第198回深夜の真剣140字60分一本勝負

らん @amagi_ran

レコードがチリチリと雑音交じりに走る。絞り出すような切ない古い外国の恋歌が、薄暗い空間に波のように広がっていく。あなたがどんなに遠く離れていても、ずっと想っているそんな歌詞。CDとは違う音色が私の体を揺する。#twnovel　なぜか胸が締め付けられる。ああ、こんな音、知りたくなかった…。

れんが @xLEZ7vRmyC82HvW

小さい頃、懐いて遊びに行っていた家があった。 入学したての放課後、柔らかいレコードの音色に惹かれて庭に忍び込んだのだ。珈琲を飲むおじいさんと窓越しに目が会い、優しく手を振って招いてくれた。 今でも春宵にはあの家のことを思い出す。 あのとき憧れた『大人』はレコードの形をしている。

新宿エイリ庵 @AnnShinjuku

参加させていただきます！いつも素敵なお題をありがとうございます💞 お題は 「春宵、レコード、手を振って」 #創作BL です。 こういう真剣勝負の場面は捕手がはぶかれがちですよね……でも二人きりの方がロマンチックなので仕方ないですね😌💦 #深夜の真剣140字60分一本勝負 @140onewrite pic.twitter.com/AAMIbaQNY1

拡大

太陽や月など @as1mind1soul

春宵に促されて、決行した。懐かしいレコードジャケットを棚に並べる。鮮やかなカラーを配置した。ターンテーブルに針を流す。青空一面の映像が蘇った。菜の花畑から手を振って微笑む君。いちごシェイクにそっと口付ける。冷触で我に返った。我家で暮らした君の留学の日々を回想して、烏国の君を祈る。

Altair @_altair_73

だめだったよ、と君は言った。電波を通してでも分かるアルコールの気配。がんばったんだね、おつかれさま。そんなありきたりな言葉でも彼には染みたようだ。途端に鼻声が鼓膜をくすぐり、少し笑ってしまった。この恋と手を振ってお別れが出来たなら。そうすれば、君の失恋を一緒に悲しめたのかな。

藤澤穂波 @LoveKT0220

#深夜の真剣140字60分一本勝負 (@140onewrite) 二週間に一回になってしまってる……。今回はわりと難産でした……。 pic.twitter.com/AMQcQNGJHA

拡大

夏見 有 @you_natsumi

父の遺品整理をしていたら、ぼろぼろのレコードが出てきた。埃を払うと父の鼻歌で聞いた曲ばかりだった。 ご機嫌で口ずさんでいた小さな背中の裏側には、何が隠れていただろう。 子供の頃はたくさん心配かけた。大人になってからは仕事を言い訳にした。募った小さな後悔は、父の声と共に巡り続ける。

Z.P.M @ArcOkimuy

上野で夜桜見物をしていたら春宵のなか知らない女がこちらに手を振ったんだ。誰だったんだろう。そんな話をしたところ、誰と一緒だったと友人が問う。仕事の相手だよ。へえデートかと思った。そうかあれはお前の扮装か。仕事だろうと何だろうと俺には関係ないけど。実は欲しいレコードがあるんだ。

秋月蓮華 @akirenge

春宵。 音楽室から僕が鳴らしたレコードの音が流れてくる。 学校のグラウンドで、人々が音を聞いている。 老若男女、関係なく、集っている。 「おーい。ありがと。みんな喜んでる」 君が手を振っている。 他人には君しかいなくて君だけが手を振っているように見える。 僕には、君と人々が見える。

紅月シオン @lunser5

心地よい春宵が迫ってきて思わず船を漕ぐ 重い瞼を開けたらそこにはあの日と寸分変わらない君がいた 「歳をとるってどんな感じなんだろうね」 あの日からずっとレコードのように刻み続けた疑問 それはこの身で味わってきた 今では自分の方が君よりもお年寄りだ 遠い場所であの日の私と君が手を振った

雪子 @yukikurococco

#深夜の真剣140字60分一本勝負 (@140onewrite ) 第198回 お題 ①春宵 ②レコード ③手を振って pic.twitter.com/te5Iwpy9kK

拡大

梁田　悠 @yanada_yu

「ハルサメ」 #140字小説 pic.twitter.com/CcHM0gknvM

拡大

ケンタシノリ＠童話＆小説書き屋さん @kentasinori

力蔵は、乾物問屋の用心棒として生計を立てている浪人者である。ある満月の夜、力蔵は春宵一刻に包まれながら永代橋を歩いている。 そんな時、手を振っている女の人が力蔵の前に現れた。 「力蔵さん！」 みやと名乗るその女にとって、力蔵は自分が悪人たちに襲われている所を助けてくれた恩人である。

RAY/※※※ @growler_ray

この曲のこと、あの子になんて言ってたっけ？……ああそうだ「大好き」だ。恋人と一緒にこれを聞くのが夢、とかも言ったっけな あの子はもうこっちに来ようとしてる頃だろうか？それなら、響くレコードに言葉を託し、私はここを去ろう。記録を通して話さなければ、きっと後悔の中で死ぬことになるから

ゆきやまイマ＠鶏林書笈 @keirin_syokyu

#深夜の真剣140字60分一本勝負 (@140onewrite ) お題： ①春宵 ②レコード ③手を振って ＃木槿国の物語 売上目標達成♫ pic.twitter.com/Rn47vJXPRJ

拡大

Pingu　novel @ckpingu_nvl

あなたの愛したレコードを、どうしても捨てられず引越しのダンボールに詰め直す。針の飛んだプレイヤーは、もうあのメロディを奏でないはずなのに、乗せてみたら一節聴こえた。春宵の悪戯にしては、嬉しかった。翌日、トラックから振り返ると、そのダンボールの上にあなたが座り、手を振っていた。