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第6章、代表制度の改革
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花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

抜粋④ 『代表性民主主義はなぜ失敗したのか』藤井達夫著、集英社新書、2021.11.22. twitter.com/chokusenhikaem… pic.twitter.com/mkAT8PCfbd

2022-02-07 05:39:15
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花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

代表制度はいまや、民主主義の理念を妨げる手段に、エリートが権力を私物化し専制を敷くための手段になり下がったようにさえ見える。  ポスト工業化社会に適合した形で、代表制度を民主主義の制度として復活させる道筋を、現在世界で実際に行われている民主主義のイノベーションにフォーカスする。

2022-02-07 05:39:16
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

1、代表制度改革の方向性  シュンペーターの「競争的民主主義」モデルの検討から始めよう。その内実は、政治エリートによる寡頭的支配を実現するための代表制度の構想である。現代の代表性民主主義は、シュンペーターのモデルにますます似通ってきているようにも見える。

2022-02-07 05:44:35
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

民主主義の理念から切り離され、執行権力を行使する代表者が民主的なコントロールから自立しつつあるからだ。  シュンペーターのモデルは、ルソー的な民主主義理論、すなわち、ある政治体に共有された利益としての「公益」…ルソーの一般意志であり、規範的な政治学ではしばしば共通善とも呼ばれる…

2022-02-07 05:48:33
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

を想定する古典的民主主義学説を否定することから出発する。公益なるものは、そもそも存在しない。仮に存在したとしても、それを発見し表明する方法などないし、有権者もその表明に必要な自立性や能力、技量を持ち合わせていないとシュンペーターは指摘する。

2022-02-07 05:51:11
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

彼が提示するモデルは、政治决定を行う上でのリーダーシップを獲得するために、代表者たちが有権者の支持を求めて行う「競争的闘争」である。競争こそ民主主義の本質だという理解だ。支持を求めての競争がある以上、その具体的な手続きは選挙ということになる。

2022-02-07 05:54:35
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

シュンペーターは民主主義を代表制度と同一視している。彼は民主主義の本質を競争と見做すことで、民主主義を有権者が信任もしくは不信任を表明する選挙の機能に切り詰めてしまう。このモデルの最大の問題は、政治エリートによる政治権力の私物化や専制の可能性を防ぐことができるかどうかにある。

2022-02-07 05:58:54
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

もちろん、この問いに対する回答は否定的なものとならざるをえない。選挙が常に競争的であるとは限らない。それが競争的であるためには、多くの条件が必要となる。少なくとも候補者が2人以上必要であるし、その候補者間の経済的な力、社会的な力がある程度均衡している必要もある。

2022-02-07 06:03:09
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

選挙制度のあり方によって競争の度合いは異なってくる。また、競争が行われる外部環境、例えばメディアの中立性も不可欠だ。  さらに、代表者は選挙と選挙の間の任期中に民主主義を破壊してしまうことも可能なのだ。

2022-02-07 06:05:49
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

最も看過できない問題は、シュンペーターのモデルでは選挙が、そもそも政治エリートを民主的にコントロールするという目的ではなく、もっぱら政治エリートに政治的決定権力を占有させることを、したがって、そのリーダーシップを民主的コントロールから解放することを目的にしていることにある。

2022-02-07 06:08:36
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

ここから、シュンペーターのモデルでは、政治エリートによる権力の私物化や専制の可能性を防ぐことは困難であると考えられる。  シュンペーターのモデルには、2つのきわめて重要な政治的活動が欠如している。市民の参加と、市民の間での熟議である。

2022-02-07 06:11:55
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

民主主義のイノベーションでは、人々は公共の制度を利用しつつ、特に政治的活動にコミットする主体としての役割、すなわち市民としての役割を担っている。  代表制度に市民参加と熟議という活動を組み込むことで、現行の代表制度を民主主義の制度として再建するための実行可能な具体策を検討しよう。

2022-02-07 06:15:14
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

(p.200) 多くの民主主義国ですでに着手されている試みを参考にすると、2つの方向性がある。 ①重要な決定に市民が直接参加することによって、市民の政治的決定権力を強化する方向性。 ②市民が直接、代表者を監視し、説明責任を果たさせるという方向性。

2022-02-07 06:20:10
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

代表者の民主的コントロールはこれら2つの方向性で強化され始めている。  第一の方向性の取り組みでは、十分な情報に基づいた議論を経た上で理に適った市民の判断を政治的決定に反映させようとしている。レファレンダムを実施する前に市民間の熟議の手続きが設けられている事例が少なくない。

2022-02-07 06:26:19
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

単に代表制度を迂回するのではなく、政治家たちと協働し、代表制度を活用する工夫も見られる。  第二の方向性は、いわゆる「カウンター・デモクラシー」と関連する。カウンター・デモクラシーとは、政治権力を行使する者たちを投票以外の方法で民主的にコントロールするための制度や活動を意味する。

2022-02-07 06:30:46
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

それは、監視、差し止め、審判の3つの形態から構成されている。古代アテナイの500人評議会や民会、民衆裁判所。近代以降では、政府から独立した専門家委員会や民間のアドボカシー・グループ…専門的な政策提言をしたり、ロビー活動をしたり、メディア・キャンペーンをしたりする利益集団…

2022-02-07 06:35:31
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

市民組織による監視活動や、ストライキやデモによる直接行動による拒否権の表明、弁護士や市民による行政裁判の実施などが盛んに行われてきた。これらの活動は、政治権力を行使する者に対して情報公開と説明責任を課し、政治責任を明確にさせ、必要があれば処罰を迫る。

2022-02-07 06:39:52
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

世論に対して常に敏感であるように代表者に対して求めることによって、民主的なコントロールの強化を目指している。  現代世界の多元性という事実を前にした私達にとって、共有のものへの働きかけがいかなる制約の下にあるのかを確認しておく必要がある。

2022-02-07 06:42:53
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

現代世界の多元性は、権力関係からニュートラルなものではなく、支配と被支配、抑圧と被抑圧との関係に貫かれている。大事なのは、人々の間の差異をあらかじめ排除したり、事後的に克服されたりする対象として見るのを控えることだ。その上で、共通の課題を遂行すべく異なる人々が集まり、

2022-02-07 06:47:29
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

一緒に活動する協働の機会や枠組みを模索することである。この協働こそ《差異化された共有のもの》が、構築されるかもしれないその可能性にとって絶対的な条件といえる。  なぜ、エンパワーメントが必要になるのか 代表制度の改革には、市民の参加と熟議が組み込まれるとなると、

2022-02-07 06:52:25
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

選挙で投票して終わりという現行の代表制度よりも、市民が政治で果たす役割や労力は増大する。このため、改革された代表制度がその機能を十全に発揮しうるかは、これまで以上に市民のパフォーマンスにかかってくることになる。ここから、こうした改革に対しては必ず2つの批判が投げかけられる。

2022-02-07 06:55:48
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

一つは、市民のコミットメントに関わる批判だ。もう一つは、市民の資質に関わる批判だ。愚民論的見解が根底に据えられている。  代表制度を改革しようとするなら何が必要となるか。政治に対する関心を喚起させること。政治争点を理解し解釈するための情報を提供すること。

2022-02-07 07:00:32
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

他人との協働を通して政治的有効性感覚(political efficacy) を育成させること。これらが必要になる。  人々を市民としてエンパワーする仕掛けを綿密に設計し手続き化した上で、既存の代表制度に組み合わせればよい。

2022-02-07 07:05:04
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

(p.206) 2、具体的なイノベーションを評価する ①熟議世論調査(Deliberative Opinion Poll) ②市民集会(Citizen Assembly) ③参加型予算(Participatory Budgeting) これらを、民主的なコントロール、協働の枠組み、エンパワーメントから検討する。

2022-02-07 07:10:36
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

(1) 熟議世論調査 熟議世論調査はアメリカの政治学者フィシュキンらが1988年に始めた取り組みで、現在、多くの国々で実際に活用されている。文字通り、一般に行われている世論調査に熟議の活動を接合させたものだ。  調査…例えば、死刑制度を廃止すべきか存続すべきかといった調査…を行うために、

2022-02-07 11:30:53
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

まずランダムサンプリングによって250人~500人ほどの市民が集められる。それらの市民は十分な情報を得るために専門家…死刑制度に反対、賛成の双方の専門家…からレクチャーを受ける。その後およそ15人程度の小グループに分かれて、熟練のファシリテーターの下での公平なルールに従った対等な議論を

2022-02-07 11:30:54
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

とおして専門家への質問を練り上げる。続いて、全体会合に再度参加し、講師の専門家に質問をして回答を聞く。熟議に参加した市民たちは、熟議の始まる前と後で議論の対象に関する情報の蓄積と意見の変容に関するアンケート調査に回答し、イベントは終了する。

2022-02-07 11:30:54
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

熟議世論調査は、世論調査という言葉が示唆するように、参加者の間で何らかの合意に達したり、政府に対して何らかの政治的強制力のある提言をしたりするといった類のものではない。しかし、イベントの結果は、メディアの報道によって他の市民や政治家たちに広く周知されることになる。

2022-02-07 11:30:54
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

熟議世論調査の特徴は、それがミニパブリックス(mini-publics)の一種であることから引き出すことができる。ミニパブリックスとは、ランダムに選ばれた市民…したがって、自選ではない…たちが公共の問題に関してともに議論する取り組みを意味する。

2022-02-07 11:30:55
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

ミニパブリックスの代表的な事例には、熟議世論調査以外にも、市民陪審、コンセンサス会議、計画細胞、アメリカ・スピークスなどがある。この取り組みでは、特に重視されることが二つある。一つは、そこでの議論が十分な情報に基づき、ファシリテーターあるいはモデレーターによって適切に

2022-02-07 11:30:55
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

コントロールされていること、もう一つは、そこでの議論が市民全体での議論を代表していることである。  フィシュキンによれば、熟議世論調査の特徴は、一般的な世論に「鏡とフィルター」を装着させた点にある。鏡の役割を果たすのが、ランダムサンプリングによる参加者の選出である。

2022-02-07 11:30:55
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

これによって少人数であっても、人口全体…年齢や性別、人種などの構成を含めて…を統計的に代表することが可能となる。また、フィルターの役割を果たすのが、適切に設計された熟議の手続きであり、これによって十分な情報もなく、また他人との議論を経ていない「生の声」は除去されることになる。

2022-02-07 11:30:56
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

熟議世論調査では、「生の声」が理想的な熟議をとおしてどのように変容するかに最大の関心が払われる。意見の変容は、イベントの前後で実施されるアンケート調査によって可視化される。  熟議世論調査を先に述べた3つの観点から評価してみよう。

2022-02-07 11:30:56
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

まず代表者に対する「民主的なコントロール」に関して。そもそもこの熟議世論調査は、理想的な熟議の機会をとおして個人の選好や意見がどのように変容するかを調査すること、そして「生の声」を除去したよく熟慮された判断に基づく世論がどのようなものであるかを提示することを狙いとしてきた。

2022-02-07 12:04:03
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

ここから、代表者を民主的なコントロールに服させるような積極的な働きは熟議世論調査にはない。他のミニパブリックスと同じように、熟議世論調査もせいぜい、議会や政府に対して強制力のない勧告を行うといった、諮問的役割を担う程度であるのが実情だ。

2022-02-07 12:04:03
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

しかし、だからといって熟議世論調査が政策決定に全く影響力を持たないわけではない。熟議世論調査から得られた勧告を真剣に受け止める政府が、その勧告に基づいて政策を実施した事例や、政治家が政策をいわゆる「マーケティングテスト」にかけるために、熟議世論調査を利用する事例も報告されている。

2022-02-07 12:04:04
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

したがって、熟議世論調査は代表制度を民主的なコントロールの下に置くことを意図した取り組みだとはいえないが、政府や議会の姿勢次第では、政策決定に影響を及ぼす場合があるとはいえる。  次に、「協働の枠組み」に関して。 熟議世論調査は、ある公共の問題に関して、限られた人数で比較的短期間に

2022-02-07 12:04:04
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

実施されるイベントだ。そこで行われる市民の協働は、規模において小さく、期間としても一時的なものとならざるをえない。このため、熟議という協働は、市民間の持続する結びつきや連帯感を醸成するまでには至らないと考えられる。

2022-02-07 12:04:04
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

最後に、「エンパワーメント」に関して。  熟議世論調査ではこのエンパワーメント効果こそ、最も期待できるものであるといえる。そもそも、選挙以外の政治活動に従事することによってエンパワーメント効果が得られることは、多くの研究によって明確にされてきた。

2022-02-07 12:04:05
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

参加者は熟議のイベントへの参加をとおして、政治への関心や情報、政治的有効性感覚を増大させ、さらに熟議のイベント後の通常の政治参加にも従事する傾向が高まることが分かる。熟議世論調査における他の市民との協働の経験は、個々の市民をエンパワーするのである。

2022-02-07 12:04:05
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

フィシュキンは、熟議を「より良き市民の学校」と呼んでいる。彼によれば、熟議世論調査のような参加と熟議からなる活動は、公共の問題に取り組む上で必要となる諸能力…情報、有効性感覚、公共の精神など…を陶冶するための市民教育の場に他ならない。

2022-02-07 12:04:05
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

(2) 市民集会  市民集会とは、市民の参加と熟議からなるミニパブリックスを活用した取り組みだ。しかし、ここで紹介する市民集会は、他のミニパブリックスとは少なくとも次の3点で異なる。  第一に、開催される期間が一ヶ月以上と長期にわたるイベントであり、より濃密な熟議が実施される点だ。

2022-02-07 13:12:03
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

第二に、市民社会では、公聴会などをとおして広く市民の意見を募るコンサルテーション(public consultation)が実施される点である。市民集会が、集会に参加しない市民や社会運動の団体と結びつくことで、より包摂性の高いイベントとなっていることが分かる。

2022-02-07 13:12:04
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

第三に、きわめて政治的重要度の高い争点に関して、公式の政策決定のプロセスに組み込まれた提言や勧告を行いうるという点である。この点で、市民集会は、代表制度に対する正式な権限や権力を持ちうるといえる。市民集会は一般的なミニパブリックスの諮問的な役割を超えて、選挙制度改革や憲法改正など

2022-02-07 13:12:04
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

高度に政治的な争点に関して公式の政治的影響力を直接行使することを目的とした取り組みなのである。  以下では、カナダのブリティッシュコロンビア州での市民集会と、近年アイルランドで実施された市民集会を簡潔に取り上げる。

2022-02-07 13:12:05
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

ブリティッシュコロンビア州での市民集会は、州議会の支援の下、州政府によって2003年に設立された。その目的は現行の選挙制度(単純小選挙区制)を再検証し、必要があれば、別の選挙制度を勧告することにあった。そして、その提案は、州の住民投票に諮られることになっていた。

2022-02-07 13:20:10
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

市民集会ではまず、ブリティッシュコロンビア州の79ある選挙区から層化抽出法(単純なランダム抽出法よりも小規模な社会集団が選出されやすい)によって、男女各1名と、先住民2名の160名と議長1名の合計161名が選ばれた。

2022-02-07 13:25:25
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

市民集会のメンバーとなった市民は2004年の1月から選挙制度に関するレクチャーを専門家から受け、十分に情報を得た上で、公聴会を50回開き、他の市民や団体から意見を収集し、それらに基づいて熟議を重ねた。2004年12月に出された最終報告書では、現行の選挙制度に代えて新たな選挙制度が勧告された。

2022-02-07 13:29:06
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

それは、有権者が優先順位投票を用いて複数の候補者に投票するという、いわゆる単記移譲式投票であった。このため、市民集会の提案が2005年5月に住民投票に諮られることになった。  この住民投票において市民集会の提案が採用されるには、二つの条件が課せられていた。一つは、採用に対して60%以上の

2022-02-07 13:33:28
花びんに水を☘ @chokusenhikaeme

賛成が必要だという条件、もう一つが全選挙区の60%に当たる48選挙区において賛成が反対を上回るという条件である。住民投票の結果、後者の条件はクリアしたものの、前者の条件に関して、賛成の投票率が57.69%であったため、市民集会の提案した選挙制度は否決されることになった。

2022-02-07 13:37:53

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