サイパン脱出第4611船団の航跡
0
天翔 @Tensyofleet

1931(昭和11)年6月19日、播磨造船所で1隻の船が進水した。船の名は濱江(ひんこう)丸、鉱石運搬を主眼とした大連汽船所属の貨物船で、第2次船舶改善助成施設の対象船でもあった。 pic.twitter.com/7r05B7Us2S

2017-11-25 13:04:24
拡大
天翔 @Tensyofleet

この補助金は、船の長さの平方根の1.3倍以上の速力が必要であり、垂線間長120.4mの同船は、√120×1.3=14.24...ノット以上の速力が必要になる。主缶は円缶3基、主機は3連成蒸気レシプロ1基で最大出力4,250軸馬力、最大速力16ノットを達成しているが、これは恐らく軽荷時の数値だろう。 pic.twitter.com/iGAdwL9rKg

2017-11-25 13:11:26
拡大
天翔 @Tensyofleet

本船のタイプシップは、同年3月に三菱長崎で進水した龍江丸である。次いで同型3隻が播磨造船で、1隻が大阪鉄工所で建造されており、船主は同じく大連汽船である。各船にはデリックポストなど若干の艤装の差異があり、比べてみると面白い。写真は龍江丸。 pic.twitter.com/EbaS8ipQtd

2017-11-25 13:22:40
拡大
天翔 @Tensyofleet

見えないところだと、播磨が戦前蒸気タービンの自社製造能力を持たない為か、同型6隻のうち濱江丸のみ主機が蒸気レシプロで、他は蒸気タービンを搭載している。AWMより、カビエンで空襲を受ける三江丸(5,462総トン,大連汽船)、大阪鉄工所建造。awm.gov.au/collection/127… pic.twitter.com/1GNqnZizf8

2017-11-25 13:31:45
拡大
天翔 @Tensyofleet

ちなみに、これの後ろの方に写っているのが三江丸です。あまり気づかれてませんけれども。 twitter.com/Tensyofleet/st…

2017-11-25 13:37:30
天翔 @Tensyofleet

AWMより、カビエンでB25の反跳爆撃を受ける駆潜艇第39号。この次の爆弾が外れた瞬間と、しばらく後の座礁後とされる写真は見たことがある。もっときれいな写真もあるけれど、ミソは後方に写っている"TAISYO MARU"の書き込み。 awm.gov.au/collection/043… pic.twitter.com/5WdD9vyaYo

2016-12-29 20:11:00
天翔 @Tensyofleet

AWMより、西江(せいこう)丸と三江(さんこう)丸。いずれも濱江丸と同型の播磨建造・大連汽船所有船で、主機が蒸気レシプロから蒸気タービンに変更された他、デリックが強化された点などが異なる。 awm.gov.au/collection/C25… awm.gov.au/collection/C24… pic.twitter.com/oa1hqZ82hF

2017-12-02 13:45:13
拡大
拡大
天翔 @Tensyofleet

いずれもタンカーと間違われている上に、三江丸は「みつえまる」になっているのはご愛敬だろう。後に本船型は戦標1TM型の原型となるので、あながち外れてもいないと言える。米海軍の識別帳には正しく記載されている。 archive.hnsa.org/doc/id/oni208j… pic.twitter.com/ZjdZlhVKKy

2017-12-02 13:49:58
拡大
天翔 @Tensyofleet

同型でただ1隻三連成蒸気レシプロであった濱江丸も、通常とは少し異なる排気タービン付のものを搭載している(下から4行目右端あたり)。本船を蒸気タービン搭載船とする書籍もあるが、筆が滑ったのだろう。 dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid… pic.twitter.com/494x6jDop3

2017-12-02 13:58:10
拡大
天翔 @Tensyofleet

このバウエル・バッハ式排汽タービンは、レシプロ蒸気機関の排気エネルギー回収に小型の蒸気タービンを用い、フルカン継手と減速ギヤを介して推進軸に動力を伝達するもの。既存機関に後付けも可能であり、燃費が2割ほど改善した記録も残っている。 dlisv03.media.osaka-cu.ac.jp/il/meta_pub/de… pic.twitter.com/crZw8Tb62G

2017-12-02 14:12:38
拡大
天翔 @Tensyofleet

1944(昭和19)年5月25日、サイパン島に第3515船団が安着した。5月19日の東松8号船団に続き船団に被害はなかったものの、マリアナ方面はすでに戦雲が暗く立ち込めていた。この船団に加わっていた輸送船のうちの一隻が、濱江丸(5,418総トン,大連汽船)であった。 pic.twitter.com/453Ler9qzO

2018-01-01 15:58:41
拡大
天翔 @Tensyofleet

同船は開戦以来民需輸送に従事していたが、この年の4月に海軍の徴用を受けた後初めての航海であった。新造公試では16ノット程度の快速を発揮した濱江丸も、これまでの酷使が祟ってボイラーの漏洩著しく、ようやく発揮できる速力6ノットという有様だったようだ。

2018-01-01 15:59:26
天翔 @Tensyofleet

濱江丸は疲弊した機関に鞭打って28日にグアムに移動、そこで翌29日にB24 4機の空襲を受けて搭載機銃で対空戦闘を行っている。ここでは特に被害はなかったらしく、6月9日にグアムを発ってサイパンに戻ってきたのは10日であった。 jacar.archives.go.jp/das/image/C080…(18/48)

2018-01-01 16:00:58
天翔 @Tensyofleet

それと時を同じくして、サイパンに敵機動部隊接近の報がもたらされていた。10日の午前中には南雲司令長官(中部太平洋方面艦隊)列席の下船団の護衛打ち合わせが行われ、11日早朝から空襲が予想されるので在港中の輸送船は船団を編成し未明に出港せよ、との命令が伝えられた。

2018-01-01 16:08:34
天翔 @Tensyofleet

1944(昭和19)年6月11日0430、12隻の輸送船と9隻の護衛艦艇からなる第4611船団はサイパン島を出港した。本船団関係者の回想は複数残っているが、船団の編成は2列説と3列説がある。記憶違いか途中で組み替えたか、あるいは護衛艦艇を含めて勘定したものか、いずれとも定かでない。

2018-01-01 16:13:40
天翔 @Tensyofleet

濱江丸航海士の回想に基づくと、「第2列の4番殿り船」「他船に遅れがちな状態」であったようだ。出港後しばらくは軍用機(機種不明)1機が護衛についたらしく、その爆音とサイパン島で陣地構築を行うダイナマイトの発破音に送られての出発であった。

2018-01-01 16:16:33
天翔 @Tensyofleet

第4611船団 【海軍徴用船】 濱江丸(5,418総トン,大連汽船) ばたびや丸(4,392総トン,大阪商船) 天龍川丸(3,883総トン,東洋海運) 門司丸(3,836総トン,日本郵船) 射水丸(2,924総トン,日本海汽船/平時C) 麗海丸(2,812総トン,東亜海運/戦標1C) 稲荷丸(2,759総トン,広南汽船/平時C)写真 pic.twitter.com/C5uqG27dp3

2018-01-01 16:20:01
拡大
天翔 @Tensyofleet

神島丸(2,245総トン,栗林商船) 日鳥丸(1,942総トン,日産汽船/戦標1D) 龍田川丸(1,923総トン,東洋海運/平時D)写真 正生丸(998総トン,尼崎汽船) 間宮丸(397総トン,日本水産/トロール船) 【陸軍徴用船】 富國丸(2,851総トン,松岡汽船) pic.twitter.com/KbugefSjAQ

2018-01-01 16:20:54
拡大
天翔 @Tensyofleet

【護衛艦艇】 水雷艇鴻 駆潜艇第33号、50号、51号 掃海特務艇第6号 駆潜特務艇第20号、第51号 特設駆潜艇第8拓南丸(343総トン,日本水産/捕鯨船) 特設捕獲網艇國光丸(716総トン,三光汽船) (途中加入)海防艦第4号

2018-01-01 16:25:24
天翔 @Tensyofleet

4611船団はサイパン出港後、一旦北微東の進路を取ってマリアナ列島の東側に出て北上した後、護衛の旗艦鴻の指示により進路を西に変更し、列島の西側に出る針路を取った。この日は何事もなく、日本本土に向けて船脚を進めている。

2018-01-27 17:08:04
天翔 @Tensyofleet

明けて6月12日0400~30頃、船団上空に日の出前の暗夜に敵味方不明の飛行機の爆音が轟き、数秒間の機銃掃射らしき曳光弾が確認されている。この日の天候は曇、無風でうねりもない平穏な海面を、船団は之字運動を行いながら航行していた。

2018-01-27 17:12:19
天翔 @Tensyofleet

0845、船団に第四号海防艦が合流した。同艦は船団に先立つ11日0000にサイパンを父島に向けて単独で出港し、同0430に4611船団に合流せよとの命を受けて反転してきたものである。船団に12cm高角砲2門、25mm機銃12門、13mm機銃8門の対空火力が加わったことになる。(写真:第4or12海防艦,第4804船団) pic.twitter.com/PbETTrddAC

2018-01-27 17:18:52
拡大
天翔 @Tensyofleet

旗艦鴻より、船団の右45度300mに占位せよ、との信号を受けた第四号海防艦が定位するやいなや、同艦の見張員が「飛行機30機左60度」を告げる。艦長は直ちに「総員配置につけ」を令し、これを確認した船団各船も慌ただしく戦闘配置につく。

2018-01-27 17:24:04
天翔 @Tensyofleet

この時船団は4隻の3列縦隊、回想から判明する配置は中央列3隻目と4隻目が稲荷丸と濱江丸、左列のどこかに天竜川丸とその外側に第50駆潜艇、鴻は船団の左側というものであったらしい。もっとも、この空襲で船団はたちまち分散してしまうことになる。(写真:天竜川丸) pic.twitter.com/zix3JodEZg

2018-01-27 17:31:04
拡大
天翔 @Tensyofleet

旗艦鴻は「戦闘配置につけ」「分散隊形作れ」の旗流信号を揚げ、第50号駆潜艇は対空戦闘配置につくと共に搭載していた爆雷8個程度を海中投棄した。50号は1か月ほど前に対空電探を搭載しているが、敵編隊を発見したのは見張員の8cm双眼鏡だったようだ。

2018-01-27 23:12:28
天翔 @Tensyofleet

まもなく始まった一連の空襲で、対空戦闘を行う船団各船は周囲を顧みる余裕すら皆無であったらしく、その経過はよく分からない。鴻が早い段階で直撃弾を受け、水柱の中に消えたことだけが分かっている。この空襲は1時間ほど続いたようだ。 (写真:間宮丸(同型船北見丸))dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid… pic.twitter.com/lzLSQlPje9

2018-01-27 23:21:22
拡大
天翔 @Tensyofleet

稲荷丸甲板員によれば、空襲後に船団を組み直した時には商船8護衛艦5に減っていた、となっているが、護衛艦艇10のうち最終的に沈没したのは鴻と駆特第51号、國光丸の3隻なので、数え間違いか一時的に行方不明になったのがいたかしたらしい。(写真:國光丸(同型船東光丸))history.navy.mil/our-collection… pic.twitter.com/AEXxorwiNg

2018-01-27 23:31:51
拡大
天翔 @Tensyofleet

第4号海防艦が船団の指揮を引き継いで集結の信号を掲げたものの、艦長によれば船位はバラバラで4~5海里の範囲に散らばっているようなありさまだったという。4611船団に対する空襲は1457第二波28機、1620第三波30機と続いたらしく、船団は再び四分五裂になる。

2018-01-27 23:39:08
天翔 @Tensyofleet

それぞれの回想によれば、第4号海防艦は第二波の後視界には輸送船2隻を認めるのみとなり、「全速力で我に続け」の信号を発して沖縄に針路を取った。その後1600頃スコールに突入したらしく、第三波を受けているかどうか分からない。このスコールで後続の輸送船も行方不明になっている。

2018-01-27 23:52:47
天翔 @Tensyofleet

空襲第二波の際に、第50駆潜艇長が高等商船同期が船長を務める天龍川丸の被爆炎上を目撃しており、また、稲荷丸が日没前後に中央部から火災を生じている輸送船に接近して数名を救助してるが、回想に船名の言及はない。(写真:射水丸) pic.twitter.com/7KOjVqxz0a

2018-01-28 00:01:48
拡大
天翔 @Tensyofleet

この空襲下、濱江丸は4基の25mm機銃で対空戦闘を続けていたが、ついに爆弾一発が後部に命中する(時間不明)。機関は停止、舵機も破壊されたため操船不能となって漂流をはじめた濱江丸だが、後部から噴き上げる黒煙と炎のためか、以後機銃掃射を受けるのみで再び被弾することはなかった。

2018-01-28 00:13:01
天翔 @Tensyofleet

一連の空襲が終わって夕日がうねりの出はじめた海面を染める頃、辛うじて水上に姿を留めることが出来ていたのは、濱江丸、門司丸、稲荷丸、龍田川丸、富國丸の5輸送船と護衛の7艦艇であった。(写真:正生丸) pic.twitter.com/EvGRUXvHUI

2018-01-28 00:11:27
拡大