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湯呑屋。@執筆系VTuber📘 @kou12182

モーメント……?(まとめ用)のサムネです! pic.twitter.com/r4j7mFcabC

2023-01-21 09:36:59
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湯呑屋。@執筆系VTuber📘 @kou12182

「私は春人さんを『おじいさん』なんて呼ぶ気はさらさらありませんよ。春人さんだってずっと美穂と呼んでくれるじゃないですか」  美穂はくしゃっと笑う。そんなふうに笑うとシワだらけになるぞ、と言ったこともある。本当にそうなったけれど、美しさが損なわれた訳では無かった。 #自作小説の一節

2023-01-19 18:00:01
湯呑屋。@執筆系VTuber📘 @kou12182

「春人さん」 「なんだ」 「私がお花に水をやっているのはいつ頃かわかる?」 「毎日15時だろう。紅茶の準備をする前だ」 「そう。それさえ覚えていてくれたら私はいいの。私の全てはもう、そこにあるのよ」 #自作小説の一節

2023-01-19 18:00:00
湯呑屋。@執筆系VTuber📘 @kou12182

「そんな、縁起でもないことを言うもんじゃない。言霊信仰というものを知らないのか。それに、私の方が先にお前を忘れてしまうかもしれないんだぞ」 「あらやだ、そんな縁起でもないことを言わないでください」 #自作小説の一節

2023-01-19 18:00:02
湯呑屋。@執筆系VTuber📘 @kou12182

眠りから覚める。昨日まで私の手の中にあったものはまだそこにあるだろうかと、不安になって記憶を反芻する。 こぼれて、散らかってしまうのは仕方がない。問題はそれらをもう一度、全て拾い集められるかどうかだ。 #自作小説の一節

2023-01-19 18:00:01
湯呑屋。@執筆系VTuber📘 @kou12182

「人って、勝手に託すじゃないですか。バトンとかタスキとか、希望とか自分がなし得なかった夢とか、軽いのも重いのも遠慮なく。そういうの全部丁寧に頂いてから、燃やして進んでいくのが私なんです」 #自作小説の一節

2023-01-21 01:44:48
湯呑屋。@執筆系VTuber📘 @kou12182

羽だけはとうの昔に開き切っているのに、肉体はいつまでもサナギのままでドロドロと変体を繰り返す彼女の姿は、私にとっては『完璧』だった。これは最大級の賛辞なのだが、それが伝わるとも思っていないから代わりの言葉を探す。しかしそれは「可愛いね」では絶対にないのだ。 #自作小説の一節

2023-01-21 01:41:22
湯呑屋。@執筆系VTuber📘 @kou12182

雑踏の足を止めるには、誰にでも見える高さで心を奪うように舞う必要がある。彼女は今日も指の腹を裂くようにギターをかき鳴らした。鮮血のように眩くこの街を彩るクリスマスイルミネーションは全て、彼女を動力源にして煌めき始める。 #自作小説の一節

2023-01-21 01:52:52
湯呑屋。@執筆系VTuber📘 @kou12182

『……今いくつだっけ』 指折りが何往復したかわからなくなった頃、みちるは静かに眠りについた。顔を近付け、寝息が聞こえるのを確認する。これから何度確認しても安心できない毎日が待っているのだと思うと、ベッドの感触が途端に底なし沼のように感じられた。 #自作小説の一節

2023-01-19 12:30:00
湯呑屋。@執筆系VTuber📘 @kou12182

隼人が言っていた言葉の意味が、スーツに袖を通すようになってからやっと理解できた。雑音にもライブ感はある。リアルタイムで紡がれる言葉の波には精気がある。耳から生きた音が入ってくる。ストリーミング再生とは訳が違うのだ。 #自作小説の一節

2023-01-21 01:19:31
湯呑屋。@執筆系VTuber📘 @kou12182

結婚を機にここへ引っ越して半年が経つ。私はこのしみったれた街を『硝煙に塗れた街』と呼んでいた。平和そのもの、歩けば日用品から婚約指輪まで揃うが、拭えない不安がいつも付きまとう。この街の空は幾重にも閉じられた鉄扉のような雲に常に覆われていた。 #自作小説の一節

2023-01-19 12:30:00
湯呑屋。@執筆系VTuber📘 @kou12182

あの頃俺は、若さの煌めきは自身から発されたものだと思っていた。違ったのだ。あれは他人から向けられる羨望や嫉妬を反射した輝きだった。肌の中にあふれんばかりの光を宿していた俺達には、それらが侵入する隙間なんてなかった。 他人の評価が肌に染み入る今ならわかる。 #自作小説の一節

2023-01-21 01:34:40