ドリーン・マッシー『空間のために』 getsuyosha.jp/kikan/isbn9784… 読んでみる
2018-06-19 20:34:11>グローバリゼーションの不可避性をわれわれに納得させるためにグローバリゼーションの内部で作動している決定的な策略のひとつが、空間と時間の概念化による詐術であるということについては、おそらくあまり明らかにされていない この「詐術」を暴くのが本書の目的
2018-06-19 20:46:45空間的差異を時間的差異に結びつけるような言説を批判しているということ(?) これと同じような話かな 米家泰作「「近代」概念の空間的含意をめぐって―モダン・ヒストリカル・ジォグラフィの視座と展望―」hist-geo.jp/img/archive/25…
2018-06-19 20:53:23「空間」とは 1.マクロからミクロに至るスケール間の相互関係性の産物 2.多様性の存在基盤であり異なる軌跡が共存する圏域 3.常に構成の過程にあるもの
2018-06-19 21:00:45第二章 空間/表象 ベルクソンらを引き合いに出し、時間/空間の対比において、空間が時間を表象化することで生を奪い去ってしまうものと(精査されることなく当然のように)見なされていたことを示す。
2018-06-19 23:08:15空間が時間を欠いたものとして定式化されていることの指摘 >共時性と瞬間は区分されねばならない。「共時性は〈共-時間性〉ではなく〈非-時間性〉である」(Osborne)
2018-06-19 23:21:22フェビアンによる構造主義批判 1.構造を強調することで対象が持つダイナミズムが失われる 2.構造が閉鎖系として想起されている
2018-06-19 23:35:15「時間/空間」を対比しているようでその内実は「時間/非時間」 縦軸に時間、横軸に空間を配置するような時間/空間の捉え方は間違ってますよと言いたいのかな
2018-06-19 23:53:50アルチュセールの仕事の知的源泉 1.ヘーゲル主義的な概念:あらゆる瞬間にすべての部分が全体を表現する、単一の全体化された歴史 2.構造主義:非-時間的な構造/共時性を空間と称する →空間を「共時的な構造の全面的に相互連結した閉じられた体系」として解釈している
2018-06-20 00:23:08第三章 共時性の監獄 構造主義者を例に挙げ、構造主義において「空間」が「時間性を持たないもの」という消極的なかたちで用いられていることを示す。後半はポスト構造主義に関する話が展開されるが難しくてよく分からなかった。
2018-06-20 01:03:19第四章 脱構築の水平性 「差異」をキーワードとする脱構築が「空間」を積極的に捉えていることに注目し、デリダの「差延」概念が時間(遅延)と空間(差異)を内包していることを示す。水平性/垂直性という共に空間的なイメージが空間/時間に対応させられているのがよく分からなかった。
2018-06-20 05:42:25時間と空間の本質的連関 時間がある→変化がある→相互作用がある→多様性がある→差異がある→空間がある 簡潔で的確な指摘だと思う。この説明は時間を起点にしているが、空間を起点にしても成り立つのだろうか。
2018-06-20 05:47:01西洋哲学の伝統的な「時間/空間」観 「時間-内部性-主体」と「空間-外部性-客体」を対比させる (ジリアン・ローズは前者が男性性、後者が女性性と結び付けられている点を批判している)
2018-06-20 06:13:11「空間を時間の静的な一断面、表象、閉じられたシステム等々として考えることは、どれも空間を飼い慣らすための仕方である。それによってわれわれは、本当に重要なことを見落としてしまう。それは、別のさまざまな軌跡の共時代的な多様性や、空間化された主体性が持つ必然的な外交性である。」p.118
2018-06-20 06:42:00第五章 空間の中の生 第二部の最後の章。従来の「時間/空間」観(時間を主体性の根源と見る)に疑問を呈し、空間を閉鎖性、水平性と結び付けるのではなく、空間もまた経験的な主体性の基盤となりうる可能性を提示する。こういう話ならハイデガーが出てきそうなものだが、何故か出てこなかった。
2018-06-20 06:52:17モダニティの特質 1.場所・空間と社会・文化を同型のものと見なす 2.特定的なものを普遍的なものと見なす 3.歴史的・時間的な西洋と、非歴史的・非時間的な「未開」を対置する
2018-06-20 18:28:39第六章 近代性の歴史を空間化する バーバ、ウルフ、フェビアンの議論を援用し、空間性を時間性へと回収してきたモダニティの思考を批判する。歴史-空間は単線的な物語として整列するものではなく、複数の軌跡の相互作用として理解されるべきである。
2018-06-20 19:10:48第七章 瞬間性/深さのなさ 前章で示された空間を歴史化するモダニティの思考から転じて、一切を瞬間的なものとして捉えようとするポストモダンの思考について論じる。ジェイムソンはこの瞬間的時間を「空間」と呼んだが、マッシーはそれを「十分な公式化ではない」と断じる。
2018-06-21 04:12:12>社会理論の空間化は、ローカルな変異があるということを強く主張することへと無条件に還元されるわけではないのである。わたしは、地域的/経験的/非-理論的という語の必然的な連想についての、あらゆる前提を非常に警戒し続けている。
2018-06-21 05:23:00第八章 非空間的なグローバリゼーション 「不可避なもの」として“演出”されるグローバリゼーションが用いる空間的・時間的イメージの操作について。グローバリゼーションは境界の取り払いと強化を恣意的に使い分けており、これについての批判は時間性と空間性の再概念化をともなうべきであるとする。
2018-06-21 05:32:05>「もしも、あなたが望むならいつでもその場所を訪れることができると知っているならば」、「空間のあらゆる部分が同じ時間の長さで到達されうるので(それは「無-時間」である)、空間のどの部分も特権化されず、何も特別な価値をもたない」(ジグムント・バウマン)
2018-06-21 05:46:49>サスキア・サッセンが指摘するように、さまざまな流れを発生させまた支配する能力を持つグローバル・シティ自体が、場所に固定された厖大な資源の上に築かれている(Sassen,2001)。
2018-06-21 06:19:18サイバースペースが「空間(スペース)」であるのは、それが多様体の相互作用であるからだという説明が出てきてなるほどなと思った。面的な広がりとしてではなく位相空間的な空間理解。
2018-06-21 06:30:03第九章 (通俗的な見解とは反対に)空間は時間によっては滅ぼされない サイバースペースは「地理の終焉」をもたらすのではなく、(物理的な)空間的差異を保持したまま社会を再構成し、また社会によって構成される。流動性と不動性は相互規定的であり、「情報」は物質性から離れては議論できない。
2018-06-21 07:09:43ここまでのまとめ 批判されるべき「空間」観 1.空間を時間的連続へと回収すること 2.空間性と非-時間性を混同すること 3.空間を所与の領域と見なすこと 新たに提起される「空間」観 1.異種混淆性の領域としての空間 2.権力の領域としての空間 3.共時代性、同時代性の領域としての空間
2018-06-21 07:35:47第十章 新たなるもののための諸要素 素朴なローカル/横暴なグローバルという安易な図式を否定する。両者は相互規定的であり、互いにその生産の契機を有している。両者を対立するものとしてローカルを守ろうとするのではなく、グローバルのローカルな生産をこそ問題視すべきである。
2018-06-21 08:36:07「因果関係」から「偶然性」へ 「決定不可能な何ものか、全体性とは正反対の何ものか」を作り出す >決定不可能性は、総体的なランダム性からではなく、それぞれがそれ自体において一貫して論理的な、相互に重なり合う三つの独立した構造(点字法、座標軸、曲線)によって生じる
2018-06-23 05:55:40>あなたは、たんに空間を通って、あるいはそれを横切って旅しているのではなく、それを少しばかり作り替えているのだ。空間と場所は、動的な物質的実践をとおして立ちあらわれる。さらに言えば、あなたのこうした動きは、たんに空間的なだけではなく、時間的でもある。
2018-06-27 11:48:39小さいころチョコレートケーキが好きだったとかいう微笑ましいエピソードが出てきた(それも時空間の話と結び付けるからさすが) 「あぁ、ママ……、わたしたちはあのなつかしいチョコレート・ケーキが好きなのよ」
2018-06-27 12:40:53第十一章 空間の諸断面 空間を閉鎖的で完結した体系と見なすのではなく、複雑で偶然性を生むような異種混淆的なものとみる見方を提示する。後半では「移動」をテーマに、空間的移動を時間的移動と同一視する見方を批判的に検討する。
2018-06-27 13:10:19第十二章 場所のとらえどころのなさ 場所とは「多くの相異なる社会的なプロセスが、ひとつの明瞭な全体へとまとめ上げられる場」(ロウ&バーネット)であり、それは不動のものではない。そして「ともに投げ込まれる」場である場所には必然的に「交渉」が生じる。
2018-06-29 03:25:17「連続的な安定性があれば政治は不必要であり、安定性が当然のものでなく、本質的、実質的なものでない場合に初めて政治が存在し、倫理が可能になるのである。混沌はひとつの危険であるとともにひとつのチャンスである」(デリダ) 混沌→政治→倫理
2018-06-29 03:45:55「政治的なもの」とは(シャンタル・ムフ) >「境界づけられているにも関わらず、異種混淆的で、不安定で、必然的に相対立する「われわれ」という、〈つねにこれから完成されるべき〉構築物」に基づくもの 有界化、内側性、未完成
2018-06-29 04:12:06第十三章 〈ともに投げ込まれていること〉—場所という出来事の政治学 場所の政治は空間への想像力を飼い馴らすことによって行われる。固定的な実在として場所を想像することは、場所間の不均衡を覆い隠してしまう。 (後半の自然についての話は今一つ理解が及ばなかった)
2018-06-29 07:05:29第十四章 空間と場所の原則などない 場所の開放性と閉鎖性に関する倫理的判断は先験的には不可能であり、それはその場所に関わる権力の諸関係を考えることなしにはできない。(←二項対立に疑問を投げかける脱構築の議論を援用)
2018-06-29 11:39:51>真の社会的-政治的な問いはおそらく、開放性/閉鎖性の程度に関わるもの(そしてそこから必然的に導き出される、いったいどうやったらそれを計測することなどができるのかという問い)であるよりはむしろ、開放性/閉鎖性が確定されるための条件に関わるものだ。 程度より条件、なるほど
2018-06-29 12:44:47「家屋(ハウス)が真の家(ホーム)であるには、小さな都市のようなものでなければならないし、都市が真のわが街(ホーム)であるには、大きな家屋(ハウス)のようなものでなければならない」(アルド・ファン・エイク)
2018-06-29 12:48:10第十五章 〈時間-空間〉をつくることと〈時間-空間〉をめぐって抗争すること 最後の章。「空間」を相互関係性的な〈時間-空間〉として思考することは、「“空間に”ともに投げ込まれている」われわれの倫理—配慮(ケア)と応答責任—を呼び起こし、未来に開かれた社会的諸実践の可能性をもたらす。
2018-06-29 23:24:08空間とは 1.動的なプロセス 2.外/内の境界設定が不可能・多孔的 3.単一のアイデンティティを持たない 4.開かれた広範な諸関係によって再生産される このような空間の生成プロセスをマッシーは「権力幾何学(power geometry)」と呼んだ
2018-06-29 23:44:16『空間のために』の思想的背景 「地理的表象の危機」:1980年代後半の英語圏人文地理学で主張される,場所・風景・空間が孕むイデオロギーが暴き出される,言説に着目 →言説・言語を前提とすることは人間主体の超越性を認めることになるという批判 →ポスト人間中心主義の登場(1990年代~)
2018-06-29 23:45:15ポスト人間中心主義 1.社会のより複雑な構成プロセスに着目する態度(complexity turn) 2.物質性に着目する態度(material turn) 3.感情・情動の湧出による社会の再構成における政治学を問う態度(affective turn) など。二項対立、主客分離を批判する点で共通する。
2018-06-29 23:47:21やっと読み終えた!!! ドリーン・マッシー(森正人,伊澤高志 訳)『空間のために』月曜社,2014年 twitter.com/Naga_Kyoto/sta…
2018-06-30 00:05:50非常に刺激的な本だった。難しい内容だったので背景知識をいちいち調べながら読んでいたらかなり時間がかかってしまった。しかしこれで2000年代以降の空間論の到達点がどういうものなのか、理解不足はあるにせよひとまず大枠は掴むことができたと思う。これを読み通せたのは一つの成長だ。
2018-06-30 00:10:54マッシー『空間のために』 : 転点notes machiwalk.exblog.jp/24864459/ 加藤先生のブログは本当に参考になる
2018-06-30 00:19:01空間のために: geopolitical critique geopoliticalcritique.cocolog-nifty.com/blog/2014/08/p… やっぱり前半のほうが難しいのか
2018-06-30 00:22:08解説】マッシー教授お茶大セミナー-「グローバリゼーション,ジェンダー,空間,場所」に寄せて 熊谷 圭知 teapot.lib.ocha.ac.jp/?action=reposi… 二項対立云々はフェミニズムの影響が大きいのかな。あとちょうど僕が大学の二次試験を受けた頃にマッシーが京都に来ていたみたいで驚いた
2018-06-30 00:27:43空間のために 感想 ドリーン マッシー - 読書メーター bookmeter.com/books/8020335 >空間より時間の方が重きを置かれているから云々という議論から一歩進んだ感がある なるほど
2018-06-30 00:36:34