁に呼ばれる」「呼ばれた先で激務に近い労働をすべて一人でこなすことになる」「姑は病弱、舅も物静か、夫はやさしいがとにかく遠慮がどこかにある、という配置でもこの時代の嫁に激務をまかせることには特に違和感もなにもない」
2020-08-07 12:12:39
が、マジで延々書かれていて、かつ内容も描写も実験マンガのパートがこれでもかこれでもかと続くのは「毎日新しい実験しないとやっていけないくらい、家事が今までの流れではとても成り立たない、かつやった実験もド派手に失敗しまくる」という流れ 楠公飯の実験マンガぷりは本当にすごい pic.twitter.com/9RbIxIDMCt
2020-08-07 12:19:17



結婚式のあと、これから住む家で初めて姑は足が悪く家事が出来ない(すべてすずの仕事となる)ことを告げられるシーン。更には結婚式のご馳走として小姑が炊いた米の釜の焦げを取る仕事を即まわされている。更には戦時下で灯りを夜つけると周囲の家から煩く言われることを夫が指摘する pic.twitter.com/GYC1Z970QJ
2020-08-07 12:23:32


暗いときに灯りをつけられないことは後々すずを苦しめる(一人で回さなければならないため暗い時間帯にも家事をしないではやっていけないため) 更にはこのすぐあとすずは嫁に来た先の住所すら知らないことが発覚するのだが、それはこの家の伝達ミスではなくすずのうっかりとして処理される
2020-08-07 12:25:38
更にはあのラストに繋がるので「嫁というもっとも立場の弱いものですら無辜の民ではない」という話なんだと思います。また、嫁がこのような目に遭うのは、登場人物が意地悪だからではなく、社会の仕組みがそうしているという描写だとも思う。
2020-08-07 12:26:54
しかし、まずこの辺が前提共有されてないから、こうの史代という人の「これだけふつうのマンガがしない実験マンガ形式をふつうに読ませる手腕」とか「それらすべてが集約して意味をもつ最期のすずの右手の話」などの話が出来ないのは寂しいことだ……
2020-08-07 12:30:11
この世界の片隅に、よく知らない人である夫がすずを選んだのは、風俗の女性を嫁に迎えようとして家族に大反対され破談になり、じゃあ幼い頃一瞬すれ違った女性を連れてきたらそれと結婚してやる! 的なキレ方をしたら本当に連れてこられてしまったのがすず、という流れなので、
2020-08-07 12:33:01
夫も優しいし、婚家の舅も姑もとてもすずをありがたがっているのだが、周囲に抜けているぼんやりしていると言われまくるすずも当然この辺の違和感を感じないわけがない(ただし嫁の礼儀作法としてそれを表に出さない)という、「女(弱者)を甘く見ている社会」に対する意地悪さは凄いですよ
2020-08-07 12:34:34
すずがケイ子に懐くのも妥当な話で、ケイ子だけ「周作にはもっと慎重に嫁を選ばせたかったのですが」とこの結婚のあまりの無謀さに結婚式の直後から切り込んでいて、優しい嘘ですずを包む気がない。誠実なんですよね。だからこそケイ子は婚家にいられなかったわけだが。
2020-08-07 12:37:25
こうの史代が「ていねいな暮らし」に集約されるの、あのスナフキンやミイのノータイム暴力やらアーティスト気質どもの最悪理論に振り回されるメンバーやらそもそも絵柄は闇が怖くて長編はだいたい彗星やら洪水やら天変地異のムーミンシリーズすら「ほっこり」に回収されるのと似た感覚がある
2020-08-07 12:39:51
戦争を知らない世代が書けるものはなにかから出てきた「夕凪の街 桜の国」と、その安全圏から語ろうとすることを辞めて更に踏み越えた「この世界の片隅に」。作品としての危うさはやはり後者にはゼロではないが、踏み越えたその覚悟を私は指示したいなあと思ってしまうんだよな……
2020-08-07 18:27:51
「戦時中の女の子も、いまの女の子も同じ」少女と戦争を描き続ける漫画家・今日マチ子さんに聞いた buzzfeed.com/jp/kotahatachi… @togemaru_kから
2020-08-07 18:58:11
>「史実を伝えることには重きを置いていないんです。多少フィクションが入ったとしても、いまの人たちが読んで共感できることに主眼を置いています」 と、言い切るのも一つの態度ではある
2020-08-07 18:58:44
しかしそう書くとやっぱり 「少女っていうと無垢で、何も考えず戦争に巻き込まれて被害を受けるだけだと思われがちなんです。だからなのか『cocoon』では、『少女たちは悪くない』というような読まれ方があまりにも多かった」 とか
2020-08-07 19:00:10
「さらに読者の側にも、『私たちは絶対に悪くない被害者だ』というような意識が多いように感じました。絶対に戦争を起こさないという自信がある人も。本当にそうなのでしょうか」 とかね……。私はコクーンは、戦争という極限状態で少女の残酷性が炸裂する話だと読みましたが(そして戦争が終わると
2020-08-07 19:00:58
少女はその残酷性を発揮した相手へのなにもかもをキレイに忘れてしまう、そのくらいには少女は狡い)あれですらそう読まれてしまうのが「共感」に頼ることの危うさなのかなあ……みたいな気持ち コクーンはニュートラル寄りかもですが、明確に戦争によって歪む人間の話ですよ
2020-08-07 19:02:51
「この世界の片隅で」の実験的を指したのは、コマ割などマンガ技法の話です。それが作中の物資の少ない中で工夫を余儀なくされてる→実験するしかないという状況と響いている。嫁という存在が無償の労働力として普通な時代であることはさすがに承知しています。 twitter.com/namakura_bori/…
2020-08-07 22:55:12
いや本当に僕の実家周りの感じではまったく違和感がない。これを実験的にとか女性蔑視を描くと描いている人はよくできた先進的家庭の方なのだろうと思いますよ。根本的にあれは当時普通なんスよ。
2020-08-07 20:13:57
だからメインでしたかったのはこうの史代はとにかく「実験的」「凄まじく手の込んだギミックをさりげなく(右手に集約するサブエピソード)、あるいは大胆に(左手で描かれる背景)使用する」「市井のつまらないと言われそうな女を通して見せつける批評性の鋭さ」とかの話なんですよ……
2020-08-07 23:02:53
で、それらを俗に言う「ていねいな暮らし」に集約させようとするようにも見えるNHK「あちこちのすずさん」などの企画は、これらを受け止められるのか、という話。また「ていねいな暮らし」という言葉自体も多義性がありすぎる用語になりつつあるなという話はこっちでした twitter.com/ro_ki_/status/…
2020-08-07 23:05:23
しかし「ていねいな暮らし」という単語も、個人として趣味を持てない、内在する自己のクリエイティビティは家事という仕事のなかに潜ませるしかない、そうしたこの国で続いてきた女たちの仕事を再評価しようみたいな流れでもあったはずで、そもそもこの単語に対する世間の感度が低いとは思う
2020-08-07 12:47:36
アニメがこの辺意識していないとは全然思ってなくて、映画でも暗い中から働き出すすずのシークエンス、たったひとりで本当に暗いんだよ……。マンガよりウッてなったな。 あと映画公開の何年も前の監督のリアルイベントに参加したことがあるんですが、それは作中の食事を古民家を借りて参加者再現する
2020-08-07 23:09:35
というもの。私が参加したときは前年度の反省を生かしたとのことで「すみれを山で探すのは大変無理があった!今年は鉢植えで栽培しました」といわれて「アニメ作るのにどこからやっている……?」と思った。楠公飯を当然釜にあの装置や炭で作るイベントでした。
2020-08-07 23:11:40
一番おいしかったのはすずの生家の近くと思われる場所の海苔をつかった海苔巻き。海苔が本当においしくてね……。これを食べてきた少女が、誰も知り合いのいない街で楠公飯を作って、知らない人と食べなければならない。なかなかの落差でしたよ。
2020-08-07 23:13:23
異議あり~~。男も女も「お国のため」というイデオロギーの構造の中でしか生きられなかった時代なのは同意しますが、その中でも明確に、家族の中に「序列差」があったことを書いてる話だと思う~。すずは外から来た人で女なので一番弱い twitter.com/kaodekaneko/st…
2020-08-07 23:29:16
男も突然紙切れ一枚で招集されすぐに戦地に赴いて骨も帰ってこない事にも違和感も何もない。…男も女もそういう構造の中でしか生きられない時代だったんだ。一面だけ切り出しても浅薄になる。 twitter.com/ro_ki_/status/…
2020-08-07 23:05:46
この点が白眉なのは戦地に呼ばれた立派な軍人の憎からず想っていた幼なじみが泊まる時のエピソードでしょう。すずと彼が蔵に閉じこめられるとき、そこにすずの自由意志はない。彼女の貞操すら夫に決定権がある。
2020-08-07 23:30:47