お題「日記帳」「宿雨」「ひらく」
0
もとし📝 140字小説と詩で生きるを書いてる人 @motobaritone

日記帳なんてあっただろうか?授業参観の持ち物で「両親の日記帳持参の事」を見て驚いた。押し入れから顔を出した古い日記帳をひらく。見覚えのない筆跡。困惑気味に裏表紙まで捲る。そこには『兆治』とあった。「宿雨が続いておりますが…」若かりし頃の祖父と祖母の初々しいやり取りが残されていた。

2022-08-13 21:53:57
春野ゆき @710_ambassador

#深夜の真剣140字60分一本勝負 (@140onewrite ) 今宵もご開催をありがとうございます🎉ひさびさ参戦ッ☔ お題:日記帳、ひらく(タイトルで雰囲気・宿雨も) 内容:ちょいディストピアSS 世界は謎で満ち溢れているといいよね、という着想より☔ pic.twitter.com/L9piDXNu3Z

2022-08-13 22:00:44
拡大
今村スイ@140字小説 @tsuduru_0716

押し入れの中から、私が生まれた年の祖父の日記帳が見つかった。ページをめくって誕生日の記述を探す。宿雨、女児誕生。タチアオイの花ひらく。その一文に頬が緩む。あおいという名前の由来を誰に訊いても首を傾げられるばかりだったのだ。おじいちゃん。そう呟いて、今はもう亡き祖父のことを思った。

2022-08-13 22:01:23
らん @amagi_ran

とじるのは簡単だ。すべて閉め切ればいい。目をつぶり、耳をふさぎ、口をつぐむ。嫌なこと、汚いこと、恐ろしいことから身を守るためだ。けれどここはずっと夜で、暗くて、寒いんだ…。#twnovel 僕は闇に耐えられずそっと扉をひらく。隙間から差し込む金色の光に手を伸ばすと、指先に温もりを感じた。

2022-08-13 22:01:44
五十嵐彪太(瓢箪堂) @tugihagi_gourd

日記帳をひらくと紙が湿っている。万年筆では滲むに違いないので今日も油性ボールペンで記す。「8月13日 雨。もう二晩降り続いている。宿雨とはいうが、雨の連泊は遠慮いただきたい。予約のお客様、四組キャンセル……連泊中の雨に宿泊費を払ってもらいたいくらいだが、どこに請求すればよいものか」

2022-08-13 22:06:43
太陽や月など @as1mind1soul

日記帳に白いページが続いて憎らしい。「宿雨晴れる」と書いたきり。それっきり。何事も無かった。日々を書き留める行為は苦痛になりかねないから楽しく綴って習慣化しよう、とあなたは言ってた。そうよ、あなたの言う通り。楽しくなくて書き続けられなかった。今日もひらく日記帳は、あなたの忘れ物。

2022-08-13 22:06:56
こいどり @kI_rakraku

②と③を使わせて頂きました! #深夜の真剣140字60分一本勝負 (@140onewrite) #140字小説 第213回お題 ①日記帳(にっきちょう) ②宿雨(しゅくう) ③ひらく pic.twitter.com/UPQeOcHpec

2022-08-13 22:07:25
拡大
Z.P.M @ArcOkimuy

初めて焼いたシュークリームを来客に出してもいいかと母にたずねたところ、いい心臓ねと笑われた。やがてお開きになったとき、丁寧に盛り付け箱詰めされた「お土産」の片隅にもぐりこんでいた「うちの娘の手作り」。その出来事をずっと過去の日記帳をめくってさがしている宿雨の午後に。

2022-08-13 22:09:31
てい @orztee

誰かが泣き続けているかのような雨が止まない。細く白い幾本もの水が筋になって、昨日死んだ兄の日記帳に、縞模様の影を落とす。一点の曇りもない晴天のような記述からは、やはりその心ははかれない。けれど、頁を繰る手は止められない。永遠に開き続ける距離、その背に手を伸ばすのを、やめられない。 pic.twitter.com/6g1T0HZkMV

2022-08-13 22:10:24
拡大
徒歩川歩 @ayumu_tohokawa

毎年、お盆休みには互いの実家を交互に訪れることになっている。今年は夫の実家。 「あ」 物置で大皿を探していた私は、うっかり古いノートをばらまいてしまう。それは日記帳だった。少年らしい武骨な文字が、鮮やかに当時を閉じ込めている。 読みたい気持ちを振り払い、私はそれらを元に戻した。

2022-08-13 22:20:01
ケンタシノリ@童話&小説書き屋さん @kentasinori

旅籠の中で一夜を過ごした長衛門だったが、目を覚ました時に耳元へ入ったのは宿雨の音である。 「こりゃあ、今日中に大井川を渡るのは無理かも」 出入口たる引戸を開くと、地面へ叩きつけるほどの雨足の強さが長衛門の眼前に広がっている。長衛門は、今日の出発が絶望となったことで頭を抱えている。

2022-08-13 22:25:03
れんが @xLEZ7vRmyC82HvW

今年の一言日記は簡単だ。天気は雨と書けばいい。31日にまとめて書いても安心だ。 最も9月1日に提出する必要があるかはわからないけど。 宿雨は1ヶ月以上続いて地球を水浸しにした。少しずつ変わる窓の外から目を逸らして日記帳をひらく。 『今日はミエちゃんの家が沈みました』 数日後には僕の家も─

2022-08-13 22:27:29
秋月蓮華 @akirenge

空がひらくようにと祈った。 雨ばかりが降り続けている。宿雨どこじゃない。窓の外の雨が今日も今日とで元気いっぱいだ。 雨の日に雨具を付けて雨に唄えば! とかやれる気分でもない。こういう時は日記帳を開く。 「今日も雨だった」 私はページに晴れだったと書けますようにと願いながら書いていく。

2022-08-13 22:28:29
石森みさお@140字小説 @330_ishimori

今はもう亡い人の日記帳を蒐集するのが趣味だ。今日も古書店の片隅で商われていたそれを求め帰った。紙面に刻まれた筆跡、涙の跡、漢字をひらく癖から、持ち主に想いを巡らせ慈しむ。さて、私のこの日記はどの好事家のもとに届くだろう。八月十三日、宿雨。私はまだ見ぬ貴方に向けて日記を書いている。

2022-08-13 22:44:35
ゆきやまイマ@鶏林書笈 @keirin_syokyu

#深夜の真剣140字60分一本勝負 @140onewrite お題 ①日記帳(にっきちょう) ②宿雨(しゅくう) ③ひらく #木槿国の物語 何てこともない話になってしまった(苦笑)💦 pic.twitter.com/fxiq71LerW

2022-08-13 22:48:16
拡大
Pingu novel @ckpingu_nvl

こうも宿雨が続くと、書くことが決まってくる。仕方ないから今宵も日記帳の続きを探し、鉛筆を握る。“今日もあの人は、傘を取りに来ない。新しい傘は買ったのだろう。その隣には、誰がいるのだろう” 私は大判な色褪せかけた傘を部屋でひらく。

2022-08-13 22:58:56