【創作】Novelber2020まとめ

玄川 @morgenacht

#novelber Day1.門 pic.twitter.com/seZFNoP3fR twitter.com/morgenacht/sta…

玄川 @morgenacht

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開いたら守る必要はない。だから開くのを待っている。閉じてることに意味があっても閉ざしてる俺に意味はない。此処に居る価値は俺の価値ではない。最初から俺は必要ない。 俺の意味は、価値は開いた後の世界でさえおそらく見つからない。それでも何処にだって行ける。そのために俺が必要だ。

玄川 @morgenacht

自分が溜息の多い生きものだとこの時季は毎年思い知る。とめどなく立ち上り白く霧散するひねもすの揺蕩いを目端に捉えては、いつか誰の目にも留めてもらえなかったどこかのかなしみについて考える。掬われない白をまたひとつ吐きながら、高く澄んだ青に目を細める。また酷くきれいな冬が来る。

玄川 @morgenacht

自分が溜息の多い生きものだとこの時季は毎年思い知る。とめどなく立ち上り白く霧散するひねもすの揺蕩いを目端に捉えては、いつか誰の目にも留めてもらえなかったどこかのかなしみについて考える。掬われない白をまたひとつ吐きながら、高く澄んだ青に目を細める。また酷くきれいな冬が来る。

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それを待ち侘びてると言ったら怒るだろうか。腐ってくのを見たいのかと愉快そうに聞いてほしい。たしかにこの世には底でしか吐けない息がある。唯々諾々と凡庸に混じる末路が良いならご自由に。 でもどうせ俺にはお前がわかる。だから待ち侘びてる。お前が最後に吐く息がどんな色だか待っている。

玄川 @morgenacht

躁のうちに備えた柱がなにひとつ役に立たない。無意味だと知りながら過去を呪い胸を掻き毟るしか能のない生き物になる。こうなってはひとつひとつに指を当て、悲しい気がするだけの幻聴を取り払い、ほんとうの哀しみだけを爪弾いて、この身を塞ぐ灰色の虚無が流れ去るのを待つしかない。いつものこと。

玄川 @morgenacht

躁のうちに備えた柱がなにひとつ役に立たない。無意味だと知りながら過去を呪い胸を掻き毟るしか能のない生き物になる。こうなってはひとつひとつに指を当て、悲しい気がするだけの幻聴を取り払い、ほんとうの哀しみだけを爪弾いて、この身を塞ぐ灰色の虚無が流れ去るのを待つしかない。いつものこと。

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負かさずに前へ進むことはできませんかって戦う前から問うと鼻で笑われる。だってなぁ、主義主張の違う肉とか食らって満ちる腹があるのか謎なんだよな。どう思うか聞いたらアイツは黒い駒を掲げたまま、 「脂を愛したらいいよ」 と盤上に視線を戻した。古びた敵の白駒が手脂に濁って光っている。

玄川 @morgenacht

負かさずに前へ進むことはできませんかって戦う前から問うと鼻で笑われる。だってなぁ、主義主張の違う肉とか食らって満ちる腹があるのか謎なんだよな。どう思うか聞いたらアイツは黒い駒を掲げたまま、 「脂を愛したらいいよ」 と盤上に視線を戻した。古びた敵の白駒が手脂に濁って光っている。

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どこが同じなのか分からないねと言われるたび僕は謗られたと思って泣いていた。君は不思議なものを見る目で僕の透明な血が滴るのを眺めていた。痛みの定義が違う生き物は分かり合えるだろうか。僕も君がこの顔を掌で拭いながら、ぼくじゃないね、と安心したように息を吐いた理由が分からないけれど。

玄川 @morgenacht

どこが同じなのか分からないねと言われるたび僕は謗られたと思って泣いていた。君は不思議なものを見る目で僕の透明な血が滴るのを眺めていた。痛みの定義が違う生き物は分かり合えるだろうか。僕も君がこの顔を掌で拭いながら、ぼくじゃないね、と安心したように息を吐いた理由が分からないけれど。

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昼間の空が高く遠くなったからには、夏じゅう光線を迸らせていたあの陽も青に散るしかないだろう、いくばくも此処には届いちゃいないと思うのに、西に傾くにつれ陽の匂いのする温い光がたしかにそこらの空気からふつふつ消えゆく気配がする。光とはすなわち粒子だと忘れていたのを思い出す。

玄川 @morgenacht

昼間の空が高く遠くなったからには、夏じゅう光線を迸らせていたあの陽も青に散るしかないだろう、いくばくも此処には届いちゃいないと思うのに、西に傾くにつれ陽の匂いのする温い光がたしかにそこらの空気からふつふつ消えゆく気配がする。光とはすなわち粒子だと忘れていたのを思い出す。

玄川 @morgenacht

他人が何かを永劫諦めてしまう前に、自分が差し伸べられる手がなんとか間に合ったとして、それがほんとうは諦めるべきものだったと分かったら今度こそ何も差し出せないのに、それでも他人のために祈らずにいられないのは結局、自分をすくう機会を逃したくなかっただけではないか（骨の軋む音がする）。

玄川 @morgenacht

他人が何かを永劫諦めてしまう前に、自分が差し伸べられる手がなんとか間に合ったとして、それがほんとうは諦めるべきものだったと分かったら今度こそ何も差し出せないのに、それでも他人のために祈らずにいられないのは結局、自分をすくう機会を逃したくなかっただけではないか（骨の軋む音がする）。

玄川 @morgenacht

お前がとっくにそこに居なければいいのにと思う。これだけ頼りにしておいて返せるものがひとつもない。ただ光だけ遺して身体はとっくに真っ白な灰になっていたら安心して縋れる。どんなに手繰っても指が乾くばかりの古書みたいに言葉だけ在ればいい。そしたらお前をすくえなくとも屹と寂しくはない。

玄川 @morgenacht

お前がとっくにそこに居なければいいのにと思う。これだけ頼りにしておいて返せるものがひとつもない。ただ光だけ遺して身体はとっくに真っ白な灰になっていたら安心して縋れる。どんなに手繰っても指が乾くばかりの古書みたいに言葉だけ在ればいい。そしたらお前をすくえなくとも屹と寂しくはない。

玄川 @morgenacht

そんな回りくどい呼び方をするのはお互いに腹の探り合いをする羽目になって（探りたいなら別だけど）時間の無駄だから、いいかげん初手でおれの名前を呼ぶことを覚えてほしい。一周回ってお前なりの愛称のつもりだったら申し訳ないけれど、こっちも一生お前の名前をすんなり呼べなくて困ってしまう。

玄川 @morgenacht

そんな回りくどい呼び方をするのはお互いに腹の探り合いをする羽目になって（探りたいなら別だけど）時間の無駄だから、いいかげん初手でおれの名前を呼ぶことを覚えてほしい。一周回ってお前なりの愛称のつもりだったら申し訳ないけれど、こっちも一生お前の名前をすんなり呼べなくて困ってしまう。

玄川 @morgenacht

どこまで聞いたか話したか、迷わぬための目印に過ぎないはずのひとひらから時々、物語の立ち上ることがある。今はなきあの店の品揃え、土産にくれた友人の静かな声、最初に挟まっていた段落の真新しいインクの匂い。それが物語られるのを終えたらようやくこちらの番。さてどこまで聞いたか話したか。

玄川 @morgenacht

どこまで聞いたか話したか、迷わぬための目印に過ぎないはずのひとひらから時々、物語の立ち上ることがある。今はなきあの店の品揃え、土産にくれた友人の静かな声、最初に挟まっていた段落の真新しいインクの匂い。それが物語られるのを終えたらようやくこちらの番。さてどこまで聞いたか話したか。

玄川 @morgenacht

痛みの擬態語にしては鋭さが足りないと誰かは言うだろう。血の流れることだけが痛みだと思っているなら黙ってろ。これは可愛そうなものを見下す柔らかな眼と、壊す責を疎む杜撰な指先で、気まぐれにかわいいかわいいと撫でさすられるありさまだ。毎日真綿で絞め上げられて腐り落ちてく尊厳の形容だ。

玄川 @morgenacht

痛みの擬態語にしては鋭さが足りないと誰かは言うだろう。血の流れることだけが痛みだと思っているなら黙ってろ。これは可愛そうなものを見下す柔らかな眼と、壊す責を疎む杜撰な指先で、気まぐれにかわいいかわいいと撫でさすられるありさまだ。毎日真綿で絞め上げられて腐り落ちてく尊厳の形容だ。

玄川 @morgenacht

空っぽのままでいる。あこがるこころを引きずり出されて空っぽのまま此処にいる。憧れるまま彷徨って世界に焦がれるはずだったこころは腕の中から旅立つ前に殺されて、あとには見るべき夢も抱ける期待も分からない自尊心だけが残された。羞恥に養われ肥え太りながら己が身で空っぽを広げ続けている。

玄川 @morgenacht

空っぽのままでいる。あこがるこころを引きずり出されて空っぽのまま此処にいる。憧れるまま彷徨って世界に焦がれるはずだったこころは腕の中から旅立つ前に殺されて、あとには見るべき夢も抱ける期待も分からない自尊心だけが残された。羞恥に養われ肥え太りながら己が身で空っぽを広げ続けている。

玄川 @morgenacht

えいえんのものなどない、と私に最初に教えたのは金の歯の隙間から継ぎ目ひとつない歌をうたう布張りの箱でございました。私がどんなに繰り返しめいっぱい螺子を巻いても、歌は必ずいつか途切れ途切れになり、醜い残響をひとつ遺して息絶えるのです。 死骸に無体を働いた最初の記憶です。

玄川 @morgenacht

えいえんのものなどない、と私に最初に教えたのは金の歯の隙間から継ぎ目ひとつない歌をうたう布張りの箱でございました。私がどんなに繰り返しめいっぱい螺子を巻いても、歌は必ずいつか途切れ途切れになり、醜い残響をひとつ遺して息絶えるのです。 死骸に無体を働いた最初の記憶です。

玄川 @morgenacht

どうせあなたにはわかるまい、と泣き濡れて曇り果てたまなこを恨めしげに吊り上げて血を吐くようになじられてはなんにも言えないのだ。どれだけ言葉を砕こうとこちらの情はその眼にただしく返らない。分かろうとされるのはもはや痛みだった。そうだね分からないよ、と正直に言うしかない。光を返せ。

玄川 @morgenacht

どうせあなたにはわかるまい、と泣き濡れて曇り果てたまなこを恨めしげに吊り上げて血を吐くようになじられてはなんにも言えないのだ。どれだけ言葉を砕こうとこちらの情はその眼にただしく返らない。分かろうとされるのはもはや痛みだった。そうだね分からないよ、と正直に言うしかない。光を返せ。

玄川 @morgenacht

そう見えるだけと分かっていても、そう見えるなら何も見えないよりよほど理由になるはずだ。どうせこっちとそっちの見える世界は完璧に重ならない。だったらいっとううつくしく見えるものに心を捧げたい。 　だいたいお前だって、そう見えるだけと気付くほどにはこっちのことを見てるじゃないか。

玄川 @morgenacht

そう見えるだけと分かっていても、そう見えるなら何も見えないよりよほど理由になるはずだ。どうせこっちとそっちの見える世界は完璧に重ならない。だったらいっとううつくしく見えるものに心を捧げたい。 　だいたいお前だって、そう見えるだけと気付くほどにはこっちのことを見てるじゃないか。

玄川 @morgenacht

瞼の裏にある夢がいつまでも恐ろしくてならない。意識を手放すのに失敗して、目を閉じたまま血の通う暗がりをしばし眺めているときの言いようのない不安は何なのだろう。このあと何を見ようと見まいと私はずっとここから動けなくて、きっといつか来るおしまいの時までそうなのに。

玄川 @morgenacht

瞼の裏にある夢がいつまでも恐ろしくてならない。意識を手放すのに失敗して、目を閉じたまま血の通う暗がりをしばし眺めているときの言いようのない不安は何なのだろう。このあと何を見ようと見まいと私はずっとここから動けなくて、きっといつか来るおしまいの時までそうなのに。

玄川 @morgenacht

言外に含まれた意味に気を取られて瞳の色を褒めるのを忘れるのはいちばんやらかしちゃいけないことだ。酩酊を誘う水面よりそれを選んだ眼差しのほうが雄弁で甘やかに決まっている。せいぜい美味そうに飲み干すことだ。青い魂を振るって朱を差せ。じわりと滲む頬をさすって、まだ早いだろ、と笑え。

玄川 @morgenacht

言外に含まれた意味に気を取られて瞳の色を褒めるのを忘れるのはいちばんやらかしちゃいけないことだ。酩酊を誘う水面よりそれを選んだ眼差しのほうが雄弁で甘やかに決まっている。せいぜい美味そうに飲み干すことだ。青い魂を振るって朱を差せ。じわりと滲む頬をさすって、まだ早いだろ、と笑え。

玄川 @morgenacht

信じる、という言葉の伝え方が分からない。種族としての傲慢が選ぶ邪智暴虐は認められないけれど、たったひとりのいきものとして孤独に誠実であるならば、そのために為す悪辣を仕方なく思うだろう。決して私にとって良いことではなく、おまえに私は分からなくとも。そういう星の下に生まれた。

玄川 @morgenacht

信じる、という言葉の伝え方が分からない。種族としての傲慢が選ぶ邪智暴虐は認められないけれど、たったひとりのいきものとして孤独に誠実であるならば、そのために為す悪辣を仕方なく思うだろう。決して私にとって良いことではなく、おまえに私は分からなくとも。そういう星の下に生まれた。

玄川 @morgenacht

もし何も見つからなかったらどれだけ引き返す羽目になるんだろうか、と後ろを気にしながら歩くほどつまらない道行きはない。行き止まりを間違いだと罵るあれらの声は、おまえがいざ何か見つけたときには傍にいてくれやしないのだ。前だけ見て往けばいい。どうせ最後ははじまりの自分に辿り着くだろう。

玄川 @morgenacht

もし何も見つからなかったらどれだけ引き返す羽目になるんだろうか、と後ろを気にしながら歩くほどつまらない道行きはない。行き止まりを間違いだと罵るあれらの声は、おまえがいざ何か見つけたときには傍にいてくれやしないのだ。前だけ見て往けばいい。どうせ最後ははじまりの自分に辿り着くだろう。

玄川 @morgenacht

知らないということは疎ましい。これまでの人生を一度も掠めなかった茫洋たる不明の輪郭を探るには、まずこれまでの自分の生きざまが曖昧模糊として脆弱であるのを認めなければならないから。自分の尺度を持たない人間には何も測れない。名前さえ知っていれば救えただろう情も想い出も置き去りにする。

玄川 @morgenacht

知らないということは疎ましい。これまでの人生を一度も掠めなかった茫洋たる不明の輪郭を探るには、まずこれまでの自分の生きざまが曖昧模糊として脆弱であるのを認めなければならないから。自分の尺度を持たない人間には何も測れない。名前さえ知っていれば救えただろう情も想い出も置き去りにする。

玄川 @morgenacht

過去はいつも眼につくところにある。現在の私が諸手を挙げて未来を望むたびお前には無理だと嘲笑う。目障りだから毟ってしまうのだけど上手くできなくてずっと疼痛を訴えるのには本当に閉口する。べつに忘れたわけじゃないよと宣えば、でも許せないだろ、と母親の血の色で啜り泣くのを繰り返している。

玄川 @morgenacht

過去はいつも眼につくところにある。現在の私が諸手を挙げて未来を望むたびお前には無理だと嘲笑う。目障りだから毟ってしまうのだけど上手くできなくてずっと疼痛を訴えるのには本当に閉口する。べつに忘れたわけじゃないよと宣えば、でも許せないだろ、と母親の血の色で啜り泣くのを繰り返している。

玄川 @morgenacht

「美術館のいちばん目立つ壁に金色で掛けられるのと客間の机の上に白で飾られるのはどちらがいい」木漏れ日に眼を細めてそんなことを言うので、両手の二本指を合わせて四角形を作って、このなかが良いですと答えた。「貴方もずっとここにいます」青い指が無くとも思い出します。私のヴンダーカンマー。

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「美術館のいちばん目立つ壁に金色で掛けられるのと客間の机の上に白で飾られるのはどちらがいい」木漏れ日に眼を細めてそんなことを言うので、両手の二本指を合わせて四角形を作って、このなかが良いですと答えた。「貴方もずっとここにいます」青い指が無くとも思い出します。私のヴンダーカンマー。

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路はなく、果てはなく、終わりは定まらず始まりは忘れ去られ、意志もなければ祈りもないので同じところを廻り続けている。眼差す恋も労る愛も、報いも呪いも怒りも嘆きも注がれず、託された過去も捧ぐ未来も現在の茫洋に飲み込まれて無意味に通り過ぎる夜半に呻いてる。 　気付きたくなかった。

玄川 @morgenacht

路はなく、果てはなく、終わりは定まらず始まりは忘れ去られ、意志もなければ祈りもないので同じところを廻り続けている。眼差す恋も労る愛も、報いも呪いも怒りも嘆きも注がれず、託された過去も捧ぐ未来も現在の茫洋に飲み込まれて無意味に通り過ぎる夜半に呻いてる。 　気付きたくなかった。

玄川 @morgenacht

殺すために愛してくれ。おまえに出会うまで繰り返してきた長い旅路は全くおまえのためではないけれど、おれを殺してくれるというならお詫びにおまえをおれの物語に入れてやろう。おまえのための歳月だったと、呪いだったと嘯いて、波の音に甘い夢を見られるようにしてやるから。まずは名を名乗れ。

玄川 @morgenacht

殺すために愛してくれ。おまえに出会うまで繰り返してきた長い旅路は全くおまえのためではないけれど、おれを殺してくれるというならお詫びにおまえをおれの物語に入れてやろう。おまえのための歳月だったと、呪いだったと嘯いて、波の音に甘い夢を見られるようにしてやるから。まずは名を名乗れ。

玄川 @morgenacht

申し訳ないけど四六時中魂を預けることはできない。結局自分がいちばん大事だしいつもお前が二番目に大事とも誓えない。割ける時間とて人生のうちのほんの一部だと思う。いちおうお前にしかあげたくないものだけ贈るから諦めて全部飲んでくれ。骨が朽ち声を忘れてもその水面に、お前は俺を見るだろう。

玄川 @morgenacht

申し訳ないけど四六時中魂を預けることはできない。結局自分がいちばん大事だしいつもお前が二番目に大事とも誓えない。割ける時間とて人生のうちのほんの一部だと思う。いちおうお前にしかあげたくないものだけ贈るから諦めて全部飲んでくれ。骨が朽ち声を忘れてもその水面に、お前は俺を見るだろう。

玄川 @morgenacht

あなたに変えられる人生なら良かった。あなたのことぜんぶが大好きであなたのおかげで救われてあなたがいなければ眠れなかった夜がいくつもあるのに、あなたのせいで選んだ道は思い返せばひとつもない。祈りで編んだ装いは襤褸になった。あなたのおかげで冬も旅も越えられるいのちになりたかったのに。

玄川 @morgenacht

あなたに変えられる人生なら良かった。あなたのことぜんぶが大好きであなたのおかげで救われてあなたがいなければ眠れなかった夜がいくつもあるのに、あなたのせいで選んだ道は思い返せばひとつもない。祈りで編んだ装いは襤褸になった。あなたのおかげで冬も旅も越えられるいのちになりたかったのに。

玄川 @morgenacht

まばらな愛着を振りかざして愛の高尚さを謡う人間の、寒いときばかり他人を思い出す厚かましさを僕は生涯疎み続けるのだろう。愛に肥やされる人生から芽吹くのは他人の自尊心で、愛に溶かされた心臓が春に鼓動を思い出すとき隣人はとっくに知らない蝶を追いかけているものだ。腐らない魂は何処にある。

玄川 @morgenacht

まばらな愛着を振りかざして愛の高尚さを謡う人間の、寒いときばかり他人を思い出す厚かましさを僕は生涯疎み続けるのだろう。愛に肥やされる人生から芽吹くのは他人の自尊心で、愛に溶かされた心臓が春に鼓動を思い出すとき隣人はとっくに知らない蝶を追いかけているものだ。腐らない魂は何処にある。

玄川 @morgenacht

起きているあいだに夢を見るってどういう感覚なんだと聞かれた。夜に見るのとそう変わらないよ、と返せばむくれた顔で、夜は寝てるから現実を感じちゃいないだろと言う。夢と現実なんて正反対のもの同時に浴びられっこないと頭を抱える横顔に、だからお前とは相容れないんだよと苦い現実を思った。

玄川 @morgenacht

世界は今日も美しいけれど、諦め方を覚えたので此処に居る。新しい水を知らずとも潤わないだけで干からびるわけじゃない。老いれば乾くのは当然だ。億劫な道程を諦めたって終わりは平穏に訪れる。 それでも行くならその道を、どうか孤独と呼ばないで。君は何処にだって行ける。僕を忘れさえすれば。

玄川 @morgenacht

世界は今日も美しいけれど、諦め方を覚えたので此処に居る。新しい水を知らずとも潤わないだけで干からびるわけじゃない。老いれば乾くのは当然だ。億劫な道程を諦めたって終わりは平穏に訪れる。 それでも行くならその道を、どうか孤独と呼ばないで。君は何処にだって行ける。僕を忘れさえすれば。