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中田:‖ @paddy_joy

#丸善ジュンク堂に住んでみる2022冬エア開催 ブルーバックス『人類と気候の10万年史』、とんでもない良書でした。気候変動に関心のある人の必読書と断言できます。出版された5年前に読んでいなかったことを強く悔いるほど。しばらく本書を推薦するbotになります。1/n amzn.to/3gsaKEV pic.twitter.com/kUWK0QRjgT

2022-02-06 00:45:49
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中田:‖ @paddy_joy

「気候変動」と言う以上は、「変動していなかった状態」が想定されているということ。つまり人類が気候に影響を与えていない時代の気候は一体どのようなものだったのか、という認識が必要です。著者らは過去5億年の気候を科学的に追跡し、特に直近の10万年の詳細な分析を行っています。2/n

2022-02-06 00:50:06
中田:‖ @paddy_joy

冒頭に5億年スケールでの「地球の正常状態」の答えがありますが、人類がいなかった頃も含めて地球の気温は10度の幅で上下しており、現代はむしろこのスケールでは寒冷期にあたるとわかります。IPCCが予測する100年後の地球よりはるかに温暖で、かつ生態系が豊かだったことが示されています。 3/n pic.twitter.com/OQPzJ4mQUW

2022-02-06 00:59:09
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中田:‖ @paddy_joy

「ペルム紀と呼ばれる2億5千万年前も、現代と比べて気温は10度高かったが、世界中でシダの大森林が繁茂し、巨大な昆虫類がその間を飛び回っていた。生産性と多様性を価値とみなす生物学の視点では豊かな時代だったと表現せざるを得ない」4/n

2022-02-06 01:01:43
中田:‖ @paddy_joy

「逆に6億5千万年前は、地球は北極・南極も赤道も含めてあらゆる場所が氷河に覆われていた。「全球凍結」と呼ばれる現象であり、火山活動によって氷が溶けるまで数千万年も地球全体が凍っていた。仮に再び全球凍結が起これば人間も動物も大半は死に絶えるだろう。どこにも逃げ場はないからだ」5/n

2022-02-06 01:07:45
中田:‖ @paddy_joy

つまりこの時点で、(著者は明言していませんが)「地球のために温暖化を防ごう」論は的外れだとわかります。むしろ生態系全体の多様性を確保したいのであれば今より温暖化した方が良いという議論さえあり得るでしょう。全ての議論は「人間にとって」住みやすい気候なのか、しか目的にできません。6/n

2022-02-06 01:10:36
中田:‖ @paddy_joy

冒頭近くに出てくるこのグラフと社会記録も重要です。戦後から1970年代までは気温が下がり続けたため、当時は逆に「地球寒冷化」が社会問題になっていたと。環境問題が注目され始めた時期とも重なって陰鬱な未来の到来が懸念され、芸術や文化にも影響を与えていたとあります。7/n pic.twitter.com/HrDooLe62z

2022-02-06 01:21:59
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中田:‖ @paddy_joy

「念のため強調するが、私は現代の温暖化予測も1970年代の寒冷化予測と同様に信頼できないと主張したいわけではない(但し信頼できると主張しているのでもない)。当時と比べシミュレーション技術は驚異的に進歩し、天気予報の精度も飛躍的に向上した。私がここで強調したいのは、

2022-02-06 01:30:32
中田:‖ @paddy_joy

→寒冷化の学説が出た当時も、その直後からの温暖化の学説も、どちらの時代の人にとっても「本当らしく見えた」という事実である。私たちの直感は時として驚くほど脆弱だ。私たちが普段の天気予報で培っている信頼度と距離感のバランスを、気候変動という時間のスケールでも鍛える必要がある」9/n

2022-02-06 01:30:33
中田:‖ @paddy_joy

過去10万年の気温変化を見ると、確かに直近だけ周期的な気温変化とは外れた動きをしており、確かに人類の影響が示唆されます。しかしもっと重要なのは、この不自然な気温上昇は産業革命のもっと前、8000年も前から始まっているということです。当時人類は何を始めたか?10/n pic.twitter.com/iI2va0MK7Z

2022-02-06 01:43:52
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中田:‖ @paddy_joy

それは農耕である、というのが本書が紹介する仮説。グラフの通り8000年前からCO2とメタンは周期に外れた不自然な上昇をしており(なおメタンの温室効果はCO2の20倍)これはメタンを大量に排出する水田の拡大と、大規模な森林伐採がその原因であるとしています。11/n pic.twitter.com/geY3FG2NAY

2022-02-06 01:53:08
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中田:‖ @paddy_joy

少し横道にそれますが、いま欧米での地球温暖化対策は急速にメタン対策に移っています。昨年のIPCC報告でも「過去の気温上昇1度のうち0.3度はメタンが原因」とされ、メタンを叩く方がコスパが高いとされているためです。世界最大級の環境NGOのEDFも今やメタン対策一色。12/n edf.org/climate/methan…

2022-02-06 01:58:01
中田:‖ @paddy_joy

「測定結果に基づくこの説によれば、人類は8000年前からの人為的な温暖化によって「本来であればとっくに来ていた氷期」を回避していることになる。私たちは自然にやってくるはずの氷期で暮らしたいのか、それとも人為的に温かくなった気候で暮らしたいのか。これはもはや科学でなく哲学の問題だ」13/n

2022-02-06 02:02:09
中田:‖ @paddy_joy

「私見として、今後の恐ろしいシナリオは2つある。一つは、現代の「安定で温かい時代」が終わることである。氷期が終わってから既に1万1600年も経っており、過去3回の温暖な時代に比べて今の温暖期は既に例外的に長い。また氷期が来た時、今より10度寒い地球に耐えらえるだろうか」14/n

2022-02-06 02:14:50
中田:‖ @paddy_joy

「もう一つ恐ろしいのは、人類が激変の引き金を引いてしまうことである。IPCCは最悪のシナリオとして今後100年で5度の温暖化を予測しているが、100年で5度のスピードは過去に起こった大激変に比べて穏やかな変化であり、このペースであれば人類は傷を負いながらも何とか適応するだろう。しかし→」15/n

2022-02-06 02:19:40
中田:‖ @paddy_joy

「→仮に人類が相転移の引き金を引き、気候が氷期と同様に暴れ始めたら事態は全く別問題になる。マヤ文明を崩壊させた"9年に6回の干ばつ"のような事態が地球全体で頻繁に起これば、農耕を前提とした現在の人口の維持はできないだろう。狩猟で生き残れる人口は現在の1万分の1である」16/n

2022-02-06 02:19:40
中田:‖ @paddy_joy

「これほど大きな問題に対して私は答えを持ち合わせていないし、おそらく世界の誰も持っていない。それでも希望はある。人類は気候の激変期にも歩みを止めずに繁殖し、砂漠・熱帯・高山の全てに生息している。このような生物は人間だけであり、気候耐性はゴキブリすらもはるかに凌駕している」17/n

2022-02-06 02:22:53
中田:‖ @paddy_joy

「もう一つの希望は、100億人という巨大な母集団とその多様性である。気候が暴れても、多様な思考とライフスタイルの中から参考になる知恵が出てこよう。思いがけない時代を生き残る知恵は思いがけないところから見つかる可能性の方が高い」18/n

2022-02-06 02:32:28
中田:‖ @paddy_joy

「阪神・淡路大震災の避難所で鮮やかに秩序を回復させた初老の男性は、薄汚く風采の上がらない、要職にはついていないであろう人物だった。不測の事態を生き延びる知恵とは、未来を「想定」し「対策」することではない。思いがけない才能をいつでも活躍させることのできる多様性と包容力である」19/n

2022-02-06 02:32:28