2018年度に執筆した140字小説まとめ
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千月薫子 @Thousands_Moon4

産まれたばかりの生き物は言葉が見える、そして食べられる。赤ちゃんが時々ぱくぱくしたり、掴んだりしてるのはそのせい。意味は理解できないけど、汚い言葉も綺麗な言葉も見て聞いて、口に入れて育つ。そして言葉をどんどん覚えていく。あなたが初めて食べた言葉はどんな味だったのかな。#140字小説

2018-02-14 00:36:20
千月薫子 @Thousands_Moon4

昔、口にすることを恐れた言葉。紙や書く道具がなくて表せなかった言葉。そもそも存在を知らない言葉。言葉は貴重だった。でも、今やなんでも知ることが出来る。書く道具なんて溢れてる。言葉はだれでも指先で打ち込めるものになった。これを書く私でさえ、青白い光に照らされている。#140字小説

2018-02-20 00:52:30
千月薫子 @Thousands_Moon4

図書館にいると落ち着く。日本文学の本棚を隅から隅まで見渡して、幸せなため息をついた。ふと、返却カウンターを見ると、返却の本なのか、一生懸命パラパラとめくる男性。何かを見つけたみたい。それは図書館の返却期限が書かれた栞。全然知らない人なのに、何故かいい人だなと思った。#140字小説

2018-02-21 00:54:29
千月薫子 @Thousands_Moon4

白い部屋の中、白い本棚に白い本が整然と並べられている。ひとつ指に引っ掛けて取り出し、中身をめくる。見ると真っ白。何も書かれていない。あれもそれもこれも。唯一黄色い背表紙の本を奥に見つけた。開いてみると、お母さんと一緒に仲良く笑う赤ちゃんの写真。あぁ、これだけ残ってた。#140字小説

2018-02-22 01:34:04
千月薫子 @Thousands_Moon4

ちょっと普通とは違う栞を作ってみませんか?此処は「栞専門店」。どこまで読んだか忘れないように本に挟む栞。このお店ではあなたが忘れたくないことを栞に致します。思い出、場所のメモ、暗証番号など。大丈夫、外見からは分かりません。本人にしかわからない仕様でございます。#140字小説

2018-02-23 00:09:51
千月薫子 @Thousands_Moon4

僕は字も絵も運動も全部が下手くそ。幸いに慰めてくれる子は多かった。そんな中には無邪気に聞いてくる子もいた。「なんでそんなに下手なの?」微笑んで僕は曖昧な答えを返す。いいじゃない。いろんな子がいるから。きっと僕もゆっくり何かが得意になるだろう。席につくと本を開いた。#140字小説

2018-02-23 22:13:25
千月薫子 @Thousands_Moon4

漫画を買った。ビニールの包装が解かれたばかりで真っ平らな表紙。楽しみにしていたせいだろう。待つ時間は無限に感じた。だが、私にはこれからちょっとした用事がある。早く済ませてこよう。机の上にそれを置いて出かけた。帰ってきて漫画を見ると表紙が読んだあとのように浮いていた。#140字小説

2018-02-24 23:58:05
千月薫子 @Thousands_Moon4

人の多いデパートで、ちらほらと早めの桜が咲き始める。外は寒いけど、暖房のきいた屋内はさぞ咲くのによい環境だろう。桜の香水と銘打つ可愛らしいボトルを手に取ってみる。少しきつめの甘い香りが鼻に舞い込む。はて、桜の香りってこんなだったかな。今年咲く、満開の花に思いを馳せた。#140字小説

2018-02-26 23:33:15
千月薫子 @Thousands_Moon4

また拾ってる。あの人はよく、卵を拾ってくる。それは鳥だったり、トカゲだったり、ドラゴンだったり……。優しく包んで孵し、ぎこちないながらも丁寧にお世話している。はたから見れば生き物の世話などするようにはみえない。でも彼は仕事をするときとおなじ無表情な顔で世話をした。#140字小説

2018-02-25 18:17:45
千月薫子 @Thousands_Moon4

接客業は大変、なんてよく聞く話でしょう。客なんだから当たり前、店員だから当たり前と言いますか。ならひとつ小話をしましょう。おかたづけにもじかんがかかるというのはわかりますね。ラストオーダーが21:20のお店があります。21:10にお客様が来ました。さぁあなたはどうしますか?#140字小説

2018-02-28 00:42:52
千月薫子 @Thousands_Moon4

書きたいから書く。物書きは面倒なイキモノ。書いた作品に一喜一憂。周りの人の作品に勝手に絶望し、勝手に死にたくなり、勝手に引きこもる。その癖身近な人にちょっと褒められてすごく嬉しくなる。言葉に意味は無いと昔の人は言った。ならばそれに振り回される私は相当な馬鹿なのだろう。#140字小説

2018-02-28 20:34:46
千月薫子 @Thousands_Moon4

そっと本を閉じた。同人誌なんてと初めにハズレを引いてから軽視していたが、どうやら自分の運がなかっただけらしい。読了後の内容を反芻する脳内、目と頭の冴え具合。出る言葉は一言に尽きた。『すごい』私は単純だ。すぐにでも張り合えるような作品を書きたくなる。さぁ筆をとろうか。#140字小説

2018-03-02 01:34:53
千月薫子 @Thousands_Moon4

桜は蕾のまま。快晴の日差しをめいっぱい反射する位置の悪い窓。コンクリ固めの校舎、地下二階にある図書室。雨を通す廊下。聞いてれば不自由しかない。そんな都会の片隅にある校舎の正門。そこには人生最後となるだろう制服に身を包んで、ここから旅立たんとするわこうどの姿があった。#140字小説

2018-03-03 00:57:13
千月薫子 @Thousands_Moon4

枯葉舞う音が聞こえる。同じような音を聞いた覚えがあった。あの、雨の音を出す楽器だ。名前は覚えてない。冬の終わりを惜しむような、乾いた音だった。17時、日が傾きかけたオレンジの濃い光に目を細めた。暖かい季節が近づいている。でも花粉は嫌だなぁ。まだ寒い風に背中を丸めた。#140字小説

2018-03-03 21:49:23
千月薫子 @Thousands_Moon4

百均で原稿用紙を買って、鉛筆も気取ってはさみで削ってみた。机も図書館から借りてきた資料でわざと散らかしたように広げた。陽の光のみで文字を書く。今日、パソコンは引き出しの中でおやすみ。前見た誰かの書斎のように形を作る。内容は伴わないかもしれない。私は書くことに恋をした。#140字小説

2018-03-05 00:40:17
千月薫子 @Thousands_Moon4

どうせ降らないだろうと思った時に限って……目の前で降る雨粒ひとつひとつを睨みつけた。ガールズバーの女性が防寒着に傘をさし客呼びをしている。刺さる視線を気にしないように雨の中を歩き出した。雨音さえ聞きたくない。夕陽色のイヤホンを耳に痛いほど差し込んだ。聞く曲は「快晴」。#140字小説

2018-03-05 23:22:49
千月薫子 @Thousands_Moon4

もし空が飛べたら、恋人ができたら。こんな世界があったら……。小さいものから大きなものへ妄想や願望は膨らんでいく。言葉で表現せずに自分の中で、まるで成長期の赤ん坊のように、時には気分を左右するほどに大きくなった。でも小説は書けないよ。なぜなら私は書くことに恋をしたから。#140字小説

2018-03-07 03:15:55
千月薫子 @Thousands_Moon4

僕は夜の月に映える桜を見ながら盃を傾けた。まんまるの月が、地上を照らす。お昼に花見客がいっぱいだった野原は今や僕と同じ鬼の花見宴会と化している。みんなと鍋をつつきながら上機嫌で笑い合う。ヒトと違う僕達でもお花見くらいは許してよね。鍋奉行をよそに僕は箸で臓物をつまんだ。#140字小説

2018-03-07 22:16:55
千月薫子 @Thousands_Moon4

インクが見えるプラスチックのボディ。紙を滑るように綴るペン先。シャーペンや鉛筆とは違って1度書けば消せない筆記具。子どもの頃は胸ポケットにペンをさして手帳を開く大人がかっこよく見えたっけ。壁や机につけないで、どうやって字がかけるのか。未だに不思議な大人いっぽ手前の春。#140字小説

2018-03-08 23:24:36
千月薫子 @Thousands_Moon4

桜咲く咲く。風に薄桃色の色がつく。屋根の上や道路に薄桃色の色がつく。突風が吹いた日にはあなたの髪に薄桃色のアクセントをつけましょう。あぁ、川面は染めないで。なんてったって覆いかぶさるようなその花を映す鏡にするのだから。今から楽しみね。茶色のつぼみが夢を見た。#140字小説

2018-03-09 23:59:33
千月薫子 @Thousands_Moon4

携帯に手が伸びる。ただただつぶやきの流れるSMSを開く。短い間隔で更新を繰り返す。つぶやきが流れなくなってアプリを閉じた。今度は本棚に手が伸びて手前で止まる。活字はやだな。隣の漫画に進路を変更した。机の上には真っ白なノートが置かれ、携帯のメモ帳も文字がひとつもなかった。#140字小説

2018-03-10 22:46:49
千月薫子 @Thousands_Moon4

電波時計を目の前にセットして、イヤホンをつけて準備は万端。当日に大層なプレゼントはできないけど、お世話になった貴女へ感謝を伝える。12時ぴったり、通話ボタンを押した。始めに聞こえてきたのは笑い声。ありがとう、よろしく、大好き、大丈夫、すべてを載せて 「おめでとう!!!」 #140字小説

2018-03-12 00:58:16
千月薫子 @Thousands_Moon4

さぁさ今宵は月夜。わたしの大切な日よ。あの子とこの子の心を覗いてみましょ!あらまぁ、あんなことやこんなこと、物騒ね。少しだけイジッちゃおう!わたしには心が無いって?そうねぇ、この大切な故郷を守るためならって心はそこに置いてきたわよ。さぁさ今宵もあなたの心を覗きましょ。#140字小説 twitter.com/ame_ame_ringo/…

2018-03-13 01:35:30
残16🍎4号館T10a🍬24🌻 @ame_ame_ringo

@Thousands_Moon4 ・カオルコ・センヅキ ・人の心を操れる魔女 ・月が綺麗に輝く夜のみ、千度人の心を操れる ・人情がないとか冷徹だとか言われて人々からは怯えられ避けられている ・しかしわこの国が外から攻撃されない様に彼女が守っている ・露出度の高い黒い服

2018-03-12 21:30:15
千月薫子 @Thousands_Moon4

「わたし、大きくなったらマーキュリーになる!!」幼心にあんな頭のよくて可愛い子になれたらと目を輝かせてお父さんに宣言した。でも、「お前にゃ無理だよ」笑いとともに伝えられた言葉にわたしは、はにかむ。落ち込んだなぁ~。20になる年、私は今、マーキュリーになれてるだろうか。#140字小説

2018-03-14 00:05:17
千月薫子 @Thousands_Moon4

昼間は濁って汚かった川が夜になればその暗い色を写し取る。汚い色も黒になってしまえば鏡のようにほかの色をうつしだす。街灯や、信号機の色、お店のネオン。こんなところに住んでみたいなぁ。出先の橋の上で僕は黒い川を眺めた。微かな磯の香りとともに一人暮らしをする未来を思った。#140字小説

2018-03-15 01:18:08
千月薫子 @Thousands_Moon4

友だちとのおでかけ、先輩とのお別れ食事会とか。ふとした瞬間に何かがすとんと抜け落ちてしまって、楽しさも感謝も消えて面倒という気持ちが棲みつくことがあった。おうちに帰ってみるとそれはいつの間にか消えて、棲みつかせてしまった自分に罪悪感が襲う。あぁ、責めないで、疲れる。#140字小説

2018-03-15 22:59:15
千月薫子 @Thousands_Moon4

胸と背中が妙に緊張する。いつものようにスマホを使っているだけなのに。作った「こ」に名前をつけるのは1番時間がかかる。意味を調べて字面を見て、そっと呟いてみたりした。他の人からしたら馬鹿らしいことかもね。でも私にとっては進路を決めるのと同じ。よし。「文一、君の名前は文一」#140字小説

2018-03-17 00:28:53
千月薫子 @Thousands_Moon4

明るさを1番低くしてるから、真顔で不細工な顔が画面に映り込む。だが、そんなもんに焦点は合わない。その顔の向こう側、次々にうちこまれる言葉を見守った。うっては消しうっては消しなんてやってられない。とりあえずうつ。読める程度の誤字はなおさない。うち続けた先に何かがある。#140字小説

2018-03-18 00:48:31
千月薫子 @Thousands_Moon4

桜のつぼみがはちきれんばかりに膨らんで、枝は重たそうに揺れている。元は川だった大通りには何十本もの桜が通りに向かってお辞儀をしていた。花開くのを心待ちにしているというのに、焦らすように冷たい風がただでさえ重そうな枝を揺さぶる。私はマフラーに顔を埋めた。明日は雨らしい。#140字小説

2018-03-20 00:09:04
千月薫子 @Thousands_Moon4

ブルーライトの矢を目に受けながら文字を綴る。そりゃあ目も悪くなるわけよ。せっかく文房具が沢山あるんだから自分の手で文字を書きたいとは思ってるけど、実は私自身私の字が好きじゃない。フォントに頼った方がもっとうまく行きそうな気がする。嘘。いちいち辞書を引きたくないだけ。#140字小説

2018-03-21 02:05:37
千月薫子 @Thousands_Moon4

白い地に指を滑らせると引っかかることもなく、その触り心地は心をわくわくさせる。数ある道具からクリアなボディをもつものをひとつ、手に取った。白をところどころ黒く染めながら手と擦れるような独特の音を奏でた。木製を使えばもっと音が出るだろう。ボールペンと紙はやはりいい。#140字小説

2018-03-21 23:29:35
千月薫子 @Thousands_Moon4

2本の指で次へ向かう。左端の数字がひとつおきに増えた。キリのいい数字だ、少し視線を外す。指先をこすり合わせると心無しか、かさっとしていた。終わる頃には手が干からびるのかな、なんて。また目が文字を文を段落を追う。待ちきれなくてちょっと先を覗き見するのは悪い癖だね。#140字小説

2018-03-22 22:41:13
千月薫子 @Thousands_Moon4

町中に張り巡らされたラインは避けられない。歯のカチカチが止まらないほどの寒さに震えながらブーツを鳴らせて家路を急ぐ。ふと雫が落ちてきてコートの裾を濡らす。色が変わってしまった。やんだばかりなのに。雫が溜まった所を避ければいいのだ。見上げるとそれは、至る所にあった。#140字小説

2018-03-23 23:50:50
千月薫子 @Thousands_Moon4

少しだけかかとの高い靴をはいてかつかつと鳴らしながら歩く。もちろん姿勢はよく、胸を張って鞄は持ち手の部分を持つ。長い髪をポニーテールに結って、イヤリングをしたら歩く度に揺れる。毛先がうねっているのだけが気に食わないけれどお店の鏡で見たらあまり気にならない。大人の完成。#140字小説

2018-03-25 00:54:32
千月薫子 @Thousands_Moon4

あ、また違ってる。流れるような文章に水を差す文字。君はここにいてはいけない。人差し指ではね出して正しい文字を書き直したくなる。でも私は知ってる。作者がそれだけ真剣に真摯に物語を作ったってこと。いい加減な人にゴジは現れない。口端をそっと上げる。まだまだ、ね。#140字小説

2018-03-26 00:28:10
千月薫子 @Thousands_Moon4

春。新しく始まる季節で何かを決心する季節。そんなみんながみんな前向きになる時はそれと同じくらいの後ろ向きな気持ちだってあるだろう。プラスばかりあるとは限らない。捻くれ者な私は桜を見ながら、舞い散る花びらが地面に落ちる様子を見ながら横断歩道を歩き出した。夜桜は青白い。#140字小説

2018-03-28 00:51:01
千月薫子 @Thousands_Moon4

春が来た、とはよく言ったものね。真っ暗闇の部屋の電気をつけると、ものが多くて桜の花びらのように散らかった床の有様だ。カーテンを開けてみると、月とともに桜の姿が浮かんでいる。遠くで救急車のサイレンが聞こえた。あぁ、どうやら桜と月の狂気が旋律を奏で始めたみたいだ。そうか。#140字小説

2018-03-28 01:03:26
千月薫子 @Thousands_Moon4

あ、見つけた。目に留まったのは一昨年に差別用語と認定された、ある文言だ。ボクは鎌を振り上げるとそれを削った。言葉は消え去り、そこには空白ができる。さぁ次々。空白を埋める係は後でそれを埋めてくれるだろう。ボクは言狩り。親指姫の親戚で、政府の良いように使役されるモノだ。#140字小説

2018-03-28 23:10:18
千月薫子 @Thousands_Moon4

ある一冊の本を開いた。一ページ目にタイトル、二ページ目に目次、三ページ目から本文が始まった。そっと文字を指でなぞる。文字を目で追うけど、なかなか頭に入ってこない。もう一度、一字下がった段落に目を戻す。「何読んでるの?」「内緒だよ」彼女が手にする本のページは白紙だった。#140字小説

2018-03-30 23:26:38
千月薫子 @Thousands_Moon4

見て欲しいがために筆がのる。鉛筆や万年筆じゃない。光る液晶を滑る指が今の私の筆だ。見て欲しい、読んで欲しい!誰でもいい。でもあわよくば貴方に、望んでもいいのなら感想を。あと少し、手直しもしなければいけない。もっとはやくはやく!私の存在証明を、貴方に物語を。届けたい。#140字小説

2018-03-30 23:30:17
千月薫子 @Thousands_Moon4

桜も散る花弁が無くなる時期。大学から重たい冊子が配られる。これも今年で二冊目。その重さにうんざりする私の顔は、今ひどいんだろうなぁ。鞄が肩にくいこんでだるさが増す。新歓、単位、バイト、お友達……頭が悩みでかち割れそうだ。 大学生は暇じゃない #140字小説

2018-03-31 10:23:23
千月薫子 @Thousands_Moon4

桜の花びらはどこまででも軽々と飛んでいく。青い空に白っぽい花びらがよく見える。迷惑どころか桜の花びらなら喜んで歓迎するだろう。なぜなら桜の薄桃色には優しさが溶けているから。絵の具や紙とは違う桜の色には春の優しさが表れているから。人々はそれを見て優しさを次へつなぐんだ。#140字小説

2018-03-31 20:46:24
千月薫子 @Thousands_Moon4

桜のいたずらか。この世には居ない貴方に会えた。まやかしでも、生まれ変わりでもどれだけ会えたらと願ったことか。桜の下で花びらの吹雪に包まれながら、死んでしまったのにここに居てごめんねと苦笑いする貴方。謝らなくていい。会えたのだからこんなに美しいのだから笑っていて。#140字小説

2018-04-01 23:34:56
千月薫子 @Thousands_Moon4

自分からは決してふったりしない。あんたは心優しいもんね。大学入ってまたふられたって?顔がいいんだからまた彼女できるでしょ。ほわほわしてて、でもちゃんと考えてる我らが部長。どうしてふられちゃうんだろうね。久しぶりに会ってそんな話をした。実は私も……いや、何でもないよ。#140字小説

2018-04-02 23:06:16
千月薫子 @Thousands_Moon4

最初からいつもそばで見守ってくれた君。失敗したこともあったね。上手くいった時はきっと同じように喜んでくれてたね。もうすぐ君は初めて、私のそばを離れる。お世話になった君を私は笑顔で送ろう。失敗してもいい、つらかったら帰っておいで。どうかどうか無事で。笑顔で帰っておいで。#140字小説

2018-04-03 23:32:10
千月薫子 @Thousands_Moon4

「あんたがったどこさ、ひごさ」ボールをつきながら、一人しかいない公園に響いた。「ひごどこさ、くまもとさ」リズムに合わせて足をあげ、ボールをくぐらせる。傾きかけた日が強く橙を放射していた。「くまもとどこさ、せんばさ」『せんばやまには』たそがれ時に、ふたつ、声が重なる。#140字小説

2018-04-05 00:04:12
千月薫子 @Thousands_Moon4

するするとインクが出る感覚が心地よい。百均のノートはペン先に引っかかる感じがするけど、罫線が茶色で可愛いから不問としよう。丁寧に、人生で1番綺麗な文字を書くくらいの気持ちで。いろんな字体とか書いてみたいけどそんなに器用ではない。せめて紙にきちんと座った文字を。#140字小説

2018-04-05 23:22:08
千月薫子 @Thousands_Moon4

小さい頃遊んだ公園はこんなにも小さなものだったかと、ベンチにどっかと座って物思った。春の癖に寒い風が吹き荒ぶ。ぽつりと雨が降ってきた。もうそろそろ傘を差したいところだけど、家から黙って出てきた俺にそんなもんはない。空を睨んだ。いつまでも「子供」だと思ってんじゃねぇぞ。#140字小説

2018-04-07 00:52:19
千月薫子 @Thousands_Moon4

せっかく花見へと誘ったのだが。花見どころではなく、彼は私の膝で憎たらしいほど安らかに、すよすよと眠っている。不眠症気味の彼にしては喜ぶべきことだろう。しかし!私は君と一緒に花が見たかったのに……!彼の顔にかかった桜をつまんで口を尖らせた。「私の彼に触れないでもらおう」#140字小説

2018-04-07 22:32:22
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千月薫子 @Thousands_Moon4

千月薫子(センヅキ カオルコ) ⚡️🧪🍫と申します。ることお呼びくださいませ。主に一次創作の字書き20↑140字掌編作家。相棒(@ame_susk_ringo)とサークル名:つれづれえんにちで活動中。nyanyannyaさん尊敬/アイコンは至極お姉さま@N_satiwo