ネタバレの美学というジャンルが現代日本の哲学のプチ流行としてあるんですが(詳しくはググって)、ネタバレの倫理学というのも必要なのではないか、それで救済されるのは実は細田守映画なのではないか、という思いつきを素描しました。
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tricken(手術後復帰チャレンジ中) @tricken

竜そばについては「PG12指定さえ配給側でしてくれたら、作品の良いところが誉めやすいのだが、見る範囲を限定させていないので褒めづらい位置に置かれた映画」という感じである。

2021-07-31 09:41:59
tricken(手術後復帰チャレンジ中) @tricken

なんならR15指定でもいいのだが、ジブリアニメ的なものを期待されている一人である細田映画については、観客の幅を率直に狭めるそうしたレーティングを配給側でかけることはしないだろうな。しかしそうすればそうするほど、細田監督が指向する「良い表現」は毒性の部分が強調されてしまう、とおもう。

2021-07-31 09:44:11
tricken(手術後復帰チャレンジ中) @tricken

(1) フラッシュバックとか辛い記憶とかは、成人含め、批評的態度で接し得ない各自の個人的特質に左右されるものであり、そこは制度を通じた配慮が求められてよい領域である(消費者に批評的態度を求めるのは良くない領域である) (2) 自由で強力な表現をすることとRatingは矛盾しない、使えよ配給は

2021-07-31 09:47:30
tricken(手術後復帰チャレンジ中) @tricken

(3) しかし映画の資本主義的原理は、細田映画に適切なレーティングを掛けることをよしとしないだろう、ファミリー映画の役目を負わせようとしているから (4) だが細田は、私見だが、究極的にはR18 (エロでもGでもない何か)を追求している、良くも悪くも「清濁のディティールを積み上げる」監督である

2021-07-31 09:49:42
tricken(手術後復帰チャレンジ中) @tricken

(5) 批評が十分に追いつく前に、「細田映画にとって適切な(そしておそらく特殊な)レーティング」の話をしてゆかないと、細田守映画をめぐる毀誉褒貶は治らないだろうし、なによりインタビューを通じて「面白く自由な表現」を志向すると思しき細田守監督自身が適切な評価を受けられなくなるだろう。

2021-07-31 09:51:18
tricken(手術後復帰チャレンジ中) @tricken

(6) その上で批評の話に踏み込むと、細田映画の内容の評価は、褒める貶す以前に、「この映画では犬が死にます/死にません」と同様に「この映画ではこれこれの表現がでる/出ません」を事前に言うべきか言わないべきか、という話が出てくる。これはネタバレの美学であると同時にネタバレの倫理学である。

2021-07-31 09:58:53
tricken(手術後復帰チャレンジ中) @tricken

細田映画のうまさと暴力性は、「犬好きのあまり犬が映画内で死ぬのを見られない/見ると具合が悪くなる人」にとって必要な情報と、機能的に等価なものを要請する。だがそれを事前に通告すると、細田が演出上仕掛けている毒性が(それが表現に資するかどうかを留保するとしても)弱毒化することになる。

2021-07-31 10:01:27
tricken(手術後復帰チャレンジ中) @tricken

この毒性を、映画産業の中でどう扱うことが細田映画にとって(そして監督自身にとって)幸せな落とし所なのか、自分はわからないが、そこには【ネタバレの倫理学】と呼ぶべきジャンルが、先行する【ネタバレの美学】と共に、細田映画の(上向くにせよ下向くにせよ)妥当な評価軸を見出す役に立つだろう

2021-07-31 10:03:07
tricken(手術後復帰チャレンジ中) @tricken

今んところ竜そばの評価の前提はこんな感じ(評価そのものは何も語っていない)。しかし、箸にも棒にもひっかからなかった最低最悪の作品であった『バケモノの子』よりは十分に世界レベルの作品で、そこは(消費者個人としての作家への信頼回復という面で)よかったですよ。

2021-07-31 10:06:39
tricken(手術後復帰チャレンジ中) @tricken

内容の感想はまだ煮詰まってないけど、(a)「映像表現様式の面でトリリンガルな映画」(ジャパニメーション、ディズニーアニメーション、日本実写映画)であり、(b) 社会生活のディティールの積み上げにはスタッフの才気が横溢しており、(c) 家族の情念を巡る筋それ自体は演出として極めて強靭

2021-07-31 10:14:31
tricken(手術後復帰チャレンジ中) @tricken

(d) 個々のキャラが、部分的にご都合主義な一方で別作品の主人公になれそうな程度には奥行きを感じさせる設定の過剰さがある(※これは旧作の細田映画にはあまり感じなかった点) (e) 「大人の風体」の書きわけの漸進的イノベーション(※今年で言うとシンエヴァと比較すると歴然) などが論点になる。

2021-07-31 10:17:02