断片メモ:梅雨も明け、本格的な暑さを迎えたある昼下がり「支部長~、暑い……もう、俺ダメです……」二人掛けのソファにだらりと寝転がりながらぼやく青年をたしなめるのは、同じぐらいの年の青年であった。「経費削減!ウチみたいな弱小支部には予算が無いんだっての」
2016-07-30 20:15:44断片メモ:だらりと寝転がったまま「今時、クーラーが無いって自殺行為っすよ。業務改善のために買いましょうよ!」とねだれば、支部長と呼ばれた青年は呆れた顔をしながらソファの住人を追い出しに掛かる「ここは支部の前に俺ん家だ。文句あるなら帰れ!お前ん家ならクーラーあるだろ?」
2016-07-30 20:21:56断片メモ:「キミら暑苦しいんだけどー」支部長が指差した扉からひょこりと顔を出す若い女性が一人。「暑苦しいのはこの部屋だよ〜」と、ソファの住人が応える。「うるせえ、お前が言うな!」ソファから投げ出された足に軽く蹴りを入れると悲鳴が上がる。「支部長ひどい!」
2016-08-02 04:36:12断片メモ:「ねー、その暑苦しい小芝居はいいからさー、素麺でも食べない?」ガサリと重たそうなビニールを差し出す。「食べたいです、お嬢」またソファから声がする。「だからお前…」ソファの住人を追い出すことを諦めた支部長はお嬢と呼ばれた女性が持ってきた荷物を受け取るのだった。
2016-08-02 04:43:40断片メモ:「本当にいいのかね?」そう念を押されるのは2度目だ。「はい、自分たちは学業が本分です。協力要請にお応え出来ない事もありますので」もっともらしいことを言ったが、実のところは自分が生まれてから続く日常が断ち切られてしまうようで嫌だったと言うのが本音だ。
2016-08-02 05:10:04断片メモ:UGNの支援を受ければ、学費を稼ぐためにバイト三昧で単位が危うくなることも無いだろうし、築30年以上の駅から遠い安アパートなんかに住まなくても済む。だがそれはオーヴァードとなった彼を日常に引きとめるために必要なものだったのだ。「済みません、頑固で」
2016-08-02 05:18:35断片メモ:「イリーガルとして活動するのは…何と言うか君らはまだ将来のある若者たし、今の時代ひとつ躓くと後々の社会生活が不利になってしまうんじゃないかと心配なんだよ」レネゲイドウイルスが活性化して破壊衝動が湧き上がる。それがオーヴァードであり、社会生活で躓く要素のひとつなのだ。
2016-08-02 05:32:15断片メモ:ひたすら言葉を尽くし目の前の青年を説得していたスーツの壮年の男性が沈黙のあとこう告げた「…ならば、君をこの地区の支部長に任命する。もちろん学業優先でいい。任務に当たる際の諸々はUGNが保証しよう。」つまりは必要最低限ぐらいは支援させてくれ。と言う訳だ。
2016-08-02 05:43:56断片メモ:地面に叩き付けられた時に打った背中がジンジンと痛い。目が霞むのは何処か怪我をして血が溢れて落ちているらしい。目の前の惨劇をただただ見つめるだけでなすすべもなく横たわる自分に苛立ちながらも指一本動かすことも出来ない。
2016-10-17 21:05:04断片メモ:こんな時、ヒーロー物だったら正義の味方が助けに来るんだよなと、痛みの中で妙に冷静に考える。いや、自分にあれを吹っ飛ばす力があれば……! と、目の前が真っ赤に染まる。血の鉄の味が口の中に広がる。ー血を求めよ、血を!より濃い血を!ー
2016-10-17 21:11:58断片メモ:もうそれを自在に操ることが出来ないと言う証に俺の血は心臓の動きと共にドクドクと流れ地面に溢れ広がる。「……!頼む!おい!」名を呼ばれたような気がして、わずかに残った力で声の主を探し呟く「俺は……僕は、ただ……ヒーローになりたかっただけなんだ……」
2016-10-17 21:24:11