
【百出もどき】 今日一日なんかムシャクシャしていた それを察したのか、口田くんにウサギさんを押し付けられてしまった 夜も遅く、共有スペースには僕とウサギさんだけ この子はすっかり僕達にも慣れ、抱き上げたり頬ずりしたり、お腹に顔を埋めても嫌がったりしない アニマルセラピーとか言うやつだ
2020-10-21 12:49:01
温かくて…モフモフで… 「かわいい…」 「ホント、可愛らしいですわ」 声のした方を向くと、ホッコリとした表情の八百万さんがいた 微笑むとキッチンへと向かってゆく そう言えば女子会をすると言っていたから、紅茶のお代わりを作りに来たのかもしれない 聞かれた…見られた…恥ずかしい
2020-10-21 12:49:02
ウサギに顔を埋め羞恥心に耐えていると 「あの…触らせて頂いてもよろしいでしょうか…?」 「ハイ…ドウゾ…」 答えたものの、ウサギは僕の下に居る よく考えたら触れないぞ?と思い顔をあげようとしたら、そっと手が僕の頭に置かれた
2020-10-21 12:49:02
「わたくし、前から緑谷さんに触れてみたかったんですの」 思いも寄らない行動に固まっていると八百万さんが語りだした 「モフモフの髪の毛や、柔らかそうな頬、高いジャンプ力や思いの外力持ちな腕など…まるでウサギのようだと前から思っておりまして…」
2020-10-21 12:49:02
「ヒーロースーツもウサギのようですわね」 なんて話しているとタイマーが鳴り 「ありがとうございました。また気が向いたら触らせてくださいね」 とポットを持って行ってしまった またウサギに顔を埋める事になったのは言うまでもない
2020-10-21 12:49:03
【小学校軸🥦&🍑】 デクの家近くに小さな動物園がある そこにウサギやモルモットなどが触れるコーナーが存在する デクはそこによく行く 八百万は親の用事が近くであり、お手伝いさん(?)と遊びに来ていた ここまで前提
2020-10-21 12:58:33
ある日曜日、仲良くなったウサギさん達におやつを上げていたら 「可愛らしいですわ!!」 と大きな声がして、ウサギさんたちはビックリして走っていってしまった 声のした方を見ると、可愛いというよりキレイな女の子が悲しそうにしている 「あっ…嫌われてしまいました…」
2020-10-21 15:10:21
「あのね!ウサギさん達は耳がイイから、大きな声はビックリするんだって。お母さんが言ってた」 僕は勇気をだして女の子に教えてあげた 女の子は本当に知らなかったみたいで、目をぱちくりして 「そうなのですか?教えていただきありがとうございます」 とニッコリ笑った
2020-10-21 15:10:21
「お恥ずかしながら、わたくし何も知らないのです。ウサギさん達と仲直りする方法は無いのでしょうか…?」 心配そうに聞いてくるから、僕もニッコリ笑って 「大丈夫だよ!僕、ここのウサギさん達と仲良しなんだ!君もすぐに仲良くなれるよ!」 と答えてあげた
2020-10-21 15:10:21
「こっちにおいでよ!一緒に遊ぼ?」 女の子に手を差し出したが、女の子は 「行ってもよろしいのでしょうか…お洋服が汚れてしまいそうなのですが…」 と言いながらオロオロしている すると後ろにいた男の人が 「大丈夫ですよ、お嬢様。怒られる時は私も一緒です」 微笑み女の子を押しゲートを開けた
2020-10-21 17:43:12
女の子は手をグーにして 「えいっ」 とジャンプして柵の中に来た 僕と女の子は二人で「ふふふ」と笑って手をつなぎ、ウサギさんたちの近くにしゃがんだ 「僕ね、ウサギさんたちのオヤツ持ってるんだ。少しあげるね」 女の子の手を取り少しだけ分けてあげると。じーーーっと見つめている
2020-10-21 17:43:12
「ウサギさんたち、これ好きなんだ」 地面の近くまで手を下ろすとウサギさん達が鼻をヒクヒクさせて近づいてきた 女の子も僕のマネをして手を下ろすと、そっちにもウサギさんたちが来た 「か…噛まれたりしないでしょうか…」 また不安そうにきかれたから笑ってみる
2020-10-21 17:43:13
ウサギさん達は僕達の手の中のオヤツを見つけたみたいで、掌をクンクンしてはキョロキョロしている 「何をしているんでしょうか?」 「他のウサギさん達にオヤツあるよ!って教えてるんじゃないかな?」 「まぁ!優しいウサギさん達ですのね」 「うん!ウサギさんは『仲間思いで優しい』て言ってた」
2020-10-21 17:50:55
なんて話していると手のひらが擽ったい 女の子を見ると口を大きく開き、今にも叫びそうになっている 急いで口に手を当て「しー!」と教えてあげるとビックリした顔になった 「忘れておりましたわ…ウサギさんがビックリしてしまいます…」
2020-10-21 17:50:56
「うん、でも、可愛いね」 「はい、可愛らしいですわ」 「くすぐったいね」 「くすぐったいですわ」 手の中が空っぽになっても、ウサギさん達が近くにいてくれて 二人で背中や頭をたくさんナデナデしていたら、周りがオレンジ色になってきて、カラスさんもお家に帰る時間になった
2020-10-21 18:03:06
「お嬢様。そろそろ帰りませんと、旦那様と奥様がお帰りになられてしまいます」 女の子はその声にハッとして立ち上がると 「どこのどなたか存じ上げませんが、楽しい一日でしたわ!ありがとうございました」 ペコリと頭を下げて男の人の所に走っていってしまった 僕もあとを追いかけて
2020-10-21 18:03:07
「僕も楽しかった!ありがとう!」 と大きく手を振って別れた 今でも偶に思い出すんだ あの、僅かな時間だけでも僕をヒーローにしてくれた女の子の事を
2020-10-21 18:03:07