お題「安」「文學少年」「19時54分発」
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花滝ちかる @chikaru_toka

門限21時は、飲み会の2次会を断るいい口実。 でも、貴方の隣で気付いてしまったの。私の家は、私を閉じ込める檻だって事。 19時54分発の電車が、21時に間に合う最後。 ねえ、戯れだと聞き流して。 「帰りたくないわ」 「じゃあオレの家に帰ってよ。ずっと」 私は泣いて、笑った。 「うん、ずっとよ」

2020-11-28 22:01:50
RAY/※※※ @growler_ray

乗らないでほしい、行かないでほしい。だって、今日別れたら、それが今生の別れだから でも、伝えようとする口は動かない。いてほしいけど、あの人には帰る場所がある。私のような偽りではない、本当の 本当の?ああ、それなら… ……19時54分発。この過疎駅を離れる電車には、二つの影が加わっていた

2020-11-28 22:02:28
秋月蓮華 @akirenge

「安くない?」 「そうでもないよ」 文學少年な君。これから彗星の形をした魔王と戦う君。 あれと勝負になって、勝てるのは彼だけなのだ。 とはいえ確率は五分五分で。 「地球と君の命なら、君の命の方が重いのに」 「信じてよ。勝つって」 分かった、と私は頷く。 19時54分発。彼は旅立っていった。

2020-11-28 22:04:18
さつき @colourkkr

十九時五十四分発の特急列車で夢を目指した文学少年は逃げ出すように故郷に帰る。東京の片隅の安っぽいアパートで、ただくたびれた大人になって。なにもかも諦めて。どうせなら最後に一本そんな話でも書いてみればよかったのか。書くのが自分である限り、陳腐なものにしかならないんだろうけれど。

2020-11-28 22:07:55
銀華 @Morgenrot1202

東京駅は夜だというのに人が絶えることがない。時折、肩がぶつかり、その度に私は頭を下げて唇を噛んだ。外套と切符を握りしめ、他には何も持ってない。空腹は嫌なので晩餐は済ませた。 「嗚呼、次の世は安らかに」 才能と気概に溢れた元文學少年もまた師と同じ道を辿る。19時54分発の汽笛が鳴った。

2020-11-28 22:12:04
ケンタシノリ@童話&小説書き屋さん @kentasinori

わしは、会社の帰りに古本屋で『文學少年』なる雑誌を1万円で手に入れた。約90年前に発売された割には痛みが少ないので、このくらいの値段がつくのも無理はない。 高い買い物とあって、安い給料の中から支払うのは少々きつそうだ。古本屋を出ると、19時54分発の電車に乗ろうと急ぎ足で駅に向かった。

2020-11-28 22:12:08
田原 あすか @Earth13304453

「ねぇ、何読んでるの?」転校生で人気者、何でも出来る彼女が本の横から顔を覗かせたので嘲笑った。「我、安くんぞ 子の輩に成らんや」「え?」 19時54分発の電車に飛び乗って文法書を開く。彼女の得意教科は国語だから、そこから取り返す。 馴れ合わねぇから。 俺の取り柄を取り上げんな。

2020-11-28 22:32:42
ポッキー(山口絢子)@低浮上多し🙇 @sorapoky

19時54分発に乗れば、あの文学青年に会えるだろう。大抵彼は、分厚い文学全集を読んでいた。大半の人がスマホを見ている車内で、それはとても珍しかった。詰襟に学生帽なのも、印象的だ。不意に彼は本から顔を上げ、初めてしっかり目が合ってしまった。彼が読む全集の作家とその顔は、そっくりだった。 pic.twitter.com/UZnOxQ3FDO

2020-11-28 22:32:45
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nina🌊 @ius2vitae8necis

自分で自分を傷つけるなとよく言われていた。「ここは絶対に安全な場所だから」そこから彼女は羽ばたいて行ってしまった。「ここは安全だろうか」今更そう呟いてみる。一匹の蝶がひらひらと舞っている。彼女の願いの象徴を見て受け継がれていることを確信する。自由に舞うその姿を最後まで見送った。

2020-11-28 22:52:34